GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC ULTRASOUND-GUIDED DILATION OF COMPLETE CHOLEDOCHOJEJUNAL OBSTRUCTION USING A FORWARD-VIEWING ECHOENDOSCOPE
Fumioki TOYODA Taro UEOTomomi OZAWAAtsushi MATSUMOTORyuuki MINAMIYuuto KIMURAYasuhiro TAKEDAAkihiro OKANOFusako KUSUMIMasaya OOHANA
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2022 Volume 64 Issue 10 Pages 2288-2294

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要旨

症例は69歳男性.膵頭部癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行したが,術後10カ月目に吻合部の完全閉塞を認めた.シングルバルーン小腸内視鏡(single balloon enteroscopy:SBE)や経皮経肝胆管ドレナージルートを用いた胆道鏡による治療も成功せず,内瘻化目的に超音波内視鏡下胆管胃吻合術(EUS-hepaticogastrostomy:EUS-HGS)を行った.しかしながら,胆道鏡での観察で肝内結石を認め,胆管炎のリスクが高いと考えられた.そこで,直視コンベックス型EUS(forward-viewing linear endoscopic ultrasound:FV-EUS)を用いて空腸側から吻合部の狭窄解除を行い,後日SBEを用いた吻合部の拡張と結石除去を行った.胆管空腸吻合部の完全閉塞に対し,FV-EUSを用いた吻合部拡張術を行うことで,その後の結石除去や吻合部のメンテナンスが問題なく施行可能となった.

Abstract

A 69-year-old man who underwent subtotal stomach-conserving pancreatoduodenectomy developed complete obstruction of the anastomosis during the 10th postoperative month. He underwent cholangioscopy using single-balloon enteroscopy (SBE) and percutaneous transhepatic bile duct drainage; however, these procedures were unsuccessful. Therefore, we performed EUS-hepaticogastrostomy for internal fistulization. However, we detected intrahepatic stones, and considering the high risk of cholangitis, we performed release of the anastomotic stenosis from the jejunal aspect using a forward-viewing linear endoscopic ultrasound (FV-EUS). We subsequently performed anastomotic dilation and stone removal using SBE. Anastomotic dilation using FV-EUS in a patient with complete obstruction of a choledochojejunostomy facilitated subsequent stone removal and ongoing maintenance of the anastomosis.

Ⅰ 緒  言

膵頭十二指腸切除後の胆管空腸吻合部狭窄に対しては,バルーン内視鏡や経皮経肝胆管ドレナージ(percutaneous transhepatic cholangio drainage以下PTCD)ルートを用いた治療が行われる 1)~3).しかしながら,吻合部をガイドワイヤー(guide wire以下GW)が通過しない完全閉塞例に対しては,これらの治療は不可能である.外科的な吻合部切除と再吻合術は,術後合併症や致死率,再狭窄率が高率である 4),5.近年,超音波内視鏡下胆管胃吻合術(endoscopic ultrasounds-guided hepaticogastrostomy以下EUS-HGS)をはじめとする超音波内視鏡下胆道ドレナージ術の有効性が報告されているが 6,形成した瘻孔を介しての内視鏡処置は必ずしも容易でない.今回われわれは,胆管空腸吻合部の完全閉塞例に対し,直視コンベックス型EUS(Forward-Viewing Endoscopic Ultrasound Scope以下FV-EUS)を用い,空腸側から吻合部を介した瘻孔形成を行ったことにより,SBEによる肝内結石除去が可能となり,その後再狭窄予防のためのメンテナンス治療が継続できている症例を経験した.

Ⅱ 症  例

患者:69歳,男性.

主訴:肝内胆管拡張.

既往歴:2型糖尿病.

現病歴:膵頭部癌(cT2N0M0 stageⅠB)に対して,2017年に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,膵胃吻合,胆管空腸吻合(2孔)を施行した.術後1カ月目に胆管空腸吻合部狭窄と肝内結石を認め,シングルバルーン小腸内視鏡(single-balloon endoscopy以下SBE)による吻合部拡張術と結石除去を行った.その後術後化学療法として6カ月間のS-1内服を行った.しかしながら,術後10カ月目の造影CTで肝内胆管拡張が出現し,吻合部狭窄の再燃が疑われ,当科入院となった.

入院時現症:身長170.5cm,体重50.1kg,体温36.6℃,血圧151/66mmHg,脈拍51回/分 整.

眼瞼結膜に貧血を認めず,眼球結膜に黄染なし,腹部は平坦で軟,圧痛を認めず.

臨床検査成績:肝胆道系酵素の上昇を認めた.

腹部CT所見:膵癌の再発や転移を認めず.肝内胆管拡張を認めた.

磁気共鳴胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography以下MRCP)所見:肝内胆管はびまん性に拡張し,吻合部狭窄が疑われた(Figure 1-a).

Figure 1 

吻合部完全閉塞.

a:入院時MRIで肝内胆管のびまん性の拡張を認めた.

b:SBEにより吻合部にアプローチしたが,狭窄が強固でありGWを通過させることができなかった.

治療経過(Table 1Figure 2):胆管空腸吻合部まで,SBE(SIF-H290S,Olympus)を容易に挿入できたが,吻合部は強固に狭窄し,GW(VisiGlide 2TM 0.025 inch angle,Olympus)を通過させることができなかった(Figure 1-b).膵癌再発の除外目的に吻合部より生検を行ったが,悪性所見を認めなかった.2孔式の胆管空腸吻合のため,右後区域枝の吻合部と,左肝管及び右前区域枝の吻合部が異なっており,B2とB6に各々PTCDチューブを留置した.まず右後区域枝について,SBEを用いて吻合部に7Frプラスチックステント(FleximaTM Plus,Boston Scientific)を留置し内瘻化した.次に,左肝管に留置したPTCDルートを介して経皮経肝胆道鏡(CHF-XP260,Olympus)を挿入した.胆管内には,腹部超音波検査やMRCPで指摘し得なかった多数の小さな肝内結石を認め視野不良のうえ,胆管側からも吻合部が強固に瘢痕狭窄し,GW(VisiGlide 2TM 0.025 inch angle,Olympus)を通すことができなかった(Figure 3).PTCDの長期留置は患者の負担が大きく,またPTCDルートを介した胆道鏡による肝内結石治療についても,PTCDの挿入部より末梢側にある肝内結石に対するアプローチが困難と考えられた.そこで,胆管のドレナージルートとして,新たにEUS-HGSを施行し,7Frプラスチックステント(Through & Pass TYPE ITTM,ガデリウスメディカル)をB3に留置した.EUS-HGSルートを介した結石除去を目指し,2カ月後にプラスチックステントの脇からGWの挿入を試みるも瘻孔を通過せず,このルートからの処置を断念した.胆管空腸吻合部がドレナージルートとして生理的であり,肝内結石に対しても,その後SBEを用いた治療が可能となるため,FV-EUSを用いて,空腸側からの吻合部閉塞解除を試みることとした.最初にSBEを吻合部まで挿入し,GW(VisiGlide 2TM 0.025 inch angle,Olympus)を留置しながら抜去した.FV-EUS(TGF-UC260J,Olympus)の挿入に際しては,まずカテーテル(内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)カテーテル,MTW)を鉗子口に通して内視鏡の先端から出し,それにGWを通すことでガイドとして用い,吻合部まで問題なく到達できた.超音波画面で吻合部背側に肝門部胆管が同定され,近傍に脈管がないことを確認しながら,超音波内視鏡下穿刺針(EZ shot 3plus 19G,Olympus)で穿刺し(Figure 4-a),GW(VisiGlide 2TM 0.025 inch angle,Olympus)を留置した.しかしながら,吻合部の線維化が強固で,GWが留置できても穿刺部にカテーテルを通すことができず,ESダイレーター(ゼオンメディカル)や4mmの細径バルーン(REN,カネカ)も突破しなかった.再度超音波画面で穿刺部近傍に脈管がないことを確認のうえ,内視鏡画面で観察しながらSoehendra Stent Retriever(7Frステント対応Cook Medical)を用い穿刺孔を2.3mmに拡げた.細径バルーン(REN,カネカ)で4mmまで追加拡張し,拡張時の出血に対する圧迫止血ののち,7Frプラスチックステント(FleximaTM Plus,Boston Scientific)を留置した(Figure 4-b).経過良好にて,PTCDチューブも抜去した.結石除去を円滑に行うためには,より大きな吻合径を得る必要があり,1カ月後にSBEを用いて,プラスチックステントを抜去し,メタリックステント(BONASTENT 10mm×5cm fully-covered,メディコスヒラタ)を留置した(Figure 5).なお,良性胆管狭窄に対する適応外使用となるため,倫理委員会の承認を得たうえで,事前に患者に対し十分な説明を行い,同意を得た.留置翌日に逆行性胆管炎を発症したが,抗菌薬の投与により改善した.その5カ月後にSBEを用いてメタリックステントを抜去のうえ,バルーンカテーテル(V-System,Olympus)にて肝内結石の除去を行った(Figure 6).治癒に伴う瘻孔の再狭窄予防目的に,8.5Frプラスチックステント(FleximaTM Plus,Boston Scientific)を留置し,その後もメンテナンス治療として定期的に交換している.

Table 1 

治療経過表.本症例に対して行った一連の治療の経過を時系列でまとめた.

Figure 2 

治療経過シェーマ.

本症例に対して行った処置についてシェーマにまとめた.

Figure 3 

左肝管のPTCDより挿入した経皮経肝胆道鏡の所見.

肝内胆管内に左下のような結石を多数認めた.

Figure 4 

FV-EUSガイド下吻合部瘻孔形成術.

a:FV-EUSを用いて肝門部胆管を同定し穿刺した.

b:吻合部に7Frプラスチックステントを留置した.

Figure 5 

内視鏡的ステント留置術.

SBEを用いてプラスチックステントを抜去し,メタリックステントを留置した.

Figure 6 

内視鏡的結石除去術.

SBEを用いてメタリックステント抜去後,内視鏡的結石除去術を行った.

Ⅲ 考  察

胆管空腸吻合後の術後胆管狭窄は,膵頭十二指腸切除術の2.6%に発生すると報告されている 2.胆汁流出障害により胆管炎を繰り返し,さらに肝内結石症の原因にもなることから,早期に適切な治療介入を要する.かつては吻合部切除と再吻合術を基本とした外科的治療も行われていたが,致死率13%,再狭窄率25-30%と報告されており 4),5,現在は内視鏡的治療が主流である.バルーン小腸内視鏡の普及により,術後の再建腸管であっても吻合部への到達率88%,胆管ドレナージの成功率80%と良好な成績である 7.内視鏡的治療が不成功に終わった場合でも,PTCDを行い,その後瘻孔を12-16Frまで拡張し,胆道鏡を挿入することで,順行性に胆道ステントを留置することが可能となる 8.しかしながら,本症例のようなGWが通過できない完全閉塞例に関しては,バルーン内視鏡による吻合部拡張術も,PTCDルートを介した内瘻化も不可能であり,患者はPTCDの継続的な留置を余儀なくされ,クオリティ・オブ・ライフ(QOL)が著しく低下する.加えて本症例は肝内結石も存在し,胆管炎のリスクが高いと考えられたが,PTCDルートを用いた処置では末梢にある結石まで除去不可能であった.

近年超音波内視鏡検査(EUS)を用いて経胃的に胆管ドレナージを行うEUS-HGSが行われるようになってきており,大規模施設での成績であるが,手技成功率95%,偶発症頻度30%と報告されている 9.さらには,細径胆道鏡(Spy Glass DS)を用いたEUS-HGSルートを介した肝内結石に対する砕石治療の報告もある 10.本症例でも胆管ドレナージルートとしてEUS-HGSを施行し,そのルートを介した結石除去を試みることとした.しかし,カテーテルを胃内から胆管内にスムーズに通すことができず,瘻孔も脆弱なことから,処置中に破綻し胆汁漏を招くリスクが危惧され,このルートでのアプローチを断念した.そこで,より生理的で,繰り返し内視鏡治療の可能なドレナージルートを造設するため,まずFV-EUSを用いて胆管空腸吻合部の閉塞を解除し,その後SBEによる内視鏡的結石除去を行う方針とした.膵頭十二指腸切除後の胆管空腸吻合部狭窄に対して,FV-EUSを用いて胆道ドレナージを行った例は,これまで3例報告されている(Table 2 11)~13.FV-EUSは,前方斜視型EUSと違い,再建腸管であっても進行方向を直接視認しながら挿入が可能である.さらに本症例では,FV-EUSの挿入に際し,あらかじめSBEを用いて吻合部まで到達した後GWを留置し,それをガイドとしてFV-EUSを進めていくことで,吻合部までの到達が容易となった.吻合部完全閉塞に対する閉塞解除の方法として,磁石圧迫吻合術が有用であったとの報告があるが 14,吻合部の開通まで連日にわたり,細かな位置の調整を必要とした.本症例ではFV-EUSを用いることで,超音波画面で脈管を常に確認しながら,胆管の穿刺とGWの留置を短時間で安全に行うことができた.しかしながら,吻合部の線維化が非常に強固であり,ダイレーターやバルーンカテーテルで穿刺部を追加拡張できなかった.同様の強固な吻合部狭窄に対し,直視鏡観察下に通電ダイレーターによる拡張を行った報告があるが 15,周囲の脈管との位置関係を把握することなく盲目的な処置であり,さらにBurn effectにより遅発性に仮性動脈瘤等の血管損傷が出現するリスクがあると考える.本症例では,Soehendra Stent Retrieverを用いて慎重に穿刺孔を拡げたが,この際にも再度超音波画面にて穿刺周囲に血管のないことを確認し施行した.一度瘻孔が形成されると,胆管と空腸との接着が非常に強固であり,その後は胆汁漏を危惧することなく,SBEを用いた瘻孔拡張や内視鏡的結石除去を繰り返し行うことが可能であった.膵頭十二指腸切除後の胆管空腸吻合部狭窄に対するFV-EUSによる胆道ドレナージ術は,SBEも併用することで十分な胆管ドレナージルートが形成可能であり,さらに繰り返し安全に結石除去やステント留置といった処置を行うことができる点で有用と考えられた.

Table 2 

膵頭十二指腸切除後症例に対するFV-EUSを用いた胆道ドレナージの例.

Ⅳ 結  語

膵頭十二指腸切除後の胆管空腸吻合部完全閉塞例に対して,FV-EUSを用いて吻合部を穿刺拡張し,その後吻合部を介して肝内結石除去を行った1例を報告した.FV-EUSによる吻合部拡張術は,その後にSBEを用いた追加治療を容易に繰り返し行うことができるため,有用な手法と考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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