GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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Risk factor analysis for adverse events and stent dysfunction of endoscopic ultrasound-guided choledochoduodenostomy 1).
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2021 Volume 63 Issue 4 Pages 488

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【背景】超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術(EUS-CDS)は標準化されつつあるが,その安全性については十分に解明されていない.そのため,EUS-CDSにおける有害事象とステントの開存性に関連する因子を明らかにすることを目的とした.

【対象と方法】2003年9月から2017年7月までの間にEUS-CDSを連続して受けた患者を対象とし,手技/臨床的成功率,有害事象,ステント閉塞につき遡及的に分析した.

【結果】9名の患者は穿刺前に処置が中止となり,142名の患者がEUS-CDSを受けた.手技成功率は96.5%(137/142),臨床的成功率は98.5%(135/137)であった.有害事象発生率は20.4%(29/142)であった.腹膜炎の危険因子として,プラスチックステント(PS)は,カバー金属ステント(CSEMS)と比較して有意に高いオッズ比を示した(OR,4.31;P=0.030).CSEMS症例はPS症例よりも有意に長い開存期間を示した(329日 vs 89日;HR,0.35;P<0.001).早期ステント閉塞(14日以内)の危険因子として,ステントの遠位端を口側に向けることは,有意に高いオッズ比を示した(OR,43.47;P<0.001).斜視型EUSを施行した症例では,直視型EUSを施行した症例よりも有意に高い頻度で十二指腸の二重貫通が発生した(7.0対0.0%;P=0.024).

【結語】PS使用とステントの遠位端が口側に向いた状態は,腹膜炎と早期ステント閉塞の危険因子であった.腹膜炎と早期ステント閉塞の予防には,CSEMS使用とその遠位端を肛門側に向けることが適切であると思われた.

《解説》

超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療(EUS-guided biliary drainage:EUS-BD)は,原則的に経乳頭的胆道ドレナージが困難な症例において,経皮経肝胆道ドレナージ,外科治療に並んで考慮される治療選択肢の一つである.本手技の短期的有効性について多数の報告があるが,長期成績に関しては多数例での報告は少なく,手技の標準化,偶発症の予防策など解決すべき問題も残っている 2

本検討では,手技成功率(96.5%),臨床的成功率(98.5%)はいずれも高いが,早期有害事象(30日以内)として腹膜炎(9.9%),早期ステント閉塞(6.3%),胆管炎(1.4%),出血(1.4%),胆嚢炎(0.7%),腹腔内へのステント逸脱(0.7%),後期有害事象として胆嚢炎(2.1%),計20.4%(29/142)に有害事象を認めており,腹膜炎(1例)に対して外科治療がなされている.従って,本手技を行う際はその適応を十分考慮し,手技,成績,偶発症,代替手段を患者さんに十分に説明し同意を得た上で行うべきであり,偶発症が発生した際に迅速に対応できる診療体制を予め病院内で構築しておく必要がある.

ステントの開存期間については,CSEMS症例(329日)はPS症例(89日)よりも有意に長く開存している.更にPS留置は腹膜炎の危険因子にもなるためCSEMSの留置が望ましい.また,ステントの遠位端を口側に向けて留置した例(15日)は肛門側に向けて留置した例(305日)に比べ開存期間が明らかに短い.更に,CSEMSのcandy-like sign 3は胆管壁と十二指腸壁の間隔があいている際に認められるサインであり,CSEMS留置例で腹膜炎が起こる可能性(OR,7.58;p=0.034)を示唆していることにも注意すべきである.

今回の検討では術者のEUS-CDSの経験数と偶発症には因果関係を認めていないが,現時点では不慣れな術者が安易に施行すべき手技ではなく,この手技に精通した医師の下で行うことが望ましいと考えられる.

文 献
 
© 2021 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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