GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2022 Volume 64 Issue 3 Pages 327-330

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概要

沿革・特徴

本院は,昭和58年に開院した市民の森病院を前身とし,平成15年3月に市民の森病院より106床を分離し,新たに外科系病院として宮崎善仁会病院を新築開院した.市民の森病院では,平成9年4月に総合健診センターを開設し,人間ドック内視鏡検査による胃・大腸の検診に注力してきた.令和3年1月宮崎善仁会病院を新築,同年4月に市民の森病院と合併して新たな宮崎善仁会病院としてスタートした.

新病院は,重症患者病棟8床(HCU 1),急性期病床191床(地域包括ケア病床10床を含む),合わせて199床を有する一般病院で,社会医療法人として救急医療,へき地の医療の2事業を担い,急性期医療および人間ドック・健診事業を主においている.

組織

・外来および健診部門の共有部門として運営している.

・内視鏡業務は,消化器疾患は消化器内科,消化器外科の医師により行われ,気管支鏡は別フロアのX線透視室にて呼吸器内科,呼吸器外科の医師により行われている.機器や画像の管理は内視鏡部門が一括して行っている.

・人間ドック内視鏡検査については内視鏡医不足を補うため,宮崎大学医学部附属病院消化器内科に御協力いただき非常勤医師の派遣を受けている.

検査室レイアウト(3階フロア)

 

 

 

他に1階ER室内に緊急内視鏡専用の機器,ブースがあり,気管支鏡・ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影法)などX線透視装置を必要とする内視鏡検査・処置専用に内視鏡観察装置一式を放射線部に常備している.

当内視鏡室の特徴

・3階フロアに健診部門と隣接して内視鏡エリアがある.内視鏡室は全室個室で7室あり,新病院体制がスタートして間もないことから,現状は5室を運用している.午前中は,主として3室を人間ドックに,2室を外来,入院検査に使用している.午後は,3~4室を使用し,大腸内視鏡検査やESD(内視鏡的粘膜下層剝離術),大腸ポリープEMR(内視鏡的粘膜切除術)などの治療内視鏡を行っている.

・平日,診療時間内の吐下血等に対応する緊急内視鏡は,3階内視鏡室で行い,夜間・休日の診療時間外に救急搬送された症例の緊急内視鏡は,ER室内に常設している内視鏡ブースにて施行するので,救急搬送から緊急内視鏡までの連携がスムーズに行えている.

・近年,苦痛の少ない内視鏡検査の要望が増加していることから,当院ではsedationを行う頻度が多く,回復用リクライニングチェアを20脚,ベッドを9台設置している.このうち,回復用ベッドはすべてトイレ付個室にあり,特に大腸内視鏡検査後の排便,排ガスにおいて,患者さんが安静室とトイレの行き来が無く,回復時間を安楽に過ごせるよう配慮している.

スタッフ

(令和3年10月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医1名,その他スタッフ4名

内視鏡技師:Ⅰ種5名,その他4名

看護師:常勤7名,非常勤7名

その他(内視鏡洗浄員):4名

設備・備品

(令和3年10月現在)

 

 

実績

(令和2年度:市民の森病院)

 

 

指導体制・指導指針

当院は,平成22年に指導施設として認定を受け,旧専門医制度においては,当院にて消化器内視鏡研修を行い,専門医資格申請・取得を行っていたが,新専門医制度へ移行に伴い,専門研修基幹施設としての要件を満たすことができないため,現在は宮崎大学医学部附属病院の関連施設として,専門医研修の役割を担っている.

現在,宮崎大学医学部附属病院から専攻医の常勤医派遣は無いものの,平成31年2月にJED Project参加登録を済ませ,非常勤医として当院の内視鏡に携わった専攻医の内視鏡施行実績に当院での症例を申告可能として専門医育成に寄与している.

当院は,特に健診部門にて人間ドック上・下部消化管内視鏡検査の症例数が非常に豊富で,上・下部消化管内視鏡検査を短期間で多数例経験することが可能なので,基本手技(挿入,観察,拡大観察,NBI観察,色素内視鏡,生検など)の上達に適している施設と言える.

発見された食道・胃・大腸癌症例については,当院にて術前精査,内視鏡治療,外科手術(術前マーキングや術中内視鏡など)に関わり,院内病理部門にて病理診断まで学べ,発見から精査,治療,診断,治療後経過観察まで一貫して患者を担当することで,内視鏡技能のみならず消化管腫瘍に関する総合的知識経験を得ることを指導目標としている.

内視鏡スキルの向上に関しては,指導医監督の下,内視鏡手技の習熟度を見極めながら,スクリーニング検査,精密検査,治療内視鏡とステップアップする.治療内視鏡において初めは大腸ポリペクトミーや消化管出血止血術の経験を積み,スネア操作やクリッピング技術の習熟に合わせて,ESDといった更に高度の内視鏡技術を要する処置の経験を積むことにしている.

また,毎週外科,放射線科と合同の消化器カンファレンスを開催している.術前検査のプレゼン,画像供覧,治療方針のディスカッション,手術結果のプレゼン,病理診断のプレゼン(常勤病理医により検査所見・臨床診断と病理診断の検討を行う)に参加し,画像診断や外科的,病理学的消化器疾患の理解を深めることを目標としている

現状の問題点と今後

現時点での最大の問題点は,COVID-19感染症の流行である.感染対策と感染リスクの高い内視鏡業務の両立に苦慮する日々を送っている.日本消化器内視鏡学会より提言された防護策を遵守し,当院で最も件数の多い人間ドック内視鏡検査におけるCOVID-19感染者の受診を回避し延期させていただくために感染リスクに関する問診を強化しているものの,自己申告されないケースが少なからず見受けられ,実際に人間ドック胃内視鏡検査を受けた翌日にCOVID-19感染が保健所より通知されたケースがあり,幸い検査に直接携わったスタッフに感染者は発生しなかったが,検査を受ける側の理解,協力も感染対策において重要であることを痛感している.とはいえ,検診内視鏡を停止することは癌検診という内視鏡専門施設における重要な社会的役割を損なうこととなり,本年度も逐年検診により早期発見に至った症例があり,内視鏡業務を停止することは早期診断・治療で助かるはずの命が助からなくなる事態を招き得ることをスタッフ一同に周知し,理解を得て業務を遂行している.

人員不足もまた多くの施設が抱えている重要な問題の一つであり,当院も同様である.午前中の人間ドック内視鏡件数が40件ほどで,これを内視鏡医3名で分担施行しており,常勤医の年間検査件数は1,500~2,000件となっている.日常の内視鏡業務に加え,緊急内視鏡の当番制もあり,夜間や休日の呼び出しに応じている.今後,働き方改革により当直業務後の勤務が制限されれば,現状の内視鏡件数,オンコール体制を担う内視鏡医が絶対的に不足しているので,内視鏡医の確保は喫緊の課題である.

令和3年4月,市民の森病院と旧宮崎善仁会病院が合併し,新体制の宮崎善仁会病院が発足した.がん統計においては大腸癌の罹患率,死亡率の増加が続いており,大腸内視鏡検査の需要が増加している.新病院では大腸内視鏡検査が快適に受けられる体制に特に配慮し,腸管洗浄剤内服室やトイレ数,個室回復室などの設備が充足した設計を行った.今後,宮崎における大腸癌診療に大きく貢献できる施設として発展することに尽力していきたいと考えている.

 
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