GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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RECENT ADVANCES OF ENDOSCOPIC RETROGRADE CHOLANGIOPANCREATOGRAPHY USING BALLOON ASSISTED ENDOSCOPY FOR PANCREATICOBILIARY DISEASES IN PATIENTS WITH SURGICALLY ALTERED ANATOMY: THERAPEUTIC STRATEGY AND MANAGEMENT OF DIFFICULT CASES
Masaaki SHIMATANI Toshiyuki MITSUYAMAMitsuo TOKUHARAMasataka MASUDASachi MIYAMOTOTakashi ITOKoh NAKAMARUTsukasa IKEURAMakoto TAKAOKAMakoto NAGANUMAKazuichi OKAZAKI
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2022 Volume 64 Issue 6 Pages 1273-1286

Details
要旨

ERCPは,胆膵疾患のために確立された内視鏡の診断・治療モダリティである.しかしながら,術後再建腸管(Surgical altered anatomy;SAA)を有する患者に対するERCPは技術的に困難であったため,より侵襲的な治療法が主に選択されてきた.バルーン式内視鏡(Balloon assisted Endoscope;BAE)が開発されたことにより,このような患者に対するERCPが現実的となった.また昨今のBAEの進歩により,BAEを用いたERCP(BAE-ERCP)の成功率は大幅に向上してきた.さらに,超音波内視鏡を用いた処置(EUS-intervention)が,SAAを有する患者の胆膵疾患に対して有用であるとの報告もなされるようになり,内視鏡治療の選択肢が広がりBAE-ERCP困難症例に対するRescue Therapy(RT)としても期待されている.SAAを有する患者の胆膵疾患に対する内視鏡治療を完遂するため,BAEの特徴に基づいたBAE-ERCPの手技の標準化とBAE-ERCP困難症例の分析やRT対象症例の選択などを含めた治療戦略を確立させることが重要である.さらに,内視鏡治療を安全に行うためには,起こりうる有害事象の特徴を事前に理解し,対処できるように準備しておくことが重要である.

Abstract

Endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP) is an endoscopic modality established for diagnosis and treatment of pancreaticobiliary diseases. However ERCP in patients with surgically altered anatomy (SAA) has been difficult, and more invasive therapies have been primarily selected. The development of balloon assisted endoscopes (BAEs) innovatively facilitated ERCP in such patients. Recent advances of BAEs and other devices greatly contributed to increasing success of ERCP using BAEs (BAE-ERCP). Furthermore, interventions using Endoscopic Ultrasound (EUS-intervention) have been reported to be useful for pancreaticobiliary diseases in patients with SAA, which provide more options for endoscopic therapies and are also expected as a rescue therapy for difficult cases of BAE-ERCP. In order to thoroughly complete endoscopic treatment for pancreaticobiliary diseases with SAA, it is important to standardize the BAE-ERCP procedures based on the features of respective endoscopes and to establish a strategy for endoscopic treatment which includes analysis of BAE-ERCP difficult cases and selection of cases for rescue therapy. In addition, it is essential to be acquainted with the characteristics of possible adverse events of the procedure and to be able to deal with them for safe accomplishment of endoscopic treatment.

Ⅰ 緒  言

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は,胆膵疾患の内視鏡的診断・治療法として広く普及している 1),2.正常解剖を有する患者におけるERCPの成功率は90~95%であるが 3),4,術後再建腸管(Surgical altered anatomy;SAA)を有する患者では,ERCP関連処置まで完遂することは技術的に困難であった 5),6.そのため,今まで経皮経肝胆道ドレナージ(Percutaneous trans-hepatic biliary drainage;PTBD)や外科的治療などのより侵襲的な治療が第一選択とされてきた 7),8.2001年に小腸疾患に対する診断および治療を目的にダブルバルーン内視鏡(Double Balloon Endoscope;DBE)が開発された 9),10.バルーン式内視鏡(Balloon Assisted Endoscope;BAE)という概念が普及し,そのBAEを用いることでSAAを有する患者の胆膵疾患に対するERCPが現実的となり,BAEの有用性が多数報告されるようになった 11)~39.最近では,SAAを有する患者の胆膵疾患に対する胆膵内視鏡専用機としてショートタイプのBAEが登場し 19),32,そのBAEは良好な内視鏡挿入と従来のERCP関連処置具の使用が可能である.処置具の改良も含め内視鏡の開発と内視鏡医のスキルアップにより,ショートタイプのBAEを用いたERCP(BAE-ERCP)は,SAAを有する患者の胆膵疾患に対して第一選択の治療として確立されてきた.しかしながら,BAE-ERCP困難症例は少なからず存在し,その困難症例に対するRescue Therapy(RT)としてEUS-interventionの有用性が報告されている 40),41.本稿では,SAAを有する患者の胆膵疾患に対する内視鏡的アプローチ法としてBAE-ERCPについて概説し,EUS-interventionなどのRTを用いた困難症例に対する対応についても論じる.

Ⅱ 再建術式

胃癌(GC)は,世界で4番目に多い癌で,50%以上の症例が東アジアで発生している 42.日本をはじめとするアジア諸国では,GCに対して主に胃切除術が行われており,胃切除術後の10~30%に胆管結石が発生することが報告されている 43),44.それ故に胃切除術後の胆道系合併症は重要な問題となっている.胃切除術の代表的な再建法として,Billroth Ⅰ再建法,Billroth Ⅱ再建法(B-Ⅱ),Double tract法などがあるが,19世紀に始めて小腸のRoux-en-Y(R-Y)吻合術が導入されて以来 45,R-Y再建法が頻繁に施行されるようになってきた.

近年,早期膵臓癌の発見のために様々な工夫がなされ 46),47,手術可能な膵臓癌症例の増加に伴い,乳頭部癌や膵臓癌に対する膵頭十二指腸切除術(Pancreatoduodenectomy;PD)や幽門部温存膵頭十二指腸切除術が多数行われるようになってきた.そのために,胆管空腸吻合部の術後狭窄や肝内結石症例が増加している.PDの再建術式として,modified Child法,Whipple法,今永法などがあるが,日本ではmodified Child法を施行する施設が多い.

肝門部・上部胆管癌,先天性胆道拡張症,胆摘後胆管損傷などの胆管切除術の再建術式として,胃を温存するR-Y再建術(R-Y with hepaticojejunostomy)が多く施行されている.

日本では稀であるが,欧米では病的な肥満に対するR-Y胃バイパス術(RYGB)や生体肝移植(living donor liver transplantation;LDLT)に対する胆管空腸吻合術が多数施行されている.肥満とその関連疾患に対するRYGBは,先進国では盛んに実施されており 48)~50,標準的な治療法である 51.肥満治療を受けた患者は,一般的に体重減少に関連した胆道系疾患の有病率が高いとも言われている 52

LDLTに関しては胆汁漏,狭窄,結石症などの胆道系疾患が術後患者の10~30%に発生すると報告されている 53)~55.つまり胆膵系術後合併症は重要な問題の一つである.地域によって背景は異なるが,世界的にSAA症例に対するERCPの需要は非常に高まっている.日本における代表的な再建術式をシェーマに示す(Figure 1).

Figure 1 

術後再建腸管症例のシェーマ.

A:Roux-en-Y再建法(胃全摘).

B:modified Child法.

C:Roux-en-Y再建法(胃温存).

Ⅲ 内視鏡

BAEは,バルーンで腸管を把持し,腸管を短縮しながら深部まで挿入していくという新しい挿入概念に基づいて開発された内視鏡である.現在,日本では2種類のBAEが販売されており,それぞれの特徴はTable 1に示す.新たに開発されたショートタイプのBAEは,胆膵内視鏡専用機として発売され,ERCP関連手技をより安全に完遂できるように改良されている.これらの内視鏡に共通する特徴として,鉗子口径が大きくなり有効長が短くなったことで,従来のERCP関連処置具の大部分が使用可能となった.さらに新しい内視鏡システムとして,ショートタイプのDBEには“advanced force transmission function とadaptive bending system”が,ショートタイプのSBEには“passive bendingとhigh-force transmission”が搭載されている.これらの新システムにより,盲端部への内視鏡深部挿入がより行い易くなった.

Table 1 

日本で市販されている balloon assisted endoscope(BAE).

Ⅳ 術後再建腸管症例に対するERCP

SAAを有する患者におけるERCPを完遂するためには,盲端部への内視鏡深部挿入および選択的胆管カニュレーションを含めたERCP関連手技のすべてを成し遂げなければならない.以前は,R-Y再建例に代表される長い十二指腸・空腸脚を有するSAA症例における盲端部への到達は極めて困難とされていた.これまでR-Y再建例に対して既存の内視鏡による盲端部への内視鏡挿入の試みがなされてきたが,その成功率は満足いくものではなかった.つまり盲端部への到達が困難であったため,SAAを有する患者に対するERCPは標準的な治療法として普及しなかった.しかしながら,このような問題はBAEの登場により一気に解決され,特にショートタイプのDBEとSBEの有用性に関する報告が多くなされている.糸井らは,R-Y吻合患者のERCPにおいて,ロングタイプとショートタイプのDBEを評価し,乳頭部に到達するまでの時間に有意な差があると報告している(各64.8 +/- 24.7分,29.0 +/- 19.2分) 27.日本で初めて行われた大規模多施設共同前向き研究では,ショートタイプのDBEを用いたERCP(DB-ERCP)の盲端到達率が97.7%,診断成功率が96.4%,治療成功率が97.9%であったと報告されている 20.また,他のいくつかの研究でも,DB-ERCPの有用性 19)~29やショートタイプのSBEを用いたERCP(SB-ERCP)の有用性 30)~39が報告されている.これらの報告では,ショートタイプのBAEを使用することでBAE-ERCPの成功率が向上したことが示されており,その理由としては内視鏡が深部挿入し易くなったため盲端部への到達率が向上し,さらに使用可能なERCP関連処置具のラインナップが増えたことが考えられる.

Ⅴ ショートタイプのBAEを用いたERCPテクニックのコツ―ショートタイプのDBEを中心に―

R-Y再建症例における盲端部深部挿入におけるコツは,Y吻合部と輸入脚を速やかに同定することである.堤ら 56が提案した「吻合部の縫合線」を利用した挿入法や,矢野ら 57が提案したインジゴカルミンを使用する方法は有用である.

未処置乳頭に対するERCP関連手技に関しては,Retroflex Positionにより胆管カニュレーションを行い,主乳頭を正面視するのがコツである.次に,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)や内視鏡的乳頭大口径バルーン拡張術(EPLBD)などの乳頭処置では,主乳頭をモニターの6時方向に位置させるのがコツである.DBEを用いる場合,鉗子口が内視鏡画面の5時30分の方向に位置しているため,内視鏡画面上で主乳頭を6時の方向に位置させて固定することで,口側隆起やはちまき襞がはっきりと見えて安全なEST 23が可能であり,総胆管結石を巻き込んでいないことを確認しながら安全にEPLBDを実施することも可能である 58

Ⅵ ERCPにおけるDBEとSBEの比較

DB-ERCPとSB-ERCPを比較検討した研究では,盲端到達成功率,診断,ERCP関連手技,偶発症発生に有意な差がないという報告が多い.しかしながら,Skinnerらによるsystematic reviewでは 15,DBEによるERCPの盲端到達成功率,ERCP関連手技成功率,全体の成功率はそれぞれ89%,93%,82%であったのに対し,SBEではそれぞれ82%,86%,68%であり,SBEよりもDBEの方が良好な結果が報告されている.

さらに,2015年までのDB-ERCPに関する研究のメタアナリシスによると,盲端到達成功率,診断,ERCP関連手技成功率は,それぞれ89.75%,79.92%,63.55%で,偶発症発生率は6.27%であったと報告されている 21.しかしながら,2014年までのSB-ERCPに関する研究のメタアナリシスによると,それぞれ80.9%,69.4%,61.7%で,偶発症発生率は6.5%であったと報告されている 31.これらの結果もSBEよりもDBEの方が良好な結果が示されており,潟沼と伊佐山も,R-Y再建症例においてDBEの方がSBEよりも高い成功率を示したと報告している 59

一方Inamdarらは 31,SB-ERCPはDB-ERCPよりも技術的な負担が少なく,処置所要時間も短いことから,SAAを有する患者の内視鏡治療の第一選択とすることを提案している.しかし,Abu Dayyehは,SBEの方が費用対効果は高く,技術的な負担も少ないが,2種類の内視鏡の平均処置時間には有意な差がないと報告している 60

いずれの報告においても研究間で評価は様々であり,成功率も施設によって大きく異なることに留意しなければならないが,BAE-ERCPの有効性については意見が一致している.ここで重要なことは,各内視鏡を比較して優劣をつけることではなく,DBEとSBEはそれぞれ異なった特徴(バルーン数,鉗子口の位置,内視鏡の硬さなど)を有した内視鏡であり,それぞれの特徴を把握し,その特徴を最大限に発揮できるようにBAE-ERCPの手技を標準化していくことである.

Ⅶ BAE-ERCPの不成功因子

BAE-ERCPの不成功因子を解析したいくつかの報告では 21),31),32,未処置乳頭の存在とRYGB再建法が大きな要因であると報告している 21

未処置乳頭を介した胆管へのアクセスは困難であると考えられている.その理由として,SAAを有する患者の主乳頭の方向は従来と逆方向であり正面視が困難で接線方向になること,適切なデバイスがないこと,机上鉗子が使用できないことなどが挙げられる.

未処置乳頭に対する胆管アクセスにおいて,主乳頭を正面視できるか否かはとても重要である.石井ら 17は,R-Y再建症例に対してretroflex positionによりカニュレーションを行うJターン法を報告している.

もう一つの重要なポイントは,内視鏡の種類によって鉗子口の位置が異なることを熟知し,乳頭を適切な場所に位置させることである.

このように,未処置乳頭を介した胆道カニュレーションは,retroflex positionにより主乳頭を正面視できるか否かによってアプローチ法も異なる.もし正面視が困難な場合には,膵管ガイドワイヤー法による胆管カニュレーションを試みる 28.当院における経乳頭的アプローチ法の戦略をFigure 2に示す.

Figure 2 

経乳頭的アプローチの戦略.

retroflex positionにより主乳頭を正面視できる場合⇒選択的胆管挿管を試みる.

retroflex positionにより主乳頭を正面視できない場合⇒膵管ガイドワイヤー法を試みる.

RYGBは,肥満に対する標準的な外科的治療法である 61.口から盲端部まで輸入脚の長さは100cm以上であり,全長で300cmを超えることもある 62.Siddiquiらは,ショートタイプのDBEを用いたDB-ERCPを評価し,DB-ERCP不成功の大半はRYGB患者であると報告している 11.Liuら 63は,R-Y再建症例におけるDB-ERCPの成功予測因子を分析し,非肝移植成人手術を受けた患者や,移植後でも再手術を受けていない患者で最も成功したことを報告しており,胆道閉鎖症術後の患者や移植後で再手術を受けた患者では成功率が低く,術後の癒着が盲端部到達の不成功につながる可能性を指摘している.また,山内ら 64は,術後の癒着や再建腸管の鋭角部が内視鏡挿入を困難にすることが多く,そのような症例では盲端部への到達が難しくなると報告している.以上のことより,盲端部到達の不成功要因は,単に輸入脚の長さだけではなく,むしろ患者の手術歴や術後の過度な癒着の有無などが影響していると考えられる.小腸内視鏡検査において,手術歴がなく術後癒着のない症例であれば,500~600cmもある小腸に対して200cmの有効長のDBEを用いて全小腸観察が可能であることからも,術後再建腸管で輸入脚が長くても術後癒着の少ないRYBG症例では,BAEを適切に操作して挿入すれば,高い成功率が期待される.

SBEを用いた多施設共同後ろ向き研究によると,胃切除術を受けていない患者や腹膜播種がある患者において盲端部への到達が不成功となることが報告されている 30.腹膜播種はBAE-ERCPが適応外となる唯一の因子であり,悪性消化管狭窄の存在は盲端部到達成功率を著しく低下させる.腹膜播種の患者では,術前のCT画像等で消化管狭窄やイレウスが認められなくても,潜在的な消化管狭窄がある可能性があるため,これらの症例ではBAE-ERCPの適応を慎重に検討する必要がある.

Ⅷ SAA患者の胆膵疾患に対する治療戦略

従来からPTBDはSAA症例の標準的な治療法として行われてきた.しかし,PTBDは高侵襲な処置であるだけでなく,皮膚感染,痛み,在宅ケアの困難さ,生活の質の低下,腸肝循環障害などのリスクもある.PTBDの偶発症発生率は4~9%と高く,特に術後胆管狭窄におけるPTBDの偶発症発生率は11~35%とリスクの高い処置である 65)~67.さらに,膵疾患または拡張胆管がない患者などはアクセスが困難で,腹水症例や凝固不全患者においては禁忌であるため,PTBDの適用には多くの制限がある 8

外科的手術は,入院期間が長くなり,他の低侵襲手技に比較して医療費が増加する 68),69.また,外科的再手術は技術的にも困難であり,1回目の手術に比べて吻合部狭窄の再狭窄が生じる可能性が高いとされており 70,胆管空腸吻合部術後狭窄に対する外科的治療の偶発症発生率は20~33%と報告されている 71),72

以上のことから,内視鏡的アプローチによる治療の需要は益々高まっており,より低侵襲な治療法を確立するために様々な試みがなされてきた.BAEの登場によりSAAを有する患者に対するBAE-ERCPが現実的となり,この方法は世界的に普及し良好な結果が得られている.実際にBAE-ERCPは安全性と有効性の観点からも標準的な治療法となったが,未だ盲端部へ到達できずに不成功に終わるケースも存在する.

2001年に超音波内視鏡下に経腸管的胆管アプローチするEUS-guided cholangiodrainage(EUS-CD)が初めて報告されて以来 73,EUSによるinterventionが注目されRTとして認められるようになり,BAE-ERCP困難症例に対してもEUS-interventionが有用であると考えられるようになってきた.多くの研究でもEUS-interventionの有効性が報告されているが,一方で,EUS-interventionは偶発症発生率が高くリスクを伴う手技であるとも報告されている.EUS-CDにおける偶発症は20%と高い発生率が報告されている.また,ステントの逸脱のような致命的な偶発症も報告されている 74),75.このように,EUS-CDはBAE-ERCP困難症例に対して有効なRTではあるが,EUS-CDの適応については十分な検討が必要である.EUS-CDにおけるリスクは決して過小評価されるべきではなく,悪性疾患への適用には議論の余地はあるものの,良性疾患に対しては安易に施行すべきではなく,慎重に検討されるべきである.Figure 3にSAA症例に対する現在の内視鏡的戦略を示す.

Figure 3 

術後再建腸管症例に対する内視鏡的アプローチの治療戦略.

良性疾患:BAE-ERCPを第一選択とする.

悪性疾患:症例に応じてBAE-ERCPかEUS-intervention を選択する.

BAE-ERCP; ERCP using BAE, EUS-RV; EUS-guided rendezvous technique,

EUS-AGD; EUS-guided anterograde drainage,

EUS-HGS; EUS-guided hepaticogastrostomy

Ⅸ BAE-ERCP困難例に対するRescue Therapy

良性疾患の場合,一般的な治療法として胆管結石除去術,肝内結石除去術,胆管空腸吻合部良性狭窄の拡張術などが挙げられる.胆管結石除去術に関して,盲端部に到達できれば,BAE-ERCPは従来のERCPと同等の治療法が可能である 28),29.しかしながら,盲端部に到達ができたとしても,完全結石除去を行うことは技術的に難しい場合がある.結石除去困難症例に対する対処法として,BAEを総胆管内に直接挿入する経口的直接胆道鏡(Figure 4 76)~79や,先天性胆道拡張症術後の肝内結石症例における結石除去困難症例に対する対処法として,極細径内視鏡を併用したCombination法(Figure 5)などは有用である.

Figure 4 

直接胆道鏡としてDBEを総胆管内に直接挿入することによる結石除去術.

A:内視鏡像.

B:透視像.

Figure 5 

極細径内視鏡を用いたCombination法による結石除去術.

A:内視鏡像.

B:透視像.

盲端部に到達できない場合には,EUSによる結石除去術の報告も散見されるが 80)~82,腹腔鏡下胆管結石除去術が有用である 83.Ngamruengphongら 80は,RYGBにおいてEUSガイド下にlumen-apposing metal stent(LAMS)を用いて胃または空腸に瘻孔を形成する方法を報告している.この方法は有用ではあるが莫大な医療費がかかるため,日本では現実的ではない.

良性胆管空腸吻合部狭窄症例では,盲端部に到達できれば,胆管空腸吻合部が完全閉塞している場合を除き,ほとんどの症例でBAE-ERCが可能である.盲端部に到達できない場合は,RTとしてEUS-guided hepaticogastrostomy(EUS-HGS)が有用と考えられている.しかしながら,良性胆管空腸吻合部狭窄に対するEUS-HGSによるアプローチは,狭窄部をガイドワイヤーが通過しないなどの理由で,順行性に吻合部の拡張術まで完遂した治療成功率は57%と低いことが報告されている 84.そのため,EUS-interventionでは胆管空腸吻合部における内瘻化まで完遂するのは困難な場合が多いことは知っておくべきである.また,盲端部に到達できたとしても,胆管空腸吻合部の完全閉塞例(Figure 6)は治療に苦渋することが多く,RTとしてSpyglassを用いたRendezvous法が有用であるとの報告がある 85.以上より,良性疾患において,RTとしてEUS-interventionの適応となるのは,BAEを用いても盲端部に到達できない場合に限られると考えられる.

Figure 6 

胆管空腸吻合部完全閉塞症例の内視鏡像.

矢印が胆管空腸吻合部を示す.

悪性疾患の場合,閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージは一般的な治療法である.悪性遠位胆道閉塞に対する外科的バイパス術とEUSガイド下ドレナージ術では,技術的成功率,臨床的成功率,クオリティ・オブ・ライフ(QOL),生存率に違いは見られないとの報告がある 86.Khashabら 87は,SAAを有する患者においてEUS-CDはBAE-ERCPに比べて技術的成功率が有意に高く(それぞれ98.0%,65.3%),臨床的成功率も有意に高い(それぞれ88.0%,59.1%)と報告している.さらに,EUS-CDでは再建腸管の長さに左右されず,より大口径の金属ステント留置が可能である点を指摘しており,EUS-Interventionの有用性を報告している.また,RYGBにおけるLAMSを用いたEUS-guided gastrostomy-assisted ERCP(EUS-ERCP)とBAE-ERCPを比較した国際的な多施設共同研究では,技術的成功率はEUS-ERCPの方が高く(100%対60%),偶発症の発生率は同等であったことが示されている 88

特に,腹膜播種により輸入脚狭窄を認め盲端部に到達できない場合(Figure 7-A)には,EUS-interventionが有用である.また,腹膜播種により輸入脚が狭窄していなくても,腫瘍浸潤により主乳頭や胆管空腸吻合部が同定できない場合(Figure 7-B)も,EUS-interventionは有用であると考えられる.つまり,このような悪性疾患に関しては,EUS-interventionの最良の適応であると考えられる.

Figure 7 

BAE-ERCP困難症例.

A:腹膜播種による消化管狭窄像.

B:主乳頭への悪性腫瘍浸潤像.

Ⅹ 有害事象

BAE-ERCPは従来のERCPに比べて技術的に困難であり,偶発症の発生リスクが高いとされている.BAE-ERCPの一般的な偶発症は,出血,穿孔,ERCP後膵炎などであり,従来のERCPとほぼ同等であるが,肝門脈ガスなどBAE-ERCPに特有の偶発症も報告されている 89

いくつかの小規模な症例報告では,偶発症の発生率は4.8~12.4%と報告されているが,大規模な研究報告は少ないため,実際の発生率は不明である.

最近,Tokuharaら 90による大規模な後ろ向き研究が行われ,1,500件以上施行したDB-ERCPにおける偶発症を評価した報告がなされた.全体の発生率は5.8%で,最も多かった有害事象は穿孔で3.2%であった.穿孔は内視鏡挿入時とERCP関連処置時の2つの場面で生じると言われている.再建法別検討では,B-Ⅱでの報告が多く,穿孔は輸入脚(特にTreitz靱帯から十二指腸水平部)に多く生じていた.300件以上施行したDB-ERCPにおける偶発症を評価した別の多施設共同前向き研究では,偶発症発生率は10.6%で,中でも穿孔は3.9%と最も一般的な有害事象であった 20.大部分の症例は保存的治療で軽快していたが,従来のERCPに比べてBAE-ERCPにおける穿孔の発生頻度は高く,術後癒着の存在は有意に穿孔発生率を上昇させるとの報告もあり 91,十分に注意が必要である.また,従来のERCPにおける主な偶発症はERCP後膵炎であるのに対して,BAE-ERCPにおける主な偶発症は穿孔であることも周知しておくべきである.BAE-ERCPは従来のERCPに比べて高度な技術が必要であり,偶発症のリスクも高いと考えられるため,起こりうる有害事象を十分に理解し,慎重に手技を行う必要がある.

Ⅺ 結  論

SAAを有する患者の胆膵疾患に対する内視鏡的アプローチは,近年飛躍的に進化しBAE-ERCPは第一選択の治療法として認められ,推奨されている.しかしながら,未だ課題も残っており不成功例も存在する.そのような症例に対しては外科的手術を回避するためにあらゆるRTを駆使して手技を完遂すべきである.今後,BAE-ERCPの手技を標準化し,SAAを有する患者の胆膵疾患を克服するための治療戦略を確立することが重要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2021)33, 912-23に掲載された「Recent advances of endoscopic retrograde cholangiopancreatography using balloon assisted endoscopy for pancreaticobiliary diseases in patients with surgically altered anatomy: Therapeutic strategy and management of difficult cases」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
© 2022 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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