GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2022 Volume 64 Issue 9 Pages 1607-1610

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概要

沿革・特徴

昭和21年11月に日本赤十字社東京都支部大森診療所として開設され,昭和28年7月に大森赤十字病院と改称された.平成11年4月には東京都指定二次救急医療機関に指定され,近年では東京都災害拠点病院としても指定されており地域の一般・救急医療の中核を担うのみならず,災害救護活動にも積極的に取り組んでいる.内視鏡室は平成23年10月の新病院開院にあたり4室に増設されるとともに徐々に消化器内科の医師も増員された.現在では内視鏡診療を中心に近隣地域のがん診療の中核を担っている.

組織

これまでは外来部門の1つとして位置付けられていたが,内視鏡診療の多様化や実績により2021年5月より内視鏡部として独立した.実際の消化管内視鏡業務は,主に消化器内科,外科が担当している.大田区の胃がん検診や人間ドックによる上部消化管内視鏡も外来検査の枠内で実施している(非常勤医師はいない).看護師は外来部門の所属であり,この他洗浄担当の看護助手と受付クラークが業務を行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は地下1階に位置しており,内視鏡室前の廊下を挟んで対面に放射線部門があり,イレウス管・内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などのX線透視を用いた検査・処置を行うことができる構造となっている.当内視鏡室における消化器内視鏡診療の中心は以下の3点である.

① 苦痛軽減を目指した内視鏡検査:内視鏡挿入・観察方法を含めた内視鏡教育を行うと同時に適切な鎮静方法,安全なリカバリーを行うことで患者受容性を上げ,質・安全性を兼ね備えた内視鏡検査を心掛けている.

② 癌の早期発見,低侵襲治療:当院の大きな特徴は上部・下部消化管腫瘍に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)である.特にESDに関しては,週に2枠(1枠あたり1~5件程度ESD)を行っている.最近では十二指腸ESDや高難度症例に対しては手術室で全身麻酔下でのESDも行っている.また,胃粘膜下腫瘍に対しては消化器外科と協力しながら,内視鏡的全層切除,腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS:Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)も積極的に導入している.この他,超音波内視鏡(EUS),超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)も件数が増加傾向である.

③ 緊急内視鏡:地域の救急医療の中核として緊急内視鏡,ERCPといった緊急処置を行えるようにオンコール体制を取っている.

スタッフ

(2021年12月現在)

医   師:常勤医師(消化器内科14名・外科8名)(指導医5名,専門医4名,その他13名),研修医1-2名

内視鏡技師:Ⅰ種10名

看 護 師:常勤4名,非常勤4名,事務1名,看護助手2名

設備・備品

(2021年12月現在)

 

 

実績

(2021年1月から2021年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は2~3名程度の内科専攻医が常時研修している施設であるため,目安として研修2年間で上部・下部内視鏡の挿入・観察,止血処置,胃EMR,大腸EMR/ポリペクトミー,ERCP,胃ESDの簡単な症例の経験を目標としている.まず上部消化管内視鏡は,指導医による内視鏡挿入の心得や検査のコツのスライドレクチャーを受け(時に複数回),同時に内視鏡検査の見学を行う.その後指導医のバックアップの元,最初は,内視鏡抜去・観察から始め,1カ月程度経験した状態で実際の挿入を行っていく.その後1年間は指導医との2人体勢で内視鏡検査を行い2年目からは独り立ちで検査を行っていく.下部内視鏡検査は,上部消化管内視鏡を開始して半年程度頃より,最初に指導医によるスライドレクチャーで内視鏡挿入のコツを学んだ後,コロンモデルで反復練習を行う.それと同時期に大腸内視鏡の抜去・観察を行い安定したスコープ操作ができる状態で内視鏡挿入を開始していく.

EMR/ポリペクトミーは治療前内視鏡診断が重要となるため,毎週1回行われている内視鏡・病理カンファレンスに参加することで自身の撮影した内視鏡写真や内視鏡診断を他者にも供覧することで検査のクオリティを向上させ,更に生検と病理診断の答え合わせをすることによって内視鏡診断をブラッシュアップすることができる.EUS,ERCPについては上部消化管内視鏡が安定して施行可能になった状態で,検査の見学を十分に行った後,指導医バックアップ下に開始していく.緊急内視鏡については上部消化管内視鏡検査及び組織生検が安定して施行できる段階で,指導医・専門医バックアップ体制下で行われる.

ESDについてはグループ診療とすることで術前から術後管理,そしてサーベイランスまで一貫した管理を行っている.回診もグループで行い術後の患者の症状やデータ異常などを共有し,合併症などの早期発見,早期介入に努めている.普段研修している専攻医の他に,内視鏡治療に特に興味を持った医師や,他施設からの医師の見学・研修も広く受け入れている.COVID-19流行前は中国からの研修生も受け入れていた.実際のESDは,指導医バックアップ体制下で行われ,その経験数に合わせた研修計画を元に施行していく.

現状の問題点と今後

①内視鏡件数

昨年度は新型コロナ感染症の蔓延の影響,そして院内クラスターが発生し1カ月以上内視鏡検査処置を全面ストップしその後も元の件数に回復するまでに数カ月以上要した結果として,コロナ前と比べ全体の件数が約25%程度減少した.現在は,各種感染対策を徹底し,件数は徐々に回復しつつあるが総件数としては不十分である.地域の中核病院としての質の高さは保ちつつ,一方で研修病院として内視鏡件数自体を更に増加させたい.そのためには,病診連携の更なる充実や近隣住民への健康講座の開設,内視鏡検査オーダーの簡易化や検診・人間ドックの充実など,現代にマッチした内視鏡検査予約システムの構築が望まれる.

②内視鏡室,リカバリースペースの拡充

一般病院としては消化器内科スタッフ人数が比較的多く恵まれているが,内視鏡室としては十分な広さとは言い難い.検査室が狭いということは,医師,看護師,患者が1室に入ると容易に密になる環境となり,昨今の新型コロナ感染症を含めた感染予防という観点からも望ましくない.また,鎮静剤使用を希望する患者が増加するにあたり,リカバリーをするスペースが不足している.以上の点からも,安定した処置を提供するためにも内視鏡室の拡充が喫緊の課題と言える.

③内視鏡室専属看護師の確保

現在内視鏡室に勤務している看護師は外来部門からの配属である.内視鏡技師の資格を持つ看護師も少なくないが,その資格をとっても間もなく他の部署へ配属されてしまい,その経験と知識を内視鏡室の現場で活かせる場面があまり無く終わってしまうことが多い.内視鏡診療は検査・治療共に確実に進歩し,また複雑化している.そのため,将来的には内視鏡室専属の看護師,内視鏡専属の臨床工学技士を確保することでより安定した内視鏡診療を提供できるようにしたい.

 
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