GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
[title in Japanese]
[in Japanese][in Japanese][in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML
Supplementary material

2022 Volume 64 Issue 3 Pages 284

Details

 

Radial Incision and Cutting(RIC)法は,2012年にMutoらによって報告された内視鏡的狭窄解除術である 1.RIC法は食道癌術後の難治性吻合部狭窄に対し,安全かつ有効な治療としている 1.一方,直腸癌術後狭窄などの直腸狭窄に対しては,内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilation:EBD)や用手的拡張術が行われているが,高度の瘢痕を伴う狭窄では短期間のうちに再狭窄をきたし治療に難渋する可能性がある 2.佐々木らは下部消化管狭窄に対しRIC法の有効性を初めて報告し 2,永田らは大腸癌術後吻合部狭窄に対しRIC法は安全かつ低侵襲に施行でき,大腸癌術後狭窄に対する治療法の選択肢の1つであると報告している 3.またMoroiらはクローン病の回盲部切除術後腸管狭窄に対するRIC法の有効性を報告している 4.本症例においても直腸癌術後吻合部狭窄に対しRIC法が有効であったので報告する.症例は60歳代,男性,直腸Rbの2型直腸癌に対し当院外科に紹介となり,術前補助化学療法(XELOX+Cmab:4コース)が施行された.施行4カ月後に原発巣が縮小し,腹腔鏡補助下内肛門括約筋切除術,回腸人工肛門造設術が行われた.術後半年後に人工肛門閉鎖術を予定したところ,直腸指診にて吻合部狭窄が疑われ精査目的に当科紹介となった.下部消化管内視鏡検査を施行したところ,吻合部に膜様狭窄を認め,ガストログラフィンによる造影検査で狭窄長は3mm程度であった.まずはEBDを行いCRE PRO 8-10mm balloonを用いて拡張したところ,1atmの時点で肛門部痛が増強し中断した.EBDでは疼痛が強く十分な加圧が困難と考え,RIC法を施行した(動画 1).狭窄部にIT knife 1を挿入し,膜様狭窄に切開を入れ,その周囲の瘢痕部を削り取るように空間を広げていった.切開と削り取りを繰り返し,GIF-260Jのフード付きが挿入可能となった.狭窄予防のトリアムシノロンアセトニド局注を行い合併症なく終了した.術後も活動性出血や肛門部痛なく経過し,治療4日後に退院した.治療1カ月後も直腸指診にて示指のDIP関節部まで挿入可能であり,人工肛門閉鎖術が施行された.以降,再狭窄なく経過良好である.

動画 1

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

電子動画

動画 1 RIC法.

狭窄部にIT knife 1を挿入し,放射状に切開を入れていった.次に各々の切開部をつなぐように,瘢痕を削り取った.切開と削り取りを繰り返して空間を広げていき,最終的にGIF-260Jのフード付きが挿入可能となった.

文 献
 
© 2022 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top