GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
[title in Japanese]
[in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2022 Volume 64 Issue 1 Pages 101-104

Details

概要

沿革・特徴など

当院は地域における先端医療の提供を目的として1988年11月に鎌倉市に設立され,2010年には地上15階地下1階建の病院として旧病院の2.5倍の面積で市内に新築移転し,現在は病床数658床となった.救急搬送数においては国内有数であり,2018年に救命救急センターの指定を受けている.2021年4月には新規な核医学装置を備えた「先端医療センター」をオープンし,がんの早期発見・治療を目指している.消化器病センターは2013年に設立されたが,徐々に人員を増やしながら消化管,肝,胆膵の3部門に分かれてそれぞれの領域における専門的診療を行うとともに,内視鏡センター業務も担っている.「24時間365日オープン」の理念の下に緊急内視鏡治療などの救急医療を地域に常に提供するのみならず,近年ではがん治療などにも力を入れている.

組織

当院は国際的医療機能評価機関であるJoint Comission International(JCI)の認証を受けており,内視鏡手順や感染対策などは原則として定めたマニュアルに沿って行っている.

 内視鏡センターは通常内視鏡室ならびに透視室から構成され,消化器外来ならびに採血室・超音波検査室などと同フロアの2階に設置することで,診療における移動の面において患者負担の軽減を考慮している.内視鏡室内には5ブース設けられており,通常の上・下部消化管内視鏡検査や超音波内視鏡検査(EUS)に加え,緊急止血や内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)等の治療内視鏡を行っている.また透視室は内視鏡室に近接して1室備えてあり,内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP),胆膵観察EUSならびにInterventional EUS,各種消化管ステント挿入や小腸内視鏡などを行う他,肝膿瘍ドレナージや経皮経肝胆道ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)などの経皮的処置も行っている.

内視鏡検査は患者希望や処置における必要性に応じて鎮静下で行っているが,鎮静のリスクを判断するために前述のJCIに則り疾患名や既往歴,バイタルサインなどを医師が確認し,「鎮静前アセスメント」として必ず施行前にカルテに記載している.また鎮静や内視鏡中の急変に備えて,真下の1階Emergency Room(ER)への呼び出しボタンが内視鏡室ならびに透視室に設置されており,これにより緊急時は院内の救命チームがすぐに駆けつけることができるシステムになっている.夜間・休日の緊急内視鏡に関してはER内に光源を常時設置した専用スペースを設けて行っており,ハイリスクな状況における急変時にもERフロアにいる救急医によるバックアップが得られる.

内視鏡情報管理システムは富士フイルムメディカル社のNEXUSを導入しており,これにより所見の記載・管理を行っている.撮影した静止画は院内全電子カルテ端末で閲覧可能なため,通常診療の他,院内カンファレンスなどに用いている.また一部の内視鏡ブースでは動画記録も可能であり,主にESDや胆膵インターベンション治療等を録画して使用することで,日々の振り返りや医療安全,学術活動に役立てている.

実際の運営は,日毎に決められたリーダー看護師1名が予定および緊急検査の管理を行っている.問診票をクラークが回収し,検査担当医とともに各ブース担当の看護師が個々の患者背景や内服薬剤などの確認をしている.内視鏡機器や機材の準備や運搬,各種内視鏡処置の介助などは看護師に加え,臨床検査技師ならびに臨床工学技師も行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

独立した内視鏡検査室 65.82m2

準備室(前処置室) 252.82m2

リカバリー室 37.94m2

カンファレンス室 11.45m2

洗浄室 11.33m2

待合室 117.80m2

更衣室 25.45m2

総面積 522.61m2

スタッフ

(2020年10月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ2名,研修医など2名

内視鏡技師:Ⅰ種6名

看護師:常勤10名,非常勤2名

事務職:3名

その他:3名

設備・備品

(2020年10月現在)

 

 

実績

(2019年4月~2020年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

内視鏡実技研修は消化器をローテートする2年次初期研修医から行っている.まず実際の手技の見学と上級医の指導の下でトレーニングモデルによる練習を行った後に上部消化管内視鏡(EGD)から開始し,その後の習熟度を見て大腸内視鏡(CS)研修に移行していく.スコープ操作技術とともに画像所見の評価が重要であるが,朝夕のチームカンファレンスや週に1回の内科・外科・病理合同カンファレンスを通じて画像所見の正しい評価の仕方を学習していく.当院は「24時間365日断らない」を目標とした救急病院であり,夜間休日の緊急内視鏡処置の研修も重要視しているが,1stコールは研修医・専攻医などのトレーニーが担い,2ndコールの上級医が必ずペアになって対応することで,緊急内視鏡の経験を安全に積むことができるように配慮している.

内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの消化管治療内視鏡は,上下部内視鏡のスコープ操作が安定した段階で,上級医のバックアップの下に施行している.救急病院ならではの大腸閉塞に対する緊急ステント留置術を始め,緩和的な消化管ステント留置術や拡張術なども介助者や術者として研修が可能である.ESDについてはこれらの治療内視鏡や緊急内視鏡の経験を積んで手技が完遂できるようになった段階で,将来消化器内科を希望する内科専攻医以降の医師に対して研修を開始している.まずは上級医の介助を行うことで治療の流れを学び,胃病変の難易度の低い部位より治療を開始し,最終的には全消化管のESDが経験できるように指導をしている.内視鏡所見の読影や,病理所見との対比も重要と考え,他病院との合同カンファレンス参加による症例検討や,研修医のうちからの学会発表も重視している.

EUS/ERCPなどの胆膵内視鏡に関しては,消化管内視鏡研修によりスコープ操作が上達した段階で,将来消化器内科を希望する卒後2年目または内科専攻医1年次(卒後3年目)の医師に対して研修を開始している.EUSにおいてはInterventional EUSを見据えてコンベックス型中心の研修を行っているが,最初は胃内操作のみから開始し,観察が短時間で十分できるようになってから十二指腸操作に移行するようにしている.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は病変の描出・詳細観察が十分にできるようになった段階で開始し,習熟度に応じて嚢胞ドレナージなどのInterventional EUSに進んでいく.

ERCPもEUSと同時期から開始しているが,まずは介助者として処置具の使用方法や処置の流れを理解するところから始め,実際に術者となる段階ではすでに乳頭処置の既往があるような成功率が高いことが想定される例から開始し,後方斜視鏡の基本的な操作を習得した後に未処置乳頭のERCPへ移ることにしている.近年では専攻医の増加によりシステム化したトレーニングの重要性を感じており,習熟度に対する一定の基準を設けて評価するシステムの構築を目指している.

現状の問題点と今後

消化器病センターの立ち上げ時に比べ,年々常勤医ならびに専攻医・研修医の数が増加しているため内視鏡室が手狭になってきており,今後さらなる増員時にはPCなどの備品のみならず場所自体の拡大が必要となる可能性が高い.

内視鏡光源やスコープに関しては古くなっていることが問題であったが,こちらに関しては2021年度中に大部分を新光源システム(EVIS-X1, OLYMPUS)への変更が決定しており,同時にスコープも新規購入・更新していく予定である.

緊急内視鏡については現在1階ER内の簡易的なブースで行っており,物品などを保管する場所もないためその都度内視鏡を含めて2階の内視鏡室から運んでいるが,今後現在新築している救急救命センター内には透視装置を備えた専用内視鏡ブースを設置予定であり,利便性・安全性共に期待している.

また,年々増加する鎮静下内視鏡の需要に伴い術中ならびに術後管理などの必要性も増えている.そのため現在麻酔科との連携を深め,カプノグラフィーの導入やリカバリールームのモニター増設などについて検討している.

現在は新型コロナウイルスに対する感染予防のために標準予防策の徹底を行っているが,従来に比べ様々な点で特別な注意が必要であり看護師を始めとしたスタッフの負担増加となっているため,人員確保による負担軽減やスタッフのケアが重要である.根本的には新型コロナウイルスの収束が望まれる.

 
© 2022 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top