2022 Volume 64 Issue 8 Pages 1516-1518
当院は1947年,渋谷区に船員保険渋谷病院として開設され,その後1953年に港区高輪に移転した.4度の病院名称変更があったが,2014年4月に独立行政法人地域医療機能推進機構へ移行したのを契機に現在の東京高輪病院という名称に改められ現在に至っている.
病床数231床(急性期病棟 144床,地域包括ケア病棟 87床)の中型病院であるが,健康管理センターが併設され,検査数だけで言えば内視鏡件数の大半は健診内視鏡が占めている.
以前は健診内視鏡と診療内視鏡が別々のフロアで行われており,きわめて非効率的であったが2015年12月に統合され診療,健診内視鏡とも同じ場所で行えるようになった.小腸内視鏡以外は一通りのことはできると自負しているが,東京都港区近辺は有名大病院がひしめく病院激戦区であり,また健診施設も多く,なかなか差別化は難しい.どうしたら当院を選んでもらえるかを常に考えながら日々の診療業務に当たっている.
組織主に消化器内科が管理しているが,後述するように医師確保に常に苦労しており,消化器内科の戦力が乏しい年は外科に助けてもらいながら何とか運営しているという具合である.
内視鏡室専属の看護師はいないため,日々内視鏡室の看護師のメンバーは異なる.中核になる看護師は数名いるが,病院規模的に看護師も色々な仕事をこなす必要があるため,内視鏡業務だけ専任というわけにゆかない事情がある.
検査室レイアウト内視鏡室自体は約32m2と広くはなく,検査ブースは2つしかない.午前に上部内視鏡(GS),午後に下部内視鏡(CS)を行う.内視鏡室前に廊下を挟んで放射線部の透視室があるため,内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)は透視室まで光源を運んで施行している.鎮静剤使用後の休憩ベッドも2つしかないため,必要時は外来処置室のベッドを借りている.

大病院ではなく,設備的に特別に優れているとは言えないが,VPP(value per procedure:症例単価払い)プログラムの導入により常にオリンパス社製の最新の内視鏡を使用できるようにしている.私(平野)が赴任したのが2014年7月であるが,健診と診療が異なるフロアでバラバラに動いて効率が悪い,緊急検査を行うと看護師の機嫌が悪くなる,医師不足で思うように検査ができない,逆にコロナで内視鏡件数が激減,など多くの苦難があったが,様々な苦難を克服して進化したのが当院内視鏡室の特徴であろうと考えている.現在は消化器内科の常勤医全員が「仕事しやすい内視鏡室と感じる」というほど,雰囲気のよい職場になった.
(2022年3月現在)
医師:消化器内視鏡学会指導医1名,専門医1名,他常勤医2名,CS外勤2名
看護師:内視鏡室専属の看護師はいないが,交代制で4名の看護師が配置され,必ず内視鏡に習熟した看護師2名が含まれるようになっている.技師資格を有する看護師は3名である.
その他:4名(洗浄含む)

JCHO東京高輪病院 内視鏡室スタッフ
(2022年3月現在)

(2021年1月~12月)

2021年4月に後期研修医(4年目)の指導を行う機会を得た.症例件数総数は大病院にかなわないが,後期研修医が1人しかいないため上部も下部もERCPも術者として携われる件数はむしろ多いと思われる.4~12月だけでGS 508件,CS 176件,ERCP 23件の術者をしており,数的には大病院での研修と比べても遜色ないものと考えている.
今回の後期研修医の場合,上部内視鏡の観察がある程度できる状態で当院に来たため,4月から下部内視鏡,5月からERCP術者を担当させることとした.最初は症例を選びながらであるが,3カ月が過ぎたころからは難しいことが最初から分かっている症例でなければ任せるようにした.
当院のキャパシティから考えて,ビギナー2名を同時指導するのは難しく,2名同時に後期研修医を採用するようなことは実際考えていない.しかし,後期研修医1名ならば件数も足りるし,指導も十分受けられると思われる.有名大病院で見学と助手で終わるのであれば当院で研修したほうが楽しいし経験も積めるので,おすすめである.
現在は消化器内科4人体制を組めているが,実は2020年4月からの1年間,消化器内科の常勤医が私1人しかいないという憂き目を経験した.折からの内科医師不足は都心の病院にも及んでおり,大学の都合1つで医師派遣が止まってしまう.そうかと言って公募で雇った医師は見事に定着しない.今後同じような境遇に置かれる医師もいるであろうと思われ,その時の経験を述べる.
1年間消化器内科常勤医1人体制となり,病棟,外来,内視鏡のすべての責任を負うことになった.入院患者の最大受け持ち人数は22人,外来は19時近くまでかかり,外来時間が長くなればなるほど待ち時間のクレームも増えるという状況に陥った.
すべてを1人ではできないので何かを削らなければならないが,アウトソースできるのはやはりルーチンの内視鏡検査ということになる.診療部門でGS3人,CS3人,健診部門でGS5人の外勤医師を雇用し,私自身はGSは1枠,CSは外勤だけでは検査が回らない時に入ることとした.これでも足りないと思われていたのだが,コロナ蔓延のため4,5月は検査数が激減し,供給不足どころか,外勤医師に休んでいただくことをお願いする羽目となった.逆に,年度後半は反動需要で検査数が増え,CS外勤医を追加雇用するも,枠外でCSを自分がやる機会も増えた.上下部は外勤に任せてもERCP,超音波内視鏡検査(EUS)や処置内視鏡は自分でやるしかない.胃瘻造設は外科にお願いしたが,ERCPは初期研修医や外科の先生,時にGSの外勤の先生に助手に入ってもらい施行した.外来と外来の合間を縫ってアニサキス除去というようなこともあった.夜間緊急はもう根性でやるしかなく,潰瘍出血,静脈瘤破裂,直腸癌からの出血,異物除去,緊急胆道ドレナージなどすべて自分で対応したが,憩室出血の夜間緊急CSはやらないと腹をくくって保存治療の方針としていた(意外に大丈夫であった).病院を出るのは毎日22時過ぎ,土日もほぼ出勤であったが,それでも根性だけでは越えられない壁がある.例えば指導医1人だけでどんなに頑張っても,その状況が2年続けば内視鏡学会や消化器病学会の指導施設,認定施設を取り消されてしまい,こうなるとますます新規医師獲得が困難になる.振り返ってみても,1年が限界だと思われた.
「命運尽き,もはやここまでか」と観念するギリギリのタイミングで2021年4月の新規医師3人の獲得が決まった.増加する健診内視鏡需要への対応,緊急内視鏡を要する患者の受け入れなどに十分に応えられるようになり,また自施設で見つけた早期癌は他院紹介することなく,当院での内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)が可能になった.大病院にいれば当たり前のことが可能になっただけだが,それだけでも幸せに感じられた.体制の充実に伴い内視鏡室の雰囲気も明るくなった.
今後の課題は中小病院,地方病院に共通することかもしれないが,まずは安定した医師の確保ではないかと思われる.看護師の確保も重要であることは言うまでもなく,内視鏡室だけでなく病院全体として働きやすくかつやりがいのある職場環境を作ってゆくことが必要であると認識している.
本原稿の依頼を2年前にも受けたが,その時は「これから1人体制になるのに恥をさらすような原稿は書きたくない」と断った.あれから2年,内視鏡室の紹介原稿を書けていることに喜びを感じている.苦しい時に支えていただいたスタッフ,新たに来ていただいたスタッフに感謝である.