2021 Volume 63 Issue 3 Pages 338
【抄録】粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)リンパ腫の病態は,T細胞シグナル,辺縁帯B細胞の慢性抗原刺激およびnuclear factor-kappa B(NF-κB)シグナル経路の活性化に依存したリンパ腫細胞による動的過程として特徴づけられる.この概念は,慢性Helicobacter pylori関連胃炎と特異的T細胞による持続する自己抗原刺激に基づく胃MALTリンパ腫発生との強力な病因的関係に基づく.しかし,胃外のリンパ腫発生においては,別の病原微生物感染や自己免疫性疾患が病因となる可能性がある.このようなMALTリンパ腫細胞の腫瘍微小環境依存性を考慮すると,本症に対しては免疫調節薬が治療戦略として適していると考えられる.近年,免疫調節薬IMiDsであるサリドマイド(thalidomide),レナリドマイド(lenalidomide),マクロライド系抗菌薬などを含む薬剤の治療効果が評価されている.本稿の目的は,MALTリンパ腫に対する免疫調節薬治療の理論的根拠および本症患者に対する免疫調節薬治療と非化学療法治療の現況について考察することである.
MALTリンパ腫は,消化管などの節外性臓器の粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)に由来する稀な低悪性度(indolent)腫瘍であり,Helicobacter pyloriなどの微生物感染やSjögren症候群などの自己免疫性疾患による持続する慢性炎症を背景に発症する.
本症に対するIMiDsの効果は,サリドマイド単剤では無効だが,レナリドマイド単剤で61%,リツキシマブ併用レナリドマイドでは80%の奏効率が報告されている.マクロライド系抗菌薬の効果は,クラリスロマイシン単剤では奏効率38~52%,アジスロマイシンでは25%と報告されている.今後は抗がん剤を含まないIMiDs治療が主流となる可能性が示唆される.