2022 Volume 64 Issue 12 Pages 2550
【背景と目的】胃癌に対する胃切除後フォローアップ中の上部消化管内視鏡検査(EGD)は2次性の上部消化管癌の早期発見に寄与していると考えられるが,その重要性に関してはいまだ議論の余地がある.本検討の目的は,胃癌胃切除後フォローアップ中のEGDにおける2次性の上部消化管(咽頭から残胃)癌の検出頻度を検討し,その有用性を明らかにすることである.
【対象と方法】対象は2008年から2014年の期間に胃癌に対する手術(胃全摘を除く)が施行され,かつ術後5年間のフォローアップ中に少なくとも1回はEGDが施行された1,438症例とした.残胃,咽頭,食道における2次癌の検出頻度を検討し,さらに2次癌の危険因子の抽出を試みた.また,検出された2次癌の臨床病理学的特徴を明らかにし,EGDの施行頻度との関連を検討した.
【結果】対象症例における術後年度毎のEGD施行回数は0.7回であった.残胃癌および咽頭・食道癌の5年累積発生率は各々2.9%,1.3%であった.残胃癌の危険因子はheavy smoker(Brinkman index≧600,hazard ratio=2.24),噴門側胃切除術(hazard ratio=3.93),初発腫瘍径30mm以上(hazard ratio=3.01)であった.すべての2次癌は根治治療可能であり,うち81%の症例で内視鏡的切除が可能であった.また,定期的にEGDを施行していた症例における内視鏡的切除率は,非定期的EGD症例のそれよりも有意に高率であった(66.7 vs. 31.3%).
【結論】胃切除後の定期的なフォローアップEGDは根治治療可能な2次癌の発見に有用である.残胃癌の危険因子(heavy smoker,噴門側胃切除術,初発腫瘍径30mm以上)に注目することにより,その有用性はさらに高まると考えられた.
本報告では,retrospective studyという研究法そのものの限界が存在するも,胃切除後のフォローアップEGDの重要性と,咽頭・食道や残胃における2次癌を発見するための注目すべき患者背景(喫煙状態,術式,初発腫瘍径)が明らかにされ,胃癌術後患者のフォローアップ法に有用な情報が付加された.胃癌術後の胃粘膜は発癌環境に暴露されていた前癌状態の可能性があり,残存胃粘膜が広いほど異時性多発胃癌発生の危険は大きくなる.胃癌ESD術後における異時多発胃癌発生率は,術後5年・7年・10年でそれぞれ9.5%・13.1%・22.7%とする報告がある 2).また,胃癌の好発部位を残す噴門側胃切除術や分節・局所切除後では,高率(それぞれ6.2%,8.2%)に残胃癌が発見されたとするアンケート調査の結果も報告されている 3).加えて本報告では2次性の咽頭・食道癌の発見頻度も少なくないことが示され,胃切除後のEGDはこれらの情報を熟知して臨む必要性が改めて強調されたと言える.