GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2021 Volume 63 Issue 12 Pages 2522-2524

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概要

沿革・特徴など

当院は1998年湘南地区江の島にほど近い鎌倉市西鎌倉の30坪の住宅地に,延床面積36坪2階建て木造の自宅を改造した建物で一人医師診療所として始まった.1階に待合室と診察室,レントゲン室,2階に内視鏡検査室と回復室を設置した.回復室といっても,3台のオットマンとテーブルが置いてある簡素なもので,扉一枚隔てた隣で検査をしていたために,検査中の音や声は筒抜けであったが,検査後の患者の様子をすぐに診る事ができるという利点はあった.朝7時半から9時まで上部消化管検査,9時から12時30分まで外来診療,13時30分から16時まで下部消化管検査,そして16時から19時まで夕方診療をするというスタイルで,このスケジュールは現在でも基本的には変わっていない.開院3年目,検査件数が月に200件位になった頃に,非常勤の内視鏡検査医の協力を得て,外来診察と内視鏡検査の同時並行を始めた.施設が手狭になったため,2004年に同じ地区で延床面積150坪の現在の場所に移転したが,現在も内視鏡室1室,回復室6ベット,診察室2部屋の小さな診療所である.2010年には横浜市中区桜木町に分院(みなとみらいケンズクリニック)を設置し,鎌倉とほぼ同じ診療スタイルで内視鏡検査と一般診療を実施している.

組織

一般内科診療における一検査としての消化管内視鏡検査であるが,内視鏡検査を目的に来院する患者が全体の半数近い.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

当院のミッションは「クライアントに安心と満足を提供すること」であるため,内視鏡検査においても観察の精密性は当然であるが,「苦痛のない内視鏡検査」を常に意識している.そのため上下部共に鎮静剤(塩酸ペチジン,ミダゾラム)を患者同意のもとで使用し,検査後の腹部膨満感を軽減させるために適宜炭酸ガスを利用している.検査前後での血圧測定と検査中の酸素飽和度等のモニタリングを実施し,原則としてシュアプラグ®による血管確保を行っている.検査介助は看護師もしくは臨床検査技師が1名,内視鏡周辺器具のセットや患者誘導は助手スタッフ1名が行っている.検査後に内視鏡室に隣接する回復室へ患者移動するが,介助下自立歩行である.回復室で約1時間休憩後に併設している2階の喫茶室にてお粥等の軽食や飲み物を摂りながら説明までの時間を過ごしてもらっている.特に大腸検査後のお粥は好評である.

大腸内視鏡検査は在宅での前処置を原則としているが,一人暮らしの患者や希望者には院内での前処置も実施している.在宅前処置の場合には電話で排便状況を確認しながら来院時間等を決め,必要に応じて院内での追加飲用と排便状態の確認を行っている.

内視鏡結果の説明は内視鏡室もしくは診察室でファイリングされた画像を提示しながら行い,すべての写真をプリントして渡している.現在(2021年5月)内視鏡担当医師は常勤医2名と非常勤医師3名(内2名は分院常勤医)である.

スタッフ

(2021年5月現在)

医師:消化器内視鏡学会 専門医5名

内視鏡技師:Ⅰ種1名,その他技師2名

看護師:常勤1名,非常勤2名

事務職:10名

設備・備品

(2021年10月現在)

 

 

実績

(2020年4月1日~2021年3月31日)

 

 

指導体制,指導方針

当院に勤務する内視鏡医師は常勤医,非常勤医共に内視鏡学会専門医資格を持った熟練した医師である.このため,特別な指導は行っていない.当院のミッションである「クライアントに安心と満足を提供すること」を徹底してもらうようお願いしている.そのため,検査後に患者の満足度をアンケート調査し,必要に応じて担当医師にフィードバックしている.4年前にPCF-PQ260I導入後は癒着症例の深部挿入が苦痛なく可能となる症例が増えたと感じている.

当院での内視鏡治療には設備的にも限界があり,積極的に近隣総合病院や大学病院,がんセンター等に紹介し,あくまでも無理しないように指導している.

現状の問題点と今後

鎌倉市の高齢化率は高く30%を超えている.このため内視鏡検査を定期的に受けている患者や初回検査の患者も高齢化が近年目立つようになってきた.特に80歳以上の内視鏡検査数が増える中で,検査中やその前後の全身状態の観察がより一層重要になってきている.高齢化しても苦痛のある検査は避けたいと鎮静剤使用の検査を希望する患者が多い.なるべく患者の希望に沿う形での検査を心がけているが,時には無鎮静で経鼻スコープ(GIF-XP290N)を経口使用しての検査をお勧めしたり,下部消化管では無鎮静での検査をお勧めしている.

鎌倉で開院してから20年以上経過し,定期的な内視鏡検査を受ける患者が累積した結果,特に上部消化管検査の予約が困難になっている.初回で有症状の場合には時間外での検査を入れたり工夫をしているが,その事でスタッフの勤務負担が多くなってしまっている.有資格者の人数が少ないため,時には外来や生理検査業務との兼務になってしまう事もあり,今後スタッフの充実が必要であると考えている.

現在(2021年5月)横浜の分院は祭日以外全日診療,内視鏡検査を実施している.当院でも新型コロナウイルス感染症流行前には月に2回は日曜日診療を実施していた.非常勤医師の勤務の問題とスタッフの業務負担を考えて現在は月に1回のみ日曜日診療・検査を行っている.今後各スタッフを充実させて,可能な限り日曜日にも内視鏡検査を実施し患者のニーズに応えたい.

 

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