2021 Volume 63 Issue 6 Pages 1294-1302
【目的】内視鏡的内圧測定統合システム (endoscopic pressure study integrated system:EPSIS)は,胃内圧を測定することで胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)の診断を行う,まったく新しい内視鏡機器である.この新たに開発された診療機器は,内視鏡的に下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)の機能を評価できる可能性を有している.本研究では,EPSISの測定結果と,びらん性食道炎やバレット食道に代表されるGERD関連疾患との関係性につき検討を行った.
【方法】本研究は2016年11月から2018年7月にEPSISを行ったすべての患者を対象とした,後ろ向き・単施設研究である.EPSISでは,上部消化管内視鏡検査の施行中に,圧測定を行う専用機器に接続したカテーテルを内視鏡鉗子口から挿入し,最大胃内圧(IGP-Max)および胃内圧波形(FlatないしUphill)の測定を行う.びらん性食道炎とバレット食道の評価はロサンゼルス分類とプラハ分類を用いて行った.
【結果】104人の患者が登録され,29人(28%)がびらん性食道炎を,42人(40%)がバレット食道を有していた.びらん性食道炎患者では食道炎の無い患者に比べ,最大胃内圧が低く(16.0 vs 18.8mmHg,P=0.01),Flatパターンがより高頻度に認められた(82.8% vs 37.3%,P<0.001).同様に,バレット食道患者ではバレット食道を認めない患者に比べ,最大胃内圧は低く(15.7 vs 19.6mmHg,P<0.001),Flatパターンが高頻度に認められた(69% vs 37.1%,P<0.001).これらの傾向は,多変量解析でも認められた.
【結論】新しい診療機器であるEPSISの測定結果は,びらん性食道炎やバレット食道の存在と深い関連を有していた.これにより,EPSISがGERD関連疾患のLES機能評価を内視鏡的に行いうる可能性が示唆された.
胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease: GERD)患者の増加は世界中で大きな問題となっており,米国では人口の約20%が罹患しているとされる 1).GERDの合併症の一つであるバレット食道は,食道腺癌の発生母地として知られており 2),胃や十二指腸の内容物の逆流が,GERDやバレット食道の発生と密接に関連していると考えられている 3),4).
下部食道括約筋(The lower esophageal sphincter:LES)はこの逆流現象に重要な役割を果たしており,特に一過性LES弛緩(TLESR)が逆流の主なメカニズムと考えられている 5)~7).食道内圧測定による検討では,TLESRは胃内への送気によって誘発されることが明らかになっており 8),9),われわれはこの現象に注目した.すなわち,胃内でCO2送気を行ってLESに負荷をかけることで噴門の開放を誘発し,同時に胃内圧とその圧波形を連続的に測定することで,LESの機能を内視鏡的に評価することが可能であるという仮説を立てた.この考えに基づき,われわれはまったく新しい診療機器である内視鏡的内圧測定統合システム(endoscopic pressure study integrated system:EPSIS)を開発した.これは,上部消化管内視鏡検査の施行中にCO2送気を行って噴門の開放を誘発し,その際の胃内圧の変動を連続的に測定するものであり,われわれはこのEPSISがGERDの診断に有用であることを以前に報告している 10).
一過性LES弛緩は逆流性食道炎の発生に深く関与していることから,長期の逆流性食道炎の結果引き起こされるバレット食道の発生に,LES機能が深く関与していることは想像に難くない.しかしながら,バレット食道とLES機能に関する報告は決して多くはない 11)~13).われわれのこれまでの検討では,EPSISの測定結果が24時間pHモニタリング検査で測定された酸逆流とよく相関することが分かっており,EPSISがLES機能をよく反映する可能性が示唆されている 10).そこで,本研究ではEPSISの測定結果と,内視鏡的に診断されたGERD関連疾患であるびらん性食道炎,およびバレット食道との関連性につき検討を行った.
本研究では,昭和大学江東豊洲病院(東京,日本)にて2016年5月から2018年7月に上部消化管内視鏡検査とEPSISを行った連続する患者に対して前向きに作成されたデータベースを用い,後ろ向きに検討を行った.典型的なGERD症状(胸焼け,胸痛,逆流)を訴える患者を対象とし,症状スケールは今回の検討では必須事項とはしなかった.18歳未満,妊娠中,逆流防止術を含む上部消化管手術の既往,アカラシアなどの主な食道運動機能異常疾患,硝酸薬やカルシウム拮抗薬の内服,のいずれかを満たす患者は除外した.すべての患者の臨床情報(年齢,性別,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitors:PPI)を含む使用薬剤)を収集した.本研究はヘルシンキ宣言に従い実施され,昭和大学病院の倫理委員会に承認された.インフォームドコンセントはすべての患者において取得された.
内視鏡とEPSISバレット食道の内視鏡所見はプラハ分類に基づいて記載された 14).胃のひだ上縁ないし柵状血管下端で定義される胃食道接合部と,扁平円柱上皮境界の間に1cm以上の円柱上皮が内視鏡的に視認された場合,内視鏡的にバレット食道を認めるものと定義した 15).びらん性胃炎はロサンゼルス分類に基づき診断し,グレード分類を行った 16).内視鏡的に横隔膜食道裂孔部と胃食道接合部の位置に解離があるものを食道裂孔ヘルニアとした.抗コリン薬は内視鏡施行中には使用しなかった.
EPSISは負荷試験の一種であり,CO2送気により噴門部の開放を人工的に誘発し,LES機能を評価するものである.EPSISはすべて高解像度内視鏡(GIF-Q260Z/GIF-Q290Z;オリンパスメディカルシステムズ株式会社,東京,日本)を用いたルーチン上部消化管内視鏡検査に引き続いて行われた.検査には胃拡張による被検者の苦痛を最小限にとどめるため,CO2送気とプロポフォールを用いた.内視鏡の鉗子口にカテーテル(PR-V235Q; オリンパスメディカルシステムズ株式会社,東京,日本)を挿入し,カテーテル末端を内圧測定機器(TR-W550,TR-TH08,AP-C35;キーエンス,大阪,日本)(Figure 1)に接続し,先端は胃内に突出させ,反転視にて胃食道接合部から2cm肛門側に位置させた.TLESRによる噴門開大を誘発させるため,CO2を連続的に胃内に送気し,胃内圧の各項目(最大胃内圧と圧波形:FlatとUphill)(Figure 2)を測定した.2人の検者がすべての圧波形を確認し,波形のパターン分類を行った.詳細についてはわれわれの既報を参照されたい 10).
内圧測定機に接続されたカテーテルは内視鏡の鉗子口を介して胃内に挿入される.カテーテル先端は反転視にて胃食道接合部の2cm肛門側に位置させる.
胃内圧測定による圧波形パターン.
a:Flatパターン.送気されたCO2は持続して胃外に脱出しており,胃内圧の上昇は認められない.
b:胃内圧は上昇し,患者がげっぷをする直前に突如として下落する.
正規分布に関する検定はコルモゴロフ-スミルノフ検定を用いた.正規分布している変数は平均値±標準偏差(SD)で,非正規分布している変数は中央値と範囲で表した.2群間の有意差検定には,カテゴリー変数ではカイ二乗検定とフィッシャーの正確確率検定を,連続変数の平均値の比較ではスチューデントのt検定を用いた.びらん性食道炎やバレット食道の存在に関連する臨床的,内視鏡的,またEPSISの予測因子を抽出するために多重ロジスティック回帰モデルを用いた.われわれは既報において,EPSISの検査特異度を高めるため,最大胃内圧が18.7mmHgかつFlatパターンの両者を満たす場合を,「EPSIS陽性」と定義しており 10),今回も同じ定義を用いた.単変量解析において,P値が0.1未満の臨床因子は多重ロジスティック回帰分析に説明変数として組み込んだ.調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は変数減増法を用い,EZR(自治医科大学附属さいたま医療センター,さいたま,日本)で算出した.EZRはR(The R Foundation for Statistical Computing,ウィーン,オーストリア)のグラフィカルユーザーインターフェースである 17).正確には,EZRはRコマンダーに生物統計学でよく用いる統計機能を追加し改良したものである.ロジスティックモデルはブートストラップ法を用い内部検証を行った.両側検定にてP<0.05となる場合に統計学的有意差ありとした.
本研究期間中,ルーチン上部消化管内視鏡検査とEPSISを受けた104名の患者が対象となった.このうち,29人(28%)にびらん性食道炎を認め,75人(72%)では認めなかった.バレット食道は42人(40%)で認められた.バレット食道長の中央値はプラハ分類にてC0M1であった.EPSISの測定結果に関しては,最大胃内圧は18.0±5.2mmHg(平均値±標準偏差)であり,圧波形パターンではFlatパターンとUphillパターンがちょうど同数であった.患者の臨床的特徴をTable 1に表す.
患者の臨床的特徴.
びらん性食道炎を有する患者と有さない患者の臨床的特徴をTable 2に示す.単変量解析では,びらん性食道炎患者群で食道裂孔ヘルニアをより多く認め(93.1% vs 72.0%,P=0.02),バレット食道の有無には差は認められなかった.EPSISの測定結果では,びらん性食道炎患者群で最大胃内圧の平均値がより低く(16.0±5.6 vs 18.8±4.8mmHg,P=0.01),Flatパターンの比率が高かった(83% vs 37%,P<0.001).「EPSIS陽性」はびらん性食道炎患者群でより多く認められた(72.4% vs 30.7%,P<0.001).多重ロジスティック回帰分析では,「EPSIS陽性」のみがびらん性食道炎を有する患者の独立した予測因子であった(OR:5.22,95% CI:1.90-14.3,P=0.001).
びらん性食道炎の有無による臨床的特徴の単変量,多変量解析.
次に,バレット食道を有する患者と有さない患者での臨床的特徴の比較を行った(Table 3).単変量解析では,バレット食道患者群で年齢が高く(58.3±15.1 vs 51.3±16.5歳,P=0.03),PPIの使用率が高く(73.8% vs 46.8%,P=0.006),食道裂孔ヘルニアの合併率が高かった(90.5% vs 69.4%,P=0.01).EPSISの測定結果では,びらん性食道炎の解析と同様に,バレット食道患者群で最大胃内圧の平均値がより低く,Flatパターンの比率が高かった(それぞれ15.7±4.1 vs 19.6±5.2mmHg,P<0.001;69% vs 37%,P<0.01).「EPSIS陽性」はバレット食道患者群でより多く認めた(61.9% vs 29.0%,P<0.001).多重ロジスティック回帰分析では,PPI使用(OR:3.80,95% CI:1.44-10.1,P=0.007),食道裂孔ヘルニア(OR:4.72,95% CI:1.26-17.7,P=0.021),「EPSIS陽性」(OR:4.17, 95% CI:1.63-10.6,P=0.003)がバレット食道の存在に関する独立した予測因子であった.
バレット食道の有無による臨床的特徴の単変量,多変量解析.
びらん性食道炎とバレット食道は同様の発生機序を有していると考えられるため,びらん性食道炎とバレット食道のどちらも認めない患者をコントロール群として比較することが必要と考えられた.そこで,びらん性食道炎とバレット食道の両者を合併している患者(n=14)と,いずれも認めない患者(n=47)の2群での臨床的特徴の比較を行った(Table 4).単変量解析では,両者を合併した患者群では食道裂孔ヘルニアの合併が多く(93% vs 61.7%,P=0.046),またEPSISの測定結果としてはこれまでの検討と同様に,最大胃内圧の平均値が低く,Flatパターンの比率が高かった(それぞれ14.9±4.4 vs 20.4±4.6mmHg,P<0.001;97% vs 25.5%,P<0.001).「EPSIS陽性」はびらん性食道炎,バレット食道の両者の合併群でより多く認められた(85.7% vs 19.1%,P<0.001).多重ロジスティック回帰分析では,「EPSIS陽性」のみがびらん性食道炎,バレット食道の両者の存在に対する独立した予測因子であり,ORはこれまでの検討よりも高い結果であった(OR:24.1,95% CI:4.35-134.0,P<0.001).
びらん性食道炎/バレット食道の有無による臨床的特徴の単変量,多変量解析.
本研究において,最大胃内圧18.7mmHg以上かつFlatパターンで定義される「EPSIS陽性」は,多変量解析においてびらん性食道炎とバレット食道の存在におけるそれぞれ独立した予測因子であることが明らかになった.これらの結果は,EPSISの測定結果と内視鏡的に認められるGERD関連疾患が密接な関係を持つことを表すものであり,EPSISが内視鏡的にLES機能を評価しうる可能性が示唆された.
一般的に,胃食道逆流のメカニズムとしてTLESR,LES圧の低下,嚥下によるLES弛緩,前屈時などのLES圧低下の4つが考えられている 18).この中で,TLESRはよく知られ,最も重要な逆流のメカニズムであると考えられている.Schoemanらは胃食道逆流の82%はTLESR発生時に見られると報告している 5).Iwakiriらも健常者で100%,また重度の食道炎患者で83.8%の胃食道逆流はTLESR発生時に起こっていると報告している 6).通常,TLESRはガス 9)や胃バルーン 19),食事 7),20)などによる胃の伸展刺激により誘発される.Kahrilasらは,胃内への送気はTLESRの頻度を増加させ,その傾向はヘルニアのある患者で顕著であったと報告している 8).これらの結果は,送気(CO2)により噴門開大を誘発することで,LES機能を推測できる可能性を示唆している. われわれはGERD患者の胃を伸展させることで噴門開大を誘発し,胃食道逆流の増加を誘導できるかもしれないという仮説を立て,この仮説を検証すべく,EPSISを開発した.EPSISは胃内圧の変動を測定するまったく新しい診断機器である.われわれの研究グループは,EPSISの測定結果が24時間pH-インピーダンスモニタリングによって測定された酸逆流と非常によく相関することを以前に報告しており 10),「EPSIS陽性」は,pH-インピーダンスモニタリングで診断されたGERDと非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease:NERD)の強い予測因子であった.さらに本研究において,EPSISの測定結果と内視鏡的に視認可能なGERDの帰結が密接な関係性を有することが証明され,これはEPSISがLES機能の予測に有用であることの証左と考えられる.Flatパターンは,噴門の開大が持続し,それに続くゆっくりとしたげっぷによるCO2の脱出により,胃内圧の上昇が起こらないという現象を表している.同様に,噴門の開大により胃内圧が上昇しないということは,「空気が漏れるのを防ぐ」弁としての噴門の機能が低下,すなわちLES機能が低下しているということと矛盾しない 10).これらの現象をモニターすることで,EPSISはLESの弁としての機能を評価する,一種の「負荷試験」とみなすことができる.
LES機能不全とGERDの緊密な関係性を示した論文は数多いが,バレット食道とLES機能の関係に言及した論文は数点しかない.Iwakiriらは,バレット食道患者において基礎LES圧がより低い傾向が見られたことを報告している 11).BazinらもLES静止圧の低下がバレット食道と強く関連していたことを示している 12).Leeuwenburghらはアカラシアに対する治療によりLES圧を低下させることは,バレット食道発生のリスクとなりうると結論づけている 13).もしバレット食道が長期間の逆流性食道炎の帰結であるとするならば,LES機能とバレット食道の間には密接な関係が見られるはずである.最近,われわれは十分なCO2の送気がLESの収縮を誘発し,食道が内視鏡を締め付けるような現象を観察できることを報告した.興味深いことに,この収縮は患者がげっぷをする直前に突如として開放され,さらにはCO2送気中にこの食道が内視鏡を締め付けている時間は,24時間pH-インピーダンスモニタリングで測定された逆流エピソードの回数と有意に相関していることが明らかになった 21).内圧測定を用いたさらなる検討が必要ではあるが,EPSISはLES機能を推測できる可能性がある.もしこの仮説が正しいのであれば,バレット食道とEPSISの関係性が示された今回の結果は決して驚くべきことではない.
EPSISがLES機能を推測する可能性を秘めていることから,その臨床的意義に関する将来展望は開かれている.例えば,PPI抵抗性GERD患者やラジオ波焼灼療法に抵抗性のバレット食道患者など,既存の治療に抵抗性を有する患者に対してはEPSISの施行が考慮されても良い.もしEPSISを施行し,LES機能低下を示唆する結果(Flatパターンや最大胃内圧の低値)が得られた場合,腹腔鏡下逆流防止手術やanti-reflux mucosal ablation(ARMA) 22)などの逆流防止術を考慮しても良いかもしれない.ほかにも,逆流防止術の治療前後の効果判定にも使用できる可能性がある.もしLES機能が外科的治療により改善すれば,治療後のEPSISの測定結果は改善するはずである(例えば,圧波形パターンがFlatからUphillに変化する,または最大胃内圧が上昇する).一方,EPSISはバルーン拡張や内視鏡下筋層切開術(per-oral endoscopic myotomy:POEM)によるアカラシアの治療効果判定にも有用かもしれない.さらに,POEM後に問題となりうるPOEM後GERDのリスク予測の一助となる可能性もある.これらの可能性を立証するために,さらなる臨床研究が必要である.
本研究にはいくつかの制約がある.1つ目に,われわれは本研究においてバレット食道の定義を内視鏡所見のみとし,食道生検による腸上皮化生の証明を必須としなかった.これは,日本や英国のガイドラインではバレット食道の定義に腸上皮化生の証明は必須項目とされていないことに基づくものである 15),23).しかしながら,腸上皮化生を必須としないことでバレット食道を過剰診断することはあっても,過小評価する可能性は少ないと考えている.よって,仮にもし生検によって証明されたバレット食道のみを対象としたとしても,今回の研究において証明されたバレット食道とEPSISの深い関連性という結果に変わりはないだろう.2つ目に,本研究では患者の苦痛を軽減するためにプロポフォールを全患者に使用しており,これがLES機能に影響を与えている可能性がある.De Leonらは低用量のプロポフォールはLES圧に影響を与えないものの,若年ボランティアの検討において,より高用量のプロポフォール使用後にはLES圧が上昇したと報告している 24).プロポフォールの使用量は内視鏡施行医それぞれの判断において決定されており,これがEPSISの測定結果に影響を与えた可能性は否定できない.一方で,日本においては多くの一般医が鎮静無しで内視鏡を施行する.そのような場合,患者はEPSISの施行により苦痛を訴えるかもしれない.患者の苦痛を最小限にするために,今後の検討においてCO2送気を止めるべき適切な胃内圧の値を決定していかなくてはならない.3つ目に,われわれの施設は三次医療機関であり,多くの患者は治療抵抗性GERDということですでにPPIを投与されて紹介されてくる.このことは,びらん性食道炎の有病率に影響を与えている可能性がある.これは,本研究が後ろ向き検討であることの限界の一つである.患者の内服を調整可能な前向き検討が必要なことは言うまでもない.最後に,本研究の最大の制約は,食道内圧検査が欠落していることである.ガス送気による胃伸展がTLESRを誘発することは一般的によく知られており 9),われわれは本研究でCO2送気により誘発された現象がTLESRであると考えている.しかしながら,げっぷの直前に観察されたこの現象がTLESRであると証明するために,高解像度食道内圧検査を用いた検討は絶対的に必要である.
要約すると,EPSISにおいてFlatパターンと最大胃内圧18.7mmHg以上で定義される「EPSIS陽性」は,びらん性食道炎とバレット食道の存在に有意に関連していた.このことは,EPSISがLES機能を推測しうるものであることを示唆している.これらのことを考慮すると,EPSISはGERD関連疾患の診断とリスクの層別化を行うための有望なツールであると考えられる.
本論文内容に関連する著者の利益相反:井上晴洋はオリンパス株式会社のアドバイザーであり,教育助成金を受け取っている.彼は武田薬品工業からも教育助成金を受け取っており,株式会社トップのアドバイザーでもある.ほかの著者に提示すべきCOIはない.