GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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Utility of contrast-enhanced harmonic endoscopic ultrasonography for predicting the prognosis of pancreatic neuroendocrine neoplasms 1).
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2022 Volume 64 Issue 3 Pages 331

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【背景と目的】膵神経内分泌腫瘍(Pancreatic neuroendocrine neoplasma:PanNENs)は,グレード1(G1)またはG2腫瘍であっても,予後不良となりうる.本研究の目的は造影超音波内視鏡検査(Contrast-enhanced harmonic endoscopic ultrasonography:CH-EUS)がPanNENsの予後を予測できるか評価することである.

【方法】本研究は,2011年12月から2016年2月の間に近畿大学にてCH-EUSを受け,外科切除または超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)によりPanNENsと診断された連続47例を対象とした.対象者は,臨床的悪性度によって侵襲性と非侵襲性PanNENsに分類した.CH-EUSの侵襲性PanNENsの診断能,造影パターンと病理学的所見の対比,PanNENsの予後予測能について評価した.

【結果】侵襲性PanNENsは19例,非侵襲性PanNENsは28例であった.侵襲性PanNENsの内訳は,G1が3例,G2が4例,G3が3例,外分泌成分との混合腫瘍(Mixed neuroendocrine non-neuroendocrine neoplasm:MiNEN)が3例,神経内分泌細胞癌(Neuroendocrine carcinoma:NEC)6例である.CH-EUSにおけるhypo-enhancementは侵襲性PanNENsを示唆する所見であり,感度94.7%,特異度100%,陽性的中率100%,陰性的中率96.6%,正診率97.9%と造影CTに比べ有意に診断能が高かった(P<0.001).G1とG2のうち,CH-EUSでhypo-enhancementを呈した腫瘍は,hyper/isoenhancementとなった腫瘍に比べ,予後不良であった(P=0.0009).切除例36例の病理組織学的検討では,CH-EUSにてhypo-enhancementとなった部位は血管が少なく,繊維化の程度が高かった.

【結語】CH-EUSはPanNENsの予後予測に有用である可能性がある.

《解説》

膵神経内分泌腫瘍(PanNENs)の年間発生率は10万人あたり0.32から0.43人で,増加傾向にある.

今回の検討では 1,G3(3例),NEC(6例),MiNEN(3例),初診時あるいは経過中に転移を認めたPanNENs(5例)および,切除標本で周囲膵実質に浸潤を認めたG1およびG2(7例)を侵襲性PanNENsとしている(重複あり).侵襲性PanNENs19例のうち11例は2cm≦であり非侵襲性PanNENsより有意に大きく(P=0.0011),侵襲性PanNENsにおける機能性腫瘍の頻度(1/19例)は非侵襲性PanNENs(11/28例)に比べ有意に少なかった(P=0.015).

PanNENsは核分裂像やKi-67指数といった増殖能によりGrade分類がなされ,<2cmの非機能性PanNENsは経過観察が可能としている報告も認める 2.しかし本検討では,G1およびG2の14.9%(7/47例)と,<2cmのPanNENsの23.4%(11/47例)が最終的に侵襲性PanNENsと診断されており,従来から行われてきたKi-67指数によるGrade分類や腫瘍径だけでは侵襲性の判定や予後の推測は困難であることを示唆している.

以前からCH-EUSにおけるhypo-enhancementは悪性腫瘍を疑うべき所見とされており 3,hyper-enhancementはPanNENs,腫瘤形成性膵炎,腎癌などの多血性腫瘍の膵転移で認められる所見である.本検討では,侵襲性PanNENsの19例中18例がCH-EUSの後期相にてhypo-enhancementを,非侵襲性PanNENsは全例がiso/hyper-enhancementを呈し,病理組織学的にhypo-enhancementとなった部位は血管が少なく,繊維化の程度が高かったことが確認されている.さらにG1およびG2において,CH-EUSの後期相でhypo-enhancementを呈した群の5年生存率(55.6%)は,iso/hyper-enhancementを呈した群(90.8%)に比べ有意に予後不良であったが(P=0.0009),造影CTの造影効果の有無(hypo-dense 1例,hyper/iso-dense 31例)では生存率に有意差を認めなかった.

以上より従来から推奨されている造影CTとEUS-FNAによる評価に加え,CH-EUSの後期相における造影効果の評価を行うことはPanNENsの予後予測に有用と考えられるが,現時点ではソナゾイドの膵腫瘍性病変に対する保険適応は認められておらず早期の適応拡大が強く望まれる.

文 献
 
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