GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC DIAGNOSIS AND TREATMENT FOR EARLY GASTRIC CANCER IN REMNANT STOMACHS AND GASTRIC TUBES AFTER UPPER GASTROINTESTINAL SURGERY
Daisuke KIKUCHI Kosuke NOMURAShu HOTEYA
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2023 Volume 65 Issue 5 Pages 425-434

Details
要旨

上部消化管の術後に長期に経過観察されている症例が増加しているため,日常診療においても術後の胃をスクリーニングする機会が増えている.このため術後の胃に発生する胃癌を早期に発見し,適切に診断することが望まれている.術後胃ではその状態に応じて発生する癌には特徴があり,その特徴を習得しておくことは重要である.白色光観察だけではなく,画像強調内視鏡や拡大内視鏡,超音波内視鏡を用いて総合的に診断する必要がある.

治療面においては,術後の状態は前回の手術による癒着などの影響で手術は難易度が高いとされている.より低侵襲な治療が望まれるが,ESDも吻合部や縫合線のため時に困難になることがある.本稿では,術後の残胃もしくは再建胃管に発生する早期胃癌の特徴と治療時のコツを中心に概説する.

Abstract

The number of patients undergoing long-term follow up after surgery for upper gastrointestinal disease is increasing, and we frequently conduct endoscopic examinations for such patients in our daily clinical practice. Early detection and appropriate diagnosis of postoperative gastric cancer are therefore urgently required. The characteristics of early gastric cancer in postoperative stomachs are different depending on previous surgery. In terms of treatment, surgery is considered to be highly invasive due to the effects of adhesions caused by previous surgeries. Although minimally invasive treatments such as ESD are desirable, ESD may sometimes prove difficult due to suture lines and anastomosis. In this study, we mainly review the characteristics of early gastric cancer that develop in remnant stomachs or gastric tubes after surgery, as well as tips for treatment.

Ⅰ はじめに

上部消化管疾患の外科治療後の予後が延長したことにより,上部消化管の術後に発生する胃癌に接する機会が多くなっている.上部消化管の術後の胃は,原因となった疾患や術式そして再建方法により様々な形態を呈し,通常胃と異なる点が存在する.

残胃癌は,初回手術時の病変,手術範囲,再建法などを問わず,再発癌の可能性がある症例を含めて,胃切除(胃の一部以上を全層切除した)後の残胃に発生したと考えられる胃癌と定義されている.そして,初回胃切除の病変が良性か悪性か,初回胃切除から残胃癌発見までの時期,残胃癌の部位を確認するように言われている 1.初回胃切除が胃癌でも胃十二指腸潰瘍でもピロリ菌現感染もしくは既感染のことが多い.

一方で食道癌術後の再建胃管は初回治療が胃疾患でないため萎縮性胃炎を背景としないことも多い.内視鏡的には接線方向での観察となり,病変を早期発見しづらいこともある.

また,内視鏡治療の際には縫合線や吻合部との関連や,再建経路などに留意するべきである.

術後の残胃や再建胃管に発生する胃癌には通常胃と異なる特徴があり,かつ内視鏡治療に関してもいくつかのコツとポイントが存在する.本稿では初回手術の術式ごとの内視鏡診断の特徴について述べ,次いで内視鏡治療の実際について解説する.

Ⅱ 残胃癌の内視鏡診断

残胃癌を診断する際には,術式と再建法を把握することが重要である.幽門側胃切除術では,主にBillrothⅠ法,BillrothⅡ法,Roun-en-Y法などの再建法が用いられる.また時に幽門保存胃切除術が行われ,その際には胃胃吻合法が用いられる.一方で,噴門側胃切除術では,空腸間置法,食道残胃吻合法,double tract法が用いられる.幽門側胃切除術はその再建法別に注意するべき点を述べる.

Ⅱ-1 残胃の内視鏡観察

通常胃の内視鏡観察では胃の全体を観察することが重要とされている 2),3.残胃においても同様であるが,ワーキングスペースの狭さから反転操作での観察がしづらいことがある.また胃粘膜が脆弱であり,しばしば反転操作にて出血を来し観察しづらくなることがある.そのため残胃の内視鏡観察は出来るだけ順方向での観察を十分に行ってから反転操作での観察を行うようにしている.そして最後に十二指腸もしくは空腸へスコープを挿入し深部の観察を行う.

噴門側胃切除の空腸間置やdouble tractなどの再建法では介在する空腸をかき分けて残胃に達する必要があり時に残胃へのアプローチが困難となることがある.送気しすぎると挿入性が悪くなるため出来るだけ脱気しながら挿入する.特にdouble tract法の残胃空腸吻合は見つけづらいことがあるが,その際は先端透明フードを用いると発見しやすい.また次回の内視鏡検査のために吻合部の位置を切歯からの距離で記載しておくことも重要である.初回治療で癌が複数ある場合には残胃癌の発生率も高いとされており注意深い内視鏡観察が望まれる 4

Ⅱ-2 幽門側胃切除・BillrothⅠ法後の残胃癌の内視鏡診断(Figure 1
Figure 1 

幽門側胃切除,BillrothⅠ法再建術後の症例.

a:白色光内視鏡像.早期胃癌のため20年前に手術をされている.吻合部の口側後壁側に辺縁の隆起を伴う発赤調の陥凹面が認められた.十二指腸液の逆流が強く,病変上にも胆汁が付着して洗浄しても除去できない.背景の粘膜も浮腫状である.

b:白色光内視鏡像.軽度脱気しても発赤調の陥凹面の形態が残存するため粘膜下層浸潤を疑った.

c:NBI拡大像.Demarcation lineは明瞭であり,病変内部の微細模様は不明瞭となり,拡張・蛇行した異型血管が認められた.

d:EUS像.病変は低エコー領域として認識された.第3層内に低エコー腫瘤が認められ,浸潤の可能性が疑われた.病変内にはステープルと思われる高エコー領域は認められなかった.

e:白色光内視鏡像(反転像).病変は脆弱であり反転で易出血性である.厚みを有する陥凹面として認識され最終診断はSM1と診断した.

f:ESD検体.病理は,well to moderately differentiated adenocarcinoma, depth SM1(200μm),ly0,v0,HM0,VM0であった.

残胃癌のなかで最もよく経験するタイプである.本邦からの報告では幽門側胃切除・BillrothⅠ法後の5年経過観察例での残胃癌の頻度は2.72%とされている 5.BillrothⅠ法後の残胃では十二指腸液の逆流に暴露されるため残胃炎の状態になりやすい.このためRoux-en-Y法再建に比べると残胃の内視鏡的,組織学的炎症は強い.一方でピロリ菌感染率は低下すると報告されている 6.十二指腸液による炎症か,ピロリ菌感染による炎症かを内視鏡的に判断することは難しい.しかし,十二指腸液によるいわゆる残胃炎の状態では,びまん性発赤,粘膜全体の浮腫,ひだの太まりが特徴的と言われている 7

当院で経験した幽門側胃切除術・B-Ⅰ法再建後の残胃癌のうち,残胃の小彎側に位置する病変が約6割であった 8.0-Ⅱc型が最も多く,いずれもNarrow band imaging(NBI)拡大などの画像強調内視鏡を用いることで境界の診断をすることは可能であった.組織学的には未分化型もしくは未分化混在の癌が他の再建方法と比べると多く,35.7%(10/28)で未分化型もしくは未分化混在型の癌であった.上西らは吻合部近傍では未分化型が多く,吻合部と離れた胃体部では分化型が多いと報告している 9

つまり,BillrothⅠ法後の残胃は小彎を中心に小さな陥凹性病変を探し,特に吻合部近傍では未分化型癌の存在に留意する必要があると考えられる.

Ⅱ-3 幽門側胃切除術・BillrothⅡ法後の残胃癌の内視鏡診断(Figure 2
Figure 2 

幽門側胃切除,BillrothⅡ法再建術後の症例.

a:白色光内視鏡像.胃潰瘍のため40年前に手術をされている.吻合部の後壁の退色調の陥凹性病変から生検され高分化型腺癌疑いが検出されている.

b:NBI非拡大像.NBI非拡大でも退色調の陥凹性病変として認識される.

c:NBI拡大像.Demarcation lineは明瞭であり,陥凹部において微細模様が不明瞭となり,内部に拡張・蛇行した異型血管が認められた.

d:EUS像.病変部では第3層の表層に小さな無エコーのcystic lesionが多発している.病変内にはステープルと思われる高エコー領域は認められなかった.

e:ESD後潰瘍.剝離中にステープルは認められず偶発症なく一括切除可能であった.

f:ESD検体.病理はwell to moderately differentiated adenocarcinoma,12×5mm,depth m,ly0,v0,HM0,VM0であった.

BillrothⅠ法と同様BillrothⅡ法でも残胃は十二指腸液逆流の影響を受ける.残胃癌の発生頻度はBillrothⅠ法より高いと言われ,本邦では近年少なくなっている術式である.5年経過観察例での残胃癌の発生は3.17%と報告されている 5.特に胃空腸吻合部の胃側に隆起性変化を認めた際には,gastritis cystica polyposa(GCP)の存在を疑うべきである.GCPはBillrothⅠ法などの他の再建方法でも発生し得るが,BillrothⅡ法ではより高頻度である.そして炎症を背景とするGCPからは発癌する可能性があると言われておりリスク因子と考えられる 10),11

BillrothⅡ法後の残胃癌の内視鏡的特徴は,退色調の色調を呈することが多く,吻合部近傍に存在することが多いことである.時にその境界診断はNBI拡大内視鏡観察でも難しいことがある.そのような際には積極的に生検での病理診断も併用するべきである.また,他の再建方法の残胃癌と比較すると初回治療から残胃癌発見までの期間が長いため慎重な経過観察が望まれる.

Ⅱ-4 幽門側胃切除術・Roux-en-Y法後の残胃癌の内視鏡診断

吻合が残胃空腸吻合と空腸空腸吻合の2カ所となるため手技がやや煩雑になるが,十二指腸液の逆流が少なく残胃炎の発生が少ない.残胃が小さくても再建が可能であることも本法の大きなメリットである 12.残胃癌の発生は1.55%とBillrothⅠ 法やⅡ法と比べると有意に低いとされている 5

残胃炎の影響が少ないため通常胃の早期胃癌とほぼ同様の所見である.BillrothⅠ,Ⅱ法も同様であるが残胃小彎側に縫合線が存在する.通常観察でも線状の瘢痕として認識されることがある.時に通常観察でその部位が断定できない時には超音波内視鏡(EUS)を用いるとより客観的に同定できる.EUSは病変の深達度診断以外にも縫合線の同定,粘膜下層内の血管構造やGCPの存在診断にも有用である 13

Ⅱ-5 噴門側胃切除術後の残胃癌の内視鏡診断(Figure 3
Figure 3 

噴門側胃切除,空腸間置術後の残胃癌の症例.

a:白色光内視鏡像.胃切除後25年が経過した時点で残胃小彎から高分化型腺癌が認められている.病変前壁側には術後12年目に発生した早期胃癌に対するESD瘢痕も認められる(黄色矢印).

b:NBI拡大画像.通常観察では境界が不明瞭であるが,NBI拡大では明瞭なdemarcation lineが認められ,病変内部の粘膜微細模様は不規則になっている.

c:NBI拡大画像.病変全体のdemarcation lineは同定可能であり,18mm大の病変と判断した.

d:ESDのマーキング時.病変前壁側には縫合線とESD瘢痕による高度な線維化が予想される.

e:ESDの局注時.病変前壁側は局注による粘膜下層の膨隆は得られなかった.

f:ESDの全周切開後.後壁側は線維化が認められないため,後壁側から大部分を剝離し,瘢痕部を残すように剝離をした.

g:ESDの剝離時.病変前壁側には高度な線維化が認められた.剝離中に手術時のステープル(黄色矢印)が認められた.

h:ステープル抜去時.ステープル周囲を剝離し,Dual knifeの先端でステープルを牽引する.

i:ステープル抜去時.ナイフ先端でステープルを牽引しながら瞬間的にEndocut modeで通電するとステープルを簡単に抜去することが可能である.

j:ESD後潰瘍.病変前壁側には縫合線とESD瘢痕による線維化が認められたが,穿孔なく切除可能であった.

k:切除検体.病理はwell differentiated adenocarcinoma,20×18mm,depth m,ly0,v0,HM0,VM0であった.

初回治療の原因となる疾患の多くは体上部に存在する胃癌である.空腸間置法,食道残胃吻合法,double tract法のいずれの再建方法においても胃の下部が存在するために幽門側胃切除術後の残胃癌の発生より頻度が高い 14.幽門側胃切除術後の2.35%の残胃癌発生率と比べると噴門側胃切除術後では6.28%と有意に高頻度とされている 5

病変の部位は大彎側の頻度が高く,吻合部や縫合線と関連がないことが多い.小彎側の病変では他の術式同様に縫合線などの影響を考慮する必要がある 15.白色光観察では,発赤調の陥凹性病変を呈することが多い.NBI拡大観察では明瞭なdemarcation lineとirregular microvascular pattern・irregular microsurface patternが認められることが多い.

Ⅲ 再建胃管癌の内視鏡診断(Figure 4)
Figure 4 

食道切除後,挙上胃再建術後の残胃の症例.

a:白色光内視鏡像.食道癌の手術から7年が経過している.残胃下部前壁に発赤調の陥凹性病変が認められた.生検で高分化型腺癌が認められた.病変の口側と肛門側に引き連れが認められ縫合線の可能性が疑われた.

b:NBI非拡大像.病変はBrownish areaとして認識された.

c:NBI拡大像.明瞭なDemarcation lineが認められ,陥凹内部の微細模様は小型化し,規則性が失われていた.

d:EUS像.病変直下の第3層から第4層には高エコー輝度のshadowが認められ,縫合線による線維化があると診断した.

e:ESDのマーキング時.

f:ESDの全周切開後.局注による病変正中の挙上は不良であった.

g:ESDの剝離時.剝離時にステープルを認めたが,抜去することなく剝離は可能であった.

h:ESD後潰瘍.穿孔なく病変を一括切除可能であった.

i:切除検体.病理はwell differentiated adenocarcinoma,7×4mm,depth m,ly0,v0,HM0,VM0であった.

食道切除後の再建胃管癌は術後平均6年で発見され,約25%は術後10年以上経過して発見される 16.このため食道癌術後では長期の経過観察が望まれる.再建胃管はストレートな構造となっており接線方向での観察となる.しばしば食物残渣があり観察に制限があることがある.扁平上皮癌は異時発癌が多いためわれわれは食道癌術後は1年に2回の上部内視鏡検査を行っている 17.内視鏡観察しづらいため再建胃管も同時に慎重に観察するようにしている.食道切除後の再建法として,回結腸再建法や遊離空腸再建法なども行われているが,これらの胃内の観察法は通常胃とほぼ同様である.

再建胃管癌は下部に多く,肉眼形態としては陥凹性病変が多い.食道癌術後の定期検査で発見されることが多いため,腫瘍径は比較的小さく,早期癌で発見されることが多い 18),19.当院で発見された再建胃管癌の平均は11.5mmと小さく,6割は陥凹性病変であった 8.しかし胃管作成時に縫縮するため大彎部の伸展が不良となるため正確な診断が難しいこともある.早期胃癌と診断し内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を行い,最終病理結果がT3であった再建胃管癌をわれわれは経験している 20.スペースの狭い術後の胃では遠景からの病変全体の観察が困難となることがあるが出来るだけ病変全景を観察しその硬さや厚みを把握する必要がある.また初回の内視鏡治療時に複数病変が存在することが多い.しかしその半数は見落とされているため一つ癌を認めた際には他にも癌がある可能性が高いと思い慎重に観察するべきである 21

再建胃管を観察する際には中部から下部の陥凹性病変を中心に注意深く観察をする.われわれは順方向で大部分を観察し,最後に前庭部で反転し観察するようにしている.高頻度に胃内に出血を認めるため愛護的な内視鏡操作が望まれる.

Ⅳ 残胃癌,再建胃管癌の治療

残胃癌や再建胃管癌に対する外科的治療は初回手術後の癒着があること,再建胃管では縦郭内操作が必要なことなどがあり患者に対する侵襲は大きい.T因子と腫瘍径以外にも残胃癌の部位とリンパ節転移率には関連があると報告されている 22.大彎に存在する病変では非大彎病変と比較してリンパ節転移のリスクが高い.腫瘍径35mm未満,T因子T1-2,非大彎で最もリンパ節転移のリスクが低いとされており,残胃癌を発見しその治療方針を決める際には重要な情報である.近年,残胃全摘は腹腔鏡手術でも安全に行うことが可能と報告されているものの,手術侵襲は高くかつ術後のQOLの低下が予想される 23),24.手術にしてもより低侵襲な部分切除などの試みもなされている 25.腫瘍の因子のみならず患者の年齢や基礎疾患など全身状態を総合的に判断し治療方針は決定されるべきである.術後病理にてリンパ節転移を認めた残胃癌の早期再発率は高く,強い術後補助化学療法が必要と考えられる 26.ESDなどの内視鏡による局所治療と腹腔鏡を用いたリンパ節廓清を合同で行う試みがなされているが,術後胃の治療では現実化するとメリットの大きな治療になる可能性がある 27.残胃癌に対する手術とESDの治療成績の比較では,ESDで在院日数や手技時間が短く,偶発症発生率は低い 28.当院ではBillrothⅡ法再建後残胃のESDは他の再建方法の残胃ESDより偶発症が高く,かつ治癒切除率が低い結果であった 29.吻合部付近の病変が多く含まれている結果と考えられた.残胃のESDの難易度を術前にスコアリングする検討がなされており,術前に難易度を予想し適切な術者が適切なタイミングで行うことが望まれている 30

一方で胃管癌に対する外科的治療は侵襲の大きさから避けられることが多く,近年では内視鏡治療が増加している.進行した状態で発見された場合は外科的治療が行われているが,その術式は未だ定まっておらず,外科治療においても低侵襲な部分切除が行われる傾向が強い.

残胃や再建胃管のESDの安全性や有効性に関する検討では,様々な困難性はあるものの穿孔や出血などの偶発症は通常胃のESDと比較して差がなかったと報告されている 31)~33

Ⅳ-1 残胃癌・再建胃管癌の内視鏡治療の実際(Figure 34

どの術式の残胃でも通常胃と比べるとそのワーキングスペースが狭い.また吻合部や縫合線などのために病変部に瘢痕が存在する確率が高い 34)~36.切除範囲を小さくしても手術の影響で胃の排泄能が低下していることが多いため,内視鏡治療前には絶食期間を通常より長く設定するべきである 37.われわれは,治療前1日間は最低でも絶食・補液管理とするが,術前の内視鏡の際に食残が多い状況では更に絶食期間を延長する.

われわれは小回りの利くGIF H290T(オリンパス社)を用いることが多いが,反転操作が可能な時にはGIF 2TQ260M(オリンパス社)の併用も検討する.NBI拡大内視鏡を用いてマークを行う.切除ラインに縫合線や吻合部がかかるかが最も重要な点である.縫合線の同定は通常観察で大部分が可能であるが時に断定できないことがあるため,Miniature probe 20MHzを用いたEUSで病変及びその周囲をscanする.切除ラインに縫合線が及ぶと高度の線維化もしくはステープルが粘膜下層内に認められるため手技時間が長くなることが予想される.そのような時には全身麻酔での治療を考慮する.

局注による膨隆を確認し,膨隆が得られない時にはステープルなどによる線維化の可能性がある.剝離中にステープルを認めると通電しなくなるため剝離がしづらくなる.またこのような場合は剝離層が浅くなり検体損傷を来す可能性が高くなる 38),39.ステープルを抜去することには否定的な意見 40もあるが,当院ではステープルのため剝離がしづらい時にはステープルを抜去しながら剝離を進めるようにしている.十分にステープルを露出させたのちにDual knife(オリンパス社)の先端でステープルを牽引しつつEndocut mode(VIO300D)で通電すると一瞬でステープルの抜去が可能である.当院ではステープル抜去に伴う偶発症を経験していないが,今後より多数例での安全性と有効性の検証が必要と考えられる.

Ⅴ おわりに

残胃や再建胃管にはピロリ菌以外にも,十二指腸液や食物残差の停滞などのため炎症が持続し得る.このため胃癌の発生頻度は高く術後の定期的なサーベイランスは重要である.治療に関してもワーキングスペースの狭さや吻合部や縫合線による線維化など注意するべき点が存在する.出来得る限り早期発見をして患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を維持した治療が望まれる.

謝 辞

消化器外科宇田川晴司先生,上野正紀先生,春田周宇介先生,大倉遊先生には日頃より診療面から学術面までご指導頂いております.ここに厚く御礼申し上げます.

最後に,鈴木悠悟先生,早坂淳之介先生をはじめとする消化器内科のスタッフに多くの助言を頂きました.ありがとうございました.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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