GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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Germline variant testing in serrated polyposis syndrome 1).
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2023 Volume 65 Issue 4 Pages 411

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【背景】Serrated polyposis syndrome(SPS)において,これまで生殖細胞変異の解析における一貫した見解は示されていない.2019年British Society of Gastroenterology(BSG)ガイドラインでは,他のポリポーシス症候群の除外のため,50歳未満または,複数の家系内罹患者,Dysplasiaを伴うポリープを有する場合において,遺伝子パネル検査を行うように勧告している.

【方法】Oxford University Hospitals NHS Foundation TrustにSPS患者のデータベースが作成され,患者の既往歴や家族歴,希望に基づいて遺伝学的評価のために紹介された.大多数の患者は,MUTYH,APC,PTEN,SMAD4,BMPR1A,STK11,NTLH1,POLD1,POLE,GREM1(40-kb duplication),PMS2とミスマッチ修復遺伝子を含む遺伝性大腸癌パネルについて調べられた.

【結果】2010年2月から2020年12月の間に173名の患者がWorld Health Organization 2019の基準に基づいてSPSと診断された.診断時の平均年齢は54.2±16.8歳であった.73名の患者が遺伝子検査を受け,15/73名(20.5%)が生殖細胞変異を有し,そのうち7/73名(9.6%)が病原性変異(MUTYH;2,SMAD4;1,CHEK2;2,POLD1;1,RNF43;1)を有することが明らかにされた.これらの患者のうち60%(9/15)のみがBSGガイドラインに従った遺伝子パネル検査を推奨された患者であった.

【結論】検査をうけたSPS患者の20.5%が,未だ報告されていないCHEK2とPOLD1を含むヘテロ接合型の遺伝子変異の影響を受けており,7例(9.6%)でマネージメントの変更に至った.現時点で考えられるのは,予想以上に一般的な遺伝子変異を有するSPSが見逃されている可能性があることである.

《解説》

SPS患者は生涯大腸がんリスクが有意に高いとの報告があり,疾患群の解明とポリポーシスの治療方針について注目されている 2.しかし,SPSは希少であるだけでなく,その多様性により診断基準も更新を繰り返してきている.2019年WHOでは,Ⅰ.直腸近位側の鋸歯状ポリープが5個以上あり,2個以上が10mm以上,またはⅡ.大腸全体にあらゆる大きさの鋸歯状ポリープが20個以上あるがうち直腸近位側が5個以上,のいずれかを含む場合としている 3.SPSはその特異性と大腸がんリスクより何らかの遺伝的原因が示唆されているが,既知の生殖細胞変異で説明できるものは3%未満とされている 4.また,他の遺伝性がん症候群(MUTYH関連ポリポーシスや,Cowden症候群,若年性ポリポーシス,遺伝性混合ポリポーシス症候群等)との重複も考えられている.SPS患者の生殖細胞系列の遺伝子検査が大多数に行われている報告は少なく,今後本邦におけるSPS患者の解明において,参考になる研究報告と考える.

対象患者の収集は,Oxford University Hospitals NHS TrustでのSPSデータベースより,WHO2019の基準を満たす全SPS患者を対象に,大腸内視鏡検査所見,病理組織学的所見,個人および家族歴,喫煙歴,遺伝子検査の結果は診療記録に徴収された.臨床遺伝部門に紹介された検査対象者は,すべて遺伝カウンセリングおよび遺伝的リスクの評価を受けられたうえで,遺伝学的検査同意書を用いて同意が確認されている.使用される遺伝子パネルは,臨床的に最も有用な遺伝子が含まれる様に導入から7年の間に改良が加えられたものである.概ね10年間で診断されたSPSは173名で,WHO基準Ⅰが98名(56.6%),基準Ⅱが25名(14.5%),基準ⅠとⅡの両方を満たす者が50名(28.9%)であり,大腸がんの診断を受けたのは29名(16.73%)であった.本研究の収集方法で遺伝子パネル検査を行った9.6%(7/73)が大腸がんと関連する病原性バリアントのキャリアであることが判明したことで,臨床的マネージメントの見直しにつながったとしている.BSG勧告では見逃されているSPS患者が想定され,臨床的にSPSの基準を満たす患者に対し,遺伝カウンセリングや遺伝学的検査の意義について説明し,臨床遺伝学部門へ紹介することが提案されている.

文 献
 
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