2023 Volume 65 Issue 4 Pages 385-392
ERCPは胆道病変に対する低侵襲な精査・加療方法として一般臨床において広く施行されおり,その第一段階として深部胆管挿管が必要となる.高い胆管挿管の成功率が報告されているが,プレカット法などのいわゆるadvanced cannulation techniqueを使用しても,ときにその獲得に難渋する.EUSランデブー法(RV:Rendezvous technique)は,EUS下に胆管を穿刺し,穿刺針を介してガイドワイヤーを胆管内へ挿入,さらにガイドワイヤーを操作し乳頭部を超えて十二指腸内に留置する.その後,ERCPを再度行い留置されたガイドワイヤーを利用して深部胆管挿管を獲得する方法である.EUS-RVは胆管挿管困難症例のサルベージ方法としてその有用性が報告されている.本稿では,EUS-RVの手技的な要因に着目し,その基本手技,成功率改善のための工夫,トラブルシューティングについて概説する.
ERCP has been used as a minimally invasive method for evaluation and treatment of biliary diseases. Biliary deep cannulation is the first step of ERCP. Although the success rate of biliary cannulation is reported as high, occasionally it can be difficult even with an “advanced cannulation technique”, such as the precut method. In the EUS-rendezvous method (RV), the bile duct is punctured under the EUS, followed by guidewire insertion through the needle into the duodenum via the bile duct. After that, biliary cannulation is attempted again using the inserted guidewire. EUS-RV has been reported to be useful as a salvage method for difficult biliary cannulation. In this article, we examine the technical aspects of EUS-RV, including an overview of the basic procedure, technical tips, and troubleshooting.
内視鏡的逆行性膵管胆管造影(ERCP)は,胆道疾患に対する低侵襲な診断や治療方法として,広く一般臨床において施行されている.胆道病変に対するERCPの第一段階として選択的胆管挿管が必須であり,一般的な方法としてERCP用カニューラもしくはsphincterotomeと造影剤やガイドワイヤーを組み合わせて胆管挿管が行われており,高い胆管挿管成功率が報告されている 1).一般的な方法で胆管挿管が困難な場合には,膵管ガイドワイヤー法(double guidewire method) 2),precut法 3)などのいわゆるadvanced cannulation techniqueの有用性が報告されている.しかし,これらの手技を用いたとしても,十二指腸傍乳頭部憩室,乳頭部周囲への腫瘍浸潤などの要因や技術的な要因によって胆管挿管困難症例を認める.そのような症例に対しては,近年,超音波内視鏡(EUS)下に消化管から胆管にアクセスし,胆管ドレナージを行うEUS下胆管ドレナージ(EUS-BD:endoscopic ultrasound-guided biliary drainage)の有用性が報告されている.EUS-BDは2001年にGiovanniniら 4)が,胆管ドレナージを目的にEUS下胆管十二指腸瘻孔形成術(EUS-CDS:endoscopic ultrasound-guided choledocoduodenostomy)を行った症例報告が初めての報告であり,その後,EUS下肝内胆管胃瘻孔形成術(EUS-HGS:EUS-guided hepaticogastrostomy) 5),EUS下順行性治療(EUS-AG:EUS-guided antegrade treatment) 6)などが報告されている.EUS下ランデブー法(EUS-RV:EUS-guided rendezvous technique)はEUS-BDの中のひとつの方法であり,ERCPを試みるも胆管挿管困難な症例においてEUS下に胆管を穿刺し胆管内にガイドワイヤーを挿入,さらに操作し乳頭部を超えてガイドワイヤーを留置,再度ERCPを行い留置したガイドワイヤーを利用して深部胆管挿管を行う方法である.ERCPが不成功に終わった悪性下部胆管閉塞症例2例に対して本手技を行ったことが2004年にMalleryら 7)により初めて報告され,その後もEUS-RVの治療成績や手技の工夫に関して多くの研究者らにより検討・報告されている.本稿では胆管挿管困難例に対するEUS-RVの手技的な要因に着目し,その基本と工夫に関して概説する.
胆道病変に対してERCPを施行し,胆管カニュレーションを試みるも深部胆管挿管を得ることが困難と判断した際には,患者要因,術者要因,施設要因を総合的に検討してEUS-RVの適応を判断する必要がある.ERCP不成功症例において適応を検討するために患者要因が問題となることは少ないと考えられるが,EUS下に胆管を穿刺することから出血傾向の有無について再度の確認が必要である.また,胆道疾患の種類や患者の状態から考えて胆道病変に対する処置が急を要しないのであれば,さらに専門性の高い施設への紹介や後日に改めてERCPを予定するなどの選択肢も含めて検討を行う.術者要因としては,本処置がEUS下とERCP下処置の要素を含んでいることから,術者および介助者はどちらの処置にも精通している必要がある.施設要因としては,処置が不成功に終わった場合に,偶発症発生リスクを最小限にするために経皮的・外科的処置が迅速に行える体制が必要である.これらの要因を慎重に検討し,EUS-RVの適応を判断する.
ERCPで選択的胆管挿管が不成功であり,EUS-RVの施行を決定した際には,十二指腸スコープをコンベックス型EUSスコープへ変更し再度挿入する.胆管を胃,十二指腸球部(D1:the duodenal bulb),十二指腸下行部(D2:the second portion of the duodenum)から描出,ドップラーモードも使用しながら脈管の介在を確認し,胆管穿刺の可否について検討する.スコープポジションと穿刺する胆管を決定後に,スタイレットを抜去し吸引ポートからシリンジを使用して造影剤を充填した19-gauge fine needle aspiration(FNA)針を用い胆管を穿刺する(Figure 1).胆管穿刺後に,造影剤を注入し適切な胆管穿刺を確認し,可能であればさらに造影剤を注入し胆管の走行も確認する.操作性のよい0.025-inchから0.035-inchのガイドワイヤーを胆管内に穿刺針を介して挿入し,さらに操作し乳頭部を超えて十二指腸内に留置する(Figure 2).ガイドワイヤー操作の際には,FNA針の鋭利な先端でガイドワイヤーの損傷・破断を来さないように慎重に操作する必要がある.その後,ガイドワイヤーを留置したまま穿刺針とEUSスコープを抜去し(Figure 3),ガイドワイヤーの脇から十二指腸スコープを十二指腸まで再度挿入する.十二指腸主乳頭から出ているガイドワイヤーを確認し,Along the wire法としてガイドワイヤーの脇から胆管挿管を行うか,Over the wire法として,ガイドワイヤーをスネアや鉗子で把持し鉗子チャンネルを介し鉗子孔から引き出し,引き出したガイドワイヤー上にカニューラを挿入し胆管挿管を行う(Figure 4).深部胆管挿管後は胆道病変に対して予定された処置を施行する.
超音波内視鏡下に上部消化管から胆管を穿刺する.
穿刺針を介してガイドワイヤーを胆管内に挿入し,さらにガイドワイヤーを操作し乳頭部を超えて十二指腸内に留置する.
ガイドワイヤーを留置したまま,超音波内視鏡スコープと穿刺針を抜去する.
十二指腸スコープへ入れ替え,留置したガイドワイヤーを利用して深部胆管挿管を行う.
EUS-RVの基本的な手技の流れは前述のように,胆管穿刺,ガイドワイヤー留置,再度の胆管挿管に大きく分かれる.この中で,最も難易度が高いステップが,ガイドワイヤー留置と考えており,胆管穿刺の際にはその後のガイドワイヤー留置を意識しながら,EUSスコープポジションや胆管穿刺部位を決定する必要がある 8).EUS-RVにおける基本的なスコープポジションと胆管穿刺部位の組み合わせは,胃-肝内胆管(IHBD:intra hepatic bile duct),D1-肝外胆管(EHBD:extrahepatic bile duct),D2-EHBDの3つに分けられる.胃-IHBDでは,スコープポジションは安定しており穿刺針の向きを乳頭側に向けることは比較的容易であるが,胆管穿刺部位から乳頭部までの距離が長いために,ガイドワイヤーのpushabilityやtorqueabilityなどの操作性が維持できずガイドワイヤー留置に難渋する可能性がある.D1-EHBDでは,スコープポジションは安定しており,胆管穿刺部位から乳頭までの距離も短いが,穿刺針の方向が肝門部側を向く傾向があり,ガイドワイヤーを乳頭部方向へ留置するのに難渋する可能性がある.D2-EHBDでは,穿刺は乳頭部方向に向き,胆管穿刺部位から乳頭までの距離が非常に短いためにガイドワイヤーの操作性を維持しやすく,ガイドワイヤー留置の観点からは最も有利と考えられる.しかし,胆管を穿刺する際に,D2からEUSスコープを引き抜きながら行う必要があり,スコープが十二指腸から胃内へ抜けてしまう可能性があり,穿刺の際のEUSスコープポジションは不安定となる傾向がある(Table 1) 9).Iwashitaら 10)は前向きにEUS-RVの際のEUSスコープポジションと胆管穿刺部位のアルゴリズムを評価している.D2-EHBDの組み合わせを第一選択とし,不可能な場合には胃-IHBDもしくはD1-EHBDで胆管へアプローチするものであり,20例を登録しD2-EHBDで胆管を穿刺できたのは10例であったが,その成功率は100%(10/10)であった.その他のアプローチを用いた9例では成功率66.7%(6/9)と有意差を認めなかったが,D2-EHBDの組み合わせで成功率が高い傾向を認めた.偶発症発生率はD2-EHBDアプローチで10%(1/10),その他のアプローチで22.2%(2/9)であり有意差を認めなかった.われわれの施設では,EUS-RVの際のEUSスコープポジションと胆管穿刺部位の選択は,D2-EHBDを第一選択としているが,解剖学的特徴や胆管疾患によっては時にD2から胆管穿刺ができない場合もある.D2-EHBDアプローチが困難な場合には,後述するトラブルシューティングも想定しながら胃-IHBDアプローチを可能であれば選択している.
EUSスコープポジションと胆管穿刺部位の特徴.
EUS-RVで乳頭部を介して十二指腸内へ留置されたガイドワイヤーを利用した再度の胆管胆管挿管では,ガイドワイヤーに沿って通常の胆管挿管を行うAlong the wire法とガイドワイヤーを把持し鉗子チャンネルを介して鉗子孔から引き出し,引き出したガイドワイヤー上にカニューラを挿入し胆管挿管を獲得するOver the wire法がある 11).Along the wire法では,留置されたガイドワイヤーを目印に胆管挿管を行うために,意図せずガイドワイヤーが胆管内へ戻ってしまうなど留置したガイドワイヤーを喪失するリスクが少なく,煩雑な操作を行う必要がないために短時間に胆管挿管が獲得できる可能性がある.一方で,留置されたガイドワイヤーに沿ってカニュレーションを試みたとしても技術的に難渋する可能性がある.Over the wire法では留置したガイドワイヤーを鉗子で把持し鉗子孔から引き出すことができれば,カニュレーションは比較的容易である.しかし,留置したガイドワイヤーの軟性部を把持し鉗子孔から引き出す必要があるために処置が煩雑となり時間が掛かり,把持するためにガイドワイヤーの位置を調節する際に胆管内にガイドワイヤーが引き込まれてしまうなど,ガイドワイヤーを喪失するリスクがある.これらの胆管挿管方法に関しては比較検討が報告されておらず,それぞれの長所・短所(Table 2)を理解した上で挿管方法を選択する必要がある.Along the wire法を用いてもガイドワイヤーが乳頭の十二指腸口側や肛門側に深く留置されているために乳頭の向きが変位しておりカニュレーションに難渋することが多く,われわれの施設ではOver the wire法を基本としている.以前はガイドワイヤーの軟性部をスネアや生検鉗子で把持していたが,最近ではループカッターを用いてガイドワイヤーの硬性部と軟性部の境目を確実に把持して鉗子孔から引き出すようにしている.軟性部を把持するとインナーコアが細いために引き出している間にガイドワイヤーが破断しやすく,硬性部を把持すると剛性が強すぎるためにスコープ内に引き込むことができないので注意が必要であり,使用しているガイドワイヤーの構造について事前に把握することも重要である(Figure 5).ガイドワイヤーを引き出している間に,万一ガイドワイヤーが破断してしまった場合には,鉗子台を起上させガイドワイヤーをスコープ先端で固定し十二指腸スコープごと一旦抜去し,ガイドワイヤーを十分引き出したあとに十二指腸スコープをガイドワイヤー上に挿入していき胆管挿管を行う.Along the wire法の際に,カテーテルの先端に切り込みを入れガイドワイヤーに被せることによりガイドワイヤーを引き出すことなくOver the wire法のように胆管挿管が可能であったとされ,有効な方法である可能性があり今後のさらなる検討が待たれる 12).
胆管挿管方法の特徴.
ガイドワイヤー先端部分の構造の模式図.硬性部と軟性部の境目を把持する.
胆管穿刺が困難な理由として,脈管などの介在,胆管を穿刺ラインに捉えることができない,胆管が十分に拡張していないなどの状況が考えられる.EUS-RVでは基本的には19-gauge FNA針を使用するために,口径が大きく針自体の剛性が高いためにEUSスコープのアングルや鉗子起上の可動域が制限され,穿刺ライン上から脈管を外す,もしくは,胆管を穿刺ライン上に捉えることに難渋することがある.また,狭窄部よりも乳頭側の穿刺や胆管内圧が上昇していない症例などでは,胆管拡張が不十分であり胆管穿刺に難渋する可能性がある.そのような場合には,19-gauge針よりも細径で剛性が低い22-gauge針の使用が,細い胆管への穿刺性・穿刺針の操作性を改善し胆管を穿刺する上で有利な可能性がある.しかし,その後のガイドワイヤーの選択では,0.018-inchまでのガイドワイヤーしか適合しない点には注意が必要である.Martinezら 13)は後方視的に22-gauge針と0.018-inchガイドワイヤーの組み合わせを用いたEUS-RVを評価し,胆管におけるEUS-RVの成功率は81.5%(22/27)であり一定の成功率を示している.一方で,不成功の原因として5例全例でガイドワイヤー留置が困難であったとしている.19-gauge針と0.025-inchガイドワイヤーの組み合わせに比べて,0.018-inchガイドワイヤーでは,ガイドワイヤーの操作性が劣り剛性も低いことから注意が必要である.
胆管を穿刺に成功しガイドワイヤー留置を試みるも,ガイドワイヤーが乳頭部を超えない場合には,胃-IHBDの組み合わせであればHybrid-RV法(HRV)が有用な可能性がある.HRVでは,ガイドワイヤーが乳頭部や胆管閉塞部を超えない場合に,ガイドワイヤーを留置したまま穿刺針のみを抜去し,接続ハブ部分を切除したダイレーターを胆管内に挿入する(Figure 6).胆管内にダイレーターを挿入することで,経皮的アプローチにおけるガイディングカテーテルのように,ガイドワイヤー操作をサポートすることができる.操作性が改善することにより,胆管閉塞部・乳頭部を突破し十二指腸内にガイドワイヤーを留置することが容易となる.その後はガイドワイヤーとダイレーターを留置したままにEUSスコープを抜去し(Figure 7),十二指腸スコープへと入れ替える.再度の胆管挿管の方法はEUS-RVと同様であるが,ダイレーターが胆管内まで挿入されているために,ダイレーターを介して留置したガイドワイヤーをある程度操作することができ,ガイドワイヤーの把持をより確実に行うことができる.また,穿刺部はダイレーターにより密閉されるために処置中の胆汁漏出を最小限にできる可能性もある.Iwashitaら 14)は,胃-IHBDアプローチでEUS-RVを施行するも,ガイドワイヤーが十二指腸乳頭部を超えなかったために8例でHRVを施行したところ,全例でガイドワイヤーを十二指腸内に留置することに成功し胆管挿管を行うことができた.また,偶発症として軽症膵炎を一例に認めるのみであった.HRVは胃-IHBDアプローチでガイドワイヤー留置に難渋する場合に有効なサルベージ法となる可能性がある.十二指腸からのアプローチでガイドワイヤー留置に難渋する場合には,穿刺部位から乳頭までの距離が十分にないためにHRVは施行しにくく,そのような場合には,その他の穿刺部位への変更や,経皮的な処置への移行などを検討する必要がある.また,症例報告ではあるが穿刺針の先端が屈曲しており回転機能も有するアクセス針(現時点では本邦で利用不可)を用いたEUS-RVの報告も認める 15).前述のようにD1-EHBDアプローチでは穿刺針が肝門部を向く傾向がありガイドワイヤーの留置に難渋する可能性があるが,このアクセス針では先端が屈曲,回転することにより,ガイドワイヤーの方向が調節可能であり,D1-EHBDアプローチで有用な可能性がある.
ハイブリッドランデブー法では,ガイドワイヤー操作をサポートする目的でダイレーターを胆管内に挿入する.
ダイレーターとガイドワイヤーを残したまま,超音波内視鏡スコープを抜去する.
ERCPにおいて胆管挿管不成功後のEUS-RVの有用性・安全性を評価したメタ解析(12編・342症例を含む)が報告されている 16).手技成功率と偶発症発生率のpooled analysisの結果は,86.1%(95%信頼区間:78.4-91.3)と14%(95%信頼区間:10.5-18.4)であった.この結果からは,EUS-RVは胆管挿管不成功後のサルベージ方法として有用と考えられるが,胆管穿刺に伴う偶発症発生には注意が必要である.特に処置が不成功に終わった場合には,胆管の減圧がされないために持続的に胆汁が漏出し重篤な偶発症に繋がる可能性があり,その他のEUS-BDの処置や経皮的な処置で対処する必要がある.
EUS-RVの手技的要因を中心に,その基本手技,成功率改善のための工夫,トラブルシューティングについて概説した.EUS-RVは,胆管挿管不成功症例におけるサルベージ方法として有用と考えられるが,不成功に終わった場合の対処方法も検討しながら,安全に運用することが肝要である.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし