GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A CASE OF PIPELINE ESOPHAGEAL VARICES AFTER HEPATECTOMY IN WHICH THE AMMONIA LEVEL NORMALIZED AFTER ENDOSCOPIC SCLEROTHERAPY
Kazuo OKUMOTO Takashi MOMOSAKITakayuki SAKAIShotaro AKIBAHidekazu HORIUCHIShigemi HACHINOHE
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2023 Volume 65 Issue 10 Pages 2174-2179

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要旨

症例は78歳の男性,肝内胆管癌にて肝右葉切除後,経過観察されていた.黒色便あり,上部消化管内視鏡検査施行,食道静脈瘤(LmF3CwRC1)を認めた.アンモニアは107μg/dLと高値であった.血小板が5万/μLと低値であったため,ルストロンボパグ3mg/日を1週間投与し,その後に内視鏡的硬化療法を行った.治療後,アンモニア値の正常化を認めた.8カ月の経過で食道静脈瘤の再発はなく,アンモニアの正常化も保たれている.肝切除後には門脈圧亢進を生じ,食道静脈瘤が発達する危険がある.巨木状の静脈瘤を閉塞することにより,側副血行路が遮断され,アンモニア値が低下したと考えられた.アンモニア高値である食道静脈瘤に対しては,シャントの閉塞でアンモニアが正常化することがあり,シャント閉塞前後において肝予備能やアンモニアの変化を適切に評価することが重要であると考えられた.

Abstract

A 78-year-old man with intrahepatic cholangiocarcinoma was followed up after the right lobectomy of his liver. He subsequently developed tarry stools and underwent endoscopy, which revealed esophageal varices (LmF3CwRC1). No hepatic encephalopathy was evident, but at 107 μg/dL, the ammonia level was elevated. As the patient had a low platelet count of 50,000/μL, he was administered 3 mg/day Lustrombopag for a week, which increased the count. Endoscopic sclerotherapy was then performed, using ethanolamine olate to occlude the left gastric vein. Thereafter, the ammonia level normalized rapidly. Portal hypertension sometimes occurs after hepatectomy, and esophageal varices may develop. Occluding the giant tree-like esophageal varices using endoscopic sclerotherapy is considered to block the collateral blood circulation, resulting in a decrease in the ammonia level. In patients with esophageal varices and a high ammonia level, shunt occlusion may reduce the ammonia level. This was also considered to be the appropriate active intervention in the present case of pipeline esophageal varices after hepatectomy in which the ammonia level normalized after endoscopic sclerotherapy.

Ⅰ 緒  言

肝切除後には,一時的に門脈圧が上昇することが知られており 1),2,肝硬変でなくとも肝切除後に食道胃静脈瘤が出現することがあるが 3)~5その報告は少ない.また,胃静脈瘤に対してバルーン閉塞下逆行性経静脈的硬化療法(Balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:BRTO)を行うことでアンモニア値が改善することが知られている 6),7.今回われわれは肝切除後に生じた食道静脈瘤に内視鏡的硬化療法を行い,その後にアンモニアが正常化した1例を経験したので報告する.

Ⅱ 症  例

78歳男性.

主訴:黒色便.

既往歴:40年前に胃潰瘍にて幽門側胃切除(BillrothⅠ法),60歳より糖尿病にてインスリン治療,63歳時に肝門部胆管癌にて,拡大右葉切除,尾状葉切除.

生活歴:飲酒歴なし,喫煙歴なし.

現病歴:肝切除後,外科にて経過観察されており,消化管内視鏡検査は行われていなかった.黒色便の自己申告あり,その1カ月後に上部消化管内視鏡施行,食道静脈瘤(LmF3CwRC1)を認めた.RC1であったが,貧血進行なくアンモニアも107μg/dLと高値でありラクツロース内服を開始.内視鏡的硬化療法目的に入院となった.

現症:身長155cm,体重52kg,体温36.5℃,血圧118/60mmHg,脈拍56/min,意識清明,羽ばたき振戦を認めず.

入院時臨床検査成績:血小板は5.0万/μL,プロトンビン活性が53%と低下していた.アンモニアは107μg/dLと上昇していた.HbA1cは6.4%と糖尿病のコントロールは良好であった(Table 1).

Table 1 

入院時臨床検査成績.

血小板,プロトロンビン活性の低下とアンモニアの上昇を認めた.

上部消化管内視鏡検査所見:4条の食道静脈瘤LmF3CwRC1を認めた(Figure 1).

Figure 1 

上部消化管内視鏡検査.

a:LmF3CwRC1の4条の食道静脈瘤を認めた.

b:RC陽性(矢印)を認めた.

c:胃に静脈瘤は認めなかった.

造影CT検査所見:肝右葉切除後であり,食道内に静脈瘤を認めた(Figure 2).

Figure 2 

造影CT検査.

a:肝右葉切除後であり,食道内に静脈瘤(矢印)を認めた.

b:食道静脈瘤は胃噴門部から連続していた(矢印).

経過:高アンモニア血症であり,ラクツロースの内服を開始,黒色便は1回のみであり,その1カ月後の内視鏡ではRC1であるが赤色栓や白色栓を認めず貧血の進行もなかったため,待機的治療が可能であると思われた.食道静脈瘤に対して,内視鏡的硬化療法の適応とし,待機的治療を予定した.血小板が5万/μLと低下しており,治療前に出血のリスクを少なくするため,ルストロンボパグ3mg/日の内服を1週間行ったところ8万/μLまで上昇し,治療時に出血傾向は認めなかった.2回の内視鏡的硬化療法を行い,エタノーラミンオレイトを左胃静脈まで注入した.治療後の内視鏡所見では静脈瘤はブロンズ化していた(Figure 3).血小板は2週間にわたり7-8万/μLを維持していた(Figure 4).1回目の内視鏡的硬化療法後にアンモニアは28μg/dLまで低下,1カ月後43μg/dLであった(Figure 4).8カ月の経過でアンモニアは40μg/dLで正常化を維持しており,食道静脈瘤の再発も認めていない(Figure 4).

Figure 3 

a:2回の内視鏡的硬化療法を行い,エタノーラミンオレイトを左胃静脈まで注入した.

b:治療後の内視鏡所見では静脈瘤はブロンズ化していた.

Figure 4 

黒色便指摘後の1カ月後に上部消化管内視鏡検査(Esohagogastroduodenoscopy:EGD)にて食道静脈瘤を指摘,ラクツロースを開始した.内視鏡的硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy:EIS)後はアンモニアの低下を認め,その後も上昇を認めなかった.

Ⅲ 考  察

肝切除後には一過性に門脈圧が上昇することが報告されている 1),2.門脈圧の上昇は肝不全のリスクといわれている 2.上昇の抑制にテルリプレシンが有効との報告もある 8.上昇した門脈圧は正常に戻ることが多いが一部においては門脈圧亢進が持続することが知られており 9,今回の症例のように食道静脈瘤の発達の一因と思われる.どのような症例で門脈圧亢進が持続するのかは不明であるが,切除範囲や門脈血流動態の関与によると思われる.肝切除後に小腸静脈瘤より出血した報告はあるが 10,食道静脈瘤の発生についての報告は少なく 3)~5予後には影響しないという報告もある 11.肝硬変であれば,定期的な内視鏡検査が行われることが多いが,正常肝の肝切除後もこのように食道静脈瘤が発達することがあり,注意を要する.本症例においては,肝切除後に門脈圧亢進を生じ,食道静脈瘤が発達したと考えられた.糖尿病もあったため,非アルコール性脂肪性肝炎に伴う肝硬変の可能性も否定できないが,肝切除時は背景肝は正常であり,造影CT上,肝の形態に肝硬変の変化がないことから,肝切除に伴う門脈圧亢進と考え,肝予備能が良好なことから内視鏡的硬化療法の適応とした 12),13

門脈圧亢進に伴い,脾腫を生じ,血小板減少が生じる.血小板輸血を処置前に行うことが一般的であったが,2015年よりヒトトロンボポエチン作動薬であるルストロンボパグの使用が可能となり投与により血小板数が上昇することが知られている 14)~16.ルストロンボパグは,5万/μL以上の血小板減少者により効果が高いと報告があるが 17),18本症例もそれに該当し,投与により5万/μLから8万/μLまで上昇し,治療中2週間にわたり血小板数は維持されており安全な内視鏡的硬化療法が可能であった.巨木型の推察や治療効果評価には超音波内視鏡が有用であるが,本症例においてはCTでの評価が可能であったため,施行はされなかった.

胃静脈瘤に対するBRTO治療後においては,高アンモニア血症が改善されることが知られている 6),7),19)~21.これは側副血行路を閉塞することにより,シャントへ抜ける血流が減ることからより多くの血流が肝臓に流入することによるといわれている.本症例は肝切除後の門脈圧亢進症による高アンモニア血症であったため,まずはラクツロース内服から開始したが改善を認めず,内視鏡的硬化療法後に正常化を認めた.高アンモニア血症の要因がシャントによるもので,肝予備能が保たれていたことが原因と思われる.肝硬変で肝予備能が低下していた場合はこのようには改善しないと考えられた.食道静脈瘤においてはアンモニア値が改善したという報告はないが,本症例のように巨木状の太い血管を閉塞することにより,BRTOと同様の効果が生じ,アンモニア値の低下を認めたと考えられた 22.PubMed,医中誌で検索した限りでは同様の報告はなく,本報告は肝切除後に発症し,巨木型の食道静脈瘤の閉塞により高アンモニア血症が正常化した初めての報告である.

Ⅳ 結  語

内視鏡的硬化療法後によってアンモニア値の正常化を認めた肝切除後の食道静脈瘤の1例を経験した.アンモニア高値である食道静脈瘤に対しては,シャントの閉塞でアンモニアが正常化することがあり,シャント閉塞前後において肝予備能やアンモニアの変化を適切に評価することが重要であると考えられた.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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