GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC SLEEVE GASTROPLASTY FOR OBESE PATIENTS
Akira DOBASHI Kohei UNOKazuki SUMIYAMA
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2023 Volume 65 Issue 2 Pages 154-161

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要旨

内視鏡的スリーブ状胃形成術(endoscopic sleeve gastroplasty:ESG)は,内視鏡的縫合器を用いて胃壁を全層で縫縮し,胃の容積を減少させる内視鏡的減量・代謝改善手術である.高い減量効果が得られることや低い侵襲度に加え,重篤な合併症が少ないことから欧米を中心に広まりつつある.本稿では,ESGのキーデバイスである内視鏡的縫合器の使用方法とESG手技について解説する.

Abstract

Endoscopic sleeve gastroplasty (ESG) is a newly developed endoscopic bariatric surgery in which the stomach is sewn in full-thickness layers using an endoscopic suturing device to reduce stomach volume. ESG not only achieves a higher weight loss effect, but also has lower invasiveness and complication rates. Recently, ESG has become widespread (mainly in Europe and the United States) as a less invasive new treatment method for obesity. Although the number of obese patients is lower in Japan than in Europe or the United States, Asians tend to develop metabolic syndrome though their absolute BMIs may be low. Therefore, it is expected that ESG will become commonplace and prevalent in Japan as a new treatment option for patients with mild obesity who are not indicated for bariatric surgery or patients who are reluctant to receive surgery.

Ⅰ はじめに

肥満症とは,肥満に加えて,肥満に起因または関連する健康障害を合併する病態と定義されている.欧米においては体重指数(BMI)が30kg/m2以上としているのに対し,本邦では日本肥満学会がBMI以上25kg/m2以上を肥満としている 1.肥満症に対する減量治療としての内科治療の効果は限定的とされ,本邦においては6カ月間の内科的治療を行い減量効果が不十分,かつBMIが35kg/m2を超える肥満症が腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の保険適応となっている.

内視鏡的胃スリーブ状形成術(endoscopic sleeve gastroplasty:ESG)は,2013年に報告された比較的新しい低侵襲・代謝改善手術である 2.ESGでは,内視鏡先端に装着した縫合器(OverStitchTM, Apollo Endosurgery, TX, USA)を用いて胃大彎側に全層巾着縫合を行い,胃内容を縫縮させることで,スリーブ状胃切除と同様の減量・代謝改善効果が期待できる治療法である.既に,単施設で1,000例以上の経験が報告される 3など,国際的に確立された減量・代謝改善治療法として海外では広く認識されている.当院では,特定臨床研究として2020年11月に本邦で初めてESGに成功した 4.本稿では,ESGのキーデバイスである内視鏡的縫合器の使用方法とESG手技について解説する.

Ⅱ 方  法

1.内視鏡的縫合器

内視鏡的縫合器は,消化管内腔から全層かつ連続的に縫合を行うことができる消化器内視鏡用デバイスであり,既に欧米を中心に瘻孔閉鎖 5や内視鏡的全層切除後の創閉鎖 6に使用されている.Apollo Endosurgery社から発売された内視鏡的縫合器は,オリンパス社製2チャンネル上部用内視鏡にのみ装着可能なOverStitchTMとシングルチャンネル汎用上部内視鏡に装着可能な次世代のOverStitch SxTMFigure 1)がある.OverStitch SxTMは,装着できる内視鏡に制限がないが,内視鏡への取り付けはOverStitchTMに比べて煩雑である.現在本邦において,内視鏡的縫合器の臨床での使用経験は限定的であるが,2022年3月にOverStitch SxTMが薬機法の承認を得たことで,今後一層の普及が期待される.

Figure 1 

OverStitch SxTMの名称.本体部分はNeedle Driverと名付けられている.

A:Handleの部分.(a)Needle Driver Handle,(b)処置用チャンネル.

B:内視鏡先端に取り付けられるNeedle Driverの部分はEndcapと名付けられている.Handle(a)を握ることによりNeedle Body(c)が開閉する.(d)Helix,(e)Anchor Body,(f)Needle Guard.

2.OverStitch SxTMにおける名称と役割および操作方法

① Needle Driver(Figure 1):OverStitch SxTMの主要デバイス.内視鏡操作部に装着するHandle(Figure 1-A)と内視鏡先端に装着するEndcap(Figure 1-B),そして,その間をつなぐシースで構成されている.

② Anchor:ポリプロピレン縫合糸が針(Anchor Body Figure 1-B-e2-A,D)の側面に固定されているデバイス.Anchor Bodyが消化管壁全層を貫通する針として機能する.またAnchor Bodyは縫縮が完了する際,最終的に粘膜側に留置され,シンチの役目を果たす(Figure 2-D).

Figure 2 

OverStitch SxTMを用いた縫合の原理.内視鏡先端に装着したNeedle DriverのEndcap部分にHelixで把持した胃壁全層を引き込んだ後,Needle Bodyを閉じる.その後,Anchor Exchangeを押し込み,Anchor Bodyと接続させるとAnchor Bodyと縫合糸が胃壁全層を貫くことができる.

A:Anchor Exchangeの手元のボタン(a:Anchor Release Button)を押し,Anchor Exchangeの先端からAnchor bodyをリリースし,Needle Body側にAnchor body(針となる部分)をセットする.

B:Helixを用いて胃壁全層をNeedle Bodyまで牽引する.

C:Needle Bodyを閉じAnchor Exchangeを押し込むと,Anchor Bodyと縫合糸が胃壁全層を貫通する.

D:Anchor Bodyを胃内でリリースし,対側の縫合糸にChinchを留置することで縫縮が完了する.

③ Needle Body(Figure 1-B-c2-A):Needle DriverのEndcapに位置し,脱着可能なAnchor BodyをNeedle Bodyの先端に装着し使用する.Needle Driver Handle(Figure 1-A-a)を握るとNeedle Bodyが開閉する.

④ Anchor Exchange(Figure 2):Needle BodyからAnchor Bodyを脱着するために用いる.Needle Body側にAnchor bodyを装填させるには,Needle Exchangeの先端にAnchor Bodyを装着後,手元でクリックを感じるまでNeedle Exchangeを押し込む.続いてAnchor Exchangeの手元側にあるAnchor Release Button(Figure 2-A-a)を押すと,Anchor ExchangeからAnchor bodyがリリースされ,Needle Body側にAnchor bodyを装填することができる.一方,Anchor Exchangeを手元でクリックを感じるまでNeedle Bodyまで押し込み,Anchor bodyとAnchor Exchangeを接続させた後,Anchor Exchangeを処置用チャンネルから引き抜くと(Figure 2-C),Needle BodyからAnchor bodyを取り外すことができる.

⑤ Helix(Figure 1-B-d):先端がワインオープナーの形状をしており,時計回りに回転させながら胃壁に押し込むと,先端が筋層へと到達する.その状態でHelixを牽引すると胃壁全層を把持することが可能となる(Figure 2-B).また,Helixを反時計回りに回転させると,把持した胃壁をリリースすることができる.

⑥ Cinch(Figure 2-D):連続縫合を行った後,胃壁から出ている縫合糸にCinchを留置することで縫縮が完了する.Cinch Handleを握るとシンチが縫合糸に強固に固定され,同時に縫合糸が切れるメカニズムとなっている.

3.内視鏡的全層縫合の原理(Figure 2

Helixで把持した胃壁全層を内視鏡先端まで牽引した後,Anchor Bodyを充填したNeedle Bodyを閉じる.そして,Anchor Exchangeを押してAnchor BodyとAnchor Exchangeを接続すると,縫合糸が胃壁全層を貫通する.連続縫合の後,胃内でAnchor bodyをリリースするとAnchor Body自体が片方のシンチとなり,また,Anchor Body対側の縫合糸にCinchを固定することで強固な全層縫合が完了する(Figure 2-D).

4.OverStitch SxTMの内視鏡への装着

Needle Driverを装着する前に内視鏡を十分に乾燥させておくことが重要である.最初にNeedle Driver Handle(Figure 1-A-a)を内視鏡(当院では,オリンパス社製汎用上部用スコープ GIF-H290を使用)の操作部にラバーバンドで固定する.その後,2本のビニールのストラップを引いてNeedle DriverのEndcap部分と内視鏡の先端を強固に固定する(Figure 3).この際,内視鏡画像上,5時方向かつAnchor Bodyの脱着を視認できる位置にNeedle Bodyの先端の部分(Figure 4矢印)がくるように調整する.その後,Endcapのカバー部分を押し込み,Endcapを内視鏡先端に更に強く固定させる.最後に,余分なストラップをメスなどでカットし,内視鏡の本体部分とNeedle Driverのシースを付属のテープで固定する.

Figure 3 

Needle Driverの装着方法.内視鏡先端とNeedle Driverの先端にあるEndcapを左手で保持し,2本のストラップを強く引いて固定する.

Figure 4 

OverStitch SxTM装着時の内視鏡画像.Needle body先端でAnchor bodyの脱着(矢印)を確認する.

A:Anchor body充填前.

B:Anchor body充填後.

5.ESG手技の実際

ESGは,全身麻酔下に行う.肥満症患者は挿管困難例が多いことに加えて,術中に低換気や血栓症を発症するなど全身麻酔に伴う偶発症リスクが高いため,術中管理は高度肥満症患者の全身麻酔に精通した麻酔科医が行うべきである.

① 大口径のオーバーチューブ(当院ではトップ社20ダブルスリム型16406,脱気防止弁付アダプター16413を使用)を挿入後,胃内を観察し水洗する.縫縮を行う過程で胃体部前壁と後壁の位置関係の把握が困難となるため,体下部から上部の前壁と後壁にESDナイフなどでマーキングを行う(Figure 5-A)とよい.

Figure 5 

内視鏡的スリーブ状胃形成術治療前後における胃の内視鏡像.

A:治療前.大きくU字を描くように連続縫合を行い縫縮していく.

B:治療後.矢印は幽門側への経路.

② OverStitch SxTMを装着した内視鏡を胃内に挿入する.この際に,スコープに十分な潤滑ゼリーを付け,Needle Bodyが閉じていることを確認する.

③ Needle Driverの処置用チャンネルから先端にAnchor Bodyを装着し十分な潤滑ゼリーを付けたAnchor Exchangeを挿入する.前述の如く,手元でクリックを感じるまでAnchor Exchangeを押し込み, Needle BodyにAnchor Bodyを充填する(Figure 2-A).内視鏡画像上でAnchor Body がNeedle Bodyにセットされたことを確認することが重要である(Figure 4矢印).

④ 胃内でNeedle Driver Handleを握りNeedle Bodyが開いた後,Helixの先端を胃壁に対して垂直になるように軽く押し当て,(この際,スコープ先端と胃壁の距離が離れていても構わない),Helixを時計回りに回転させる(Figure 6-A).Helixを過剰に回転させると,後で胃壁のリリースが困難となるため,回転は,4-5回程度に留める.

Figure 6 

OverStitch SxTMを用いた内視鏡的スリーブ状胃形成術.

A:Helixを胃壁に押し込みつつ時計回り回転させると先端が胃筋層まで達する.

B:Helixで把持した胃壁全層を内視鏡先端まで牽引する.

C:縫合糸が胃壁全層を貫通することで,耐久性に優れた縫縮が可能となる.

D:縫縮を繰り返すことで,少しずつ胃体部の容量が縮小していく.

⑤ Helixで把持した体下部前壁の胃壁全層をEndcap内(OverStitch SxTMの内視鏡先端部分)に引き込んだ後(Figure 2-B6-B),Needle Driver Handleを握りNeedle Bodyを閉じる.この際,引き込む胃壁の組織量が多いとNeedle Bodyが閉じないので注意する.

⑥ 手元で軽いクリックを感じるまでAnchor Exchangeを押し込み,先端でAnchor Body とAnchor Exchangeを接続させる.この操作でAnchor Bodyと縫合糸が粘膜→漿膜→漿膜→粘膜と胃壁全層を完全に2回貫くことになる(Figure 2-C).Anchor ExchangeとAnchor Bodyが接続しない場合でも,Anchor Exchangeを無理に押し込まない.過剰に押し込むとNeedle Bodyが変形し,デバイスの破損につながる.

⑦ Helixを反時計回りに回転させ胃壁をリリースする.この際,Helixを軽く手前に引き込みながら回転させると,胃壁を容易にリリースすることができる.全層縫合を行う際,1回の操作で縫合糸の貫通する胃粘膜上での距離が2-3cm程度であることが望ましく(Figure 6-C),この間隔が狭いと縫合糸が全層を貫いていない可能性がある.

⑧ ④~⑦の操作を前壁,大彎,後壁,後壁,大彎,前壁と計6回繰り返し,U字型に連続縫合を行う(Figure 5-A).

⑨ 胃壁に連続縫合を行った後,Anchor Release Buttonを押してAnchor Bodyを胃内にリリースし,Anchor Exchangeを抜去する.Needle Driverの処置用チャンネルから出ている縫合糸の端にCinch Deviceを通した後,縫合糸に沿わせてCinchを処置用チャンネルから胃内へと挿入する.この際,手元の縫合糸を左手で保持し,軽くテンションをかけておくとスムースにCinch Deviceを挿入することができる.

⑩ 胃壁が十分寄り合うまで手元の縫合糸を牽引しつつ,縫合糸が貫通している胃粘膜部分(最初に縫合を開始した部分)にCinchを押し当て,Cinch Deviceのハンドルを握りCinchを留置する(Figure 2-D).縫合糸に過剰なテンションがかかると切れてしまうため注意する.この際,スコープを左腕で保持しつつ左手で縫合糸を牽引し,右手で胃内のCinchの位置を調整するとよい.

⑪ ④~⑩の縫縮操作(Figure 6-D)を胃体下部から体上部まで胃が十分に縫縮するまで4-5回程度繰り返す.

⑫ 胃体部の縫縮をより強固にするため,縫縮が完了した体部前壁,大彎,後壁の胃壁全層に対し,連続縫合を2回程度追加する.術後の過度な胃内容物排泄遅延や穿孔を予防するため,前庭部や穹隆部は縫縮しない.

Ⅲ 肥満症に対する内視鏡的治療とESGの治療成績

内視鏡を用いた減量治療は,外科治療に比して侵襲が少ないことが利点である.そのため,手術に踏み切ることのできない肥満症患者に対する魅力的な治療選択肢として期待され,これまでに様々な治療法が考案されている 7.内視鏡的胃内バルーン留置術(Intragastric balloon:IGB)は,最も普及し実績のある内視鏡的減量・代謝改善治療である 8.IGBは2000年代に初めて臨床応用されて以来,その手技の簡便さや低侵襲な治療であることから,肥満人口の多い欧米や南米を中心に普及し,2018年時点において世界で30万例以上に施行されいる.本邦では,IGBが保険未収載の治療法であるため全額自己負担で行われており,2021年までの総件数は約600例に留まっている.IGBの有用性が数多く報告されているものの,バルーンの留置期間が6から12カ月以内と限定されているため,バルーン抜去後のリバウンドが問題とされている 9.また,バルーン留置後には,嘔気や腹痛が必発し,必ずしも低侵襲な治療とは言い難い.

これまでに開発されてきた低侵襲減量・代謝改善治療では,減量効果や耐久性が不十分であることが課題であった 7.一方ESGは,前述の如く,胃壁を全層で縫縮するため耐久性に優れており,総体重減少率(percentage total weight loss:%TWL=[術前体重―術後体重]/術前体重×100)は14.8-20.9%であったと報告され 10,治療効果も十分である.また,ESGとIGBの減量効果を比較した研究において,IGBでは留置後6カ月後と12カ月後の%TWLが15.0%と13.9%であったのに対して,ESGではそれぞれ19.5%と21.3%であり,術後時間が経つにつれ両者の減量効果の差は大きくなることが明らかにされた 9.そして,近年報告された研究によると,ESGではリバウンドすることなく長期に亘って減量効果が持続し,ESG施行5年後の%TWLは15.9%と成績も良好であった 11

腹腔鏡下スリーブ胃切除術後の%TWLは,23.6-29.3%と報告されており 10,ESGに比して減量効果が非常に高い.しかし,腹腔鏡下スリーブ胃切除術では,重篤な合併症発生率が7%とESGの2%(5/248)(胃底部周囲の腹水貯留2例,胃壁外出血1例,肺塞栓1例,皮下・縦隔気腫1例)よりも高い 12.ESGの合併症の多くは,腹痛・嘔気・嘔吐などの軽度なものであり,ほとんどの症状は薬物治療にて軽快するとされている.実際,われわれが行った症例においても,術翌日までは心窩部不快感があるものの自制範囲内であり,術2日目には消失していた.また,ESGにおいて,術後に耐え難い腹痛や嘔気を認め治療の継続が困難となったため,内視鏡的に縫合糸を切断し,縫縮を解除することで症状の緩和に至ったという報告がある 3.更にESGでは,減量効果が不十分であった場合には,再度ESGを行うことが可能であり,ESG後に腹腔鏡下スリーブ胃切除術に移行したという報告もある.従って,ESGはこれまでにない可逆的かつ柔軟性に優れた低侵襲減量・代謝改善治療であり,利点が非常に多い.

Ⅳ おわりに

メタボリックシンドロームとBMIの関連を検討した研究において,アジア人は欧米人に比して低いBMIで肥満関連合併症を発症すると報告されている.そのため,米国糖尿病学会は,アジア人における糖尿病合併の肥満症に対する減量・代謝改善手術の適応をBMI 27.5kg/m2まで引き下げた 13.現在,われわれは肥満2度以上(BMI≧30kg/m2)の肥満症患者に対するESGの安全性と効果を検証するため,前向き安全性試験を行っている 4.低侵襲減量・代謝改善手術であるESGが,肥満2度以上の患者においても減量効果やメタボリックシンドロームに対して十分な治療効果があることが明らかになれば,糖代謝異常症や高血圧症などにおける医療費を大幅に削減することが可能であり,ESGの導入は医療経済的にも臨床的にも意義が大きい.ESGを本邦で普及させるためには,内視鏡的縫合器の取り扱いに精通し,ESG手技を熟知することが必須である.われわれの臨床導入の経験を活かし,本邦でも肥満症患者に対してより多くのESGが安全に行われることを期待している.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:土橋 昭(メドトロニック社)

文 献
 
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