GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2023 Volume 65 Issue 3 Pages 307-311

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概要

沿革・特徴

2003年10月に中央検査部から独立して光学医療診療部が設置された.当初の検査室は非常に狭くプライバシーの保護も十分ではなかった.2009年5月より旧産科病棟を改修し,新しい光学医療診療部に拡充移転した.延べ588m2で移転前の1.8倍に拡大し,検査室は全室セパレートしており計8台の内視鏡装置を配置した.また,別のフロアに専用のX線透視室(66m2)も設置された.件数は年々増加し,2010年の件数は8,189件,2013年には10,000件を突破した.2019年4月,総合診療棟の開設に伴い現在の光学医療診療部に移転した.内視鏡専用のX線透視室2室を光学医療診療部内に設置し,延べ床面積は716m2となった.件数については,ここ2年はコロナ禍の影響があり,2019年をピークに2020年はやや減少,2021年はやや増加し11,210件である.

特徴としては,食道・胃・大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD),食道静脈治療,炎症性腸疾患,カプセル内視鏡検査,小腸内視鏡検査治療,内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)関連処置,胆道内視鏡検査・治療,超音波内視鏡(EUS)関連処置等,消化器内視鏡に関わる検査・治療はすべて行える体制を整えている.特殊疾患の検査やハイリスク症例や困難症例も含めた治療内視鏡など紹介症例に対する診療が主体となっている.

組織

光学医療診療部は大学病院中央診療施設の独立した部門である.2010年12月専任部長が配置された.現在,専属医師は准教授(部長),助教2名,医員2名であるが,その業務は消化器内科を中心に消化器外科,総合診療内科,呼吸器内科・外科の協調体制で行っている.看護師は師長(併任),専属の副師長,常勤看護師21名が従事している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

1)検査室1-5が上部消化管検査用でESDは主に検査室1で行う.

2)検査室6-8が下部消化管検査用でESDは主に検査室8で行う.

3)X線TV室1,2で胆膵関連処置,食道胃静脈瘤硬化療法,小腸内視鏡検査,イレウス管挿入,消化管造影検査等を行う.胆膵関連処置は2列で行うが,X線TV室1,2の間に操作室があることで,必要に応じて両室を行き来することが可能である.

4)X線TV室1はセンター唯一の陰圧室になっており,気管支内視鏡検査が行われる.また,COVID陽性患者の内視鏡検査・処置も行っている.

5)すべての検査室風景,検査室の内視鏡画像がリアルタイムでスタッフステーションの大型ディスプレイで看視できる.また,リモコンワンタッチ操作でそれぞれの画像を拡大して見ることが可能である.

6)すべての検査室のバイタルサインモニターがリアルタイムで送られてくるPCがスタッフステーションの大型ディスプレイの下に配置されており,緊急時には速やかにスタッフステーションにいる人員が対応できるようになっている.

7)リカバリースペースにはリクライニングチェアーが10台あり,スタッフステーションと隣接しており急変時の迅速な対応を可能にしている.

8)待合に隣接してICルームが4室あり,プライバシーを確保しつつ,十分な説明ができるスペースを確保している.

スタッフ

(2022年6月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医14名,消化器内視鏡学会 専門医22名,その他スタッフ14名,研修医など1名

内視鏡技師:Ⅰ種(内視鏡技師資格)4名,その他技師(カプセル内視鏡技師)2名

看護師:常勤23名(師長含),うち,フルタイム10名,短時間勤務者13名

事務職:3名

その他:看護助手10名

設備・備品

(2022年6月現在)

 

 

実績

(2021年4月~2022年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

・初期研修医

消化器内科をローテーションする初期研修医は病棟業務を主に行い,担当患者の検査・治療の見学や介助を通して内視鏡診療の概要や適応など基本事項について上級医から指導を受ける.また,シミュレーターによる上部消化管内視鏡検査のスコープ操作,さらに,胃のトレーニングモデルを使用して実際の内視鏡を操作してトレーニングを行っている.十分なトレーニングを行ったのち,担当患者に対して上級医立ち会いのもと,鎮静下で実際の内視鏡検査を行うようにしている.

・後期研修医

上部消化管内視鏡検査に加え下部消化管内視鏡のトレーニングを行い,研修終了までに1人で完遂できるようトレーニングを行う.また,胆・膵内視鏡については,介助を中心に行っている.

・消化器内科医

市中病院で後期研修,および消化器内科研修を終えて大学病院に赴任した医師は1年間,主に病棟業務に就く.担当患者については,ESD,内視鏡的粘膜切除術(EMR),ERCPなど積極的に治療に参加し,可能であれば上級医の指導をもとに術者として処置を行う.

1年の病棟業務ののち,肝臓,上部消化管,下部消化管,胆・膵の臨床グループあるいは基礎研究グループに属するようになる.消化管,胆・膵グループのいずれのグループに属していても週1-3回は上部消化管の一般内視鏡検査はdutyとしている.

消化管グループに属した医師は,所属して3年間,各個人のレベルに合わせて上級医の指導のもとESDのトレーニングを行う.さらに,上部消化管ではESDに加えて画像強調内視鏡診断,EUS,止血処置,静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法,内視鏡的結紮術ができること,下部消化管ではESDに加えて画像強調内視鏡診断,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)内視鏡像の評価,バルーン内視鏡による小腸の観察・処置ができることを目標とする.胆・膵グループではERCP,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST),総胆管結石除去,胆管・膵管ステント留置,EUS,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)ができることを目標とする.また,学会発表のみならず,論文執筆を積極的に行うように指導している.

夜間休日における緊急内視鏡は,病棟業務を行っている赴任1年目の医師,病棟業務を終えて3年間のトレーニングを行っている医師,上級医の3人で行う.上級医以外が術者となり,消化管出血,腸閉塞,急性胆管炎などの疾患に対する処置を行っている.緊急内視鏡についてはグループに関係なく従事することで,分野に関係なくあらゆる緊急内視鏡を経験できるようにしている.

・カンファレンス

消化器内科消化管内視鏡画像カンファレンス(週1回)

消化器内科消化管病棟カンファレンス(週1回)

消化器内科・外科・病理・放射線合同消化管カンファレンス(週1回)

消化器内科胆・膵カンファレンス(週1回)

内科・外科肝胆膵カンファレンス(週1回)

以上のカンファレンスに参加し,内視鏡診断,内視鏡治療・外科手術適応,病理組織所見など広く理解できることを目標としている.

現状の問題点と今後

・コロナ禍への対応

コロナ禍が始まり2年が経過し,感染対策については確立されてきた.いっぽうでコロナ禍のために不急の検査については延期・中止を余儀なくされたことで2020年度には内視鏡検査数が大きく落ち込んだ.2021年度はやや持ち直して件数は増加したが,2019年度の件数には至っておらず,患者の受診控え・検査控えは完全に回復していない印象である.受診控えや検査控えは,診断の遅延につながるものであり,コロナ禍でも安全に検査ができる体制が確立されたことを啓発してゆく必要がある.

病院の性質上,遠方から検査に来院する患者が多く,下部消化管検査の自宅洗腸ができない患者の割合が多い.設計の際には大腸検査準備室のスペースを十分に確保したつもりであったが,患者間の距離を確保しなければならなくなったため,検査の多い際はスペース確保が困難となる.

・鎮静への対応

内視鏡施行時の苦痛除去に対する患者の要望,治療内視鏡の増加により,昨今検査時の鎮静の適切な運用を求められている.以前,当院では,他の薬剤と比較して導入と覚醒が速やかなプロポフォルを使用していたが,麻酔科医が常時検査につくことが不可能であるため,2年前より他の鎮静剤に切り替えた.また,同時期に学内で鎮静・鎮痛管理委員会が設置され,内視鏡施行時における適性な鎮静剤使用,および処置時の鎮静管理に関するマニュアルを作成し,遵守に努めている.

結果として,過鎮静など,鎮静時の合併症は目に見えて減少したが,鎮静管理のための人員の確保,鎮静管理に伴う検査時間が長くなることによる検査全体の遅延,検査枠の制限による検査待機期間の長期化など解決すべき問題が生じている.

・医師の確保

内視鏡施行医の約3分の2は大学院生,および医員であるため,週2回の外勤が必要である.検査に入ることのできる曜日も限られているため,実際の稼働人員は多くはなく,病欠などがあれば即検査に影響し,時間外検査が増えるというギリギリの状況である.医師の働き方改革にも対応が迫られる昨今,光学医療診療部の人員を増やすことで,内視鏡医師1人1人の負担を軽減する必要がある.

・看護師の確保と教育

病院全体で常勤の看護師が減少している.フルタイムで働ける常勤の看護師は夜間休日も業務が必要な病棟業務に回されることが多く,光学医療診療部には時短勤務者の割合が多い.そのため,検査が長時間に及んだ際の時間外勤務が可能な人員は限られており,フルタイムの常勤看護師の負担が大きい.また,時短勤務の看護師は育休前,あるいは育児中などの事情を抱えている者も多く,入れ替わりが多い.新規で配属された経験のない看護師に,短期間で仕事内容を十分に理解・実践してもらえるような教育システムの確立が必要である.

 
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