GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC MANAGEMENT OF PERIPANCREATIC FLUID COLLECTION
Shomei RYOZAWA Yuki TANISAKAMasafumi MIZUIDE
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2021 Volume 63 Issue 7 Pages 1336-1343

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要旨

膵周囲液体貯留(peripancreatic fluid collection:PFC)は,感染例や有症状例ではドレナージ治療やネクロセクトミーなどのインターベンション治療が必要となる.PFCに対するドレナージは,低侵襲な内視鏡的ドレナージが施行されることが多くなっており,病態に応じて経乳頭的ドレナージと超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ(endoscopic ultrasound-guided transluminal drainage:EUS-TD)のいずれかが選択される.近年,EUS-TDと内視鏡的ネクロセクトミーが普及し,EUS-TD専用のステントも開発された.治療適応と手技,偶発症を十分に理解したうえで,step-up approachに基づいた治療戦略を立てることが重要である.

Ⅰ 緒  言

膵周囲液体貯留(peripancreatic fluid collection:PFC)は,急性膵炎や慢性膵炎,膵外傷,膵外科手術後などに膵周囲に発生する液体貯留の総称である.このPFCに感染を併発し,抗生剤などの保存的治療のみでは感染コントロール不能な場合には,嚢胞内容液のドレナージや,壊死物質除去を行うネクロセクトミーなどのインターベンション治療が必要となる.ドレナージには経皮的,内視鏡的(経消化管的,経乳頭的),経腹腔鏡的もしくは開腹手術があり,ネクロセクトミーには経皮的,内視鏡的(経消化管的),経腹腔鏡的もしくは開腹手術がある 1が,近年では低侵襲で良好な成績が期待できる内視鏡的処置が第一選択となっている.本稿では,感染性PFCに対する内視鏡的処置の現状について概説する.

Ⅱ PFCの概念と治療適応

改訂アトランタ分類で,急性膵炎は間質性浮腫性膵炎(interstitial oedematous pancreatitis)と壊死性膵炎(necrotizing pancreatitis)に分けられ,PFCは急性膵炎発症からの経過時間と形態により以下の4つのカテゴリーに分類された 2.すなわち,間質性浮腫性膵炎発症後4週間以内の壊死を伴わない急性膵周囲液体貯留(acute peripancreatic fluid collection:APFC)と4週以降に器質化した膵仮性嚢胞(pancreatic pseudocyst:PPC),壊死性膵炎発症後4週間以内の急性液状化壊死(acute necrotic collection:ANC)と4週以降に器質化した被包化壊死(walled-off necrosis:WON)の4つのカテゴリーである(Table 1).この4つのカテゴリーはさらに無菌性(sterile)と感染性(infected)に分けられる.

Table 1 

改訂アトランタ分類における膵および膵周囲貯留の定義.

この新しい分類に則った診断治療指針は,2014年に「膵炎局所合併症(膵仮性嚢胞,感染性被包化壊死等)に対する診断・治療コンセンサス」としてまとめられている 1.PFCのうち,感染性あるいは出血などの偶発症発症例,強い腹痛などの有症状例が治療の対象となる.感染性PFCのうち,抗菌薬等の保存的治療のみで感染コントロールが困難な場合にドレナージ等のインターベンション治療が必要となる.

Ⅲ PFCに対する内視鏡的ドレナージ

PFCに対するドレナージは,低侵襲な内視鏡的ドレナージが施行されることが多くなっており,病態に応じて経乳頭的ドレナージと超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ(endoscopic ultrasound-guided transluminal drainage:EUS-TD)のいずれかが選択される.

1.経乳頭的ドレナージ

慢性膵炎によるPPCの場合,主膵管狭窄や膵石による膵液流出障害をきたしていることが多く,尾側の膵管拡張を認める場合には経乳頭的膵管ドレナージが第一選択となる.必ずしも嚢胞内にステントを留置する必要はなく,膵管狭窄部を越えて留置することで減圧・縮小効果が得られる.その他,膵外傷,膵外科手術後の膵液瘻も経乳頭的ドレナージの適応となる.

一方,急性膵炎後のPPCは,積極的に内視鏡的逆行性膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)を施行できない場合が多いため,次に述べるEUS-TDの適応となることが多い.また,重篤な感染や嚢胞内に血液や壊死物質を含む場合には,まずEUS-TDを優先し,全身状態が改善してから主膵管の狭窄や膵管破綻の有無を確認し,いずれかを認める場合には経乳頭的膵管ステントを追加する.

2.EUS-TD

EUS-TDは,1992年のGrimmらの報告から始まった 3.それ以前の内視鏡的経消化管的ドレナージは,主に胃の内腔への膨隆を伴ったPFCに対してERCP用の処置具を用いて盲目的に穿刺を行い,一期的に内容液を吸引するか,内視鏡的胆管ドレナージ(endoscopic biliary drainage:EBD)用のプラスチックステントを留置する方法が行われていた.しかしながら,盲目的な穿刺に起因する出血等の偶発症が問題となっていた.EUSを用いることにより,PFCの性状や嚢胞壁の状態の評価が可能になると同時に,リアルタイムに観察しながら穿刺することができるため,より安全,確実に行うことができるようになった.1996年にBaronらはWONに対するEUS-TDを含めた内視鏡治療の成績を報告し,内視鏡的ドレナージに引き続き,生理食塩水による洗浄を繰り返すことにより全例が治癒したと報告している 4.本邦では2012年に超音波内視鏡下瘻孔形成術が保険収載されたことから,低侵襲で有用な治療として広く行われる手技となった.

Ⅳ EUS-TDの実際

1.ドレナージの時期

感染を起こしたPFCは早期ドレナージが望まれるが,急性膵炎後4週を満たないANCの段階では壊死組織が十分に液状化しておらず,周囲が十分に被膜で覆われていないため処置に伴い腹腔内穿破の危険性がある.このためドレナージは待機的に行うべきであると考えられていた 5.しかし,実際には保存的加療を行っているうちに,感染に伴う呼吸不全,凝固異常や嚢胞内出血を合併し,全身状態が悪化する症例も経験する.また炎症の波及や嚢胞内圧の上昇に伴い周囲の腸管へ穿破し,感染の制御に難渋した症例も報告されている 6),7.近年の報告では,画像上で液状化が進みある程度被包化されていれば,治療介入による嚢胞壁の破綻はなく,緊急性の高い感染性のPFCに対しては厳密に4週経つまでドレナージを待つ必要はなく,早期のドレナージを検討すべきであるとの意見もある 8)~10

2.ドレナージ前の確認事項

PFCに対する内視鏡治療経過中でもっとも発生頻度の高い偶発症は出血である.ドレナージを行う前に造影CT検査を行い,穿刺部や嚢胞内に膵炎に伴う仮性動脈瘤や門脈圧亢進症による静脈瘤の有無を確認することが重要である 11.仮性動脈瘤を認める場合にはinterventional radiology(IVR)によるコイル塞栓術を事前に行う.

3.プラスチックステント(plastic stent:PS)を用いたEUS-TD

1)前処置

治療前に,出血傾向の有無や抗血栓薬内服の有無を確認する.前投薬は,通常の治療内視鏡と同様である.当院では鎮痛薬として塩酸ペチジン,鎮静薬としてミダゾラムを用い,さらに激しい体動に備えて体位固定具を使用して安全に手技が行えるようにしている.ミダゾラムが無効な症例では,プロポフォールを使用している.

2)穿刺部位の選択

コンベックス型超音波内視鏡でPFCの病巣を観察すると,PPCは嚢胞内が主に液体成分のみで無エコー帯として描出されるため認識は容易である.しかしWONの場合,壊死組織は高エコーとして描出されるため,液状化した領域が少ないと周囲の脂肪組織や消化管との鑑別が困難な場合がある.CTでの消化管とWONの位置関係,透視下でのスコープの位置などを参考に慎重に観察して病変を同定する.また,ソナゾイドを用いて造影EUSを行うと,WONの病巣には造影剤の流入がほとんど認められないため周囲の臓器との鑑別に有用である 12

穿刺の際は超音波画像で,できる限り嚢胞との距離が近く,嚢胞壁と消化管壁が癒着していると考えられる部位,すなわち境界が不明瞭化した部位を選択する.また液体成分の多い場所のほうが,ガイドワイヤーをEUS画像で視認しやすいので,穿刺軸を保持しやすい.通常穿刺部位は胃体上部後壁となることが多い.噴門直下や胃体下部後壁は,内視鏡的ネクロセクトミー(direct endoscopic necrosectomy:DEN)に移行した際にスコープの出し入れが非常に困難であり,DENを行う可能性がある症例では避けるべきである.

3)穿刺とステント留置

ドプラモードで穿刺ルートに介在する血管がないことを確認後に,EUSガイド下に19G穿刺針で穿刺する.穿刺後は,シリンジで嚢胞内容液を吸引し,培養検査に提出する.その後,造影剤を注入し透視画面で嚢胞の大きさや広がりを確認し,0.025インチのガイドワイヤーを嚢胞内に1~2周させて留置する.引き続いて,0.025インチ対応の非通電ダイレーター(7-Fr,ESダイレーター,ゼオンメディカル社)や胆管拡張バルーンカテーテル(REN,カネカメディックス社)などで穿刺部を拡張する.胃壁が通過しない場合には,通電ダイレーター(6Fr Cysto-Gastro- Set,Endo-Flex社)を使用する.最終的なドレナージ形態として,本邦では7Frの両端ピッグテイル型プラスチックステントと5Frまたは6Frの経鼻ドレナージチューブを留置する内外瘻ドレナージを基本とする施設が多い.このためには,穿刺部拡張後に2本のガイドワイヤーを留置する必要があるが,Harber RAMP Catheter(COOK Medical社)やUneven Double Lumen Cannula(Piolax Medical Device社),10FrのSoehendra胆管拡張カテーテル(COOK Medical社),擦過細胞診用のCytoMaxⅡ Double Lumen Biliary Cytology Brush(COOK Medical社)などを用いると効率的に2本のガイドワイヤーを留置できる.

ドレナージ効率を上げる工夫としては,複数の箇所を穿刺するmultiple transluminal gateway technique(MTGT) 13や,1つの穿刺腔から複数本の内瘻チューブを多方向に留置するsingle transluminal gateway transcystic multiple drainages(SGTMD) 14などの工夫が報告されており,いずれも多房性のWONに対して有効性が高いとされる.

4)内視鏡的ネクロセクトミー(Figure 1

Figure 1 

WONに対する内視鏡的ネクロセクトミー.

a:胃内からLumen-apposing metal stent(LAMS)を用いてEUS-TDを施行した.

b:WON内部に多量の壊死物質を認める.

c:5爪鉗子を用いて壊死物質の除去を繰り返した.

d:内視鏡的ネクロセクトミーにより健常な肉芽組織が露出した.

WONに対するEUS-TDの臨床的改善率は45~60%程度ともされており 15,EUS-TDのみでは完治を見込めない症例もある.EUS-TDの治療効果が乏しければ,step-up approachとしてDENを追加する.実際には,18mm~20mm径の消化管拡張用のCRETM Balloon(Boston Scientific社)で瘻孔部を拡張後に直接内視鏡を腔内に挿入し,壊死物質を除去する.近年は,後述するLumen apposing metal stent(LAMS)を留置し,EUS-TDに引き続いてDENを行うことも多い.壊死物質除去には,把持鉗子,スネア,5爪鉗子,回収ネットなどの処置具が用いられている.処置は1回あたりおよそ1時間,週2回程度のペースで繰り返すのが一般的である.終了の目安としては,臨床症状の改善または健常な肉芽組織が露出するまで行う 16

DENの治療効果はおおむね良好とする報告が多く,本邦,ドイツ,米国からの多施設共同研究における治療成功率はおのおの75%,80%,91%であった 17)~19.しかしながら,偶発症が14~33%にみられ,死亡率が6.7~11%であったことも報告されており 17)~19,step-up approachが推奨される.WONの内視鏡治療に関するAsian Consensus Statement 20でも38文献,697症例のレビューで82.6%の治療成功率であったと報告されている.一方で,主な偶発症は出血(12.6%),穿孔(4.4%),空気塞栓(0.8%)であり,DENは空気塞栓予防のためCO2送気下で行うべきであるとされている 20

5)Lumen-apposing metal stentを用いたEUS-TD

LAMSは,これまでのPSや胆管用フルカバー金属ステントとはコンセプトが異なり,管腔と管腔を両端のフランジで引き寄せ,瘻孔を形成するためのEUSガイド下ドレナージ専用のデバイスとして開発された 21.一旦留置すれば何度でもスコープの出し入れが可能でDENを含む追加処置が容易にでき,非常に有用なステントである 22.現在ではLAMSのデリバリーシステムは,先端に通電チップが備わっており,穿刺・通電による拡張・ステント留置までを同時に行うことができる一体型のデバイス(Hot AXIOSTMシステム,Boston Scientific社)となっている(Figure 2 23.本邦では2018年から使用可能となり,症候性PPCまたは70%以上の液体成分を認める症候性WONに対してのみ適応となっている(Figure 3).フランジ間はいずれも10mmであるが,内径は10,15,20mmと3サイズがあり,内部性状やDENを行う可能性の有無によりサイズ選択が可能である.留置後は瘻孔形成を待つことやバルーン拡張が不要であり,スムーズなstep-up approachが可能である.

Figure 2 

Hot-AXIOSTM システム(Boston Scientific社).

Figure 3 

LAMSを用いたWONの内視鏡的治療.

a:骨盤腔内に至る巨大なWONを認める.

b:LAMSを用いた内視鏡的治療(EUS-TDとDEN)によりWONが縮小した.矢印がLAMS.

これまでにPFCに対するLAMSの治療成績は多数報告されている.Hanら 24はメタ解析でLAMSを用いたPPC,WONのEUS-TDの手技成功率がそれぞれ97%,98.9%,治療奏効率が93%,90%と良好であったことを報告している.一方で,WONに対してLAMSを用いた場合にはPSと比べて重篤な出血が生じる危険性が高いことが報告されており 25),26,LAMSによる重篤な出血や埋没を未然に防ぐために,3~4週間以内の抜去が強く推奨されている 26)~28

WONに対してLAMSを挿入すればDENが可能となるが,DENの必要性ならびにどのタイミングで行うかはまだ結論が出ていない 29.米国の多施設研究ではLAMS挿入時にDENを行ったほうが,治療奏効率が高く治療回数も減少するという結果であった 30.米国の多施設研究ではLAMS挿入時にDENを行ったほうが,治療奏効率が高く治療回数も減少するという結果であった.一方,Lakhtakiaらは,205名の有症状WON患者のうち,75%がLAMSのみで治療が奏効し,残りの多くはステントのサイズアップやチューブによる洗浄に反応し,最終的にDENが必要だったものは9.2%のみであったと報告している 31

Ⅴ おわりに

感染性PFCに対する内視鏡的処置の現状について概説した.内視鏡を用いたEUS-TD,DENが感染性PFC治療の第一選択となりつつあるが,PSと専用デバイスであるLAMSとの使い分けや留置期間,DENの必要性や行うタイミングについては,まだ結論が出ていない.今後の検討により安全な手技として確立されることが期待される.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:良沢昭銘(オリンパス株式会社,将道会)

文 献
 
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