GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC DILATION FOR STENOSIS AFTER ESOPHAGEAL ENDOSCOPIC SUBMUCOSAL DISSECTION: KNACK AND PITFALLS
Akiko TAKAHASHI Tsuneo OYAMA
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2023 Volume 65 Issue 11 Pages 2312-2323

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要旨

内視鏡切除後潰瘍の周在性が3/4周以上になると予想される病変の場合は,ER後狭窄のリスクが高いため,ケナコルト(Triamcinolone Acetonide:TA)局注などの狭窄予防を行う必要がある.狭窄した場合には,内視鏡的バルーン拡張術(Endoscopic balloon dilatation:EBD)を行うが,穿孔予防のため通常12-15mmバルーンを用い,30秒で1気圧ずつ,合計4分で8気圧までゆっくり加圧する.高度狭窄では,10-12mmバルーンを用いる.EBDにより穿孔した場合は絶食,抗生剤投与を行い,保存的治療で改善しなければ外科的ドレナージを検討する.

Abstract

When a post-resection ulcer is expected to involve more than three-fourths of the esophageal circumference, it is advisable to consider preventive measures against stenosis, such as submucosal triamcinolone injection, as such lesions are associated with a high risk of stenosis following endoscopic resection.

In the case of stricture development, endoscopic balloon dilation (EBD) is performed. To prevent perforation during EBD, it is recommended to use a 12-15 mm balloon and gradually increase the pressure to 8 atm over 4 min. For severe stenosis, a 10-12mm balloon is used.

In the event of a perforation during EBD, fasting and administrating antibiotics are necesssary. If conservative treatment fails to show any improvement, surgical drainage should be considered.

Ⅰ はじめに

食道癌診療ガイドライン2022年版 1には,「内視鏡切除(ER:Endoscopic Resection)後潰瘍の周在性が3/4周以上になると予想される病変の場合は,ER後狭窄のリスクが高いため狭窄予防の処置を講じる必要がある」と記載されている.「CQ4:食道表在癌に対する内視鏡的切除後の狭窄予防に何を推奨するか?」に対し,「食道表在癌に対する内視鏡的切除後の狭窄予防に,プレドニン内服,またはトリアムシノロン粘膜下局注,または両者併用の実施を強く推奨する」と記載されている.食道癌に対するESD/EMRガイドライン 2には,「CQ2:全周性の食道表在扁平上皮癌に内視鏡切除は推奨されるか」に対し,「推奨文:cT1a-EP/LPM,長径50mm以下の,全周性食道表在扁平上皮癌には狭窄予防処置を併用した上での内視鏡切除を行うことを弱く推奨する」と記載されている.

このように食道ESD後の狭窄予防が重要であるが,狭窄を来した場合は内視鏡的バルーン拡張術(Endoscopic balloon dilatation:EBD)を要する.

本稿ではケナコルト(Triamcinolone Acetonide:TA)局注及び狭窄した場合の内視鏡的バルーン拡張術について解説する.

Ⅱ TA局注

食道ESD後狭窄予防の1つとして,TA局注 3),4がある.TAには50mg/5ml,40mg/1mlの2種類があり濃度が異なる.40mgのアンプルを使用する場合には希釈が必要であるが,50mgアンプルでは原液を2mg/0.2mlずつ局注する.

1)食道ESD終了直後の局注

TAは筋層へ局注すると遅発性穿孔を来すため 5),6,確実に粘膜下層へ局注する必要がある.

食道ESD直後では,1.8mm,25G(01991,TOP社)の局注針を使用すると良い(Figure 1-a,b).4mm,25G(01963,TOP社)の局注針を使用する場合は,筋層注入を避けるため針先を半分程度刺入して慎重に局注する(Figure 2).また切除面に対して垂直に局注すると筋層局注になり得るので,穿刺部を6時方向へ持っていき,筋層と並行に針を刺した方が良い.正確に粘膜下層へ局注できれば,半球状に膨隆する(Figure 3).

Figure 1 

局注針1.8mm,25G(01991,TOP社)を使用し,食道ESD直後のTA局注を行う.

Figure 2 

局注針4mm,25G(01963,TOP社)を使用する場合は,筋層注入を避けるため針先を半分程度刺入して慎重に局注する.

Figure 3 

正確に粘膜下層へ局注できれば,半球状に膨隆する.

筆者らは送水機能付きHookナイフJ(KD-625 LR,オリンパス社)をメインデバイスとして使用しているが,HookナイフJを収納した状態で潰瘍に押し付け局注すると(Figure 4),局注針を使用しなくても局注でき,かつ筋層注入予防にもなる.

Figure 4 

送水機能付きJフック(KD-625LR,オリンパス社)を収納した状態で潰瘍に押し付けTAを局注すると,局注針を使用しなくても局注でき,かつ筋注予防にもなる.

2)2回目以降の局注

2回目以降ではESD潰瘍面に白苔が付着しているため,局注針4mmを用い,針先を半分まで挿入し白苔と筋層の間に局注する(Figure 5).局注液が多少漏れても,穿孔予防のため深く差し込みしすぎないようにする.

Figure 5 

2回目以降ではESD潰瘍面に白苔が付着しているため,局注針4mmを用い,針先を半分まで挿入し白苔と筋層の間に局注する.

他のコツとして,この際に長めの先端アタッチメント(スリット&ホール型 M(ロング),TOP社など)を装着し,先端を固定すると局注しやすい.また内視鏡手技は基本的に左側臥位で行うため,重力方向である左側には液体が貯留しやすい.このため右側より局注すると液体や血液が左側へ溜まり,左側を局注する時には視野が悪くなりやすいので,左側より局注した方が良い.ESD潰瘍底で筋層が露出した場合には,この部位を避けて局注する.局注困難な場合には,TA充填法 7やステロイド内服 8を併用する.

3)周在性別の局注ポイント

筆者らはTA 50mg/5mlアンプルを使用し,亜全周切除例ではESD終了時に2mg/0.2mlずつ25カ所,合計50mgまんべんなく全体に局注する.狭窄の頻度が低いため,狭窄確認の上部消化管内視鏡(EGD)は不要だが,つかえ感を自覚した際はEGDを再検し,狭窄があればEBDを行う.全周切除例ではESD終了時に長軸径に合わせTAを2mgずつ50-100カ所,合計100-200mgを,まんべんなく全体に局注する.狭窄率が高いため2週間毎にEGDを行い,必要時にEBDと前述のようにTA局注の追加を行う.検査時には内腔径,潰瘍底の状態を観察し,白苔がなく内腔が広ければ狭窄リスクが低いため,検査間隔を少しあけることも可能である.

使用するスコープは,処置具が入ったままでも吸引できる3.2mmの鉗子孔チャンネルを有し,下方向の灣曲角度(ダウンアングル)120°の処置用スコープが望ましい.

Ⅲ 内視鏡的バルーン拡張術

1)EBDのコツ

つかえ感などの自覚症状(Dysphasia score 2以上)が出現した場合,及び内視鏡が通過しない場合は,EBDを行う.

EBDでは,通常12-15mmバルーンを用いるが,バルーンを挿入する際,特に潰瘍がまだ上皮化していない場合には先端が潰瘍に当たらないように慎重に挿入する(Figure 6-a~d).内腔が狭窄にて良く観察できない場合や潰瘍底の凹凸が目立つ場合,ブラインド挿入では穿孔する危険があるため,透視下でガイドワイヤーを用い挿入した方が安全である(Figure 7-a~c).加圧途中でバルーンがずれると十分な拡張が得られないため,スコープが動かないようにスコープを右手で把持し,同時にシースを左手または右手で固定する必要がある.バルーン拡張の加圧スピードが速すぎると穿孔する危険があるため,筆者らは30秒で1気圧ずつ,合計4分で8気圧までゆっくり加圧している.狭窄長が短い場合は1回のEBDで拡張可能であるが,5cmを超える場合はまず口側のEBDを施行した後,バルーンを縮小させ穿孔がないかを確認し,問題なければさらに肛門側のEBDを追加する(Figure 7-d,e).

Figure 6 

バルーンを挿入する際,特に潰瘍がまだ上皮化していない場合には先端が潰瘍に当たらないように慎重に挿入し加圧する.

Figure 7 

内腔が狭窄にて良く観察できずガイドワイヤー使用・狭窄長が長くEBDを2回施行した症例.

a~c:内腔が狭窄にて良く観察できずブラインド挿入では穿孔する危険があるため,透視下でガイドワイヤーを用いてバルーンを挿入した.

d,e:狭窄長が5cmを超えており,まず口側のEBDを施行し,さらに肛門側のEBDを追加した.

狭窄が強い場合は,12-15mmバルーンより小さい10-12mmバルーンを選択したり,バルーンを4.5気圧13.5mmまで加圧した後にバルーンを縮小させ穿孔のないことを確認してから,引き続き拡張する工夫も必要である.

EBDにより穿孔が疑われた場合には,速やかにガストログラフィンによる造影検査を行い穿孔の有無を確認する(Figure 8-a~d).穿孔した場合は絶食,抗生剤投与を行い,保存的治療で改善しなければ外科的ドレナージを検討する.再度ガストログラフィンによる造影検査を行い,穿孔部が閉鎖していることを確認後,食事を開始する.

Figure 8 

EBDにより穿孔が疑われた症例.

a:口側に全周ESD後潰瘍を認め,肛門側の全周ESD後瘢痕部をスコープが通過しなかった.

b,c:12-15mmバルーンで拡張したところ,左壁から後壁に深い裂創を認め,穿孔が疑われた.

d:速やかにガストログラフィンによる造影検査を行ったところリークはなく,穿孔は認めなかった.

EBDによる裂創部分は治る過程で再び狭窄し得るため,バルーン拡張後,TA局注を行うが,ESD潰瘍では50mg/5mlアンプル使用で2mg/ 0.2mlずつ25カ所,潰瘍瘢痕では,0.5mlずつ10カ所に局注する.

2)再狭窄予防

食べ物が詰まると狭窄部にびらんをきたし,再び狭窄の要因になり得るため,できるだけ咀嚼するよう指導することも必要である.内服薬の形状にも注意し(Figure 9),サイズの大きな錠剤については粉砕または口腔内崩壊錠など工夫する.また下部食道,腹部食道では胃酸逆流が強いと逆流性食道炎による狭窄も伴うため,Proton pump inhibitor(PPI)やPotassium-Competitive Acid Blocker(P-CAB)の投与が必要である(Figure 10-a,b).

Figure 9 

内服薬の錠剤が大きいとESD潰瘍部につかえることがある.

Figure 10 

下部~腹部食道にESD後瘢痕を認め,逆流性食道炎による狭窄も伴っていた.

3)難治性狭窄に対するRIC

また内視鏡的バルーン拡張術を施行しても解除されないような難治性狭窄の場合,RIC(Radial Incision and Cutting) 9),10を行う方法もある.ITナイフ,ショートニードルナイフで狭窄部に放射状に切開を入れた後,円を描く様にナイフを動かし,狭窄部の瘢痕組織をそぎ落す手技である.この手技においても処置具が入ったままでも吸引できる3.2mmの鉗子孔チャンネル,下方向の灣曲角度(ダウンアングル)が120°の処置用スコープが望ましい(オリンパス社GIF-H290Tなど).ある程度瘢痕が強く長軸幅があればITナイフで良いが,管腔が狭くITナイフの先端が深部に挿入できない場合や瘢痕幅が狭い場合は,ショートニードルナイフを使うと良い.

症例1:全周ESD後EBDを施行した症例(Figure 11-a~f):

Figure 11 

症例1:全周ESD後EBDを施行した症例.

a:上部食道の長軸径9cmの全周ESDを施行した.

b:術後狭窄予防目的でESD直後にTA50mg局注を施行した.

c:2週間後,ESD潰瘍をスコープが通過しなかった.

d:12-15mmバルーンにて拡張術を施行した.

e:穿孔はなくスコープは通過可能となった.

f:TA50mg局注を施行した.

g:15週間後にはほぼ上皮化していたが,スコープはギリギリ通過しなかった.

h:12-15mmバルーンにて拡張術を施行した(5回目).

i:穿孔はなくスコープは通過可能となり,TA50mg局注を施行した.

j:狭窄解除まで5回EBDを要した.半年後のEGDではスコープの通過は良好であった.

上部食道の長軸径9cmの全周ESDを施行し(Figure 11-a),術後狭窄予防目的でESD直後にTA50mg局注を施行した(Figure 11-b).2週間後,ESD潰瘍をスコープが通過せず(Figure 11-c),12-15mmバルーンにて拡張術を施行した(Figure 11-d).穿孔はなくスコープは通過可能となり(Figure 11-e),TA50mg局注を施行した(Figure 11-f).15週間後にはほぼ上皮化していたが,スコープはギリギリ通過せず(Figure 11-g),12- 15mmバルーンにて拡張術を施行した(5回目)(Figure 11-h).穿孔はなくスコープは通過可能となり,TA50mg局注を施行した(Figure 11-i).狭窄解除まで5回EBDを要した.半年後のEGDではスコープの通過は良好であった(Figure 11-j).

症例2:亜全周ESD後EBDを施行した症例(Figure 12-a,b):

Figure 12 

症例2:亜全周ESD後EBDを施行した症例.

a:上中部食道の長軸径10cmで7/8周性の亜全周切除を施行し,術後狭窄予防目的でESD直後にTA100mgを局注した.

b:術後狭窄症状はなく,1年後のEGDにてもスコープの通過は良好であった.

上中部食道の長軸径10cmで7/8周性の亜全周切除を施行し(Figure 12-a),術後狭窄予防目的でESD直後にTA100mgを局注した.術後狭窄症状はなく,1年後のEGDにてもスコープの通過は良好であった(Figure 12-b).

症例3:全周ESD後ITナイフにてRICを施行した症例(Figure 13-a~d):

Figure 13 

症例3:全周ESD後ITナイフにてRICを施行した症例.

上部食道の長軸径4cmの全周ESDを施行し(a),術後狭窄予防目的でESD直後にTA100mgを局注した.術後狭窄に対し3回以上内視鏡的バルーン拡張術を施行した.内腔はある程度開大しているが(b)スコープが通過せず,ITナイフにてRICを施行した(c).1カ月後のEGDでスコープが通過することを確認した(d).

上部食道の長軸径4cmの全周ESDを施行し(Figure 13-a),術後狭窄予防目的でESD直後にTA100mgを局注した.術後狭窄に対し3回以上内視鏡的バルーン拡張術を施行した.内腔はある程度開大しているが(Figure 13-b)スコープが通過せず,ITナイフにてRICを施行した(Figure 13-c).1カ月後のEGDでスコープが通過することを確認した(Figure 13-d).

症例4:EBDにて穿孔した症例(Figure 14-a~i):

Figure 14 

症例4:EBDにて穿孔した症例.

a:上部食道の長軸径9cmの全周ESDを施行し,2週毎にTA局注を行った.

b:ESDより14週目にもスコープが通過しなかった.

c:18mmまでバルーン拡張を施行したところ,深い裂創を認めた.

d:ガストログラフィン造影では穿孔はなかった.

e:1時間後,突然の胸背部痛が出現し,CTにて縦隔気腫を認め,穿孔と診断した.

f:絶食,抗生剤投与を開始し,穿孔から7日目のガストログラフィン造影では縦隔内へのリークを認め,ピンホールの穿孔部位が同定された.

g:同治療を継続し,穿孔から10日目のガストログラフィン造影にて穿孔の閉鎖を確認した.

h:穿孔から14日目のEGDでスコープは通過せず,10-12mm,12-15mmバルーン径にてEBDを施行した.

i:ESDから36週目でスコープは通過するようになり,必要としたEBDは19回であった.

上部食道の長軸径9cmの全周ESDを施行し(Figure 14-a),2週毎にTA局注を行った.しかし4週目でスコープが通過せず,15-18mmバルーンにて拡張,その後も1-2週間に一度EBDを施行した.ESDより14週目にもスコープが通過せず(Figure 14-b)18mmまでバルーン拡張を施行したところ,深い裂創となった(Figure 14-c)ため,入院とした.ガストロ造影では穿孔はなかった(Figure 14-d)が,その1時間後に突然の胸背部痛が出現し,CTにて縦隔気腫を認め(Figure 14-e),穿孔と診断した.絶食,抗生剤投与を開始し,穿孔から7日目のガストログラフィン造影では縦隔内へのリークを認め,ピンホールの穿孔部位が同定された(Figure 14-f).

同治療を継続し,穿孔から10日目のガストログラフィン造影にて穿孔の閉鎖を確認した(Figure 14-g).穿孔から14日目のEGDでスコープは通過せず(Figure 14-h),10-12mm,12-15mmバルーン径にてEBDを施行した.ESDから36週目でスコープは通過するようになり(Figure 14-i),必要としたEBDは19回であった.

切除範囲が頸部食道にかかっていたが,主占拠部位が上部食道であったため,15-18mmバルーンを用いた.頸部食道は難治性狭窄のリスクの1つであり,また生理的狭窄部であるため,12-15 mmバルーンを用いるべきであった.またTA局注初期の症例であり,長軸径が9cmにも関わらずTA局注量が50mgと少量であった.現在であれば100-200mg局注する症例であった.

Ⅳ おわりに

通常ESD後狭窄では12-15mmバルーンを使用しゆっくり加圧するが,高度狭窄の場合には透視下でのガイドワイヤーの使用,10-12mmバルーンの使用など工夫が必要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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