GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A novel combination of serum microRNAs for the detection of early gastric cancer 1).
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2021 Volume 63 Issue 6 Pages 1310

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マイクロRNA(miRNA)は,17~25塩基ほどで構成される小さな一本鎖non-coding RNAである.miRNAは微量ながら血液中や尿中などさまざまな体液中に安定的に存在し,そのプロファイルを分析することにより,悪性腫瘍などの疾患診断や治療効果予測が可能であるため,次世代の腫瘍マーカーとして実用化が期待されている.本論文では,内視鏡的あるいは外科的に切除された早期胃癌708例と709例の非癌コントロールの血清miRNAのプロファイルを用いて,早期胃癌の診断システムが構築され,その診断能が評価された.miRNAプロファイルは,2,565種類のmiRNAを統合的に解析可能な高感度DNAチップ(3D-Gene®)を用いて解析され,4種類のmiRNA(miR-4257,miR-6785-5p,miR-187-5p,and miR-5739)による早期胃癌診断モデル(EGC index)が構築された.EGC indexの診断能は,早期胃癌709例と非癌708例からなるvalidation groupにて評価され,AUC 0.998,感度99.6%,特異度95.3%と非常に高い診断精度が示された.また,サブ解析において,EGC indexは早期胃癌のステージや組織型にかかわらず高い感度が示された.

《解説》

胃癌の罹患率の高い本邦や韓国においては,X線検査あるいは内視鏡検査を用いたスクリーニングが広く普及しており,胃癌の早期発見ならびに死亡率の減少に貢献している.しかし,検査のquality assuranceや侵襲,また極めてまれではあるものの検査,特に上部消化管内視鏡検査の有害事象は課題とされている.また,胃粘膜の萎縮の指標である血清ペプシノゲン値と血清ヘリコバクターピロリIgG抗体を用いた検診(ABC検診)が行われているが,採血によるABC検診はあくまで胃癌リスクの層別化のための検査であり,胃癌死亡率の減少に直接寄与するかどうかは,まだ明らかとはなっていない.

本論文において4つのmiRNAを用いて構築されたEGC indexは,早期胃癌患者の検出において非常に高い感度と特異度を示し,次世代の低侵襲な胃癌スクリーニング方法として期待できるmodalityである.本法の発展,普及により,さらに効率的な胃癌スクリーニングが行われることが望まれる.しかし,各々のmiRNAが胃癌の発がんあるいは発がんの抑制にどのように関わっているかはまだ不明な点も多く,今後さらなる検討により明らかにされるべきである.また,本検討は後ろ向きコホートから得られた結果であり,施設バイアス,選択バイアスは本論文のlimitationとして課題が残る.EGC indexの診断能ならびに死亡率の減少効果,cost effectivenessは,今後の前向き研究によりさらに評価されるべきと考える.

本領域においてはさらなるエビデンスの確立が望まれており,本論文のプロジェクトグループでは,その後13種のがんの有無を網羅的に診断するmiRNA検出技術が開発された.既に早期の社会実装に向けた実証試験がおこなわれており,その解析結果が待たれる.

文 献
  • 1.   Abe  S,  Matsuzaki  J,  Sudo  K et al. A novel combination of serum microRNAs for the detection of early gastric cancer. Gastric Cancer(Epub ahead of print) https://doi.org/10.1007/s10120-021-01161-0.
 
© 2021 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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