2021 Volume 63 Issue 11 Pages 2388-2390
当院は1936年日本赤十字社島根支部病院として開設,1943年松江赤十字病院に改称した.現在の建物は高層階に入院機能,本館には外来機能を持たせ,免震構造の採用,災害時のエネルギー供給システムの導入,ヘリポート,水害対策用の防潮堤設置などを行った上で,2013年10月に竣工した.現在は27診療科を有する病床数599床の急性期型の総合病院である.また,当院は島根県東部の中核医療機関として,災害拠点病院,救命救急センター,地域医療支援病院,地域がん診療連携拠点病院,地域周産期母子医療センター,臨床研修指定病院,エイズ拠点病院等多くの指定を受けている.
組織当院内視鏡室は以前は外来の一部門の扱いだったが,2004年に検査部に移行し,診療補助部門の中の内視鏡検査室として独立した.そして2020年4月内視鏡科部が新設された.内視鏡科・消化器内科所属の医師が消化器内科診療業務と並行して内視鏡診療を行っているが,内視鏡室専従の内視鏡検査技師を中心に,検査技師,看護師,内視鏡洗浄担当者,受付等のスタッフと協同して内視鏡室を運営している.
検査室レイアウト
内視鏡室は当院2階に位置し,総面積213.2m2で,1つの透視室を含め,全5室の検査室からなる.透視室は内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)等の透視が必要な内視鏡検査・治療を行えるとともに,陰圧管理され,感染症が疑われる症例にも対応出来るようになっている.また,手術室にも内視鏡システムを配備していて,手術室や隣接するICUでの内視鏡検査・治療もスムーズに行えるようになっている.
(令和3年3月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医4名,消化器内視鏡学会 専門医2名,その他スタッフ3名,研修医など2名
内視鏡技師:Ⅰ種5名,その他技師2名
看護師:常勤8名
事務職:1名
その他:2名
(令和3年3月現在)
(令和2年1月~令和2年12月まで)
前期(1,2年目)は,消化器内科ローテーション時に消化器疾患全体について研修するのに合わせて内視鏡研修を行う.前期の内視鏡研修は,内視鏡検査・治療手技の見学を中心に,上部消化管内視鏡トレーニングモデルを用いて内視鏡操作等の研修を行い,内視鏡検査・治療について理解を深めてもらうと同時に,受け持ち患者を中心に,内視鏡検査・治療前後の管理等を学ぶ.
後期(3-5年目)は消化器内科の臨床に携わりながら,実際の内視鏡手技について研修する.具体的には,3年目に指導医の監督下で週1回から2回,上部消化管内視鏡検査を行う.4年目以降は,内視鏡技術や修練度に応じて,指導医の監督下で下部消化管内視鏡検査や上部消化管内視鏡治療の研修を行う.さらに,胆膵内視鏡検査・治療や内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を中心とした治療内視鏡についても,介助から研修を開始し実際の手技を徐々に学んでいく.週3回行っているカンファレンスでは個々の症例について検討し,十分にディスカッションを行った上で,内視鏡治療を行うか,手術等の他の治療を行うか,腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery:LECS)など内視鏡と手術を組み合わせて行うかを決定する.
他にも学会や研究会に積極的に参加することで,内視鏡検査や治療について深く学ぶ機会を作っている.
新型コロナウイルス感染症の広がりから端を発した物資不足は,いまだに解消されていない.特に内視鏡診療において標準予防策に欠かせない物品の不足は深刻で,限られた物資を最大限に,大切に,有効に使っていく必要に迫られている.
当院内視鏡室独自の問題点としては,新しい機器や処置具の導入により内視鏡室が手狭となり,検査・治療時の人の移動に不便を感じることが挙げられる.さらに外来での鎮静を伴う検査件数の増加により,リカバリールームや観察要員の確保に苦慮している.
しかし内視鏡室専従の内視鏡検査技師を中心に,医師,看護師,検査技師が密接にコミュニケーションを取りながら,検査の緊急性や検査の内容等を勘案し,できるだけスムーズに内視鏡検査・治療が行える様に工夫しながら,内視鏡業務を進めている.また,長期化する新型コロナウイルス感染症への対応や,今後発生するかもしれない新たな問題に対して柔軟に対応するため,ソフト面,ハード面ともに改善を進めていく必要があると考えている.
当院では新たな試みとして,経鼻内視鏡を受ける患者さんにガーゼを提供し,口元を押さえて頂いている(Figure 1).そのことでどのぐらい飛沫を防ぎ,感染予防になっているかは今後検証していくが,一定の効果はあると考えている.
当院では経鼻内視鏡を行っている患者さん自身に,口元をガーゼで覆って頂き,少しでも飛沫を防ぐ工夫を試みている.