2021 Volume 63 Issue 2 Pages 236-238
当院の内視鏡部は,昭和38年に創設された中央診療部内視鏡科として始まり,昭和61年に,初代渡辺豊教授のもと大学病院としては日本で二番目に創設された内視鏡科として中央診療部から独立した.その後,平成2年に鈴木博昭教授へ,平成13年に田尻久雄教授へと引き継がれ,平成27年に現職の炭山和毅が教授となった.また,平成30年10月1日には,内視鏡科が改称,改組され内視鏡医学講座となっている.現在,大学院生3名も含め,29名の医師が同講座に所属している.令和2年には,外来棟の新設に伴い,内視鏡部も移設,拡充され,透視室1室を含む全10室の個室化された内視鏡室が設置された.内視鏡部は消化器系外来と手術室,病棟を繋ぐ場所に配置され,手術室とは2箇所で連結されており,重症・治療困難例への対応を手術部と連携し遅滞なく行うことができる.また,中央管理が可能なリカバリーが18床あり,全手技を鎮静下に実施することが可能である.感染対策として,すべての内視鏡室は陰圧化され(2室HEAPフィルター対応),前処置室やリカバリーも個別ブースとなっている.
組織内視鏡部として独立した診療部門であり,内視鏡医学講座所属医師を中心に,消化器内科・外科・呼吸器内科,呼吸器外科・放射線部が共同で運用している.また,泌尿器科の軟性内視鏡の洗浄についても委託を受け管理している.
検査室レイアウト
総面積 794.39m2
(2020年5月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医20名,消化器内視鏡学会 専門医27名,その他スタッフ24名
内視鏡技師:Ⅰ種5名,その他技師2名
看護師:常勤14名
事務職:1名
その他:2名
(2020年5月現在)
(2019年1月~2019年12月まで)
当院内視鏡部には,数多くの研修医やレジデントが数カ月間の単位でローテーションしている.そのため,内視鏡経験年数・症例数に応じた独自の研修指針を設定し,その指針に沿った指導を行っている.また,研修者を対象に,技能認定制度を設け,単独で検査治療を行う前に認定試験に合格することを求めている.上部消化管技能試験については,200症例以上の症例経験を積むことで受験資格を得る.下部消化管技能試験については,上部消化管技能試験合格後,指導医がほとんどの症例に対し全大腸検査を安全に実施できる技能を習得したと判断した場合に受験可能となる.試験は,筆記に加え,日本消化器内視鏡学会認定指導医が4名以上が技能評価を行う.教育期間中の診療の質を管理するため,内視鏡画像読影カンファレンス(毎週金曜日)や抄読会(毎週木曜日)を行い,診療の振り返りと内視鏡診断・治療に対する理解を深めるよう指導している.研修者は診療時間外に臓器モデルを用いたトレーニングをいつでも行うことができる.さらに,治療前トレーニングとして,ドライラボモデルや生体豚モデルを用いたハンズオンも不定期に開催している.
診断治療の高度化,治療困難例の増加,患者プライバシーの重視などの観点から,新しい内視鏡室はすべて個室化された.しかし,全十分な人材を配置することが難しく,すべての内視鏡室を効率的に回転させることはできていない.さらに,新型コロナ感染症の流行への対応も求められ,許容できる症例数が大きく減少している.今後は,人材育成に加え,運用ルールの改善を進めていきたい.また,地域医療との連携を一層深め,急速に高齢化が進む都心部での,さらに増大するであろう内視鏡医療への社会的要請に応える必要があると考えている.