GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2023 Volume 65 Issue 11 Pages 2353-2356

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概要

沿革・特徴

当院は明治35年に松波病院として開設された120年を越える歴史ある民間医療施設である.明治44年に加納町病院,昭和8年に松波外科医院,昭和22年に松波病院,昭和63年に現在の名称である松波総合病院となっている.昭和32年に医療法人蘇西厚生会が設立され,平成20年には社会医療法人に認定されている.平成14年には外来部門,健診部門として松波健康増進クリニックを開設し松波総合病院とともに運営されている.松波総合病院は増床を続け現在一般病床数は501床で,高度急性期病棟・急性期病棟・回復期病棟・慢性期病棟の複数の機能をもつ病棟がある.病床のうち急性期の病棟が7割を占めており地域医療支援病院として地域へ高度な医療を提供することが求められる病院である.岐阜市の南に隣接し,木曽川を挟んで愛知県とも接している岐阜県羽島郡笠松町に位置し岐阜医療圏域南部の中核医療施設として,医療政策として重点の置かれる5疾患(癌,心筋梗塞,脳卒中,糖尿病,精神疾患)の治療と,5事業(救急医療,災害医療,へき地医療,周産期医療,小児医療)に積極的に取り組んでいる.立地的側面から,愛知県尾張北部の住民の受診者も多い.内視鏡センターは消化管および胆膵領域の消化器内視鏡診療,気管支内視鏡など呼吸器領域の診療を担当している.また,健診センターでの上部消化管内視鏡検査も担当している.1997年より本学会の指導施設となっており,健診から高度な内視鏡治療まで内視鏡診療を網羅するとともに,若手消化器内視鏡医師の育成にも力を注いでいる(Figure 1).

Figure 1 

松波総合病院全景.木曽川から見る松波総合病院南館.

組織

内視鏡センターを運営する光学診療センターは中央診療施設内の独立した部門として位置づけられている.診療には消化器内科,呼吸器内科の医師があたっている.各診療科はスクリーニングから精密検査,治療まで患者さんにとって最も適した内視鏡診療が提供できることを目標に体制を敷いている.看護師長,看護副師長は放射線部と光学診療センターの兼任で,看護師は光学診療センターに配置されている.また,臨床工学技士,臨床検査技師も常勤として配置されており,各職種の職員が専門性を生かし協力して診療にあたっている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

2019年10月に北館の増築に伴い内視鏡センターも増床され現在の内視鏡センターとなっている.内視鏡検査室2室,X線透視室2室で内視鏡検査を行っている.常設されている光源装置はオリンパスの最新モデルであるEVIS X1(CV-1500)を3台,富士フイルムのLASEREO(LL-7000)を1台設置している.最新の内視鏡検査がどの検査室でも可能である.上部内視鏡,下部内視鏡検査ではすべての検査で画像強調拡大観察(Near focusを含む)が可能となっている.また,EVIS X1には3台すべて超音波内視鏡システムが接続されており,必要時には連続して超音波細径プローブでの精密検査が可能である.内視鏡センター内にX線透視室が2室あり,X線関連内視鏡検査に関してもセンター内ですべて対応可能なことも日常臨床では有利である.当院は炎症性腸疾患センターを設置したことにより,炎症性腸疾患患者も増加している.小腸病変の内視鏡診療の需要が増しておりダブルバルーン小腸内視鏡,小腸カプセル内視鏡ともに設置し十分な小腸内視鏡診療が可能な体制としている.また,病棟用や手術室用などの出張内視鏡検査のための移動用光源も常備している.

健診センターの内視鏡室にも富士フイルム社の最新の光源装置であるBL-7000を設置し精細な内視鏡検診が可能な機器体制としている.

当院は現在402の医療機関と連携施設の提携を結んでいる.地域の中核医療施設として地域医療連携の重要性を理解し,以前より地域連携室を通した連携医からの上下部内視鏡検査予約が可能な体制としていたが,2019年からは連携医療機関から上部消化管内視鏡検査を直接webで予約できるシステムを稼働している.2022年は187件のwebでの検査予約を受けている.

内視鏡治療にも重点を置いている.地域の医療機関で発見された消化管腫瘍の精密検査と治療を積極的に受け入れている.新型コロナウイルス蔓延下にもかかわらず内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)症例は食道と胃と大腸の合計で2019年が49件,2020年が88件,2021年が128件,2022年が158件と右肩上がりで件数が増加している.

スタッフ

(2022年12月現在)

医師:指導医5名,専門医9名,その他医師2名,専攻医2名

内視鏡技師:Ⅰ種3名

看護師:常勤2名,非常勤2名

事務職・その他:臨床工学技士2名,臨床検査技師2名,事務職1名

設備・備品

(2022年12月現在)

 

 

実績

(2022年1月~12月現在)

 

 

指導体制・指導方針

当院は臨床研修指定病院であり,研修医,内科および消化器内科専攻医,若手消化器内科医への指導教育の役割を担っている.現在他院への出向中の医師も含め3名の専攻医が在籍し,他院からの出向中の専攻医1名が在籍している.2023年4月からは2名の専攻医が新たに加わる予定である.

(1)研修医

研修医は必須で消化器内科にローテーションし内視鏡診療の業務にも参加する.消化器内視鏡の原理や基本を指導医より教示され,指導医の担当患者の検査を中心に検査室に入り,患者の介助や検査前後の患者の状態の確認を行う.また,検査前の説明や結果の説明も指導医とともに行う.研修期間が短いため内視鏡検査を術者として体験するかは指導医と研修医との相談のもとに行っている.研修2年目で消化器内科を再度選択した場合には内視鏡検査に術者として参加する.

(2)専攻医

消化器内科専攻医は上部消化管内視鏡検査から術者としての経験を開始する.上部消化管内視鏡検査でルーチンの観察から生検が可能となった時点で,大腸内視鏡検査の術者となる.大腸内視鏡検査において深部への挿入が可能となったのち内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの治療手技の習得を目指す.また,上下部消化管内視鏡検査では早期癌の精密検査を研修するとともに,緊急内視鏡検査,消化管出血の止血術,異物除去などを上級医とともに行う.専攻医の後期にはESDなどの高度な治療,内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)の関連手技などにも術者として経験をつむようになる.

(3)消化器内科医

専攻医として一連の内視鏡手技を経験した若手消化器内科医は通常の内視鏡検査に加え,EMRなどの治療消化管内視鏡の主術者となる.また,胆膵領域の総胆管結石の治療や閉塞性黄疸に対する内視鏡的治療などの緊急性のある治療内視鏡の術者となる.内視鏡学会専門医,指導医を目指すこととなる.高度な消化管内視鏡診療の習得を希望する医師には,ESDなどの高度な治療手技の研修を行う.ESDは胃前庭部の病変など難易度が低い症例から始める.術前精密検査の内視鏡検査も術者が担当し,治療のストラテジーを上級医とともに検討し,ESDにも実際に術者として参加する.手技が停滞する場合や上級医が交代の必要性を判断した場合は上級医と交代しながら治療を完遂する.胃のESDを経験したのちに食道および大腸のESDの研修に入る.胆膵疾患の診療を希望する医師においてはERCP関連の専門的な手技の完成に向けて研修を行うとともに,EUSでの検査,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)関連手技の習得に励む.

(4)学会発表

日本消化器内視鏡学会の専門医取得を目指して学会活動を行う.地方会,総会での研究発表を積極的に行うとともに,研究成果を和文・英文での論文として発表することも目標としている.

現状の問題点と今後

内視鏡機器の更新をはたし,地域の医療機関からの当院への内視鏡診療に対する要望は高まっている.検査件数の増加のみならず,高度な治療を要する病変,緊急症例に対する検査治療が求められており,その要望に応える体制の構築が重要である.現在,日本消化器内視鏡学会専門医,指導医が多数在籍しており,ここ数年消化器内科を希望する専攻医も増えてきている.指導医が専攻医に適切な内視鏡診療を教育し育成していくことが当院に求められる役割として従来よりも大きくなっている.高度な内視鏡診療の増加が著しく,看護師,臨床工学技士,臨床検査技師などの医療スタッフの負担は増加の一途をたどっている.検査,治療の増加,高度化に見合った医療スタッフの増員は十分にははたされておらず今後への課題となっている.より確実で安全で高度な内視鏡診療にあたっては医師のみならず多くの医療スタッフの協働が必須な時代となっており,その必要性を院内院外各所に伝え理解協力を求めていく必要性を感じている.

 
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