GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2023 Volume 65 Issue 6 Pages 1178-1181

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概要

沿革・特徴

当院は1982年,脳神経外科を中心とした森山病院(143床)として江戸川区西葛西駅前に開設され,今年6月,40周年という節目の年を迎えた.2002年,急性期に特化した森山記念病院(157床)を新設し,森山病院は回復期リハビリ機能をもった森山リハビリテーション病院(216床)となった.2013年には救急医療の実績が認められ社会医療法人の認定を受け,2016年,現在(北葛西)の森山記念病院(297床)へ新築移転し,旧森山記念病院は回復期部門に重点をおいた森山脳神経センター病院(149床)として生まれ変わった.2020年には内視鏡センターを含む新棟の増築があり現在に至る.当院は約70万の人口を抱える東京都江戸川区のほぼ中央に位置する救急医療,脳疾患,消化器,循環器などに特化した高度医療を行う地域中核病院である.また災害拠点病院でもあり災害派遣医療チーム(DMAT)も保有している.年間の救急車搬送台数は約7,000件,手術件数は約4,000件で,開設当初から地域の救急医療を支えることが当院の使命であることを院是に掲げ運営してきた.また後方支援施設として介護老人保健施設や訪問看護・リハビリステーションを併設し,急性期から回復期・在宅・介護までグループ内で一貫した医療提供体制をとっている.脳神経外科は当院の中心的存在であることはもちろんだが,消化器科も24時間救急疾患への対応,最先端の内視鏡システムや3D腹腔鏡システムでの手術を行っている.現在世界を混乱の渦に巻き込んでいる新型コロナウイルスに対しても東京都新型コロナウイルス感染症重点医療機関として早期よりPCR迅速検査,院内感染管理体制を作り,入院治療,緊急内視鏡・手術なども積極的に対応してきた.

組織

内視鏡センターは中央診療部門の一つとして独立した組織であり,内視鏡センター長は消化器外科部長が兼任している.検査・治療は主に消化器内科・外科,大腸肛門外科が担当している.看護師は6名(消化器内視鏡学会認定技師は5名),医療クラーク2名,内視鏡洗浄専任が1名配置されている.看護師は外来,ER(救急センター)と一部兼任がおり,また手術室看護師も夜間オンコール応援体制となっており,緊急内視鏡検査にいつでも対応できるようにしている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡センターは2020年11月新棟2階に移転し,総面積は210.63m2である.通常の内視鏡検査を行う検査室が3室(検査室①②③),透視室は1室(検査室④)の4部屋体制である.検査室①は陰圧室となっており,新型コロナ患者を含む感染症患者に検査が必要な場合に使用できるようになっている.また検査室①にはCADEYETM(FUJIFILM),検査室②にはWISE VISIONTM(NEC)の自動診断システムが搭載されている.内視鏡管理システムは最新のFUJIFILMのNEXUS(JED対応)を導入し,事務作業の軽減に貢献している.

スタッフ

(2022年9月15日現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医4名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ3名

内視鏡技師:Ⅰ種5名

看護師:常勤6名

事務職:2名

その他:1名

設備・備品

(2022年9月15日現在)

 

 

実績

(2021年1月~2021年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は消化器内視鏡学会認定指導施設であり,また研修指定病院であるため,消化器内視鏡関連の研修はその医師の技量や経験年数に応じた教育プログラムを用意するが,その基本線について記載する.

第一段階;1)内視鏡室の設備と備品,2)内視鏡機器の原理,取扱い,3)機器の感染症対策と消毒,4)適応と禁忌,5)消化器病診療に必要な解剖学的知識と消化器疾患の理解,以上の項目を系統的な知識として習得する.

第二段階;1)前処置,2)スコープの挿入法(上部・下部),3)写真撮影の順序,4)色素内視鏡の実際,5)生検法,など内視鏡検査に必要な基本手技の習得を目指す.

第三段階;1)比較的簡単な内視鏡治療手技(ポリープ切除,止血術等)ができる.2)観血的な内視鏡手技(内視鏡的粘膜切除術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)・内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)・内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)他)の原理・適応を理解し介助ができる.

特に最近進化の著しい胆道系の検査・処置においては,最新の設備でエキスパートの指導を直接受けられる体制を整えている.

AI機器(FUJIFILM CADEYETM,NEC WISE VISIONTM)も積極的に導入し,初心者からエキスパートまでどんどん使用していくことにより慣れてもらうのはもちろんのこと,より精度の高い内視鏡検査,見落としのない内視鏡検査を目指している.

いずれの段階においても,検査や治療に際しては,インフォームドコンセントを十分に行い,苦痛を与えないこと,事故を起こさないこと,診断に適した良質の画像を撮ることなどを徹底するよう指導するようにしている.

また当院には脳疾患の患者が多く,世の中では賛否両論の経皮的内視鏡下胃瘻造設術だが,対象患者が多数いるため多職種とのカンファレンスで十分に検討したのち,腹部手術後,特に胃切後の患者を含め積極的に行っている.

当院では消化器外科医と消化器内科医が協力しながら消化器疾患の診断と治療に従事している.このため幅広い消化器疾患について,病変の拾い上げ,精密診断,治療を一貫して指導することが可能である.また救急患者の受診も多いため豊富な症例を経験しながら,高い精度の内視鏡技術が習得できるような指導を目指している.

現状の問題点と今後

2020年に新たに内視鏡センターを立ち上げ,検査室を4部屋(1部屋は透視室)とし,前処置スペースやリカバリーベッドの体制を整えたばかりだが,検査・治療内視鏡件数増加と内視鏡検査時の鎮静の希望者の増加のため,現場は早くもキャパシティオーバーとなっている.また新型コロナ対策での前処置スペースのゾーニングやソーシャルディスタンスの問題もありスペースの確保も難しくなっている.この状況はしばらく続くことが考えられ,検査室①の陰圧工事や,エアカーテンの設置などは早急に施行したが,次期拡張の際は検討しなおさなければならないところである.

当院の検査は高齢者や基礎疾患をもつ患者が多く,内視鏡検査をより安全に施行するためには十分な情報収集とインフォームドコンセントが必要となる.現在,JEDの入力もあり,事務方に内服薬などの情報を入力してもらい,看護師,医師のチェックという体制で臨んでいるが,内容は年々増加傾向にあり負担軽減のための対策が必須である.現状ではFUJIFILMのNEXUSの最新バージョンを導入してできる限り業務を簡略化するように努力している.

鎮静希望の患者も多く,内視鏡検査施行中のモニタリングも慎重に行わなくてはならず,ベッド,スタッフとも足りない状況は続いている.内視鏡システムのディスプレイに患者のモニタリングデータを一緒に表示することにより,医師含めスタッフがどこからでも患者バイタルを確認できるようにし過鎮静などの事故を防ぐ努力をしているが,内視鏡処置も専門性が進んでおり,それをサポートする看護師(内視鏡技師)を育成していくことは急務である.さらに検査担当の医師の数も足りずに非常勤医師の力をお借りしている状況にあるため,今後は常勤医師のさらなる確保に向けて,教育体制の構築,ハードウエア面の充実を図り,魅力的な内視鏡室となるように努力していく所存である.

 
© 2023 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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