GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2023 Volume 65 Issue 8 Pages 1341-1342

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Ⅰ 緒  言

消化器癌の悪性狭窄に対して留置した金属ステントが閉塞した場合,ステントの追加(stent in stent)を行うことにより閉塞部は再開通する 1.その際にガイドワイヤ(guide wire:GW)がステントのセルを通過しステント外に逸脱してしまうことをしばしば経験する.今回われわれはGW先端に意図的にループを形成させながらステント内腔を確実に通過する『Preformed loop technique(PLT)』を考案したためここに報告する.

Ⅱ PLT

先端形状がアングル型のGW VisiGlide 2TM(Olympus Medical System Corp.Tokyo,Japan)を内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)用カテーテル(MTW Endoskopie W. Haag KG)に挿入しGW先端を5cm程度カテーテルの先端から出しておく.GW先端とカテーテル本体をサージカルテープで固定しループを形成させる.GWをカテーテルに引き込ませてループのたわみを最小化した上で,カテーテルを鉗子口へ挿入する.カテーテル先端を狭窄部に合わせた後ゆっくりGWを押し出すと,ステントの内腔でセルよりも大きいループを保ち,セル間隙からGWが逸脱することなくステント内を確実に通過できる.GWを引き抜くことによりテープから離れGWとカテーテルは独立する.テープ自体はカテーテル本体から剥がれず内視鏡操作に影響しないため,次の処置を行うことができる.本法は上部消化管,大腸,胆道のいずれのステント閉塞症例にも応用できる(Figure 12電子動画 1).

Figure 1 

症例1.ステントは鋭角な屈曲をきたしていたが,GWは抵抗なく屈曲部を通過した.

Figure 2 

症例3.残渣と胆泥によりステントが完全閉塞していた.The hairpin techniqueではGWが進まないが,PLTでは容易に閉塞部を突破した.

電子動画 1

症例1:強い屈曲により金属ステントが閉塞した胃前庭部癌の1例(Figure 1).

症例2:膵臓癌腹膜播種巣のtumor ingrowthにより金属ステントが再狭窄した横行結腸閉塞の1例(電子動画 1).

症例3:膵頭部癌に対し下部胆管へ留置した金属ステントが胆泥閉塞した1例(Figure 2).

Ⅲ 考  察

ステント内腔にGWを挿入する方法として,GW先端を反転させヘアピンを形成するThe hairpin techniqueが報告されているが 2,操作中にヘアピンが解除されセル間隙を突き抜けることがある.PLTはテープの粘着力によりループ形状を維持したままステント内腔を確実に通過できる.

また,電子動画 1のように屈曲やTumor ingrowth,糞便などの異物により閉塞部の抵抗が強くGW単独で超えられない場合には,カテーテルを押し出すことで,ループを保ったまま,安全に閉塞部を超えることができる.

先端形状がJ-shape型のGW(パイオラックス メディカルジャパン デバイス:RWHJ-3545SJ/RWHJ-2545SJ)が上市されているが,J-shape型になっている部分はステントセルよりも小さいためステント内腔からステントセルを通り逸脱してしまう可能性がある.本法ではループをセルより大きく維持できるためそのリスクは少ない(Figure 3).

Figure 3 

ステントモデルを用いたPLTとJ-Shape型QWの比較.PLTはJ-shape型GWよりも大きなループを維持しながら操作することが可能であり,ステントセルからの逸脱を防ぐことができる.

本方法はステント内腔をGWが通過する状況においては安全な操作が可能であるが,ステントが留置されていない消化管閉塞においては,GW操作による消化管穿通の危険性に留意する必要がある.

Ⅳ 結  論

PLTは金属ステント閉塞時に有用なガイドワイヤ挿入法であり,今後の症例蓄積による評価が期待される.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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