GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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HOW TO MAKE THE PANCREATIC GUIDEWIRE METHOD SUCCESSFUL?
Mamoru TAKENAKA Masatoshi KUDO
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2022 Volume 64 Issue 1 Pages 70-78

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要旨

膵管にガイドワイヤーを留置し,乳頭を固定し,胆管末端部の直線化を図って胆管挿管を行う,膵管ガイドワイヤー留置法(PGW法:Pancreatic guidewire法)は挿管困難症例に対するオプションとして臨床の現場で広く用いられている.一方でPGW法を用いても胆管挿管に難渋する症例はよく経験され,“膵管にガイドワイヤーが留置されることで乳頭そのものの可動性を抑えることは少し可能になるが,屈曲の強い乳頭内胆管が完全に直線化しない可能性も十分にあり得る”ことを念頭に胆管挿管に向き合う必要がある.PGW法はあくまでもオプションの一つであり,胆管挿管の成功は膵管ガイドワイヤー留置後の,対峙した乳頭の形態,口側隆起の形状,その症例でとり得るスコープポジション,を踏まえた挿管ストラテジーの構築なくしてはなし得ない.術後膵炎のリスクを常に想定しながら,安全・確実な膵管ガイドワイヤー留置,症例に応じた各種挿管手法の使い分けを,論理的に,かつ愛護的に操る必要がある.

Ⅰ エキスパートを目指す若手医師へのアドバイス

・膵管ガイドワイヤー法が有用な症例を理解する

・術後膵炎のリスクに怯え膵管造影を行わず尾側へのガイドワイヤー留置を行うことは逆に膵炎のリスクを増大させることを理解する

・膵管ガイドワイヤー法は常に膵管に負担がかかっていることを認識する

・膵管ガイドワイヤー法に固執せず,他の手法に移行できる知識と技術を取得する

・常に“落とし所”を考えながら内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)に挑む

Ⅱ はじめに

ERCPにおいて,すべての診断および治療は胆管深部挿管ありきであり,胆管挿管が得られなければどれだけ緊急を要する病態でも経乳頭的処置,検査は何一つ遂行することがゆるされない.一方で,胆管挿管はERCP関連手技の中でも最も習得が難しい手技でもある.結石治療やステント留置などはある程度の修練を行えば技術習得が可能であるが胆管挿管はそうではない.傍乳頭憩室・憩室内乳頭,Narrow Distal Segmentが長く可動性の強い乳頭,術後再建症例など,挿管困難症例は少なからず存在し,それらの克服はある程度の熟練者になっても対峙する問題である.

胆管挿管困難に対する克服法は多数の報告があるが,膵管にガイドワイヤーを留置し,乳頭を固定し,胆管末端部の直線化を図って胆管挿管を行う,膵管ガイドワイヤー留置法(PGW法:Pancreatic guidewire法)は(Figure 1),1998年にDumonceauらにより胃術後再建術後の症例(BillrothⅠ法)への有効な胆管挿管法として初めて報告された 1.すなわち当初から胆管挿管困難症例に対する手法として報告されていたことになるが,その後通常造影法との比較randomized trialを含めた多数の検討がなされ,胆管挿管率は50%程度~100%と報告によってバラツキが認められるが,PGW法は術後ERCPのみならず,通常ERCPの挿管困難症例に対する一つのオプションとして臨床の現場で広く用いられている.しかし本手法は有用な手法である反面,実は奥が深く,「膵管にガイドワイヤーが入ったので乳頭が固定されたから簡単に胆管挿管できるな」と安易に思った時点で既に続く胆管挿管に難渋することはあまり理解されていない.PGW法を用いても胆管挿管に難渋する症例にはどのようなことが起きているのか.そこに存在するいくつかの理由を知ることが,普段なにげなく行っているPGW法をより有用な手法へ向上させるための重要ポイントである.本稿では“明日からのPGW法の向上”を目指し,基本的な概念理解と手技のコツ,術後膵炎の問題,PGW困難症例に対する対処法について解説する.

Figure 1 

PGW法のシェーマ.

Ⅲ PGW法の基本的な概念理解と手技のコツ

1.適応

未処置乳頭に対して造影法,WGC(wire-guided cannulation)法いずれにおいても,膵管にガイドワイヤーを留置しえた症例が適応となる.膵管にガイドワイヤーが留置される利点としては,膵管開口部が認識しやすくなり,通常であればその左上に存在することが多い胆管開口部も認識しやすくなること,胆管軸,胆管走行の良いイメージを持つことが可能になること,乳頭が固定され胆管末端が屈曲しているような症例での直線化が期待できること,などが一般的にはあげられる.

すなわち胆管挿管困難例の中でもPGW法が有用な適応症例は,

①乳頭の可動性が強い症例

②Narrow Distal Segmentが長く乳頭内胆管が屈曲蛇行している症例

③共通管が長く胆管の走行角度が鋭角である症例

④胆管口が小さくカテーテルが膵管に入りやすく胆管開口部を同定しにくい症例

⑤術後症例や,傍乳頭憩室,憩室内乳頭,腫瘍や炎症併発症例などの,乳頭そのものがいずれかに偏位し,正面視が困難,あるいは乳頭に近接できない症例

などがあげられる.

しかしここで理解しておかなければいけないことは「たかが0.025inchのガイドワイヤーで胆管が直線化するわけがない」ということである.膵管にガイドワイヤーが留置されることで乳頭そのものの可動性を抑えることは少し可能になるが,だからと言って,屈曲の強い乳頭内胆管がまっすぐになるわけがないと肝に銘じておくことが本手法の成功に直結すると言っても過言ではない.

上述の①~⑤のような難症例に対して造影法やWGC法でアプローチする知識,技術があることが前提で,膵管にガイドワイヤーが挿入されたことは胆管挿管成功の1st stepなのである.そこから続く胆管挿管の基本手技・知識なしにPGW法は成立しない.膵管ガイドワイヤーが逆に続く胆管挿管に邪魔をすることもあり,その場合膵管ガイドワイヤーを抜去することもある.PGW法が絶対ではなく,あくまでいくつかあるオプションの一つであることを再度認識されたい.

膵管にガイドワイヤーが挿入されても,主膵管屈曲が強い,あるいは強い狭窄などがあり膵尾側へのガイドワイヤー誘導が困難な症例で,膵管内ガイドワイヤーの軟性部しか留置できない,もしくはガイドワイヤー先端が主膵管でなく膵頭部分枝膵管に留置されるような症例は,安定したPGW法を行うことは難しく適応外と考える.

2.手技のコツ

主膵管へのガイドワイヤー留置のコツ

PGW法は主膵管内にガイドワイヤーの硬性部を十分に留置することから始まる.用いるカテーテルは種類を選ばないが,当初からPGW法を狙って膵管挿管を試みることは通常はあり得ないので,各施設で胆管挿管に用いる1stカテーテルがPGW法にも用いられることになる.当院ではMTWカテーテル(MTW Endoskopie社)を用いているが,胆管挿管困難症例であれば内視鏡的乳頭括約筋切開術用のパピロトーム(当院はCleverCut Olympus社)を用いることもある.

用いるガイドワイヤーは0.025inch,0.035inchいずれでも可能であるが,こちらも同様に膵管に留置されるガイドワイヤーは,当初胆管挿管を目的にカテーテル内にloadingされるガイドワイヤーであり,各施設で標準使用されるガイドワイヤーが用いられることになる.当院では先端アングル型0.025inchのVisiGlide2(Olympus社)かEndoSelector(Boston社)を用いることが多く,狭窄が強い症例ではRadifocus(Terumo社)への変更も考慮する.Radifocusを用いて尾側膵管にアプローチしえた場合,Radifocusは透視視認性が悪く,親水コーティングされたタングステン素材であり安定性に欠けているため透視視認性が良くコシの強いVisiGlide2かEndoSelectorに交換しておくことが推奨される.

主膵管内の可及的尾側まで十分にガイドワイヤーを留置する際に注意すべきことは胆管内と同じように膵管内でガイドワイヤー操作を行わないことである.抵抗なく尾側膵管まで(可能ならばループを作成して)ガイドワイヤーが進んでいく症例では膵管造影を行う必要はないが,多くの症例ではガイドワイヤー先端が分枝に誘導され,速やかな尾側への誘導は行えない.この状況での無理なガイドワイヤー操作は膵実質損傷を行い術後膵炎リスクにつながるため膵管造影で走行を確認した方が安全であると考える.造影の量は決して過剰になって膵実質造影にならないように留意し,ガイドワイヤー留置後は可及的に吸引しておくことが推奨される.膵炎を危惧して膵管造影を躊躇し,実は分枝にガイドワイヤーが挿入されたままその後の処置が行われ術後膵炎となることは本末転倒であると認識しておかなくてはならない.

胆管挿管用カテーテルの挿入と軸合わせのコツ

ガイドワイヤーを上述のごとく膵管に留置した後は,そのまま膵管にガイドワイヤーを残してカテーテルを抜去し,ガイドワイヤーの脇から再度ガイドワイヤーをloadingしたカテーテルを同一鉗子口内から挿人していく.その際にカテーテルと同調し,膵管のガイドワイヤーが尾側に移動し膵管損傷や,トルクのかかり具合では逸脱することがあり,適宜透視で膵管内ガイドワイヤーの位置を確認しながsら慎重に行う必要がある.透視確認の際に膵管ガイドワイヤーの位置が変わっていることがないように術者と助手が共通の認識を持って臨むことが重要になる.

スコープ先端からカテーテルを出す際には起立鉗子を緩める必要があり,その際に膵管ガイドワイヤーに動きが生じないように留意する.ガイドワイヤーに無理なテンションがかかっていると,起立鉗子を緩めた時点でガイドワイヤーの逸脱が生じることもあり,常に安定した乳頭に負担のかからない視野作りを行い,維持に務めることが肝要である.

続いて胆管挿管に移行していくが,繰り返しになるが,膵管にガイドワイヤーが入っていても基本的な胆管挿管能力がなければ絶対に胆管挿管は成功しない.乳頭形態,大きさ,口側隆起の長さ,屈曲度から推察される胆管軸はどのようなものか,それにみあったスコープポジションは何か,挿管法は造影法かPGW法か,近接法か中間距離法か,といった,胆管挿管ストラテジーをまず構築し,対峙した乳頭に対するベストな選択をしなくてはならない.通常胆管挿管と同様に,乳頭とカテーテル先端がface to faceになっている正面視を作れるかどうかをまず試さなくてはいけない.

膵管ガイドワイヤーにより操作性が制限されるため,通常より正面視作りが難しいこともあり,正面視を重要視せず,何も考えずにガイドワイヤーの挿入されている膵管口をメルクマールとしてその内視鏡画面で左上,11時の方向に胆管開口部が位置しているだろうと安易に,同部位にカテーテルをあてがって,胆管挿管を試みるといったことは避けなくてはならない.

ここで問題になるのは膵管ガイドワイヤーによって,カテーテル操作が制限されることである.ガイドワイヤーがあるため胆管開口部にカテーテル先端をあてがいにくい,ガイドワイヤーがあるため11時方向にカテーテルが向かない,といった問題が発生する.その対処のコツとして以下があげられる.

①膵管のガイドワイヤーを下に押し下げることで空間ができ,カテーテル操作が容易になることがある.ここで考えるべきことは膵管ガイドワイヤーが下向きにたわむということはどこかに支点が存在するということであり,多くの場合主膵管内に支点が存在する.しかし状況によっては分枝膵管内のガイドワイヤーに無理な力がかかることもあり,こちらも透視画像を適宜確認する必要がある.また支点がうまくできないのに無理に下向きにたわませるとガイドワイヤーが簡単に逸脱する可能性があり慎重に行う必要がある.

症例1

緊急ERCPを行ったが胆管挿管に難渋した.膵管にガイドワイヤーを尾側膵管内まで留置することはできたため,PGW法を選択した.膵管ガイドワイヤーの上側にカテーテルを持っていくことが難しい症例であったため,膵管ガイドワイヤーをたわますことによるスペース確保を試みた.ガイドワイヤーをたわませても透視上で膵管ガイドワイヤーが抜けてきていないことを確認し,たわましてできた空間にカテーテルを進めることができた.本症例は結節型乳頭であり,口側隆起は比較的短かったため,結節の裏にやや垂直気味にカテーテルを進めるストラテジーを構築し,胆管挿管に成功した(Figure 2).

Figure 2 

(症例1)ガイドワイヤーをたわませる時は膵管内の先端(→)が分枝に入り込まないかどうかを確認する必要がある.

②カテーテルの背中でガイドワイヤーを押さえ込むイメージでカテーテルを動かすと必然的にガイドワイヤーの上にカテーテルが進んでいく.この動作は乳頭から少し距離のある部分で行うことで成功率が上がる.

症例2

胆管挿管困難症例であったが膵管にガイドワイヤーを尾側膵管内まで留置することはできたため,PGW法を選択した.カテーテルがガイドワイヤーの下にいきやすい症例であったため乳頭から少し距離のある部分でカテーテルの背中でガイドを押すような動きを行い,カテーテルをガイドの上にすることに成功した.本症例は結節型乳頭であるが,口側隆起が存在していたため,結節の裏にやや見上げ気味にカテーテルを進めるストラテジーを構築し,胆管挿管に成功した(Figure 3).

Figure 3 

(症例2)カテーテルの背中(緑色部)でガイドワイヤーを押さえ込ますことが有効.

③Scope positionをややpushにして見上げを強くすることでカテーテルの軸とガイドワイヤーの軸がずれ,胆管開口部にあてがうことが容易になる場合がある.ただし無理なスコープ操作はガイドワイヤー先端が膵管分枝に意図せず押し込まれる可能性や,膵管ガイドワイヤー逸脱のリスクが生じるため,こちらも慎重を要する.見下げにしかならない場合はパピロトームやswing tipカテーテルが有効になることもある.

胆管選択のコツ

上述の対峙した乳頭への挿管ストラテジーを構築でき,無事に胆管開口部にカテーテル先端を咥え込ますことができた後は造影法,もしくはWGC法で胆管挿管を行う.造影法で胆管挿管を行う手法はsingle-guidewire technique(SGT),WGC法で行う手法はdouble-guidewire technique(DGT)と称される.Itoiらのグループはretrospectiveの検討で,SGTが81.6%,DGTが82.9%の成績であったと報告している 2

胆管を探る際,乳頭に対し愛護的操作を心がけることは言うまでもないが,膵管ガイドワイヤーでの胆管の直線化,固定はたった0.025inchのガイドワイヤーでなされており決して強くないことを改めて念頭に置いておく必要がある.胆管が屈曲している症例ではカテーテルの軸調整やガイドワイヤーのseekingが必須であり,適宜胆管造影を行いながら慎重に行うべきである.また繰り返しになるが,対峙した乳頭に対するストラテジー構築を適切に行うことが最も大事であり,見上げが必要な症例では膵管ガイドワイヤーによりスコープ操作が制限される中でカテーテルを見上げにする努力や,カテーテルをパピロトームやswing tipカテーテルに変更して挿管に臨むという選択肢も求められる.パピロトームを使用する場合には

・スコープからある程度の長さが出されていなければどれだけブレードを張ってもカテーテルは屈曲していかない

・手元の操作とカテーテルの曲がっていく具合にはタイムラグがある

・ブレードを張りすぎるとかなり屈曲するためカテーテル先端が乳頭から外れる

ことを念頭に置くことが重要であり,これは通常胆管挿管で用いる場合も同様である.

症例3

胆管挿管困難症例であったが膵管にガイドワイヤーを尾側膵管内まで留置することはできたため,PGW法を選択した.本症例は口側隆起が存在していたため,見上げ気味のアプローチを試みるも通常カテーテルでは難しくパピロトームに変更した.まず先端を胆管開口部に咥え込ませ,その後少しブレードを張り見上げ方向にベクトルを変更し,胆管挿管に成功した(Figure 4).

Figure 4 

(症例3)パピロトームのブレードを張ることでもガイドワイヤーをまたぐことができる.

症例4

前医挿管困難症例.口側隆起が長く屈強し,形状から強い見上げアプローチが必要と考えられ,当初よりパピロトームを1stカテーテルとして選択した.検査開始直後に膵管造影されたため,ガイドワイヤーを尾側膵管内まで留置しPGW法を選択した.本症例ではパピロトームのブレードを強く張り,強い見上げ方向のベクトルを作成する必要があったため,まず先端を胆管開口部に咥え込ませた後,少し長めにスコープから出し,先端の視点が動かないようにブレードをゆっくりと張っていき,強い見上げベクトルを作り,胆管挿管に成功した(Figure 5).

Figure 5 

(症例4)膵管がガイドワイヤーによる乳頭固定に加えてパピロトームの強い見上げがあって挿管し得た症例.

症例5

胆管挿管困難症例でありPGW法を選択した.本症例の乳頭形態は結節型で大きさは通常,口側隆起が存在するも短かったため,軽度見上げ気味のアプローチを試みるも挿管に難渋した.そこで先端を支点にたわますようにカテーテルを押し下げ,強い見上げ方向のベクトルを作成し,胆管挿管に成功した(Figure 6).

Figure 6 

(症例5)膵管がガイドワイヤーによる乳頭固定に加えてカテーテル操作による強い見上げで挿管し得た症例.

Ⅳ 術後膵炎について

ERCPの最大かつ最も重篤な合併症は術後膵炎である.特に胆管挿管困難症例では術後膵炎の増加が問題となる.

WGC法は,そもそも術後膵炎のリスクとして報告されている膵管造影を行わずして胆管挿管を行う手技として開発されたが,WGC法の際にガイドワイヤーが膵管に誤挿入されることが術後膵炎のrisk因子になり得ることが報告されている 3

これはすなわち,膵管にガイドワイヤーを留置することが前提の膵管ガイドワイヤー法そのものが,術後膵炎のリスク因子になり得ることを意味する.

PGW法の術後膵炎の発生頻度は0~17%であるとされ高率とする報告もあるが,その理由には膵管造影やガイドワイヤーの操作によって膵管損傷をきたし,実質まで障害が及んでしまう可能性も含まれる.

膵管ステントの膵炎予防効果に関しては,その有用性が示されているものの,ステントトラブルの症例やコスト面の問題も指摘されている.

Propensity score matchingを用いた術後膵炎高リスク群での解析では,膵管ステントの術後膵炎予防効果が最も高い因子は,検査時間が長い症例であると報告されている 4.PGW法を用いる症例は通常挿管困難症例が多く,検査時間も長時間に及んでいるケースが多い.これらを踏まえると,PGW法を行った場合は可能であれば胆管挿管しえた後に膵管ガイドワイヤーを用いて膵管にステントを留置することが望ましいと考えられる.

Ⅴ 困難例と克服法

PGW法はいくつか存在する胆管挿管困難対処法の一つにすぎず,その他の対処法の理解・習得に努め,どれだけ多くの対処法を自身が習得できるか,対峙する胆管挿管困難症例にどれだけ適切な対処法を選択,遂行できるか,が胆管挿管困難症例の克服につながる.

PGW法が難しい場合はプレカット,別の選択肢(経皮経肝的胆道ドレナージや超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ)などを考慮していく.

膵管の屈曲が強く深部にガイドワイヤーを留置できない症例や完全型膵管非癒合例,膵頭部主膵管の狭窄が強くガイドワイヤーを深部へ進めることのできない症例などはPGW法が困難な症例であるが,同様に膵管ガイドワイヤーを用いて行われるUneven法はガイドワイヤーでなくカテーテルそのもので乳頭を固定するため,そのような状況でも胆管挿管し得る可能性があり一つのオプションになり得る 5.緊急ドレナージを要する症例であれば,経乳頭的ドレナージに固執することなく,別の選択肢(経皮経肝的胆道ドレナージや超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ)に移行するべきである.

経験が少ない先生であれば上級医へ術者交代する,経験のある先生であれば患者の状態,そのERCPの目的・緊急性を考慮して,中止の決断も含めて対応していく,といった“落とし所”を常に頭の片隅に置いてERCPに挑む必要がある.

Ⅵ おわりに

PGW法の実際とコツ,術後膵炎の問題,困難症例に対する対処法ついて述べた.PGW法は胆管挿管困難症例に対する有用なオプションであることは言うまでもないが,あくまでもオプションの一つであり,胆管挿管成功は通常胆管挿管における対峙した乳頭への挿管ストラテジー構築なくしてなし得ない.ガイドワイヤー,カテーテル,スコープを,膵炎のリスクを念頭に置きながら,論理的に愛護的に操る必要がある.本稿が日常診療で広く行われているPGW法のbrush upにつながり,一例でも胆管挿管困難症例が克服される一助になることを切に願う.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2022 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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