GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
CLINICAL SIGNIFICANCE OF ESOPHAGOGASTRODUODENOSCOPY IN PATIENTS WITH ESOPHAGEAL MOTILITY DISORDERS (WITH VIDEOS)
Masaki MATSUBARANoriaki MANABEMaki AYAKIJun NAKAMURATakahisa MURAOMinoru FUJITAMasahiko KUINOSETomoki YAMATSUJIYoshio NAOMOTOKen HARUMA
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML
Supplementary material

2022 Volume 64 Issue 3 Pages 313-322

Details
要旨

【目的】この研究の第一の目的は,嚥下困難感を訴える食道運動障害患者のEGDによる診断率を明らかにすることである.第二にその診断に有用なEGD所見を特定することである.

【方法】嚥下困難感患者380例を対象に,EGD施行後,高解像度食道内圧検査(high-resolution manometry:HRM)を行った.EGD所見は食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道拡張,食道痙攣を疑う収縮,非閉塞性収縮の5つの指標を用いて評価した.なお,HRM診断はシカゴ分類(v3.0)に基づいて行った.

【結果】食道運動障害患者の64.4%に上記のEGD所見のいずれかを認め,その所見は食道運動障害のタイプによりそれぞれ異なっていた.シカゴ分類(v3.0)のDisorders with EGJ outflow obstructionとMajor disorders of peristalsisでのEGD異常の割合は,HRM正常者に比べて有意に高かった.多変量解析の結果,食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道痙攣を疑う収縮,非閉塞性収縮が食道運動障害と有意に関連していることが判明した.これらのEGD所見を用いた食道運動障害の検出における感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率は,それぞれ75.1%,86.6%,84.8%,77.8%であった.

【結語】Disorders with EGJ outflow obstructionやMajor disorders of peristalsisはEGDでスクリーニング可能である.いくつかの内視鏡所見の中で,食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道痙攣を疑う収縮,非閉塞性収縮は特に有用な所見と考えられた.

Ⅰ 導  入

嚥下困難感は日常診療で経験する最もありふれた症状の1つであり,同症状が持続すると患者の生活の質(quality of life:QOL)が低下することが明らかとなっている 1),2.また,嚥下困難感を訴える患者の診療では悪性腫瘍の除外が重要である.なぜなら,いくつかの研究において,嚥下困難感を訴える患者の4-15%に癌の合併を認めると報告されているからである 3),4

一方,機能性疾患による嚥下困難感は,老年者だけではなく若年人にも起こる 5.われわれの以前の研究では,日本の大学病院の消化器センターを受診した患者の3.5%に嚥下困難感を認め,そのうちの11.3%に食道運動障害が見られた 6.以上のことから,食道運動障害は癌とともに嚥下困難感の重要な要因と考えられる.

現在,様々なタイプの食道運動障害が高解像度食道内圧検査(high-resolution manometry:HRM)により診断されるようになった 5.実臨床において,上部消化管内視鏡(EGD)が食道や胃の悪性腫瘍の発見に有益であることは知られている 7.しかし,今日に至るまで,食道運動障害患者におけるEGDの臨床的重要性を調べた研究はほとんど見られていない 8.EGDで悪性腫瘍だけでなく食道運動障害を同時に発見することができれば理想的と考えられる.

この研究の第一の目的は,嚥下困難感を訴える食道運動障害患者のEGDによる診断率を明らかにすることである.第二にその診断に有用なEGD所見を特定することである.

Ⅱ 方  法

対象患者

この研究で,われわれは,2011年9月~2018年12月の期間に川崎医科大学を受診した,嚥下困難感を主訴または症状の1つとして訴え,われわれがこれまでに有用であると検証した消化器症状の問診票(7段階リッカート尺度)で4点以上だった患者を対象とした 6.すべての患者はEGDを鎮痙剤を用いずに行い,その後HRMを行った.外来担当医の診察に加えて,必要に応じて血液検査,腹部超音波検査をEGDの前に行い,腹部超音波やEGDで器質的異常を認めた患者は研究対象から除外した.また組織学的に好酸球浸潤を認める患者 9,糖尿病,重症筋無力症,強皮症,パーキンソン病のような全身性の特筆すべき代謝性疾患,神経系疾患を有する患者も除外した.上部消化管手術歴がある患者も除外した.食道運動障害に対し,カルシウム拮抗薬による治療や,内視鏡的バルーン拡張,経口内視鏡的筋層切開術(peroral endoscopic nyotomy:POEM)などの治療を行われている患者も除外した.アコチアミド塩酸塩水和物,ドンペリドン,イトプリド塩酸塩,メトクロプラミド,モサプリドクエン酸塩はHRMの1週間前に休薬した.プロトンポンプインヒビター(proton pump inhibitor:PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Pcab)の使用は許容した.なお,検査時のベンゾジアゼピン系薬による鎮静は,患者が希望した場合にのみ行った.

この研究は川崎医科大学の倫理委員会に承認され(承認番号3664),事前に研究目的での医療記録の使用を認められていた.

症状の評価

EGD施行前に,症状は有用性が検証されている自己評価問診票で評価した 5),6),10.これは患者に7段階リッカート尺度方式で嚥下困難感の頻度を点数化するよう質問した.われわれの以前の研究に従い,4点以上を有意な症状と考えた 5),6),10.なお,嚥下困難感については,“飲みこむ時に喉や胸に食べものがひっかかりますか”と質問した 5

内視鏡的評価

2人の内視鏡医(NMとKH)によって行われた.彼らは日本消化器内視鏡学会に所属し,その専門医を所得し,20年以上のEGD歴を有していた.EGDは通常通り,食道,胃,十二指腸の順に観察を行った.それが終了した後,その内視鏡医が食道運動を評価し,所見に記載していった.中部食道と下部食道と下部食道括約筋を観察した後,次の5つのEGD所見を記録していった.

①食道胃接合部通過時の抵抗,②食道内残渣,③食道拡張,④食道痙攣を疑う収縮,⑤非閉塞性収縮(電子動画1).

電子動画1

Figure 12に典型的EGD所見を示す.日本食道学会ガイドラインに従い,もし一視野内で食道壁の全周が観察できない時には食道拡張と診断した(Figure 1-c 11.食道痙攣を疑う収縮は,螺旋状の粘膜ひだ(Figure 1-d)か,環状の収縮輪(Figure 1-e)が観察された時に診断した(電子動画2).それぞれのEGD所見は,少なくとも1つでも検査中に観察された時は陽性と判断した.

Figure 1 

食道運動障害の典型的内視鏡所見とそれに対応するHRM所見.

a:食道胃接合部通過時に抵抗あり.HRM診断ではEsophageal achalasia.

b:食道内残渣.HRM診断はAbsent contractility.

c:食道拡張.HRM診断はEsophageal achalasia.

d:食道痙攣を疑う収縮.HRM診断はDistal esophageal spasm.

e:環状収縮輪.HRM診断はJackhammer esophagus.

Figure 2 

閉塞性収縮(上)と非閉塞性収縮(下)の典型的な内視鏡所見.

閉塞性収縮は最大収縮時に観察される食道内腔に隙間がないことで診断される.

対して,非閉塞性収縮は最大収縮時に観察される食道内腔の隙間があることで診断される.

電子動画2

すべてのEGD画像は,ランダムな順(blindで)に別の3人の著者ら(MM,MA,MF)により見直された.見直しの際には,患者の名前も臨床診断も分からない様にした.もし診断が一致しない場合は,その患者の結果は除外した.

研究で使用した高感度白色光内視鏡は,GIF260シリーズ,GIF290シリーズ(共にオリンパス社製),またはEG-L580NW(富士フイルム製)であった.

食道内圧検査

HRMはSandhill Scientific INSIGHT G3 with UNI HRiM2 Probe(Diversatek Healthcare社製)を用いた.今回の研究で使用した内圧プローブは,32個のリング状の圧センサーと16個のインピーダンスチャンネルを持ったHRiM2高感度インピーダンスマノメトリーカテーテルだった(model number UNI-ESO-WG1A1).

HRM診断はシカゴ分類(v3.0)に従って診断した 10.EGDとHRMの間隔は長くても10日だった.HRMで食道運動障害と診断する時,われわれの先行研究に基づいた正常値を使用した.それは積算弛緩圧と積算遠位収縮がそれぞれ2.5-23.5mmHg,606-4,998mmHg・s・cm(5-95パーセンタイル)だった 11

統計分析

データは平均値±標準偏差で示した.studentTテストは2つの独立したグループの平均値を比較する際に使用した.分類されたデータを比較する時は,Yatesのchi 2乗検定かFisherの正確確率検定を行った.

5つのEGD所見の判断における観察者内や観察者間の誤差も計算した.kappa統計での95%信頼区間がCohenʼs kappa計算によって算出された.kappa値は≤0.20,poor;0.21-0.40,fair;0.41-0.60,moderate;0.61-0.80,substantial;0.81-1.00,almost perfectと評価した.

ロジスティック回帰分析は,食道運動障害とEGD所見との関連においてオッズ比や95%信頼区間を計算する際に使用した.すべての要素を含めた多変量ロジスティック回帰分析は,食道運動障害に関連した単変量分析を用いて解析された.すべての分析において有意差はP<0.05とした.すべての統計学的分析はSPSS統計パッケージバージョン17(IBM社製)を用いて行った.

Ⅲ 結  果

患者背景

380名の中で3名がEGD画像不良のため除外された.さらに6名が評価者間でコンセンサスに至らず除外された.最終的に253名が食道運動障害を認め,118名が正常なHRM所見だった.371人中352人(94.9%)は後咽頭に局所麻酔を行った.134人(36.1%)はベンゾジアゼピン系薬による鎮静を行った.この鎮静は,食道運動障害253人中90人(35.6%)で,正常なHRM 118人中44人(37.3%)だった.ケタミンやセボフルランのような他の鎮静薬はすべての症例で使用しなかった.

Table 1に示されているように,最も多かった食道運動障害はEsophageal achalasiaで,次いでIneffective esophageal motility,Distal esophageal spasmだった.127名のEsophageal achalasiaのうち,79人はtypeⅠ,34人がtypeⅡ,14人がtypeⅢに分類された.

Table 1 

各食道運動障害におけるEGD異常所見の割合.

食道運動障害を3つの亜型に分類した時,Disorders with EGJ outflow obstructionは55.7%,Major disorders of peristalsisは17.4%,Minor disorders of peristalsisは26.1%であった.

各食道運動障害で認めるEGD所見

HRMで食道運動障害と診断され嚥下困難感を訴える患者の中で,今回定義したEGD所見を有した割合は64.4%であった.そして,Table 1Table 2で詳しく示しているように,これらのEGD所見は各食道運動障害でそれぞれ異なっていた.食道運動障害に関連した内視鏡所見の中で,非閉塞性収縮が最も多く見られた.

Table 2 

各食道運動障害のEGD所見の詳細.

Disorders with EGJ outflow obstructionとMajor disorders of peristalsisの時のEGD異常の割合は,HRM正常だった症例より有意に高かった(Disorders with EGJ outflow obstructionとMajor disorders of peristalsisの時はEGDで83.7%が異常所見を認めたのに対し,HRM正常では11.9%しかEGD異常は認めなかった.P<0.05).それに対しMinor disorders of peristalsisのEGD異常はHRM正常のEGD異常と有意差がなかった.

同一検者での5つの内視鏡所見の結果に関するkappa値は0.80(95%CI 0.43-1.17)で,十分な診断の一致率を示した.さらに,2人の内視鏡専門医による検者間の診断のkappa値は0.73(95%CI 0.42-1.05)で,これも十分な一致率を示した.1人の内視鏡専門医と1人の非内視鏡専門医の内科医での診断のkappa値でも0.67(95%CI 0.32-1.01)であり,中等度の診断の一致率が示された.

各食道運動障害とEGD所見との関係

われわれの過去の研究結果に加え,これまでの報告で,Minor disorders of peristalsisは健常者でも出現し得ると報告されている 10.そのため,われわれは分析からMinor disorders of peristalsisを除外した.

Table 3では各食道運動障害での多変量ロジスティック回帰分析を示している.EGJ outflow obstructionとAbsent contractilityの2つの食道運動障害以外はすべて,それぞれ1-3つの関連したEGD所見を有していた.そしてさらに,これらの特徴的なEGD所見の重要性は各食道運動障害でそれぞれ異なっていた.興味深いことに,Esophageal achalasiaの亜分類のEGD所見もそれぞれ異なっていた.Esophageal achalasiaの3つの亜分類の中で,typeⅠは最もEGD異常所見の数が多かった.

Table 3 

各食道運動障害の多変量ロジスティック回帰分析.

食道運動障害全体とEGD所見との関係

もし少なくともこれらの5つの所見のうち1つが陽性であった時,患者が食道運動障害と診断できるかどうかの,感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率はそれぞれ,感度75.1%(95% CI:70.9-78.6),特異度86.6%(95% CI:82.4-90.0),陽性的中率84.8%(95% CI:80.0-88.7),陰性的中率77.8%(95% CI:74.0-80.9)であった.

Table 4は,各EGD所見が食道が異常な運動をしている患者で頻回に観察されることを,単変量ロジスティック回帰分析で明らかにしている.多変量ロジスティック回帰分析を行うと,食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道痙攣を疑う収縮や非閉塞性収縮が,食道運動障害に関連した有意なEGD所見であることが分かった.

Table 4 

食道運動障害全体のロジスティック回帰分析.

Ⅳ 考  察

この研究は3つの新たな所見を発見した.

まず第一に,食道運動障害で嚥下困難感を訴える患者の64.4%にEGD異常所見が見られ,これらの特徴的EGD異常所見は各食道運動障害によって所見が異なるということである.

第二に,Disorders with EGJ outflow obstructionやMajor disorders of peristalsisはEGDでスクリーニングできるということである.

第三に,食道運動障害に関連したEGD所見の中で,食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道痙攣を疑う収縮や非閉塞性収縮が,有意に有用なものと考えられることである.

各食道運動障害における多変量ロジスティック回帰分析によって,EGJ outflow obstructionとAbsent contractilityの2つの食道運動障害以外はすべて,それぞれ1-3個の関連したEGD所見を持ち,その違いが各食道運動障害と関連していることが明らかになった.

5つのEGD所見はEsophageal achalasiaで記載される所見と重複しているが 12,これらの所見がEsophageal achalasiaの各タイプでどの程度重要なのかということや,臨床的にEsophageal achalasia以外の食道運動障害に適応できるのかについては,これまで不明な点が多かった.

われわれはこの研究で,これらの所見が臨床的にEsophageal achalasia以外の食道運動障害にも適応できることを確認し,各所見が違った異常の検出に力を発揮することを明らかにした.

それゆえ,われわれはこの研究結果は臨床的に重要と考える.日本では内視鏡専門家だけでなく専門家以外もEGDを行う.そのため,所見は一般的な手技で食道運動障害の患者を発見できる十分な感度がなければならない.われわれの結果は,この手法が一般的な手技で行われる食道運動障害のスクリーニングテストとして許容されることを示している.

食道の一次蠕動波は,二次蠕動波よりも収縮持続時間が長く,高い仕事量があり,強力とされているが 13,臨床的には,弛緩により誘発される食道収縮(すなわち二次蠕動波)も,食道クリアランスのために重要である.いくつかの研究では,二次蠕動波の障害は,Esophageal achalasiaやIneffective esophageal motility,強皮症での食道硬化の増強や筋収縮不全が原因であると報告されている 14),15

この研究では,非閉塞性収縮は食道運動障害のある嚥下困難感を訴える患者の重要な所見であった.非閉塞性収縮の臨床的重要性を明らかにするために,われわれは追加で,ランダムに選んだ30人の食道運動障害の患者と30人の健常者を,年齢,性別を調整し,非閉塞性収縮の陽性率を分析してみた(20例はEsophageal achalasia,2例はEGJ outflow obstruction,5例がDistal esophageal spasm,2例がJackhammer esophagus,1例がAbsent contractility).すると,食道運動障害のある患者の非閉塞性収縮所見の割合(60.0% 18/30)は健常者に比べかなり高かった(20.0% 6/30;P=0.003).われわれはまた,何人かのtypeⅠ,typeⅡ Esophageal achalasia患者のEGD中の食道の収縮活動を観察した経験から,非閉塞性収縮がpanesophageal pressurization(全食道昇圧)のさらなるメカニズムかもしれないと考えている 16.従来の内圧検査は非閉塞性収縮の診断には有用ではないと言われる.輪状筋の収縮が食道内腔の閉塞の原因だが,縦走筋は原因ではない.現在でも非閉塞性収縮のメカニズムは分かってない.しかし,われわれは輪状筋と縦走筋の協調異常が原因なのではと考えている.しかし,これにはさらなる研究が必要である.

この研究には6つのlimitationがある.

まず第一に,参加患者の食道運動障害の分類によるバイアスの可能性である.しかし,これまで日本で行われてきた分類結果に準じており 6),17),18,われわれの研究コホートもそこから大きく逸脱しているわけではない.このため主要なバイアスとはならないだろうと考える.

第二に,鎮痙剤なしでEGDを行ったが,必要時はベンゾジアゼピン系薬で鎮静は行った.しかし,以前の食道内圧研究ではベンゾジアゼピン系薬による鎮静は食道運動にわずかな影響しか与えなかった 19),20.現在の研究でも,ミダゾラムで鎮静したとしても,典型的な正常所見や異常運動所見が観察されている.しかし,無意識での嚥下運動による一次蠕動波への影響は除去しきれないので,さらなる研究が必要だろう.

第三に,食道の観察時間,観察部位や,送気量が,この研究結果に影響を与えているかもしれないということである.これは後ろ向き研究なので,われわれはすべての症例でこれらの環境を標準化することはできなかった.しかし,2人の内視鏡医は日本消化器内視鏡学会員でその専門医の資格を有し,20年以上のEGD歴を持っている.すべてのケースで,食道観察は10-15秒で,観察部位は中部~下部食道だった.十分な経験があれば,観察時間,食道観察部位,送気量で大きな誤差は生じないと考える.しかし,前向き研究は必要だろう.

第四に,EGD最終診断で報告書と静止画像が使われていることである.この研究でのEGD所見は静止画の評価だった.なぜなら動画は食道胃接合部通過時の抵抗を見る場合以外では必要ないからである.それゆえ全体としては,これらの制限は研究結果には影響を与えていないと考えている.しかし,内視鏡動画を用いたさらなる大規模な研究は,われわれの結果を確認するためには必要である.

第五に,われわれは内視鏡所見の再現性を確認してなかった.なぜなら,これは後ろ向き研究だからである.食道蛍光観察が食道運動障害において異常の再現性があるという報告もある 21

しかし,現在の研究ではMajor disorders of peristalsisの患者の食道内圧所見は一定ではないと言われており,内視鏡所見も患者次第で変化するだろう 22.内視鏡所見の一貫性は,将来,重要な臨床疑問として調査されるだろう.

最後に,この研究での正常な食道運動の患者は,必ずしも正常であることを証明していない点である.なぜなら,われわれは複数回の急速嚥下や急速飲水テスト,食事テスト,腹部圧迫などの侵襲的なテストをしていないからである.しかし,これらの侵襲的な手法は食道運動の評価には補足的な役割しか果たさないと考える.こうした判断の妥当性や上記テストをすべきか否かを決めるには,前向き研究が必要と考える 23

結論として,この研究で,食道運動障害のある嚥下困難感を訴える患者の64.4%にEGD異常所見を認めることと,食道運動障害を見つけるための有用なEGD所見が明らかになった.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

研究助成:この研究はわれわれの所属施設の研究費によって行い,公的基金や非営利団体から特別な助成は受けなかった.

補足資料

以下の補足情報を,この論文のオンライン版で見ることができる.

電子動画1 典型的な非閉塞性収縮.

電子動画2 典型的な食道痙攣を疑う収縮.

文 献
 
© 2022 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top