GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC ULTRASOUND-GUIDED FINE NEEDLE ASPIRATION USING A FORWARD-VIEWING ECHOENDOSCOPE FOR DIAGNOSIS OF PROSTATE CANCER WITH LYMPH NODE METASTASIS
Hisae YASUHARA Hidenori HATAKozue SUTOKenji YAMAUCHIHiroyuki SEKITeruya NAGAHARAHideki JINNOAkio MORIYAMorihito NAKATSUMasaharu ANDO
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2021 Volume 63 Issue 2 Pages 200-206

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要旨

症例は60歳代の男性.健康診断でPSA上昇を指摘され,骨盤部MRI検査では悪性所見は認められず,左側骨盤内腫瘤を指摘された.諸検査では骨盤内腫瘤について診断に至らなかった.直視型コンベックス型超音波内視鏡を用い経大腸的に超音波内視鏡下穿刺吸引法を施行し,組織診断より腺癌成分が検出された.細胞の形態から前立腺癌パターンと類似していたため前立腺生検を施行した.骨盤内腫瘤の生検病理標本と類似した組織が採取され,最終的に前立腺癌の骨盤内リンパ節転移と診断し得た.画像診断のみでは診断困難であった骨盤内腫瘤に対して,経大腸的に直視型超音波内視鏡下穿刺吸引法を行い,より低侵襲に病理組織学的診断に至ることができた.

Ⅰ 緒  言

EUS-FNA(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration)は現在では広く普及した内視鏡手技となっているが,経大腸からの穿刺例についての報告は少ない.また一般的にEUS-FNAでは前方斜視型コンベックス型超音波内視鏡を使用することが多く,骨盤内病変に対して直視型コンベックス型超音波内視鏡を用いた報告は少ない.今回われわれは,X線透視下に直視型コンベックス型超音波内視鏡を用いて経大腸的にEUS-FNAを施行し,リンパ節転移病巣の組織診断より画像検査では診断困難であった前立腺癌の診断に至った1例を経験したため報告する.

Ⅱ 症  例

患者:60歳代,男性.

既往歴:十二指腸MALT(Mucosa associated lymphoid tissue)リンパ腫.

現病歴:201X年4月,健康診断においてPSA(prostate-specific antigen)上昇を指摘されたため,当院の泌尿器科を受診した.骨盤部MRI検査を施行し,前立腺自体には異常所見を認めなかったが,左側骨盤内に15mm大の腫瘤を指摘された.2年前に十二指腸MALTリンパ腫と診断され治療を行った既往があり,悪性リンパ腫や間質系腫瘍,その他に消化器癌リンパ節転移などが疑われ,精査目的に当科に紹介となった.

初診時身体所見:身長177cm,体重77kg,血圧118/80mmHg,脈拍110/分,体温36.3℃,結膜に黄疸貧血なし.表在リンパ節は触知せず.腹部は平坦,軟で圧痛なし.腹部腫瘤触知せず.下肢浮腫なし.

初診時血液検査所見:PSA軽度上昇を認めるのみであった(Table 1).

Table 1 

入院時検査所見.

腹部造影CT検査:左側骨盤内に15mm大の造影効果の乏しい腫瘤影あり(Figure 1).

Figure 1 

腹部造影CT検査.

左側骨盤内に15mm大の造影効果の乏しい腫瘤影を認めた.

骨盤部MRI検査:左側骨盤内に15mm大の境界明瞭な卵円形腫瘤あり.前立腺には異常所見なし(Figure 2).

Figure 2 

骨盤部MRI検査.

a:脂肪抑制併用T2強調画像.前立腺には異常を認めなかった.

b:T1強調画像.左側骨盤内に15mm大の境界明瞭な卵円形腫瘤を認めた.

臨床経過:2年前に十二指腸MALTリンパ腫に対してHelicobacter pylori除菌治療を行っていたため,経年的に腹部CT検査を施行していたが,過去の腹部CT検査では病変は指摘できなかった.PET-CT検査を施行し,前立腺にはFDGの集積はなかったが,左側骨盤内の腫瘤部にFDG集積を認め,また十二指腸球部にも淡いFDG集積が見られた.MALTリンパ腫の再発の可能性を考えて上部消化管内視鏡検査を施行したが,Helicobacter pylori除菌治療前に認められていた十二指腸球部の白色顆粒状粘膜は消失しており,十二指腸からの生検の病理組織でもMALTリンパ腫の残存は認められなかった.大腸癌からのリンパ節転移の可能性も考えて大腸内視鏡検査を施行したが,異常所見は見られなかった.各種検査の結果をもとに,泌尿器科医師とも診療方針について討議を行ったが,PSAの軽度上昇はあるものの,MRI検査で前立腺に異常がなく,さらにPET-CTにて骨盤内腫瘤にはFDG集積があるにも関わらず前立腺にはFDG集積がないことから前立腺癌の可能性は低く前立腺生検の必要性は乏しいとの結論に至った.

確定診断のための組織採取を検討し,病変は深部骨盤内に存在しているため,経皮的アプローチは困難であり,開腹手術による組織採取は侵襲が大きく,病変の描出が可能であればEUS-FNAを試みる方針とした.腫瘤は直腸RS~S状結腸付近からの描出が予想され,屈曲した腸管内へのスコープ挿入には通常の前方斜視型コンベックス型EUSよりも直視型コンベックス型EUSが有効であると考えた.しかし,直視型コンベックス型EUSは大腸領域では保険適応外使用となるため,患者への十分な説明を行い,同意を得た上で検査を施行した.前処置はL-アスコルビン酸ナトリウム・アスコルビン酸・マグコロール400を1,500ml服用し,前投薬として鎮痙剤ブチルスコポラミン20mgと鎮痛剤ペチジン35mgを静脈内投与した.直視型超音波内視鏡(TGF-UC260J,Olympus)を用い,直腸RSまでスコープを挿入し,X線透視下に左側骨盤腔内を観察し15mm大の境界明瞭で比較的内部均一な低エコー腫瘤が描出された.周囲の脈管を避けてOlympus社製EZ Shot 3 Plus 22G針を用いて合計2回穿刺を行い,迅速病理診断で十分な組織量が採取できたことを確認して検査を終了した(Figure 3).検査時間は25分を要し,EUS-FNA後にセフメタゾール2g/日の抗菌薬の予防的投与を行い,出血や感染などの合併症は見られなかった.病理組織検査では豊富な胞体を持つ異型細胞が増殖する像を認め,腺癌の組織像と考えられた.比較的小型の細胞からなる腺癌で核小体が明瞭で核異型に乏しい細胞形態は前立腺癌に類似する所見であった.また,NKX3.1免疫染色を施行し,腫瘍細胞の核に一致して陽性反応が確認されたため,前立腺癌の転移性病変の可能性が高いと判断した(Figure 4).そのため,MRI画像では前立腺に異常は見られなかったが,泌尿器科において前立腺生検を施行することとなった.10カ所生検中1カ所で腺癌(Gleason score 4+4=8)が検出され,先のEUS-FNAで採取したリンパ節の病理組織とも類似しており,前立腺癌の骨盤内リンパ節転移cT1N1M0 cStage Ⅳと診断した.その後,ホルモン療法を開始し骨盤内リンパ節の縮小が得られている.

Figure 3 

EUS-FNA.

病変は左側骨盤内に15mm大の境界明瞭な比較的内部均一の低エコー腫瘤として確認された.X線透視下にOlympus社製EZ Shot 3 Plus 22G針を用いて2回穿刺を行った.

Figure 4 

EUS-FNA病理組織検査所見.

豊富な胞体を持つ異型細胞が増殖する像を認め腺癌の転移と考えられた.細胞形態上は前立腺癌に類似しており,免疫組織学的検査でNKX3.1陽性であった.

a:HE染色×10.

b:NKX3.1免疫染色×10.

Ⅲ 考  察

超音波内視鏡検査(EUS)は胆膵領域や消化管粘膜下腫瘍の精密検査のために,一般臨床において施行される機会が多くなった検査手技である.また,EUS-FNAは1992年にVilmannら 1により初めて報告がなされて以降,腫瘍性病変の病理学的診断のため,膵腫瘍性病変,消化管粘膜下腫瘍,縦隔・腹腔内リンパ節などからの組織採取の手段として,急速に普及している.

医学中央雑誌およびPubMedを用いて1992年から2020年4月まで,経大腸的EUS-FNAの報告を検索した結果,会議録を除き詳細な記載が確認できたのは20編54例であった(Table 2 2)~21.54例中34例が直腸からの穿刺であり,また穿刺対象が腸管外病変であった症例は18例であった.使用スコープは記載があった45例中33例が前方斜視型コンベックス型EUSであり,直視型コンベックス型EUSを用いたEUS-FNAの報告は1編のみであった 21.EUS-FNAで使用されるEUSスコープは,本邦では3社から販売されているが,一般的にEUS-FNAで用いられるコンベックス型EUSのスコープは,スコープ外径は11.5mm~15.0mm,前方斜視で40°~55°の視野方向であり,100°~140°の内視鏡視野角を有している.内視鏡彎曲角は90°~160°で販売機種によって左右下方向の彎曲角が狭いものがある.またいずれのスコープも彎曲部から先の先端部が大腸内視鏡よりも長いためスコープ挿入は容易ではないことが予想される.特に深部大腸への挿入においてはスライディングチューブとガイドワイヤを併用した挿入が必要になる 2),9),14),16.本症例では,事前のCT検査の画像にて,左側骨盤内に位置する腫瘤へアプローチする場合,直腸よりも深部の大腸から穿刺となる可能性が高いと予想されたため,スコープの挿入性と操作性が優れていると考えられた直視型コンベックス型EUSを選択した.直視型コンベックス型EUSは視野角が120°で通常の大腸内視鏡視スコープよりも狭いが,視野方向0°で光学系が直視となることでスコープの挿入性は高いと考えられる.内視鏡軸と穿刺方向が一致することで穿刺針に直接力が伝わりやすく,これまでに膵仮性嚢胞に対するドレナージや消化管粘膜下腫瘍に対するEUS-FNAなどにおいて,その有用性が報告されている 22.しかし,直視型と前方斜視型コンベックス型EUSスコープの超音波走査角を比較すると,前方斜視型では120°~180°得られるのに対して,直視型では90°と狭い.そのため超音波での病変描出が難しく,また鉗子起上装置がないため穿刺角度に制限がある点が前方斜視型に劣ると考える.下部消化管領域では,Thinrungrojらが直視型コンベックス型EUSを用いたEUS-FNAの13例を報告し,X線透視下に処置を行うことで,骨盤内病変に対する経大腸的EUS-FNAを安全かつ確実に施行可能であると述べている 21

Table 2 

経大腸的EUS-FNAの本邦報告54例のまとめ.

下部消化管領域におけるEUS-FNAは,穿刺に伴う出血や穿孔,腹膜炎など感染症,穿刺対象の病変が悪性疾患の場合には播種の危険性が偶発症として挙げられ,特に腸管外病変を穿刺対象とした場合にはその危険性は上がることが予想される.本邦からの報告には偶発症を生じた症例は認めなかったが,Levyらは下部消化管領域でEUS-FNAを施行した502症例を対象に偶発症について解析し,穿孔が0.2%,出血が6.2%に生じたと報告している 23.われわれが検索した限りでは下部消化管領域のEUS-FNAによる播種の発生率については不明であった.今回の病変が前立腺癌の転移性リンパ節であったことから,同様の手技である前立腺生検を参考にすると,前立腺生検による播種の危険性は1%未満と報告されているが 24,播種の可能性は注意すべき点と考えられる.さらに直視型コンベックス型EUSを使用時には,穿刺部直下がわずかではあるがブラインドとなるため,前方斜視型を使用時に増して注意が必要である.本症例においても,腸管外病変が穿刺対象であったため,X線透視下に事前のCT画像を参考に穿刺方向を確認し,ドプラを用いて周辺臓器の位置関係を入念に評価した上でEUS-FNAを施行することで,特に偶発症なく安全に穿刺可能であった.下部消化管領域のEUS-FNAによる感染症の偶発症は0~2%であり,予防的抗菌薬の投与は全例には必要ないとする意見もあるが 2),25,今回の症例では術後に予防的抗生剤投与を行い,感染症の合併はなかった.

本症例のように腹腔内の病変に対してアプローチする場合,これまでは全身麻酔下に開腹または腹腔鏡による手術を行わざるを得ないことが多かったが,近年普及してきたEUS-FNAは手術に比して患者に対する侵襲が少ない.下部消化管領域でも直視型コンベックス型EUSのスコープを選択的に用いることで,EUS-FNAの適応病変は拡大する可能性があると考える.

Ⅳ 結  語

X線透視下に直視型コンベックス型超音波内視鏡を用いて経大腸的にEUS-FNAを施行し,骨盤内リンパ節転移病巣の組織診断より,MRI画像では描出されなかった前立腺癌の診断に至った1例を経験した.直視型コンベックス型超音波内視鏡を用いたEUS-FNAは,経大腸でも挿入性が向上し,より低侵襲に組織学的確定診断に至る有用な手段となり得ると考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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