GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2021 Volume 63 Issue 12 Pages 2518-2521

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概要

沿革・特徴など

当院は1961年に,地域の貧困に苦しめられる患者たちのための診療所として,有志および地域住民の力で設立された長野民主診療所がそのルーツである.1976年に病院化し,その後1979年長野中央病院と改称し発展した.その後も徐々に病床数を拡充し,現在322床の長野市中心部の中規模病院として急性期疾患を中心に診療を行っている.内視鏡室は1981年に検査台一台の小さな小部屋からスタートし,2013年に検査室4室を持つ内視鏡センターに発展している.長野市において最も初期から内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を行うなど,活発な内視鏡診療を心掛けてきた.現在では中規模病院ならではの風通しの良さを活かして,内科,外科,若手の研修医たちで多数の検査・治療を実施している.

組織

内視鏡センターは,診療部の一つとして独立した位置づけを持ち活動している.専任医師はおらず,消化器内科,消化器外科医が兼任で検査・治療を行っている.内視鏡技師として,看護師の他に約同数の臨床工学技士を配置していることが当院の特徴で,これによって機器,処置具の管理を緻密に行ってもらうことができる.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

総面積338m2

大腸前処置12名可能.

リカバリーベッド8床.

トイレ6カ所+車椅子トイレ1カ所.

内視鏡室2部屋と透視室は陰圧化している.

新内視鏡室は,患者がより安全で安心できる医療を提供すること.

スタッフが働きやすい職場を構築すること.をコンセプトに2013年5月完成.

JED 2018年から参加.

スタッフ

(2021年4月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医2名,消化器内視鏡学会 専門医2名,その他スタッフ4名,研修医など10名

内視鏡技師:Ⅰ種5名

看護師:常勤5名,非常勤3名

事務職:2名

その他:臨床工学技士8名

設備・備品

(2021年4月現在)

 

 

実績

(2020年1月~2020年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院では,内視鏡研修を希望する研修医については,消化器科のローテーションの期間以外であっても通年の研修ができることを特徴としている.これによって,研修医は早期から内視鏡を経験しその魅力に触れることができ,将来の専攻に選ぶ可能性が増える.また,異なる専攻科に進んだとしても,内視鏡検査,画像に関する理解は大いに役立つものと考えている.研修医は,研修プログラムに基づき研修するが,その初期の一定期間には内視鏡の洗浄,セッティング,患者の案内など,内視鏡技師について研修することも義務付けている.単に内視鏡の操作,画像診断に留まらず,機器の正しい取り扱い,患者の流れの把握,患者の心情への対応を学ぶことも大切と考えているからである.また,検査・治療の研修は,研修医の期間中はすべて指導医の監視下で行うこととしている.2年近く研修していれば,非常に上手に検査をこなすものも出てくるが,必ず指導医の立ち合いの下での検査を義務付けている.検査中に観察のポイント,操作方法のポイントを説明するが,検査終了後,別室にてファントムを用いての復習を促している.そして,それらのポイントとなる操作が十分にできるようになるまで,研修医自身の自己研鑽を求めている.また,操作以上に大切と考えているのは,画像の読影技術の習得である.定期的に内視鏡診断の読影会を開き,初心者には,胃底腺ポリープや過形成性ポリープなどの所見,病理的な成り立ち,潰瘍のステージ分類など,極めて基礎的な内容を中心に十分なカンファレンスを行うようにしている.特に有用なのは,各疾患に約50枚を1セットとした独自に作成した教育スライドである.これが,約20セットある.この基礎的なスライドにて講義を行いつつ,毎週で出会う教育的な症例についてカンファレンスを行う.そしてもちろん,消化器内科後期研修医については,拡大内視鏡所見も含めた一般的な症例カンファレンスも同時に合わせて行っている.

現状の問題点と今後

他の病院の例に漏れず,当院でも消化器内視鏡医不足は深刻である.しかし,愚痴っていても解決しない.当面は,パートの先生方の力を借りてルーチン検査を回してもらい,スタッフ医師は,主に研修医たちの指導に注力することにしている.遠回りのようではあるが,それが明るい未来をつくる最良の方法であると信じている.忙しいからといって,後輩への教育をないがしろにするのではなく,基礎的な操作から拡大内視鏡の所見の取り方の指導まで時間はかかるがみっちりと教えるようにしている.とはいえ,手塩にかけて教えた後に,ある程度力がつくと他の病院に移籍してしまうような若手もおり,指導医側の強靭なメンタルを維持することも大切であると痛感することも多いが,教育に最大の力を入れることに今後も変わりはない.今後もコロナ感染症への対応,さまざまな新規技術,治験の積極的な吸収,発信を若手研修医たちとともに楽しみながら勉強していきたいと考えている.

 
© 2021 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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