GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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TISSUE SAMPLING METHODS FOR GASTRIC SUBEPITHELIAL TUMORS
Kazuhiro FURUKAWA Masanao NAKAMURAHiroki KAWASHIMA
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2023 Volume 65 Issue 3 Pages 214-228

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要旨

粘膜下腫瘍(subepithelial tumor;SET)は日常臨床でしばしば遭遇する疾患の一つである.EUSは腫瘍径や局在層,内部エコーレベル,内部エコーパターン,辺縁の形状などの観察が可能であり,SETの診断にとって不可欠な検査の一つだが,間葉系腫瘍をEUS所見のみで診断することは困難である.確定診断のためには組織診や免疫染色が必要なものの,delleを伴う病変を除くと正常粘膜で覆われているため,内視鏡下生検では腫瘍組織を得ることはできない.そのため,ボーリング生検や超音波内視鏡下穿刺吸引法/生検法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration;EUS-FNA/endoscopic ultrasound-guided fine needle biopsy;EUS-FNB),粘膜切開生検(mucosal incision-assisted biopsy;MIAB)など,様々な組織採取法が行われている.本稿では,これまでの臨床研究の成績を中心に,胃SETに対するEUS-FNA/BとMIABについて概説する.

Abstract

Gastric subepithelial tumors (SET) represent one of the most frequently encountered lesions during routine endoscopy. Although EUS is essential for diagnosis of SET, EUS alone cannot accurately diagnose mesenchymal tumors. Histopathological evaluation and immunohistochemical analysis are essential to conclusively diagnose SET; therefore, various tissue collection techniques such as a boring biopsy, endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration/biopsy (EUS-FNA/B), and mucosal incision-assisted biopsy (MIAB) are used in clinical practice. In this article, we present an overview of EUS-FNA/B and MIAB for gastric SET, focused on the findings of current clinical research in this field.

Ⅰ 緒  言

粘膜下腫瘍(subepithelial tumor;SET)は日常臨床でしばしば遭遇する疾患の一つであり,上部消化管内視鏡検査において,0.8~2%の症例で偶然発見されると報告されている 1.SETについては,消化器内視鏡用語集第4版 2で“粘膜より深部に存在する壁内病変により粘膜が挙上されて生じた隆起の総称”と定義されており,消化管間質腫瘍(GIST:gastrointestinal stromal tumor)をはじめとして平滑筋種,神経鞘腫,神経内分泌腫瘍,迷入膵,脂肪腫など多種の腫瘤が含まれる.delleを伴う病変を除くと正常粘膜で覆われているため,内視鏡下生検では腫瘍組織を得ることはできず,通常内視鏡観察でも鑑別困難である.超音波内視鏡検査(EUS)は腫瘍径や局在層,内部エコーレベル,内部エコーパターン,辺縁の形状などの観察が可能であり,壁外圧排の鑑別も行えるため,SETの診断にとって不可欠な検査の一つである.特に脂肪腫や迷入膵,囊胞,静脈瘤などは特徴的なEUS所見を有するため,EUSのみで診断することができる.一方,GISTや平滑筋種,神経鞘腫は類似したEUS所見をとることが多いため,EUSだけでは確定診断をつけることは困難である.SETに対するEUS診断の正診率は内視鏡専門医においても54.9~68%であったと報告されている 3

胃は他の上部消化管領域に比べてSETの発生頻度が高く,種類も多彩なため,診断に難渋することも多い.間葉系腫瘍の鑑別診断には組織診及び免疫染色が必須であるため,その診断のためにボーリング生検や超音波内視鏡下穿刺吸引法/生検法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration;EUS-FNA/endoscopic ultrasound-guided fine needle biopsy;EUS-FNB),粘膜切開生検(mucosal incision-assisted biopsy;MIAB)など,様々な組織採取法が行われている.本稿では,特に胃SETに対するEUS-FNA/BとMIABについて概説する.

Ⅱ EUS-FNA/Bの適応

EUS-FNAは,1991年の原田ら 4による,動物実験におけるリニア型EUSと試作の穿刺針を用いたリンパ節検体の採取の成功が初めての報告である.ヒトへの臨床応用については,翌1992年にVilmannら 5により膵腫瘤に対するEUS-FNAが報告されている 6.当初,本邦では一部の先進施設において膵疾患を中心に行われてきたが,2010年に保険収載されたことを契機に一般臨床にまで広く普及するようになり,現在ではSETに対する標準的な病理組織学的診断法の一つになっている.

EUS-FNAは,脂肪腫や囊胞などといった特徴的なEUS所見を有し,EUS所見のみで診断することができるSETでは適応にならず,上部消化管領域ではGISTを含む間葉系腫瘍が疑われる病変や粘膜下腫瘍様胃癌などが対象となる.また,GIST診療ガイドライン第4版 7では,腫瘍径2cm以上,5cm未満,不整な辺縁,潰瘍や陥凹形成,増大傾向を示す病変に対してはEUS-FNAによる精査が推奨されている.2cm未満のSETについてはEUSなどによる年に1~2回の経過観察が勧められているが,2cm未満の胃GISTに対して外科切除を行うことを弱く推奨されていることや,検体採取率の向上などにより,実際にはEUS-FNA/Bを行うことも多い.5cmを超えるような病変については切除が前提となるため,EUS-FNA/Bの施行の是非については外科医との相談の上,決定することが望ましい.

Ⅲ EUS-FNAの診断能

EUS-FNAの診断能や検体採取率については多くの論文が報告されているが,その多くは膵疾患やリンパ節,SETなど多彩な患者背景を含んでいる.対象をSETに限定すると,その診断能は43.3~100%と報告により大きな差がある 8)~24.GIST診療ガイドライン第4版 7ではEUS-FNAの正診率に関して定性的システマティックレビューが行われており,コホート研究及び症例対照研究でそれぞれ62.5~97%,61.6~100%だった.また,上部消化管SETのみを対象とした17編の論文に対するメタ・アナリシスでは,EUS-FNAの診断能は59.9%と報告されている 25

他の疾患と比べてSETに対する診断能が低いのは,SETの診断には組織診や免疫染色を可能とする十分な検体量を採取する必要があることや病変部位,腫瘍径,可動性の高さなどの要因が関係していると考えられる.病変部位に関しては,Suzukiらが胃SET47例を対象として検体不十分となる要因について検討を行っており,多重ロジスティック回帰分析にて60歳未満とL領域が予測因子として抽出されたと報告している 19.また,Kimらも胃SET33例を対象として病変の部位と診断能との関係について検討しており,前庭部は胃体部や噴門部に比べて,SETの診断能が有意に低かったと報告している 12.いずれの報告も,L領域の病変で検体不十分となる可能性がある点で共通している.

腫瘍径とEUS-FNAの検体採取率との関係については,引地らが胃SET140例を対象に報告している.20~49mm(94.9%,94/99),50mm以上(100%,6/6)と比較して20mm未満の病変で低かったが,それでも80%(28/35)の症例で検体が採取されており,また20mm未満の症例でも15~19mmでは85.7%(24/28)の検体採取率であったと述べている 26.Akahoshiらは20mm未満では71%(15/21),20~40mmでは86%(18/21),40mm以上では100%(9/9)であったと報告している 21.同一著者による別の検討では,10mm以上20mm未満の胃SETにおける初回診断能は62%(56/90)であったが,繰り返すことで73%(66/90)まで改善したと述べている 9.また,Sekineらも20mm未満のGISTにおけるEUS-FNAの感度,陽性的中率はそれぞれ81.3%,100%であり,小さなGISTに対してもEUS-FNAは有用と結論付けている 8.以上の結果から,一般に20mm以上の病変と比べて20mm未満の病変ではやや診断能は劣る傾向があるものの,いずれの報告でも70%以上の検体採取率は有しており,GISTを疑う病変に対しては積極的にEUS-FNA/Bを考慮してもよいと考えられる.

Ⅳ 穿刺針のサイズと診断能

EUS-FNAで使用される穿刺針(Figure 1-a)については,19~25Gまでのサイズで複数のメーカーから市販されているが,本邦ではSETに対しては22G針を用いることが多い.また,近年は組織コア検体の採取を目的として特殊な形状をした穿刺針(フランシーン針,コアトラップ針)(Figure 1-b,c)も使用可能であり,これらの穿刺針を用いた検査についてはEUS-FNBと呼ばれている.FNB針はFNA針と比べて,血液の混入の程度は変わらないものの,より多くの組織を採取できる 27

Figure 1 

穿刺針.

a:ランセット針(画像提供:オリンパスマーケティング株式会社).

b:フランシーン針(画像提供:ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社).

c:コアトラップ針(画像提供:クックメディカルジャパン合同会社).

穿刺針の口径と診断能については,22Gと25G針 10),18,19Gと22G針 24を比較した文献が複数存在しているが,その多くで差はなく,上部消化管SETを対象としたメタ・アナリシスのサブグループ解析でも19G,22G,25G間で診断率に差は認めていない 25.一方,Imazuらは,22Gと25G FNA針の操作性や検体採取量を比較しており,診断能と針の視認性については両者で差はなかったものの,22Gの方が検体量は多く,25Gの方が穿刺は容易であったと報告している 28

一般的に大口径(19G)の穿刺針はより大きな組織検体の採取が可能であるが,穿刺抵抗が大きいため,スコープのアングル操作や鉗子起上台が制限される.一方,細径(25G)の穿刺針はスコープ操作への影響が少なく,穿通性が良好であり,穿刺も技術的に容易である反面,検体量がやや少ないとされる 29.様々な穿刺針が開発されており,穿刺針の操作性や検体採取率も向上していることから,当科ではSETに対してはまずは22G FNB針を選択し,検体不十分や穿刺困難な場合はそれぞれの病変に応じて穿刺針のサイズを変更している.

Ⅴ EUS-FNBの診断能

組織診を目的とした穿刺針であるFNB針のSETに対する診断能は86.0~92.1%と報告されている 30)~36.また,FNB針とFNA針の成績を比較した論文も近年多く発表されている.そのうちSETを対象とした論文もしくはSETに対するサブグループ解析が行われた論文をTable 1に示す 37)~51.穿刺回数が同等もしくは少ないにも関わらず,全体としてFNB針はFNA針と比較して組織コア検体の採取率が高く,診断率も高いとする報告が多い.SETを対象としたメタ・アナリシスは現在のところ2編発表されているが,相反する結果が報告されている.2016年に発表された17編の論文に対するメタ・アナリシスでは,FNAとFNB間で診断率に差は認めなかった 25.一方,2020年に発表された10編の論文に対するメタ・アナリシスでは,標本の妥当性(FNB vs FNA;94.9% vs. 80.6%),診断率(87.9% vs. 64%),組織コア検体採取率(89.7% vs. 65%),平均パス数(1.73 vs. 2.82)のいずれにおいてもFNBの方が優れた成績であった 52.これら二つのメタ・アナリシス間の結果の不一致は,選択された研究の不均⼀性や評価期間における経験の蓄積及び技術の習熟度の違いなどが影響しているものと考えられる 53.実際2016年のメタ・アナリシスで採用された論文の多くでFNA針が用いられており,FNB針を使用した論文は2編しか含まれていなかった.

Table 1 

EUS-FNAとEUS-FNBの比較.

FNB針は先端が特殊な形状をしているものの,穿刺困難が予想される比較的小さなSETに対しても良好な成績が報告されている.Sekineらは,上部消化管SET62例を対象とした検討から,診断率を向上させるためには,20mm以上のSETに対しては19もしくは20Gといった口径の大きな針を用い,20mm未満のSETに対しては穿刺針のサイズに関係なく,FNB針の使用を推奨している 36.また,EUS-FNBの診断精度は迅速細胞診(rapid on-site cytologic evaluation;ROSE)を併用したEUS-FNAよりも優れており,ROSEの併用の有無でEUS-FNBの診断能に変わりはないとする報告もある 40.特にROSEを行うことが困難な施設においては,高い組織コア検体採取率や診断能を有するFNB針を選択した方が望ましいと考えられる.

Ⅵ 穿刺回数

EUS-FNA/Bの際に何回穿刺すればいいか,穿刺終了の判断に迷うことを時に経験する.ROSEは検査中に検体の量や質を評価することができるため,穿刺回数の減少や診断成績の向上に寄与し,検査後に検体不足が判明するリスクを減らすことができる.しかしながら,病理医や細胞検査士の人員不足などから,必ずしもROSEを行える施設ばかりではない.ROSEを行うことが困難な施設においては,採取された白色検体の長さが目安の一つになる.Masutaniらは,22G針を用いたEUS-FNAにおける,膵腫瘍やSETの正確な病理診断に必要な白色検体のカットオフ⻑について検討しており,上部消化管SETにおけるカットオフ長は3.5mm,AUCは0.912であったと報告している 54.また,22Gフランシーン針でも同様に検討し,上部消化管SETにおけるカットオフ長は4mm,AUCは0.958であったと述べている 55

穿刺回数と診断能に関して,141例の胃SETを対象とした検討では,平均2.5回(範囲1~5回)の穿刺が行われていたが,穿刺回数(2回以下,3回以上)は検体採取に関連する有意な要因ではなかった 11.一方,Rongらは,SETだけでなく膵腫瘤やリンパ節腫大も含んだ症例の検討にはなるものの,3回以上の穿刺は3回未満の穿刺に比べて,有意に診断能が向上したと述べており 18,相反する結果であった.穿刺回数毎の正診率をみると,壁内病変11例と少数例の検討だが,22G針を用いたEUS-FNAの精度は穿刺回数とともに徐々に増加し,4回目の穿刺の後に45%とプラトーに達したとする報告もある 56.また,Suzukiらは胃SET57病変を対象として,穿刺針の種類と病変の部位により4グループに分けて,最適な穿刺回数について報告している.その検討では,22Gフランシーン針で穿刺された胃体部の病変と胃体部以外の病変,従来の22G FNA針で刺された胃体部の病変と胃体部以外の病変の各グループの最適な穿刺回数はそれぞれ2回,3回,3回,3回であり,最適な穿刺回数における20mm以上のSETの診断感度は96%,80%,85%,60%であったと述べている 57.以上のように文献によって見解が異なっており,コンセンサスが得られていないものの,十分な検体量を採取するために5回以上穿刺する意義は低いと考えられる.複数回穿刺しても検体不良だった場合は漫然と穿刺を繰り返すのではなく,穿刺針のサイズや他の組織採取法への変更などを検討すべきである.実際,19Gもしくは22G FNB針で技術的に穿刺困難もしくは検体不良だった上部消化管SET16症例を前向きに登録した研究において,25G FNB針で穿刺することにより56.2%で診断可能であったという報告もある 58

Ⅶ ストローク方法

可動性に富むSETに対しては,山雄ら 59が報告しているDoor knocking methodが有用である.これは穿刺前に腫瘤の最深部までの距離を測定し,その手前の位置にストッパーを固定して素早く穿刺する方法である 29),59)~61.穿刺する際にはストッパーが確実にロックされていることを確認し,ハンドルをストッパーにぶつけた際にストッパーが外れて意図しない深い穿刺にならないように十分に注意する必要がある 61

また,鉗子起上台を用いて,ストローク毎に扇状に穿刺針の穿刺経路を変更するFanning techniqueも汎用されている 29),60),61.この方法は複数の領域から組織を採取することができるため,文献的には膵腫瘤に対する有用性が報告されているが 62,GISTなどの不均一な腫瘤に対しても有用と考えられる.また,内部壊死を伴っている場合には,病変の辺縁からも組織採取を試みる必要がある.

Ⅷ 吸引法

EUS-FNAの際の吸引法には,10mlもしくは20mlのシリンジを用いて陰圧を負荷する通常法やスタイレットを少しずつ引きながら弱い陰圧を負荷するslow-pull法がある.通常法は吸引圧が強いため多くの検体を採取できると考えられているが,血液の混入量も増加することにより診断への影響も懸念される.一方,slow-pull法は術者の穿刺に合わせて,助手がゆっくりスタイレットを引き抜くことにより弱い陰圧が持続的にかかるため,検体量を増やすとともに陰圧が強すぎないことから多量の血液の混入も防ぐことが期待される 29),60.なおスタイレットを引き抜くスピードとしては,20~30ストロークで穿刺針からほぼ抜ける程度が目安とされている 29.通常法とslow-pull法について,主に膵腫瘤を対象として比較されており,Nakaiらはslow-pull法は血液の混入が少なく,特に25G針において診断能の向上に寄与すると述べている 63.また,メタ・アナリシスでも同様に,slow-pull法では通常法に比べて有意に血液の混入が少なかったと報告されている 64.SETを対象とした検討は少ないものの,同等の診断精度と十分な組織採取量が得られたとする報告 65もあることから,胃SETに対してもslow-pull法は有用な吸引法と考えられる.

Ⅸ 直視型(forward-viewing:FV)と前方斜視型(oblique-viewing:OV)EUSスコープ

EUS-FNA/Bにはコンベックス型EUSスコープが用いられるが,コンベックス型にはFVとOVの2種類あり(Figure 2),EUS-FNA/Bの際にはOVが使用されることが多い.FVによるEUS-FNAの診断能については,LarghiらがSET121例(うち胃96例)を対象に,19G穿刺針を用いることで93.4%(113/121)の症例で免疫染色が可能であったと報告している 66.また,Yamabeらはスコープの先端にアタッチメントを装着し,吸引して穿刺することで,平均腫瘍径10.6mmのSETの87.5%(7/8)で十分な検体量を採取することができたと述べている 67.FVとOVの診断能を比較するために,Matsuzakiらは上部消化管SET41例を対象に前向き無作為交差試験を行っている.診断率はFVが80.5%(33/41),OVが73.2%(30/41)と有意差は認めなかったものの,採取したGISTの組織検体面積の中央値はFVの方が有意に大きく(2.46mm2 vs. 1.00mm2),手技時間中央値はFVの方が有意に短かった(21min vs. 27min) 68.またLeeらは,FVの方が病変描出までの時間とEUSの画質がOVに比べて有意に優れていたと報告している 69

Figure 2 

コンベックス型EUSスコープ(画像提供:オリンパスマーケティング株式会社).

a:直視型EUSスコープ.

b:前方斜視型EUSスコープ.

FVは超音波走査範囲が90°と狭いものの,病変を内視鏡画面で視認した状態で穿刺することが可能であり,またYamabeら 67が報告しているようにスコープの先端にアタッチメントを装着し病変を吸引することで,アタッチメント内に病変を固定することができるため,特に小さなSETに対しては有用である.また,直視であることから通常スコープと同様の視野で操作することできるため,OVに比べてアタッチメント分の径の増大には注意が必要なものの,初学者にとって内視鏡の挿入が容易と考えられる.部位としては,穹窿部や胃体上部大彎などの病変がFVのよい適応となる.ただし,FVには鉗子起上台がなく,前述したFanning techniqueを利用することができないため,穿刺の際にはスコープ操作で穿刺範囲を調整していく必要がある.当院でのFVを用いたEUS-FNAをFigure 3に提示する.

Figure 3 

GISTに対する直視型EUSスコープを用いたEUS-FNA.

a:通常観察.

b:EUS画像.

c:直視型EUSスコープを用いたEUS-FNA.

d:採取した検体.

e:HE染色像(×40).

f:HE染色像(×200).

g:免疫組織化学染色像(c-kit陽性).

Ⅹ EUS-FNA/Bの偶発症

上部消化管SETを対象としたメタ・アナリシスでは,978回のEUS-FNAのうち3例に重篤な偶発症を認めたと述べている.2例は敗血症,1例は多臓器不全による死亡で,いずれの症例も大きな病変か潰瘍性病変に対して19Gで穿刺を行った症例であった 25.出血については,HamadaらがDPCのデータベースを元に,219病院においてSETに対してEUS-FNAを施行した1,135例(うち胃は73.5%,834例)における偶発症発生率を報告している.1,135例のうち赤血球輸血もしくは内視鏡治療を必要とした重度の出血は5例,0.44%に認め,発生臓器別の検討では胃SETにおける重度の出血率は0.5%であったと述べている.また,検討期間内には穿孔は1例も認めなかった 70

EUS-FNA時の抗血栓薬の内服の有無と出血率との関係については,Polmaneeらが膵及び非膵疾患908例(うちSETは56例)のEUS-FNA後出血の頻度について報告している.抗血栓薬内服群では4例0.4%(うち2例が内服継続,1例が休薬,1例がヘパリン置換)に,非内服群では2例0.2%に,全体では6例0.7%に後出血を認めたが,出血は腫瘍周囲の血種が3例,粘膜下血種が1例,管腔内出血が1例と重篤な出血は認めなかった 71.また,Inoueらも充実性腫瘤に対してEUS-FNAを施行した742例(うちSETは129例)を対象に出血性偶発症発生率を検討している.出血性偶発症は742例中7例で認め,発症率は0.9%であり,いずれも術中出血であったと報告している.出血率を抗血栓薬の内服の有無で検討すると,非内服群では1%(6/611),休薬群では0%(0/62),継続群では1.6%(1/61),ヘパリン置換群では0%(0/8)であり,うち内視鏡治療を必要とした重度の出血は直腸GISTに対してEUS-FNAを施行した非内服群1例のみで,全体における重度の出血率は0.1%(1/742)であった 72

EUS-FNA/Bの偶発症としては出血,穿孔,感染などが挙げられるが,いずれの報告でも発生頻度は極めて低く,またEUS-FNA/Bは抗血栓薬継続下でも安全に施行できると考えられる.

Ⅺ ボーリング生検とMIAB

神経内分泌腫瘍などは粘膜深部にも病変が存在するため,内視鏡下生検でも診断を得ることができるが,GISTなどの第4層由来の病変については比較的深部に病変が存在するため,粘膜欠損部がない限り通常の生検鉗子では腫瘍組織を得ることができない.組織採取のために同一部位から生検を繰り返すボーリング生検が古くから行われてきたが,簡便ではあるものの,既報では診断精度は38%と低く,出血のリスクも14%と高かった 73.ジャンボ生検鉗子を用いると,通常の生検鉗子より大きな組織を採取することができるため,第3層由来の腫瘍で65.1%,第4層由来の腫瘍で40.0%と診断能は向上するが,出血のリスクはさらに高くなり,34.9%の症例で内視鏡的止血術が必要になるなど課題が多かった 74

一方,近年内視鏡的切除の技術を応用したMIABの有用性が報告されている.MIABは為我井らによって考案されたESDの技術を応用した手技であり,2007年に粘膜切開直視下生検法として報告された 75.MIABでは,SET直上の粘膜下層に生理食塩水などの局注液を局注した後,針状メスなどの先端系デバイスを用いて粘膜切開と粘膜下層剝離を行い,SETを十分に露出させる.その後,SETを直視下に確認しながら,生検鉗子を用いて腫瘍組織の採取を行う.生検後は後出血の予防のために,切開部をクリップにて縫縮する.当院での症例をFigure 4に提示する.また,Kobaraらは粘膜フラップ法を応用し,粘膜を10mmほど小切開した後に粘膜下層にトンネルを作成し,直視下に針状メスを用いて5mm大の組織コア検体を採取する,粘膜下トンネル生検法の有用性を報告している 76),77.いずれの方法でも,直視下に直接腫瘍組織の採取が可能なため,安全で診断精度が高く,またEUS-FNA/Bと比べてより大きな組織検体の採取が期待できる.また,EUS-FNA/Bにはコンベックス型EUSスコープが必要なため限られた施設でしか行うことができないが,MIABは高周波発生装置があれば実施可能であり,汎用性が高い.

Figure 4 

平滑筋種に対する粘膜切開生検.

a:通常観察.

b:粘膜切開.

c:生検鉗子を用いた腫瘍組織の採取.

d:クリップによる縫縮.

e:採取した生検標本のHE染色像(×40).

f:HE染色像(×200).

Ⅻ MIABの診断能

MIABの診断能は77.8~100%と報告されている 78)~84.また,MIABを対象としたメタ・アナリシスによると,MIABの診断能は89%であり,出血率は5.03%,穿孔率は0%とされている 85.ESDの技術を用いた深部生検を対象としたメタ・アナリシスでも,診断能は95%,出血率は0.07%,穿孔率は0%とされており 86,MIABは安全で有効な組織採取法であるといえる.MIABとEUS-FNA/Bの診断能を比較した論文をTable 2に示す 87)~95.全体としてMIABはEUS-FNA/Bと同等の診断能を有しているが,20mm未満のSETに関してはMIABの方が優れているとする報告が多い.処置時間については一定の見解は得られていないものの,本邦からの報告ではMIABの方が長かったとする報告が多い.偶発症については,MIAB,EUS-FNA/Bともにほとんど認めていない.

Table 2 

粘膜切開生検とEUS-FNA/Bの比較.

MIABでは直視下で生検を行うため比較的小さな病変でも組織採取が可能であり,Tominagaらは10~20mm大の10病変中8病変,10mm未満の病変でも5病変中4病変で診断可能だったと述べている 96.また,腫瘍径が10mm以上の92.85%,12mm以上では全例診断が可能であったとする報告もある 79.そのため,MIABは少なくとも10mm以上の病変に対して適応になりうると考えられる 97.一方,NakanoらはMIABで確定診断が得られなかった症例の特徴を検討しており,腫瘍の露出不良や隆起の低さ,可動性,噴門部に近いことに起因する内視鏡の操作性の不良などが原因であったと述べている 84.また,Iharaらは診断が得られなかった4例中3例で管外発育型の病変だったと報告している 83.MIABを行う際には腫瘍をしっかり露出させることが重要であり,管外発育型や内視鏡操作が困難な部位の病変に関しては,他の組織採取法を考慮する必要がある.

ⅩⅢ 結  語

胃SETの組織採取法について概説した.EUS-FNA/B,MIABはいずれも安全で,20mm未満のSETに対しても高い診断能を有している.相互補完的な手技であることから,各施設が有する設備と術者の技量に基づいて最適な組織採取法を選択すべきである.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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