GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2022 Volume 64 Issue 3 Pages 323-326

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概要

沿革・特徴など

聖路加国際病院は,1900年に米国聖公会宣教医師として来日したルドルフ・トイスラー博士によって,1902年に開設された.約520床の病床数を有する特定機能病院である.ウォークインから3次救急までを診療するER型救命センターが大きな特徴であり,年間約1万件の救急車受け入れを行っている.1992年新病院開設時消化器センター内視鏡室として開設され,2007年5月に改築され現在に至る.

組織

消化器センター内視鏡室として独立しており,消化器内科医師および内視鏡検査技師と看護師が従事している.消化器内科医師は,出身大学なども多様であり,また各自の専門問わず全員が内視鏡業務を行っている.看護師は外来担当看護師が兼任している.内視鏡検査技師は臨床検査技師であり,内視鏡室専従である.業務として検査・治療介助,洗浄消毒,機器管理,物品管理を行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡センターは外来エリアの2階に位置している.6つの内視鏡室を設けている.患者と技師スタッフが重ならないように配慮した導線になっている.洗浄室が独立しており時間換気が14回/時間で設定されている.透視下内視鏡検査は放射線科管轄で内視鏡センターの真下の1階に位置している.

スタッフ

(2021年8月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医2名,消化器内視鏡学会 専門医2名,その他スタッフ3名,非常勤医師(指導医を含め)3名

内視鏡技師:Ⅰ種4名,その他技師(臨床検査技師8,派遣看護師1名)9名

看護師:常勤19名,非常勤3名

事務職:2名

 

内視鏡室スタッフ

設備・備品

(2021年8月現在)

 

 

実績

(2020年4月~2021年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院の内科全体の研修は初期研修・後期研修1年目が縦割りで病棟チームを編成し,後期研修1年目が病棟長となり混合病棟研修を行うという珍しい研修体制をとっている.そのため,後期研修2,3年目以降に消化器内科所属となった後は,基本的には病棟業務のdutyはなく,週4日の内視鏡業務と週1日の外来業務に専念することができる.内視鏡トレーニングは基本的にマンツーマンでの指導となる.まずは上部内視鏡検査ができることが最初の目標となる.その1~2カ月後から下部内視鏡検査のトレーニングを行う.内視鏡トレーニング開始後平均5カ月前後で,これらのルーチンの手技が安定してくるが,この頃より内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)研修も合わせて始まる.ステント交換などの比較的難易度の低い症例から始まり,トレーニーの習熟度にあわせてトレーニングを行っていく.内視鏡トレーニング開始1年後より,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)研修がスタートする.胃前庭部病変などから基本的ESD手技を取得し,様々な箇所を経験する.また通常の日中・夜間ともにオンコール業務も行っている.当院は年間約1万件の救急車とその他にウォークインの患者を受け入れる救命センターを有しており,緊急内視鏡などの件数も多い.これに関しても上級医と2人体制で研鑽を積むことになる.

トレーニーの人数は年によっても異なるが常時2~3人程度である.研修ローテーションの決まった型などはなく,出会った個々の症例から,その時の熟度に応じて経験を積んでいく方針である.膨大な症例数を経験することができる(2020年度医師7年目:上部604件,下部:561件,ERCP:44件,ESD:24件).

また学会発表や論文作成も指導を行っている.学会に関しては地方会から,JDDW・内視鏡学会総会,DDWやUEGWと国内外問わず積極的に演題発表を行っている.論文に関しても,和文・英文問わず,若い学年のうちから多数報告している.特に当院では大腸憩室出血に対するEBL(Endosocpic Band Ligation)の開発をはじめ憩室出血に関する研究を多数行っており,動物実験や新デバイスの研究なども若手を中心に行っている.また病院全体が国際色強く,外国人患者が多いこともさることながら,COVID-19流行前は世界中から医学生や医師の実習や見学を受け入れていた.また,研修後にカナダなど海外での内視鏡治療ハイボリュームセンターで臨床留学を行う医師も多い.比較的自由度が高い研修が可能であるため,キャリアプランに沿った研修を行っていくことを念頭においている.

現状の問題点と今後

昨今,医療安全が非常に重要視されているが,当院ではJCI認証を取得しており,病院全体として「医療の質の向上」および「患者の安全確保」を日常的に取り組んでいる.内視鏡施行前後には医師・看護師・技師でタイムアウト・サインアウトを施行している.また鎮静剤使用時などは検査開始前に既往歴や内服歴などを含めたパフォーマンスステータス評価や,呼吸抑制時に備えた気道評価を行っている.またCOVID-19の流行により,その症状の事前評価や感染防護対策も徹底して安全な内視鏡を目指している.そして2021年8月より麻酔科と連携・調整を行い,手術室ではなく内視鏡室で挿管・全身麻酔下での内視鏡治療施行が始動した.安全かつ楽に内視鏡をうけていただけるよう,患者や社会のニーズをくみ取っていきたい.その一方で,症例あたりの内視鏡開始までの時間が増加してしまい,内視鏡需要が高い状況において内視鏡検査開始までの時間短縮も今後の課題となっている.また医師の人材確保も問題となっている.多忙ではあるが都心に位置し,緊急疾患や様々な内視鏡治療で研鑽を積むことに魅力を感じ,これまで多くの若手医師が研修を行ってきた.しかし内科新専門医制度により,都内の市中病院である当院は年々内科研修専攻医の定員が学会により削減され,この影響から消化器内科志望の専攻医が不在の年もある.さらに近年では働き方改革なども見直されており,緊急対応が日常的に生じる当科にとってはこの点も課題である.当内視鏡センターでは,内視鏡検査技師が内視鏡機器管理,物品管理,洗浄消毒を担当し,さらには内視鏡指導医の監督下でESDやERCPなど特殊検査も含めた介助全般から小腸カプセル内視鏡検査の一次読影といった業務まで担っている.これに関して当院の内視鏡運営において,特に現状の医師数が不足している中では,内視鏡技師の存在は大きい.今後もより一層,他職種との円滑な連携をとり,業務分担や効率化を目指していきたい.

 
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