GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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TIPS AND TROUBLESHOOTING FOR OPERATING THE GUIDE WIRE DURING ERCP
Yoshinobu OKABE Yutaka SHIMAMATSUYu SASAKI
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2023 Volume 65 Issue 3 Pages 271-278

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要旨

近年のERCPは診断のみならず治療手技へ大きく発展しているが,手技を成功させるためにガイドワイヤーの使用が欠かせない.ガイドワイヤーの用途は,目的部位へ到達するための先導的役割(seeking),目的部位へ各処置具を誘導する役割(leading),X線透視下で胆膵管走行の目安とする役割(landmark),があり手技の効率化と目的達成率の向上および偶発症の軽減に寄与している.最近は,治療手技の増加や複雑性を背景に,多種多様なガイドワイヤーが市販されているが,各ガイドワイヤーの形状や処置具との相性,操作性,偶発症対策を知っておく必要がある.本稿では,ERCP関連手技におけるガイドワイヤー操作の基本とコツ,さらにはトラブルシューティングについて症例提示を踏まえて解説する.

Abstract

In recent years, ERCP has evolved into treatment as well as diagnosis, but the use of guide wires is essential for the success of the procedure. The guide wire has three functions: seeking (of the target site), leading (each device to the target site), and landmark (the pancreatic bile duct under fluoroscopy). Consequently the procedure efficiency and goal achievement rate increase, and accidents reduce. Recently, a wide variety of guide wires have been placed on the market due to the increase and complexity of treatment procedures, but the endoscopist undertakes sufficient measures and countermeasures against accidents regarding the shape of each guide wire, compatibility with the treatment tool, and operability. In this article, we will explain the basics and tips of guidewire operation in ERCP-related procedures, as well as troubleshooting, based on case presentations.

Ⅰ はじめに

近年,胆膵疾患に対する内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)あるいは超音波内視鏡(EUS)は診断的手技から治療手技へと大きく発展しているが,手技成功に導く因子の一つにガイドワイヤーの使用は不可欠となっている 1),2.具体的には 3,目的部位へ到達するための先導的役割(seeking),目的部位へ各処置具を誘導する役割(leading),X線透視下で胆膵管走行の目安とする役割(landmark),などがあり手技の効率化と目的達成率の向上あるいは偶発症の軽減に寄与している.最近では,治療手技の増加や複雑性を背景に,多種多様なガイドワイヤーが市販されており,事前に各ガイドワイヤーの形状や各処置具との相性,操作性,偶発症の知識も求められる.本稿では,ERCP関連手技におけるガイドワイヤー操作のコツとトラブルシューティングについて症例提示を踏まえて解説する.

Ⅱ ガイドワイヤーの種類

本邦では以下に示すような多種のガイドワイヤーが市販されている.先端形状別には,ストレート型とアングル型に大別され,アングル型には様々な彎曲角のタイプが各メーカーから市販されている.本邦では,その汎用性や狭窄突破性の観点からアングル型の使用頻度が多いようである.太さ別には,0.035-inch,0.032-inch,0.025-inch,0.021-inch,0.018-inch,が市販されている.以前は主に0.035-inchが使用されることが多かったが,最近では0.035-inch同等以上の硬度をもつ0.025-inchが主力となりつつある.長さ別には,通常仕様タイプ(450〜480cm)とショートタイプ(260cm)がある.処置具の交換などの効率性を考慮するとショートタイプが推奨されるが,使用できるロープウェイ式の処置具が十分に揃っていない現状がある.剛性程度別では,優れた操作性に特化した親水コーティングされたタングステン素材のガイドワイヤー(ラジフォーカス:テルモ製)と,ハードタイプで先端部は親水コーティングされたタングステン素材で途中からナイチノールあるいはニッケルチタンの合金素材のガイドワイヤーに分別される.そのほかに,剛性範囲(内芯装備の程度など),表面コーティング(親水コーティング範囲など),などが異なるガイドワイヤーが市販されている.Figure 1に先端アングル形状別とガイドワイヤー剛性の比較例を提示する.

Figure 1 

各ガイドワイヤーの先端形状例と剛性比較例.

a:先端形状例.PIOLAX MEDICAL DEVICES社製.左から,ストレート,25度アングル型,60度アングル型,70度アングル型,90度アングル型,J型.

b:剛性比較例.Boston Scientific社製.左から,0.025inch Jagwire,0.025inch Jagwire Stiff,0.035inch Dreamwire,0.025inch Pathcourse,0.025inch EndoSelector,0.035inch Jagwire,0.035inch Jagwire Stiff.

Ⅲ ガイドワイヤーの選択

上述のように多岐にわたるガイドワイヤーが市販されているが,個々の症例に応じた用途や術者の好みによって使い分けられているのが現状である.一般的に,ERCPで使用するガイドワイヤーに求められるのは,目的部位への選択性(例:胆膵管挿管時,2-3次分枝挿管,等),狭窄部位の通過性や突破性,処置具の追従性や交換性,X線透視下における視認性,と考えられる.したがって,最近は汎用性や手技時間や被曝時間の短縮を期待して,先端アングル形状でトルク伝達性が高く,硬性(コシ)やコーティング(滑らかさ)が施され,かつ0.025-inchが好まれて使用されている傾向にある.しかし,マルチステンティングなど手技が複雑になるほど,1本のガイドワイヤーで完遂できることは少なく,選択性に特化した親水性ガイドワイヤー(ラジフォーカス:テルモ製)や,急峻な方向への処置具追従にはスティッフタイプや太径ガイドワイヤー,あるいはコイルコーティングタイプのガイドワイヤーを併用するなどの工夫が必要となる.また,現在0.035-inch対応の処置具が多く,0.025-inch使用時には処置具が追従しにくい,あるいはガイドワイヤーが抜けやすいといったことが生じるため注意を要する.他方,本邦ではガイドワイヤーの保険償還が認められていないため,複数本使用をできるだけ避けたいという現状もある.

Ⅳ ガイドワイヤー操作の基本とコツ

ガイドワイヤー操作は,術者が行う一人法と助手が行う二人法がある.指導施設においては教育という観点から二人法で行うことを推奨する.

助手は,ガイドワイヤーを右手第1指と第2指さらには第3指で挟み込むように順手(Figure 2-a)あるいは逆手(Figure 2-b)で持ち,左手は処置具(カテーテル)の根元を持つ.右手と左手の間のガイドワイヤーに弛みがないように保持しながら操作するとよいが,操作を行わない際にはカテーテル手元でガイドワイヤーを保持しておく(Figure 2-c).

Figure 2 

ガイドワイヤー操作時の持ち方と工夫.

順手あるいは逆手のいずれかガイドワイヤーを持ち,指の腹でガイドワイヤーを転がすように操作する.主にガイドワイヤーの回転操作を重視し,前後の動きは小さめの方がよい.ガイドワイヤー操作をしない時に保持できるように左手で固定しておくことも有用である.

a:順手.

b:逆手.

c:操作中のガイドワイヤーの保持.

また,ガイドワイヤーは長いため,大きめの台や袋,洗濯バサミなどを駆使して,床などに落ちないように努める.また,カテーテル内におけるガイドワイヤーの動きがスムーズになるよう,常に生理食塩水で濡れたガーゼ等々でガイドワイヤーを浸しながら操作を行う.造影剤が乾燥すると,ガイドワイヤーの動きが悪くなるだけでなく,助手のゴム手袋にガイドワイヤーが付着して予想と反する動きとなってしまうため注意を要する.手指によるガイドワイヤー操作が難しい場合には,トルクデバイス(Figure 3)の使用が有用なことがある.

Figure 3 

トルクデバイス一覧.

各社より様々な形状のトルクデバイスが発売されている.

アングル型ガイドワイヤーを用いたSeeking操作

X線透視画像を見ながら,スコープおよびカテーテルを保持する術者との連携操作が重要となる.助手は右手指の“腹”でガイドワイヤーの軸回転を主体に操作し,前後方向の動きはできるだけ小さな動きで(Figure 2-b,c),目的とする胆膵管内操作や狭窄突破を狙う.血管造影施行時と同様に,ガイドワイヤーの軸回転動作や押し操作のみならず,手前に引く操作でも先端部が挿管できることがある.

目的とする管や狭窄部にガイドワイヤー先端部の方向付けが難しい場合には,微細なスコープ操作の併用,管内の余分な造影剤や胆汁膵液を吸引し胆管膵管径をコントロールする,スフィンクテロトームや先端灣曲機能付きカテーテルを併用する,といった工夫で補う.ガイドワイヤー先端部が,目的とする管内あるいは狭窄部へ挿管できた場合には,術者と連携しガイドワイヤーを保持しながらカテーテルを追従させる.ガイドワイヤー先端部が目的とする部位に少しだけひっかかった場合には,ガイドワイヤーの軸回転操作のみで突破することもしばしば有用である(コークスクリュー法) 2.時に,ガイドワイヤー先端部はループ形状で使用する,あるいはJ形状ガイドワイヤーを使用することで突破することが容易となる.このJ形状ガイドワイヤーは,胆管挿管時や胆囊管挿管に有用との報告 4も散見されている.一方,膵管内操作では膵管損傷予防のためにガイドワイヤー先端をループ形状として使用することが望ましい 5.副乳頭あるいは挿入角度が難しい主乳頭からのガイドワイヤー挿管の際にはストレート型ガイドワイヤーもしばしば有用である.0.035-inchではあるが,一方がアングル型で他方がストレート型の先端形状を有するガイドワイヤー(Hydra Jagwire)も市販されている.

Leading(delivery)操作

ガイドワイヤーが留置された目的とする部位に各処置具をモノレール式あるいはロープウェイ式に誘導する際も,術者と助手の連携操作が重要となる.特に誘導する処置具径が太く(例:10Fr.),ガイドワイヤーが細くコシがない(例:0.025-inch)場合,スコープ先端から胆膵内への挿管操作,太い胆膵管径内での操作,高度狭窄の突破操作,などの場面では注意を要する.困難な場合には,太系のガイドワイヤー,コシのあるガイドワイヤー(スティッフタイプなど),ガイドワイヤーと段差の少ない処置具に変更するなどの工夫が必要である.また,内視鏡的胆管結石除去術の際にガイドワイヤー誘導下に胆管内にバスケットカテーテルなどを挿管することが多いが,結石把持や除石・砕石の際にはガイドワイヤーとバスケットのワイヤーが絡まるあるいは操作性に制限がでてしまうことがあるため,慎重に操作するあるいはガイドワイヤーを外して使用する(Figure 4).マルチステンティングなど,複数本のガイドワイヤー留置が必要な場合は,スコープの鉗子口径とガイドワイヤー径やステント径を十分に考慮する.内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)のような乳頭処置の際は,ガイドワイヤーの硬性部の位置で,スフィンクテロトームの操作性が変化するため注意が必要である(Figure 5).

Figure 4 

内視鏡的胆管結石除去術時のX線透視画像.

結石把持や除石・砕石の際にはガイドワイヤーとバスケットワイヤーが絡まるあるいは操作性に制限がでてしまうことがあるため,慎重に操作するあるいはガイドワイヤーを外して使用するとよい.

Figure 5 

EST時のX線透視画像.

ESTのような乳頭処置の際,ガイドワイヤーの硬性部の位置でスフィンクテロトームの形状が変化する可能性があるため注意が必要.

目安とする役割(landmark)

内視鏡的胆管結石除去術など胆管内に処置具挿管を繰り返し行う場合,あるいはマルチステンティング時の目的胆管の目印として,ガイドワイヤーをlandmarkとして留置することがある.ただし,留置しているガイドワイヤー先端部位置を常に意識しておく.

Ⅴ ガイドワイヤーによる偶発症頻度と対策

偶発症頻度と内訳

ERCP時のガイドワイヤーによる偶発症には,出血や血腫(肝皮膜下血腫 6,等),乳頭部穿孔 7や胆膵管穿孔,胆膵管外(血管や腹腔内,他臓器など)へのガイドワイヤーの穿通あるいは穿孔,急性膵炎,ガイドワイヤーの破損,などが挙げられるが,まとまった報告は少ない.

Ennsら 8はERCP関連手技9,314例中で発生した穿孔例33例(0.35%)を検討している.ガイドワイヤー穿孔例は33例中12例で,その後の治療経過は,6例がステント留置,5例が保存的,1例が手術であったと報告している.

このようなガイドワイヤーによる胆膵管の穿孔が発生した場合,あわててガイドワイヤーを抜去せず,同部位の胆膵管ドレナージ(経鼻が望ましい) 9を速やかに行う.さらに,CTによる胆汁膵液の腹腔内漏出あるいはfree airなどを確認する.また,抗菌剤投与 10を十分に行い外科医との連携をとることが重要である 11.このように十分な胆膵管ドレナージを行い厳重な保存的治療を行うことで,外科的処置を行う頻度は少ないと報告されている.

ガイドワイヤーに起因した出血の報告例は少ないが,ガイドワイヤー先端部や先端部の柔らかい部分と硬性部とのつなぎ目によって肝実質を貫き血腫や動脈瘤を形成する可能性がある.胆管内でガイドワイヤーを操作した直後に胆道鏡で観察した症例(Figure 6)では,しばしば胆管粘膜に線状の裂傷をみることがあり,胆膵管内におけるガイドワイヤーの愛護的操作の必要性を理解しておく.

Figure 6 

ガイドワイヤーによる胆管粘膜裂傷(胆道鏡像).

ガイドワイヤー操作で比較的容易に胆管粘膜は裂傷することがある.

予防策と注意点

なお,ERCP時におけるガイドワイヤー穿孔の予防対策として,1)ガイドワイヤー先端部をループ状あるいは軸回転操作を主体とし前後の動作を小さめにする,2)胆膵管内にガイドワイヤーを留置した状態で処置をする際,常に先端の位置をX線透視で確認すること,3)0.035-inch用処置具に0.025-inchのガイドワイヤーを使用した際など気付かぬうちにガイドワイヤー先端が深部に挿入されてしまうことがあり注意が必要,などが挙げられる.

Ⅵ 症例提示

少し古いデータにはなるが,2002年から2012年の間のわれわれの施設におけるERCP関連手技時のガイドワイヤーによる偶発症発生頻度は0.33%(15/4,521)であった.その内訳は,Wire-guided cannulation(WGC)時の乳頭部口側隆起穿孔5例,ガイドワイヤー先進部による肝実質穿孔3例,腫瘍部を貫通し消化管へ穿破2例,膵管分枝を穿孔2例,膵管ガイドワイヤー法施行中の膵管穿孔1例,腫瘍部を貫通し隣接する門脈へ穿孔1例,超音波内視鏡ガイド下膵囊胞ドレナージ術中の血管損傷1例,であったが,幸いにして全例保存的に軽快した.以下に教訓的であった症例を2例提示し,トラブルシューティングについて考察する.

A)膵管内のガイドワイヤー操作による膵管損傷と膵液瘻(Figure 7
Figure 7 

膵管内ガイドワイヤー操作時に発生した膵管損傷.

a:ERCP.ガイドワイヤー操作後に膵体部の分枝膵管と交通する造影剤の漏出をみた.

b:ERCP直後の単純CT.膵実質外に造影剤の漏出を確認した.

膵尾部病変の精査を目的にERCPを行った.カテーテルを膵尾部膵管へ誘導するためガイドワイヤー操作中に分枝を損傷し穿孔した(Figure 7-a).単純CTで造影剤の膵外漏出をみた(Figure 7-b).検査中止とし,絶食・輸液管理とし膵酵素阻害剤投与を行い1週間後のCTで軽快を確認した.胆管と異なり,膵管径は細く2次分枝が多数存在するため,愛護的操作かつJ字操作,回転操作など慎重なガイドワイヤー操作が必要である.Case by caseだが,発生時は膵管外瘻留置あるいは膵管ステントを留置することも考慮する.

B)胆管挿管時のガイドワイヤーによる後腹膜穿孔例(Figure 8
Figure 8 

胆管挿管時のガイドワイヤーによる後腹膜穿孔例.

a:ERCP.胆管外への造影剤の漏出をみる.

b:ERCP直後の単純CT.膵頭部背側に造影剤の漏出をみる.

c:後日施行の単純CT.保存的加療後1週間目のCTでは造影剤は消失.

d:後日施行のERCP.乳頭部近傍の胆管狭窄走行がFigure 8-aと異なることが確認できた.

膵頭部癌に併発した悪性胆管狭窄例で,胆管挿管に難渋したため膵管ステント留置後にWire-loading法による胆管挿管を試みた.手技中にガイドワイヤー先端部が予期せぬ方向へ挿管され造影剤の漏出をみたため(Figure 8-a),検査を中止し単純CTを行ったところ膵背側に造影剤の漏出をみた(Figure 8-b).絶食・輸液管理とし10日目の単純CTで造影剤漏出を確認し(Figure 8-c),再度ERCPを行ったところ胆管挿管に成功した(Figure 8-d).乳頭部近傍の悪性胆管狭窄例では胆管走行が複雑であり,先行したガイドワイヤー先端部で胆管外へ穿孔をきたす場合がある.慎重なガイドワイヤーとスコープ操作による胆管軸合わせなどに細心の注意を払いながら挿管を試みる.

Ⅶ まとめ

1990年代に,胆膵内視鏡領域にガイドワイヤーが登場し,現在では手技遂行に不可欠なデバイスとなった.近年は,術者のニーズに答えるべく,コシが強くかつ細径化されたガイドワイヤーが多数市販されるようになったが,ガイドワイヤーに起因する偶発症も一定の頻度で発生している.ガイドワイヤーに頼りきるのではなく,基本的なスコープ操作や処置具操作,さらにはガイドワイヤーの愛護的操作(例:血管造影検査の様に)を心がけることが,より効率的で安全な胆膵内視鏡を遂行できるものと考えている.今後は,初学者が効率よくガイドワイヤー操作の手技を取得できるような,立体的トレーニングモデルの開発普及が望まれよう.

なお,本内容の一部については,日本消化器内視鏡学会 臨時専門医セミナー(2012年8月18日)で発表した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:岡部義信(ガデリウスメディカル,カネカメディックス)

文 献
 
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