GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2023 Volume 65 Issue 1 Pages 87-89

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概要

沿革・特徴など

当院は,1944年に設立された「横浜市立医学専門学校附属十全病院」を前身とし,2000年の新棟竣工に伴い「横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター」へと改称し開院された.

約720床を有する特定機能病院で,10の疾患別センターと25の専門診療科による診療,治療を行っている.地域がん診療連携拠点病院であるとともに,救急救命センターや救急部(ER部)を中心に災害拠点病院としての役割も担っている.内視鏡室は,2000年開院時より開設され,2016年の改築を経て現在に至る.

組織

消化器センター内視鏡室として独立した診療部門であり,消化器内視鏡部の医師を中心に,消化器内科・IBDセンターの医師が連携をとりながら運用している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

385.13m2のスペースに,EUS(超音波内視鏡検査)専用の1室を含む8室の個室化された検査室と,10床のリカバリーベッドがある.また改築に際し,患者導線と独立した通路に洗浄スペースを配置し,感染対策にも十分考慮されている.

スタッフ

(2022年4月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医6名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ13名,研修医など1名

内視鏡技師:Ⅰ種4名

看護師:常勤13名,非常勤5名

事務職:2名

設備・備品

(2022年4月現在)

 

 

実績

(2021年1月~2021年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

初期臨床研修医は,まず指導医の行う検査・治療の見学を通して内視鏡診断,治療における知識を学ぶ.また並行して内視鏡トレーニングモデルを用いた指導を行う.実際にスコープ操作を行うことで,研修意欲を高め,消化器内視鏡へ興味を持ってもらえるよう心がけている.十分な知識と操作が習熟できたと指導医が判断した場合,指導医の監督下に鎮静での上部内視鏡検査を行っている.後期臨床研修医は,消化管グループ,胆膵グループ,肝臓グループ,IBDセンターを半年ごとにローテーションしながら研修を行う.消化管グループのローテーション時には,まず指導医の行う検査,治療を見学,カンファレンスへの参加を通して,適切な診断能力を身につける.上級医とともに上部内視鏡検査を行い,まずは単独で上部のスクリーニング検査が行えることを目標としている.また並行して内視鏡治療や消化管出血など緊急内視鏡検査の介助に積極的に参加し技術の向上に努める.単独で上部内視鏡検査が行えるようになれば,習熟度には個々の差があるため,習熟度に応じて上級医とともに消化管出血など緊急内視鏡検査の術者としての経験を積み,同時に下部内視鏡検査の技術習得を行っていく.さらに後期研修医には大学院への進学を推奨,支援しており,希望すれば臨床経験を積みながら,臨床研究による学位取得を目指すことも可能である.

毎週のカンファレンスではESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の症例提示を行い,術前内視鏡写真を確認し,治療方針の検討を行う.治療後の症例についても病理結果を確認し,術前診断との対比や手技の習熟度の確認を行っている.さらに特殊な症例や治療方針に迷う症例などは,実際にプレパラートを確認しながら,内視鏡所見の再確認や病理所見との比較を行う病理カンファレンスも行っている.また手術前症例についても,外科医とともに内視鏡写真を確認しながら診断や治療方針の検討を行う.消化器内科全体のカンファランスは,横浜市立大学附属病院の医師と合同で行い,研修医や学生も担当症例の発表を行い,プレゼンテーションの力を身につけてもらうことを目標とする.また学会発表や論文作成の指導も積極的に行っており,学会に関しては地方会から,JDDW・内視鏡学会総会を中心に,国内外問わず積極的に演題発表を行っている.学会発表したものについては,症例発表,臨床研究問わず積極的に論文化することを目標としている.

現状の問題点と今後

当院では病院全体として「医療の質の向上」および「患者の安全確保」に日常的に取り組んでおり,特に患者の取り違えの再発防止に医師,看護師が協力して積極的に取り組んでいる.その一環としては,内視鏡検査を受ける患者にはネームバンドを装着し,検査室入室時に,患者本人にフルネームを名乗ってもらい,ネームバンド,電子カルテ,内視鏡画面の氏名に間違いがないか確認している.検査,治療前には医師・看護師でタイムアウトを施行している.さらに昨今のCOVID-19の流行に伴い,症状の有無などの事前評価や感染防護対策も徹底している.

近年では鎮静下での検査が増加しているため,検査・治療中のモニタリングの徹底を行い,安全かつ楽に内視鏡を受けていただけるよう心がけている.通常検査の際の鎮静は,内視鏡医による静脈麻酔で行っているが,治療時間が長くなる症例や,鎮静が効きづらいなど管理に困る症例もある.このような場合,過鎮静など患者へのリスクが高まり,さらに治療の遂行が困難となるため,当院では2021年4月より麻酔科と連携・調整を行い,内視鏡室での挿管・全身麻酔下での内視鏡治療が可能となった.その一方で,人材不足により,看護師が検査時の介助を行いながら患者状態の記録などを行っているため,検査前後の入れ替えに時間を要し,症例あたりの患者の待ち時間が長くなってしまうことが問題となっており,時間短縮が今後の課題となっている.また患者の高齢化が進んでおり,大腸内視鏡検査の前処置を内視鏡室で行える様に前処置用のスペースを確保しているが,プライバシーを保てるような個室ではないため,環境の整備も課題である.さらに看護師の不足により,高齢者やADL(activities of daily living)の悪い患者の前処置の際に,常には介助が行えないのが現状である.

内視鏡室の看護師は専門知識と技能が求められるため,経験のあるスタッフの確保と,新人スタッフの教育システムの確立が課題となっている.内視鏡室では内視鏡技師免許を有する看護師はいるものの,技師業務を専属で行える技師がいない.さらに,高周波装置の整備や不備については,院外の業者に依頼しているのが現状であり,それらの解決のためにも人材を補うため内視鏡技師の人員確保も検討している.当院の内視鏡業務をより一層質の高いものにしていくため,今後も他科医師やコメディカルとの連携を行い,業務の分担や効率化を目指す必要がある.

 
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