2021 Volume 63 Issue 10 Pages 2276-2279
交成病院(旧称)は宗教法人立正佼成会の社会事業として中野区弥生町に,1952年8月木造23床で開設された.当初の診療科は内科・外科・小児科・産婦人科・歯科で医師は7人であった.その後,1960年6月「立正佼成会附属佼成病院」に改称,増床を重ね1971年には325床となった.2014年には施設の老朽化と耐震補強の観点から杉並区和田の環状七号線沿いの新病院へ移転した.現在,急性期病床270床(HCU8床),地域包括ケア病棟50床,緩和病棟20床の計340床で運用されている.また,2015年から杏林学園(東京都三鷹市)の教育関連施設となり,常勤医師の約80%が杏林大学医学部各診療科からの派遣・出向医師である.
「佼成病院二十五年史」によれば当院内視鏡室の歴史は古く,胃カメラ検査が健康保険に適用された翌年,1959年にはオリンパス社製「GT-Ⅲ型」ガストロカメラを購入し,臨床適用を開始している.さらに1963年にはその後のガストロカメラの標準型として知られる「GT-Ⅴ型」ガストロカメラを購入,1964年には年間内視鏡件数116件に達した.さらに1973年には内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)を,1976年にはpolypectomyを開始している.ちなみに1990年には2名の職員が初めて日本消化器内視鏡学会の認定内視鏡技師資格を取得している.
初期には外来小手術室で検査が行われていたが,1976年5月,正式に専用の内視鏡室が開設された.その後種々の変遷があり,新病院移転後は最新機器や設備が揃った内視鏡室で,上部消化管・下部消化管・胆膵系の内視鏡検査・治療を年間約7,000件行っている.
当室の特徴としては,当院は中核の市中病院であるが,まず豊富な人材を有することである.検査担当医のほぼ全員が杏林大学消化器内科学教室のOB,教室員であり,日本消化器内視鏡学会指導医・専門医が6名勤務している.そのためカプセル内視鏡以外のすべての内視鏡検査・治療が可能である.内視鏡担当医は17名(うち非常勤医師5名)で,学会認定内視鏡技師(Ⅰ種)も6名在籍している.内視鏡診療能力や研修医,消化器内科レジデントへの指導能力も大変高いものと自負している.
また安全面から,全例検査中バイタルサインをモニターし,検査前から終了後まで看護記録を残している.さらに被験者QOLを考慮し,全例CO2送気により検査・治療を行っている.
組織内視鏡室は中央診療部の一部署として診療各科から独立している.室長(1名,兼務),副室長(1名,兼務),看護主任(1名,兼務),認定内視鏡技師(1名,専従),事務(1名,専従)にて毎月運営委員会を開催,各種審議を行い,内視鏡室の適正な運営に当たっている.
検査・治療は内科(消化器内科),健康管理室,小児科医師が担当する.診療内容は,各部内のカンファランスなどで決定され,責任は部長が負う.
看護師は内科外来診療も兼務しており,交代で内視鏡室を担当する.専属の内視鏡技師が配属されている.
検査室レイアウト

内視鏡室は外来棟1階に位置し,検査室が3室並列されている.いずれも直接病棟ベッドの出入りが可能である.広さは左から18.47m2,17.60m2, 18.28m2であり,引き戸式のドアで被験者のプライバシーが守られている.
内視鏡洗浄・消毒については,2018年の本学会ガイドラインによるが,各検査室での一次洗浄から専用のカゴ(青色)に入れ,左入口から洗浄室へ.そこで用手洗浄と機械洗浄ののち,カゴ(白色)に入れ,右出口から再び検査室へ運んでいる.洗浄・消毒前後で内視鏡を運ぶ動線が交わらないよう工夫している.
COVID-19の対応について,以前より検査担当者のPPEは各検査室で1検査ごとに取り替えていたが,本学会Q&A集により長袖ガウンに変更し,マスクはN95(1日一人1個に限定)の上にアイシールド付きサージカルマスクを使用し,1検査ごとに取り替えている.また,検査室は1時間に10回の換気が行われている.
尚,ERCPやその関連処置,EUSなどX線透視が必要な検査・処置は,同棟地下1階の放射線部透視撮影室2(22.85m2)を使用している.こちらもHEPA空気洗浄機が常設されている.
(2021年3月現在)
医師:日本消化器内視鏡学会認定指導医5名,同認定専門医1名,その他11名(うち非常勤5名),後期研修医2名
看護師:5名(交代制)
日本消化器内視鏡学会認定内視鏡技師(看護師,臨床検査技師):Ⅰ種6名
洗浄室:2名
医療事務:1名(交代制)
(2021年3月現在)

(2019年4月1日~2020年3月31日.COVID-19の影響で2020年2月,3月の件数は大幅に減少した)

当院の研修目標には3種類がある.①後期研修医へ数多くの内視鏡経験を積ませる研修,②その後専門医取得を目指す研修,③さらに内視鏡診断・手技を充実させる研修である.
内視鏡担当医は,すべて出身医局にて内視鏡手技の基本を習得して赴任してくる.そして本学会専門医取得前は,すべての検査・治療は上級医の監督下で行う.すなわち,指導体制として総責任医師(内視鏡経験19年,本学会指導医)とその補佐として内視鏡経験10年目の指導医を2名(下部消化管専門医師と胆膵専門医師)配置している.この3名の指導の下,それぞれの研修目標に沿って連日内視鏡診療が行われている.尚,後期研修医は本学会に提出した佼成病院研修カリキュラムに則って研修を行っている.
指導方針としては,本学会監修;消化器内視鏡ハンドブック(改訂第2版)の序説に小生が記載した文言を引用したい.「消化器内視鏡検査は,①安全確実な検査遂行のため施行医のまず技術が基本となるが,②所見を読む力や日進月歩に発達する内視鏡器具の知識も必要となる.さらに,③被験者に対する優しい思いやりや内視鏡検査を介助する看護師,内視鏡検査技師とのスムーズな連携プレー構築など豊かな人間性も必要である」.①,②,③の調和が取れた内視鏡医の育成,これが当内視鏡室の指導方針である.
一般臨床や胃がん検診,大腸がん検診など消化器内視鏡の需要は益々増加している.しかし現状では,限られたスペースで内視鏡件数を増すには医療スタッフが不足している.特に外来兼務の看護師を内視鏡室専属にすること,ならびに2-3名の増員が必要である.
また,鎮静下内視鏡を希望する被験者も増加している.検査後のリカバリー室であるが,スペースの関係で大腸内視鏡の前処置室と共同で使用している.改修の上,両室を独立することも必要である.
3点目の問題点は透視室である.ERCPやその関連処置,EUSなどの検査時に使用している.内視鏡光源や処置具は常置してあるが,使用後の洗浄・消毒は,同室での一次洗浄後に内視鏡室に運んでから行っている.院内感染予防の観点から工夫が必要だが,良い案が見つかっていない.
今後は,臨床や指導のみでなく,市中病院ならではの臨床研究も行って行きたい.また,医師の専門医取得のみでなく,看護師・臨床検査技師の内視鏡技師資格取得をも目指して行きたい.
そして検査を受けた方が病院から帰る際,「この病院で検査を受けてよかった!」と思われるような内視鏡室を目指したい.