GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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CAPSULE ENDOSCOPY READING SUPPORT CENTERS: CURRENT STATUS AND CHALLENGES
Takahiro NISHIKAWA Koji NONOGAKIMasanao NAKAMURA
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2022 Volume 64 Issue 3 Pages 239-248

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要旨

カプセル内視鏡は低侵襲かつ簡便に消化管精査が可能であり,小腸疾患の診断に不可欠な検査となっている.また大腸カプセル内視鏡は,大腸内視鏡が困難な患者において,大腸腫瘍のスクリーニング検査の一翼を担っている.一方で,カプセル内視鏡の読影には多くの時間を要し業務負担となっている,画像診断には習熟が必要である,読影医が不足しているといった課題がある.これらの課題の解決策として,カプセル内視鏡読影支援ネットワークやカプセル内視鏡読影支援技師制度がある.カプセル内視鏡読影支援ネットワークは,連携した検査実施施設で行ったカプセル内視鏡画像を,読影支援施設にて遠隔読影を行うシステムであり,検査実施施設での読影の業務負担軽減や診断の標準化が可能となる.読影支援施設においては,多数のカプセル内視鏡画像を正確かつ迅速に読影することが求められ,カプセル内視鏡読影支援技師を含めた効率的な読影体制の整備と読影能の向上維持のための教育体制の整備が必要不可欠となる.本稿では,カプセル内視鏡読影支援センターの現状と課題について概説する.

Ⅰ はじめに

カプセル内視鏡(capsule endoscopy;CE)は,被験者が自らカプセル型の小型内視鏡を嚥下することにより低侵襲に消化管精査を実施することが可能な内視鏡機器である 1.本邦では,2007年に原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding;OGIB)患者に対して初めて小腸カプセル内視鏡(small bowel capsule endoscopy;SBCE)が保険収載となった.2012年7月にはパテンシーカプセル(patency capsule;PC)による消化管開通性の確認が可能となったことをうけ,「小腸疾患が既知または疑われる患者」に適応拡大され,実質全小腸疾患に対して実施可能となった.小腸は解剖学的特徴から,長らく内視鏡における暗黒大陸であったが,SBCEの登場により小腸内視鏡診断,治療戦略は大きく変化し,SBCEは小腸出血,クローン病,小腸腫瘍,薬剤性の小腸粘膜障害といった疾患において有効性が報告されている 2),3.2014年1月には,本邦で大腸用カプセル内視鏡(colon capsule endoscopy;CCE)であるPillCamCOLON2が世界で初めて保険収載となった.CCEは6mm以上の大腸ポリープの感度は84~94%,特異度は64~88%と報告されており,大腸内視鏡検査とほぼ同等のポリープ検出率を有すると報告されている 4)~7.大腸癌は,本邦における癌死亡率の2位の疾患となっており 8,大腸癌に対するスクリーニング検査は非常に重要である.このような現状の中,CCEは大腸腫瘍性病変のスクリーニング検査において重要な役割を期待されている.

CEはその有用性から広く普及し,実施されるようになったが,読影に要する時間は30~120分程度とされ,読影者にとっては大きな負担となっていることが問題である 9.多忙な診療の中では,通常診療時間外で読影業務を行わざるを得ない場合も多いのが実状である.また,CEは1患者あたり約6万枚の内視鏡画像を撮影するが,大きな異常所見があっても,そのうちたった1枚の画像しか撮影されていないこともあり,読影には訓練が必要である.今後,CEのさらなる普及のためには,前述のような読影に関する諸問題の解決が不可欠であり,その方法として看護師をはじめとする医療スタッフによる読影業務支援や読影を集約し担う施設である読影支援センターが考案されている.

カプセル内視鏡読影支援ネットワークは,施設間でネットワークを組み,読影支援施設にてCE画像を遠隔読影し,レポート作成・報告するシステムである 10),11.読影支援システムを構築するにあたり,最も重要な課題の一つは,病院間での画像,レポートの輸送方法である.医療データの輸送方法には,匿名化した画像データやレポートを,USBを用いて輸送するUSBシステム,VPN(Virtual Private Network)回線を用いてデータ輸送を行うVPNシステム,クラウド上で画像およびレポートのやり取りを行うクラウドシステムが存在する.各システムの導入,運用に際しては,それぞれ特徴があり,施設の特性や実状を加味して,いずれかのデータ輸送方法が選択されている.読影支援施設における読影体制の整備も重要な課題である.読影施設は,医師,読影支援技師による効率的な読影体制の設置が必要であり,質の高い読影レポートを可及的速やかに依頼施設に伝達する必要がある.

また,日本カプセル内視鏡学会(The Japanease Association for Capsule Endoscopy;JACE)は,医師の読影業務を支援する読影支援技師の存在が不可欠として,2013年4月より読影支援技師制度を設けており,現在までに小腸読影支援技師370名,大腸読影支援技師74名が登録されている 12),13.読影支援技師は国家資格を持つメディカルスタッフ(看護師,臨床検査技師,放射線技師,薬剤師,衛生検査技師,臨床工学技士)と日本消化器内視鏡学会認定技師資格を持つ准看護師が,学会の定める認定基準を満たすことで登録される.読影支援技師の役割は,カプセル内視鏡検査の医師による画像診断を支援することであるが,明確な業務内容は定められておらず,読影能力向上のための教育システムの整備など課題も存在する.

本稿では,カプセル内視鏡検査の読影支援とくにカプセル内視鏡読影支援センターの現状と今後の課題について述べる.

Ⅱ CEの適応・読影

a)SBCE

SBCEは全小腸疾患が対象となりうる.消化管の狭窄が疑われる症例では,事前にPCによる開通性の確認が必要となる.具体的には,クローン病確定診断例もしくは疑診例,非ステロイド性抗炎症薬長期内服例,腹部・骨盤部放射線照射歴のある症例,その他小腸狭窄をきたしうる疾患症例(小腸切除後,小腸腫瘍,虚血性小腸炎など)である.小腸疾患におけるSBCEによる診断のアルゴリズムやマネージメントといった臨床的な役割については,国際的なガイドラインにおいて明記されている 14)~16.とくにOGIBでは,欧米諸国を中心に非侵襲的なSBCEは,まず行われるべき検査であると位置づけられている.一方で,本邦のガイドラインでは,造影CTにて出血源が同定された場合は,バルーン内視鏡を行い,同定されない場合にSBCEを行うことが推奨されている 17.いずれにしても,CEはOGIBの診療において中心的な役割を果たしている.また,クローン病(crohnʼs disease;CD)においても,CEの果たす役割は大きくなってきている.CD患者では高頻度で小腸に病変を有しており,生物学的製剤の登場に伴い,治療目標が従来の臨床的寛解から粘膜治癒へ移行したことで,SBCEによる小腸粘膜評価がますます重要となっている.CDにおいては,前述のように滞留のリスクがあるため,PCによる開通性評価が不可欠であり,病態に応じて,バルーン内視鏡,小腸造影,CT enterography,MR enterographyなどを使い分けて診療していくべきであるが,狭窄を有さないCD患者においてはSBCEは中心的な検査となりうる.日本消化器病学会(The Japanese Society of Gastroenterology;JSGE)の炎症性腸疾患診療ガイドラインにおいても,SBCEは消化管開通性を有するCDの小腸活動性病変,術後再発病変の評価における実施を推奨している 18.その他,SBCEは小腸腫瘍・ポリープの診断やPeutz-Jeghers症候群といったポリポーシスの診断および経過観察において有用である 19),20

現在SBCEは,第三世代となるPillCamSB3カプセルが広く用いられている.PillCamSB3は,カプセルの移動速度に応じてフレームレートを調整する機能(adaptive frame rate;AFR)が搭載されており,秒速2枚~6枚の撮影が行われる.AFRにより,重複画像を減らし 21,カプセルの移動が速いとされる十二指腸下行脚やTreitz靭帯接合部通過後の空腸上部 22,またカプセル停滞直後に認められることの多いカプセルの高速移動時に生じうる未撮影部を減らすことを可能としている.PillCamSB3カプセルの画像解析はRAPID8で行う.読影は,①プレビュー,②レビュー,③解析・レポート作成の手順で行う.ランドマークを設定することで,カプセル軌跡(localization),SBプログレスインジケータ,カプセル推定移動距離が表示され,病変部位の推定に有用である.血管病変や小腸出血が疑われる場合には,赤色領域推定表示が有効である.SBCEは生理的な条件,すなわち送気がない状態での観察により,通常内視鏡とは病変の描出状態が異なる場合が多いことや,病変の一部しかみえていない状態で判断する必要があるといった特徴を有するため,読影に際してはトレーニングが必要である.

b)CCE

CCEの適応は従来,①大腸内視鏡検査が必要であり,大腸ファイバースコピーを実施したが,腹腔内の癒着等により回盲部まで到達できなかった場合,②大腸内視鏡検査が必要であるが,腹部手術歴があり癒着が想定される場合等,器質的異常により大腸ファイバースコピーが実施困難であると判断される場合に限られていたが,2020年3月の診療報酬改定に伴い,特定の病態・疾患を有し,身体的負担のため大腸ファイバースコピーが実施困難な患者に対して適応が拡大されたことで,本邦において実施件数が増加することが期待される.CCEは,大腸腫瘍性病変のスクリーニングが主な目的となるが,近年,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の活動性評価における臨床的有用性を検討した報告が相次ぎ,UCの疾患活動性,罹患範囲を評価するツールとして選択肢の一つとなりうる 23)~25.しかし,大腸内視鏡より前処置服用量が多いことによるUC再燃や悪化のリスクやUC関連癌のサーベイランスには不向きであることなどの課題も存在する.JSGEの炎症性腸疾患診療ガイドラインには,CCEはUCの罹患範囲・疾患活動性の評価に有用であり,大腸内視鏡検査の代替検査として選択肢の一つであると位置づけられている 18

CCEは,第2世代となるPillCam COLON2が用いられている.視野角172度のレンズを両側に搭載し,ほぼ360度の観察が可能となっている.AFR機能が搭載され,カプセルの移動スピードに合わせて1秒あたり4枚~35枚の撮影が行われる.読影はPillCamワークステーションであるRAPIDにて行う.肝湾曲部,脾湾曲部を自動で認識する機能を備えており,上行結腸・横行結腸・下行結腸~直腸の3セグメントに区分けされるため,病変部位の大まかな把握が可能となる.また,polyp size estimation機能により,病変との距離に関わらず病変のサイズを測定することが可能であり,治療適応の決定に有用である 26

CCEの読影に関して,SBCEとの相違点としては,①管腔が広いこと,②粘膜ヒダが存在するという構造の違いにより死角部が多いこと,③洗浄度が読影精度に影響すること,④カプセルが順方向のみでなく逆行することも多いこと,⑤カプセル両端にカメラが存在するため,両面の画像を確認する必要があること,などがあげられる.一方で,日常診療の中で大腸内視鏡検査に携わっている内視鏡医,看護師,内視鏡技師にとって比較的見慣れた内視鏡像であるため,読影を開始するハードルは低いと考えられる.主な対象病変は大腸腫瘍性病変であり,疾患頻度が高く,前述のとおり2画面分の読影を要することから,SBCEに比して読影時間が長くなる傾向があり,読影支援の重要性はますます高いものと考えられる.

Ⅲ カプセル内視鏡読影支援技師

看護師によるCE読影については数多く報告されている.SBCEの読影において,医師と読影経験の豊富な内視鏡看護師とでは,同等の正確性を有すると報告されており 27)~29,看護師による一次読影の後,医師は指摘された異常所見のみの評価を行うことが認容されうると報告されている 30.看護師による一次読影は費用対効果に優れ,医師の読影時間を短縮する可能性についても報告されている 31.ESGE(The European Society of Gastrointestinal Endoscopy)やBSG(British Society of Gastroenterology)/JAG(Joint advisory Group on Gastrointestinal Endoscopy)のガイドラインにおいても,看護師やその他の医療スタッフによる読影や読影資格認定を推奨している一方で,読影能の評価基準や資格認定基準については言及されていないのが現状である.また,ESGEでは最終的な診断レポートの作成は医師が行うべきであると記載されている 32

CCEにおいても,読影に精通した内視鏡看護師は医師と同等のポリープ検出能を有し,内視鏡看護師の読影により,医師の読影時間の削減と診断能の向上に寄与するとの報告がされている 33.しかし,世界的にはCCE読影についても確立されたトレーニング方法や資格認定基準は定められていないのが現状である.本邦では,JACEによりe-learning(electronic learning platform for colon capsule endoscopy;ELCCE)が作成されている.読影能獲得のための指導的な内容と実際のCCE画像を用いたケーススタディからなる7段階の実習過程で構成されており,カプセル内視鏡の読影経験の有無に関わらず,CCE読影能力を大幅に向上させることが示されている 34

CEの需要拡大,読影医の不足といった現状においては,看護師をはじめとする読影支援技師の必要性はますます高まるものと考えられる.JACEの規定するカプセル内視鏡読影支援技師制度について概説する.

a)カプセル内視鏡読影支援技師制度

JACEは,医師のカプセル内視鏡の読影業務支援を目的に,2013年4月よりカプセル内視鏡読影支援技師制度を設けている 12.読影支援技師は看護師,臨床検査技師,診療放射線技師,薬剤師,衛生検査技師,臨床工学技士や日本消化器内視鏡学会認定技師を有する准看護師といったメディカルスタッフが,学会の定める認定基準を満たすことで登録される 13.読影支援業務内容に一定の決まりはないが,業務内容としては,カプセル内視鏡画像の一次読影が想定される.二次読影を行う医師は,全画像データを二次読影する場合と,読影支援技師の拾い上げたサムネイルを確認し,レポート作成を行う場合とが考えられる.後者の場合は,読影支援技師の読影スキル向上維持のための教育指導体制と読影能の評価基準が必要不可欠である.

b)読影支援技師の教育

JACEは,小腸カプセル内視鏡読影支援技師資格の新規取得には,学会会員の指導の下,SBCEの画像診断支援を年間10症例以上の経験とSBCE向けのe-learning 35の受講を必須としている.同様にCCE読影支援技師の認定基準として,CCEの画像診断支援の年間5症例以上の経験とCCE向けのe-learning 35の受講を必須としている.

また,4年毎の資格更新が必要であり,更新のためにはe-learningの受講,もしくはJACEと企業共催の教育セミナーの受講を必要条件としている.上記認定,資格更新基準を設けることで,カプセル内視鏡読影に必要なスキルの習得維持を可能としている.

Ⅳ カプセル内視鏡読影支援ネットワーク

SBCEは小腸疾患の診断,治療方針決定に有用な検査であり,CCEは大腸腫瘍診断の一翼を担う可能性が期待されている.一方で,読影に際しては,読影医の時間的負担や読影に習熟した医師の不足といった課題が存在する.CE読影支援ネットワークは,CEの読影を専門に請け負う読影支援施設と,依頼施設との間で,CE画像データ,レポートを双方向に伝達する遠隔画像診断のシステムであり,読影業務負担の軽減および診断の標準化を可能にする(Figure 1).レントゲン,CT,MRIといった放射線検査画像においては,遠隔画像診断は比較的一般的であり,国内外を問わずガイドラインが作成され体制が整備されつつある 36),37.一方で,内視鏡画像の遠隔読影は未だ普及しておらず,カプセル内視鏡画像の遠隔読影の報告は少数である.後藤らにより,CEの読影ネットワークシステムについて報告され,OGIBにおけるCEによる遠隔読影診断からバルーン内視鏡を含めた診断・治療のネットワークの有用性が報告された 10.読影支援システムを構築するにあたり,最も重要な課題は,病院間での画像,レポートの輸送方法である 11.医療データの輸送方法には,匿名化した画像データやレポートを,USBを用いて輸送するUSBシステム,VPN(Virtual Private Network)回線を用いてデータ輸送を行うVPNシステム,クラウド上で画像およびレポートのやり取りを行うクラウドシステムが利用されている.各輸送システムの特徴についてTable 1に記載する.また,読影支援施設においては,効率的な読影システムの確立と読影支援技師を含めた読影担当スタッフの読影スキルの維持向上に対する取り組みが不可欠となる.

Figure 1 

カプセル内視鏡読影支援ネットワークと読影支援施設における読影体制.

Table 1 

データ輸送方法の特徴.

a)データ輸送方法

ⅰ)USBシステム

画像データ,読影レポートをUSBに記録し,暗号化したうえで宅配便を用いて輸送する方法である(Figure 2).ファイルはRAPIDソフトウェアで展開し,読影を行う.USBシステムは,導入が容易である一方で,メディア搬送に第3者が介入するため,紛失・破損といったリスクやセキュリティ管理に懸念があること,郵送にかかる時間やコストといった課題が存在する.とくに輸送に要する時間は最大の律速となり,小腸出血といった緊急性の高い疾患であった場合は,診療に求められるスピードで読影支援を行うことは困難である.

Figure 2 

USBシステム.

ⅱ)VPNシステム

VPNシステムは,閉鎖型の光回線を検査実施施設と読影施設間で結び,データ転送を行う方法である(Figure 3).VPNにより,セキュリティの強化とデータの移動に要する時間が短縮され,概ね1時間以内でデータの授受が可能となった.しかし,設置費用のコストとシステム構築までにかかる時間が課題としてあげられる.

Figure 3 

VPNシステム.

ⅲ)クラウドシステム

クラウドシステムは,依頼施設と読影施設間でクラウドを用いて,画像データおよび読影レポートを授受するシステムである(Figure 4).クラウドストレージにVPNを用いてCEデータをアップロードし,そのファイルを読影者が閲覧,読影することができる.クラウドシステムの特徴として,設置費用が安価であり,システム構築時間が短いといった利点があるが,施設によってはセキュリティポリシーの問題により,導入が容易でない場合も想定される.

Figure 4 

クラウドシステム.

b)読影施設における読影体制

読影支援施設には,正確な読影レポートを速やかに依頼施設に返信することが求められる.正確な読影レポート作成のためには,読影支援技師と読影に精通した医師の複数名による読影,レポートチェックが望ましい.具体的には,読影支援技師が一次読影を行い,医師が二次読影を担当する(Figure 1).読影支援技師の読影スキルが十分であれば,医師はサムネイルのチェックおよびレポート作成のみを行う運用も可能である.読影支援施設における読影業務負担軽減のための体制作りも重要であり,読影支援技師は多職種で構成し,診療時間内の決められた日時時間帯で読影を担当することが望ましい.そうすることで,各診療部門における通常の業務への影響を最小限にし,無理なく読影を行うことができると考えられる.そのためには,読影支援施設においては,読影支援技師の人数の確保が必要となる.読影医は,技師による一次読影後に二次読影を行うことで,ランドマーク設定といった読影のルーチン業務やサムネイルの抽出,所見の記載などの作業負担が軽減されるため,比較的短時間で読影を行うことが可能と考えられる.レポートは原則1-2週間以内に依頼施設に返送するが,活動性出血など緊急の介入を要するような所見を認めた場合は,判明した時点で依頼施設にその旨を伝え,可及的速やかにレポート返信を行うことが望ましい.そのためには,一次読影を担当する技師と医師との間で,シームレスな連携をとる必要があると考えられる.

c)今後の展望と課題

CE読影支援ネットワークは,CE普及のために解決すべき諸問題の打開策になりうるシステムであると考えられる.すなわち,検査実施施設における読影負担の軽減,CE読影診断の標準化を可能とする.VPN回線やクラウドを用いたデータの授受により,データ輸送に要する時間が短縮されたため,遠隔地であっても読影支援を行うことが可能となり,医療過疎地域やCE読影医が不足した地域においても,CEを用いた診療が可能となりうる.将来的には地域・国を超えた連携も可能となると考えられる.一方で,一施設で読影可能な件数は限られる点や読影支援施設における負担増加といった課題も存在する.さらなる普及のためには,読影支援施設数の増加や読影体制の効率化が必要である.そのためには,前述した読影支援技師の存在や読影担当医師および技師の読影能力の維持向上が不可欠であることに加え,今後は人工知能(artifical intelligence;AI)など人の支援を機械学習で補うことが期待される.実際,これまでにSBCEでは小腸粘膜障害,血管拡張症,ポリープなどを検出・識別するモデルが開発,報告されている 38),39.今後CE読影において,AIによる高精度の病変自動検出システムが登場すれば見逃しを防ぎ,読影負担を軽減することができ,CE読影コストを低下させることが期待できる.

これからの読影支援ネットワークは,読影支援施設においては,読影支援技師との連携やAIなど先進的な技術を駆使し効率的かつ正確な画像読影を行い,さらには読影のみではなく,有所見時の対応や治療必要時の患者紹介などの医療連携を含めた診療ネットワークとして機能することが期待される.

Ⅴ おわりに

CE読影支援の現況と課題について概説した.CE読影支援センターにより,読影業務の負担軽減や診断の標準化が可能となり,CEのさらなる普及が期待される.読影支援施設においては,読影支援技師を含めた読影体制の整備および読影スキルを維持向上させるための教育体制が重要と考えられる.また今後,地域を超えての読影支援の拡大や読影のみならず治療も含めた診療ネットワークの構築が必要となる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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© 2022 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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