2023 Volume 65 Issue 2 Pages 117-124
症例は76歳,男性.食道胃接合部癌に対し食道亜全摘術および胃管再建術を施行された.術後7日目に嚥下障害がみられ,各種検査により吻合部の完全閉塞と診断した.対側の食道粘膜を巻き込むように縫合したことが原因と考えられ,口側および胃側からの内視鏡的アプローチ(ランデブー内視鏡法)を試みる方針とした.全身麻酔下に手術時の腹部創より胃管を小切開して胃側内視鏡の挿入経路を確保した.完全閉塞部は各々の内視鏡の透過光が対側の内視鏡で確認された.ESDナイフ(Hook knife-J)で閉塞部を切開後,ガイドワイヤを挿入し,バルーンカテーテルで拡張術を行い,偶発症はなく終了した.
術後食道完全閉塞に対してはランデブー内視鏡法により外科的再吻合術を回避し得る可能性がある.
A 76-year-old man who presented with dysphagia was admitted to our hospital for management of esophagogastric junction cancer and underwent subtotal esophagectomy with gastric tube reconstruction. Endoscopic and video-fluoroscopic evaluation performed on the 7th postoperative day revealed complete obstruction of the esophagogastric anastomosis, which was attributed to an esophageal mucosal pinch injury during anastomosis. We attempted endoscopic recanalization of the obstructed anastomosis (rendezvous endoscopy) from both the oral and gastric ends. We accessed the gastric end by opening the surgical wound and nicking the gastric tube under general anesthesia. Both the oral and gastric endoscopes could detect the contralateral endoscopic light through the obstructed esophageal mucosa. Using the Hook knife-J, we safely punctured along the appropriate direction of the esophageal mucosa. After incising the obstructed segment, a guidewire was inserted to perform balloon catheter dilation without any adverse events. A literature search revealed that this report is the first to describe rendezvous endoscopic recanalization for management of complete obstruction of the esophagogastric anastomosis after subtotal esophagectomy. Rendezvous endoscopic intervention may avoid surgical reanastomosis in cases of complete esophageal obstruction.
食道切除後の吻合部狭窄は,5〜46%で発生すると報告がある 1).食道狭窄・閉塞に対しては,わずかでも管腔が保たれている場合は内視鏡的バルーン拡張術やブジーカテーテルを用いた拡張術が可能であるが 2),完全閉塞例では困難である.
今回われわれは,食道亜全摘術および胃管再建術後の吻合部完全閉塞に対して,口側および胃側のアプローチを併用したランデブー内視鏡法によって再開通に成功し,再手術を回避し得た1例を経験したので報告する.
患者:76歳,男性.
主訴:嚥下困難.
家族歴:特記事項なし.
生活歴:飲酒歴;8年前から禁酒(20~68歳までは機会飲酒),喫煙歴;20本/日×47年(20〜66歳).
既往歴:特記すべき事項なし.
現病歴:2021年5月に食事の通過障害を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査(EGD)により食道胃接合部に腫瘍性病変を指摘された.生検により乳頭腺癌および高分化型管状腺癌と診断され,精査加療目的に当院消化器外科に紹介となった.精査により食道胃接合部癌(cT2,N2,M0,cStage Ⅲ)と診断され,7月に胸腔鏡下食道亜全摘術および細径胃管再建(後縦隔経路,三辺外翻三角吻合)が施行された.併せてTreitz靭帯から30cmの位置で腸瘻も造設し,術直後の栄養管理に使用した.術後7日目にガストログラフィン嚥下造影検査を行った際に吻合部で造影剤の停滞がみられ,吻合部狭窄・閉塞が疑われた(Figure 1).内視鏡的な食道再開通の可否について同日当科紹介受診となった.

食道胃接合部癌術後7日目のガストログラフィン造影所見.
鎖骨レベルでガストログラフィンの停留を認めた.
当科紹介時現症:身長 163.1cm,体重 55.8kg,体温 36.7°C,脈拍 77/分,整,血圧 133/99mmHg,呼吸音清,心雑音なし,左頸部に胃管吻合のための切開創,腹部平坦軟,臍左側に腸瘻造設中,圧痛なし.
紹介時検査所見:WBC 9,300/μL,Hb 12.3g/dL,Plt 17.1×104/μL,CRP 5.22mg/dL.
当科EGD所見(Figure 2):上部食道に術後の食道胃管吻合部を認めた.食道粘膜はひきつれており,胃へ続く管腔は認識できなかった.内視鏡は通過不可で,完全閉塞と診断した.

食道胃接合部癌術後7日目の経口EGD所見.
胃管食道吻合部は内腔が完全閉塞していた.
完全閉塞の原因は手術時の頸部吻合時に対側の食道粘膜を自動吻合機に挟み込んだものと考えられた.そのため閉塞距離は数mm程度と推察した.盲目的な穿刺による再開通は食道穿孔のリスクを伴うため,当科紹介当日に全身麻酔下で内視鏡による再開通を試みる方針となった.患者本人,家族へは穿孔による合併症のリスクや開胸下による外科的な再吻合術へ移行する可能性について十分なインフォームドコンセントを得て処置を行った.
ランデブー内視鏡法による再開通術:食道完全閉塞部に対しては口側および胃側からの内視鏡的アプローチを計画し,閉塞部を確認しながら再開通させる方針とした.処置は全身麻酔下に手術室で施行し,外科医師より腹部創を開放後,幽門輪直上で胃管を切開してイソジン消毒を施した内視鏡(GIF-H290Z,オリンパス,東京)を挿入した.また,経口的にも内視鏡を挿入した.口側および胃側の内視鏡により各々吻合部を観察すると,対側の内視鏡透過光が認識され,管腔の正確な方向が同定可能であった.この際,胃側内視鏡から見た口側透過光の方がより広く透見されたことと(Figure 3),処置前のCT画像で大動脈弓部から遠ざかる方向となることより,胃側から口側へ穿刺する方針とした(Figure 4).口側からの透過光を目印に胃側よりHook knife-J(オリンパス)の先端で完全閉塞部へ圧迫操作を行ったところ,口側内視鏡により粘膜の圧迫が確認できた.双方の内視鏡から穿刺方向が正しいことを確認し,Hook knife-Jに通電しながら穿刺したところ,口側の食道粘膜へと再開通させることに成功した(Figure 5-a,b).穿刺部位を介して経口的にバルーンカテーテル(CRE PRO GI Wireguided,拡張径15-16.5-18mm,長径5.5cm,Boston Scientific,東京)を挿入し,両側の内視鏡で視認しながら16.5mmで2分間拡張した(Figure 6).拡張後,口側からのアタッチメント付き内視鏡は抵抗なく吻合部を通過した(Figure 7).拡張部に明らかな穿孔はなく,左頸部の小切開部より気腫などのリークもないことを外科ならびに麻酔科医師が確認して処置を終了とした.ランデブー内視鏡法での処置時間は24分であった.

ランデブーEGD所見(挿入時,胃側).
吻合部の胃側より口側内視鏡の透過光が確認できた.

再開通術前のCT所見(冠状断).
完全閉塞した吻合部口側にガストログラフィンが貯留していた.大動脈弓より口側約2cmに閉塞部口側が確認できた(青矢印:ガストログラフィンの貯留した残食道,黄矢印:胃管上端,赤矢印:大動脈弓).

a:ランデブーEGD所見(穿刺時,口側).
吻合部口側にて胃側より穿刺したHook knife-Jの先端が視認できた.
b:ランデブーEGD所見(穿刺時,胃側).
吻合部胃側よりHook knife-Jによる通電拡張を施行した.

胃側EGD所見(バルーン拡張中).
穿刺部位に口側からバルーンダイレーターを挿入し拡張した.

口側EGD所見(再開通時).
口側内視鏡(アタッチメント付き)が吻合部を抵抗なく通過し,胃側内視鏡を視認できた.
再開通後の経過:再開通1週間後に嚥下造影検査を施行し,造影剤の漏出がないことや通過性に問題がないことを確認し,経口摂取を開始した.再開通2週間後に吻合部・再開通部に狭窄が生じたため,バルーン拡張術(18mm径,3分間)を施行した.その後は食事摂取に問題はみられず,再開通3週間後に退院した.退院後,経過観察目的に紹介した病院で内視鏡的バルーン拡張術を1回追加されたものの,以降は経口摂取に問題なく,TP 6.1g/dL,Alb 3.2g/dLと栄養状態も良好である.現在,癌の転移・再発はなく,補助化学療法中(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤単剤療法)である.
今回われわれは,食道亜全摘術の胃管吻合完全閉塞に対し,経口および経胃的内視鏡を用いたランデブー内視鏡法により,再吻合術を回避し得た1例を経験した.
食道狭窄には様々な原因があるが,内腔がわずかでも開存していればガイドワイヤを通過させて拡張術が可能となる.一方,完全閉塞はガイドワイヤを適切な方向へ誘導させることは困難である.また一方で,食道の外科的手術による再手術の侵襲度は高い 3),4).本例では術後1週間程度経過しており,再手術は癒着などの影響が危惧されるため内視鏡的に再開通させることの意義は大きい.
本邦での食道閉塞に対する口側と胃側のアプローチを組み合わせた報告は,1943~2021年10月までの期間中,医学中央雑誌で「食道完全閉塞」を索引用語として検索したところ,会議録を除き1件の報告があった 5).また,「食道閉塞」と「内視鏡」を索引用語とすると別途1件の報告がみられた 6).Kidaら 5)は先天的な食道狭窄から完全閉塞に至った0歳児,峯ら 6)は先天性表皮水疱症により食道入口部の膜様閉塞を来した症例をそれぞれ報告しており,いずれも良性疾患に起因した食道閉塞例であった.
安全に完全閉塞を突破する工夫として,口側と胃側の内視鏡による共同作業の下に閉塞部を穿刺する方法,すなわちランデブー内視鏡法の有効性が報告されている 7).1791〜2021年12月の期間中,PubMedで「esophagus」と「endoscopic recanalization」を索引用語として検索し,さらに引用文献を参照したところ,完全閉塞例や通常の内視鏡的拡張が困難であった高度狭窄例に対してランデブー法による内視鏡的再開通を報告した論文は症例報告を含む32報(286例)があった.原因疾患や使用処置具,開通方法などの具体的な記載があったものをTable 1にまとめた.完全閉塞・高度狭窄の原因は,頭頸部癌や食道癌に対する放射線治療(化学放射線療法を含む)に起因する例が最も多かった.放射線治療に伴う食道狭窄・閉塞は2〜9% 8),9)と報告されているものの,日常的に高頻度に経験するものではない.本例では,三辺外翻三角吻合の際,前壁側をエンドパス・ステイプラー(Powered ECHELON FLEX 60,ジョンソン・エンド・ジョンソン)で吻合した際に,対側の食道粘膜を巻き込み,続けて食道粘膜下層を食道内腔と誤認したまま吻合処置を進めたことが吻合閉塞に至った要因と考えられた(Figure 8).本例のように食道亜全摘術・胃管再建術中に吻合時の食道粘膜を巻き込んだ例の報告はこれまでになく 10),きわめて稀な症例であった.しかし,手術に際して起こりうる偶発症であることは認識するべきである.吻合する口側および肛門側の粘膜を巻き込んでいないか,について可能な限り目視や手指・経鼻チューブによる開通性の確認を行うことや,場合によっては術中内視鏡による吻合部の確認を追加することで,吻合部の異常を早い段階で見つけ出せるのではないかと考えられた.また,既報の多くは放射線治療が関連していたため,あらかじめ胃瘻が造設されている症例が多く,胃側の内視鏡アプローチに利用されていた.本例では胃瘻は造設していなかったため,再手術時に腹部創を開放し,胃側から内視鏡を挿入した.また,X線透視装置を併用し,閉塞長や穿刺方向を確認した例が多かったが,本例ではX線透視装置は併用しなかった.これは,完全閉塞した食道と胃を隔てている構造が食道粘膜の薄い構造と考えられたためである.また,対側の内視鏡の透過光およびHook knife-Jによる粘膜圧迫の様子も確認できたため,穿刺方向の調整は容易であった.穿刺するデバイスは硬性のガイドワイヤが最も多く,次いで超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)用の穿刺針や内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)用のナイフが用いられていた.穿刺方向については,閉塞の胃側から口側に向かって逆行性に行う報告が半数以上みられた.閉塞している食道の位置にもよるが,穿刺の方向が誤っていた場合,食道に隣接する大動脈や心膜を損傷することが最も危険と考えられる.事前にCTを撮像して,アプローチルートを検討することが肝要である.また,本例では穿刺に成功した後はガイドワイヤを通過させ,それに沿って拡張用バルーンによる拡張術を行った.既報ではブジーを繰り返してサイズアップをしていく方法や胃管チューブを留置し同様にサイズアップをしていく方法も報告されていた.最終的にチューブフリーとなり,摂食ができるまでには数カ月を要する例 11)や,もしくは完全に狭窄症状が消失しない例 12),13)も報告されている.また,金属ステントを併用し再開通部の拡張を維持している報告 14)もあった.本例では紹介医での施行を含めて計3回のバルーン拡張術で良好な開通性が得られた.偶発症は,穿刺中の穿孔(縦隔気腫や気胸,食道気管瘻など)が9報で,開通後に拡張術を繰り返している中で穿孔した報告が1報 15)あった.しかし,これらの偶発症はほとんどの例で保存的に対処可能であり,再開通のために手術を施行するよりは患者負担を大きく低減できる可能性が高いと考えられた.

食道の高度狭窄・完全閉塞例に対するランデブー法(32報,286例)のまとめ.

三辺外翻三角吻合と本例の吻合(予想図).
a:通常の三辺外翻三角吻合.
(矢印)Linear staplerにより前壁を切離する.
(矢頭)後壁に1針かけて前壁切離時に背側に牽引する.
b:本例の三辺外翻三角吻合(予想図).
(矢印)Linear staplerにより前壁を切離した.
(矢頭)後壁に1針かけて前壁切離時に背側に牽引した.
(点線矢印)粘膜下層を内腔と誤認した.
茶色:固有筋層,水色:粘膜下層,淡黄色:粘膜.
食道亜全摘術の胃管吻合完全閉塞に対してランデブー内視鏡法にて再開通した1例を経験した.ランデブー内視鏡法の施行に際しては事前のCT画像の検討によるアプローチルートの選択が肝要である.
謝 辞
本例の病棟管理を行っていただいた当院のメディカルスタッフや外科学講座の武野慎祐先生,宗像 駿先生に深謝致します.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし