GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2023 Volume 65 Issue 8 Pages 1376-1379

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概要

沿線・特徴

松阪中央総合病院は,1961年に松阪市鎌田町に212床で開院し,病床数を増やしながら発展,1997年に現在の川井町に440床として新築移転した.三重県中南勢地域の中隔病院として救急医療の中心的役割に取り組み,地域医療支援病院,地域がん診療拠点病院,災害拠点病院,臨床研修指定病院となっている.内視鏡室は,1997年建設の本棟には2室(112m2)しかなく,ニーズの高まる内視鏡診療の増加に合わせて,2007年に全面改築を行い3室(148m2)とし,さらに2018年に4室に増設を行ったが手狭となったため,2021年10月に現在の新棟2階に移転した.

組織

新棟建設の際に,内視鏡専用のCアームX線透視装置も移設し,看護部門とともに内視鏡センターとして独立した.医師は消化器内科常勤医と非常勤医が診療に従事し,専従の看護師が24時間365日にわたり検査・治療介助を担当している.臨床工学技士は兼任であり,洗浄消毒,機器管理を中心に行っている.

実際の運用は,午前に1名,午後に1名週替わりで固定されているリーダー看護師が,前日に検査オーダーやカルテで情報収集を行い,当日受付でクラークが行った問診票をもとに,責任医師と相談しながら,検査順,検査室,担当医,器材などを判断し,インカムを用いて臨床工学技士に指示を行っている.各検査室には必ず看護師が最低1名介助する体制をとっている.鎮静が行われた症例はセンター内の回復スペースに移動し,管理看護師が帰宅までをフォローしている.

内視鏡器材の準備,運搬,洗浄・消毒は,内視鏡センター開設を機に加わった臨床工学技士と洗浄員が中心に行うが,特に使用後の内視鏡は検査直後に洗浄液の吸引,AWアダプタの装着を行ってから汚染が広がらないように専用のカートで運搬するようにしている.

内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)などの予定治療では,前週のカンファレンスにおいて医師・スタッフ間で情報を確認している.緊急が多い胆膵系の処置では,検査直前に術者がタイムアウトをコールし,携わる全職種で情報共有を徹底している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡センターは新棟2階に位置するが,その1階は救急センター,3階は救急病棟とICUに専用エレベーターで直結し,救急診療部門との連携がスムーズにできるようになっている.さらに5階には健康管理センターがあり健診・検診部門との連携も重視している.

総床面積は567m2で,一般検査室3室(20m2)と,治療内視鏡や超音波内視鏡も対応可能な2室(20m2),および透視下内視鏡室1室(33m2)の合計6室は,すべてのモニターを天井吊り式にすることで,十分なスペースを確保し清掃が容易になった.また,患者動線,スタッフ動線,使用前後の内視鏡器材の動線を分離することでも感染管理に留意している.洗浄室と内視鏡保管庫の空調は個別化し,室温・湿度の管理を厳密に行えるように設計した.全検査室において,酸素・吸引とともに二酸化炭素ガスを中央配管とした.大腸前処置スペースは,外窓に面した場所でゆったりと行えるようにし,トイレは内視鏡センター出入口前の一般トイレと多機能トイレを合わせて13カ所設置した.

内視鏡画面や監視カメラの映像は,集中監視するのみではなく各検査室など内視鏡センター内14カ所に配信し,リアルタイムでスタッフ間の情報共有を密に行っている.また外来診察室や病棟など院内どこからでもWeb視聴を可能とし,少ない人員で安全に効率よく運用できるよう工夫している.ESD,超音波内視鏡検査(EUS),内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)などの治療内視鏡では録画・録音を行い,学術活動のみならずカンファレンス,教育,医療安全に活用している.

スタッフ

(2023年6月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医3名,専門医2名,その他5名

非常勤医師は,指導医2名,専門医2名,その他2名

内視鏡技師:Ⅰ種1名,その他臨床工学技士5名(兼任)

看 護 師:常勤9名(1名は看護助手),非常勤2名(すべて専任)

事 務 職:2名

 

内視鏡センタースタッフ

設備・備品

(2023年6月現在)

 

 

実績

(2022年1月~2022年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

初期研修医は2年間の間に2カ月間の消化器内科ローテーションがプログラムされているが,2年目の後半の自由選択期間でも追加研修することができる.病棟における入院患者管理と同時に,内視鏡センターにおいて内視鏡検査・治療の見学から介助まで各人の希望や習熟度に応じてフレキシブルな研修を実施している.また,救急センターに近いので急性腹症などの腹部救急疾患の診療には初期の段階から接することが可能であり,その中で消化器内視鏡の適応を考える機会を設けている.

消化器内科専攻医はまずトレーニングモデルによる内視鏡操作の基本を練習した後に,上級医の監視のもと鎮静下の上部消化管スクリーニング検査から開始していく.以後習熟度に応じて,下部消化管内視鏡検査の引き抜き観察から始め,徐々に挿入をトライしていくが,すべて上級医の責任下で実施している.専攻医の実施検査に限らずすべての検査レポートは,消化器内視鏡学会専門医のダブルチェックを実施してから最終版としている.

胆膵系の手技に関しては,その適応や準備,術後のフォローに至るまでを大切にし,単に内視鏡操作のみを習熟することを目的にはしないよう指導している.まず第一介助ができるようになること,次に,上級医の介助を受けながらの術者,さらに介助者に指示を出しながらの術者を目指すような段階的教育体制をとっている.

内科専攻医のプログラムに合わせ専門研修の3年目には,連携研修先の三重大学附属病院に出向しさらなる専門的な研修を行うとともに,学会発表や症例報告などを積極的に行い,リサーチマインドを持ちながら診断や治療のエビデンスの構築や病態の理解に繋がるような研究に携わる機会も大切にしている.

院内においても,救急センター,外科,放射線科,臨床病理科など他科との連携を重視し,症例の相談やカンファレンスなどに積極的に臨むよう指導している.また,メディカルスタッフを尊重し,他職種とともに患者中心とした診療を行う姿勢を基本とし,後進の指導にもあたるよう心掛けている.

消化器内視鏡学会専門医取得をひとつの目標とおき,卒後6-7年目頃には大学院への入学やハイボリュームセンターへの国内留学など一旦は当院を離れることを推奨している.

現状の問題点と今後

団塊の世代が75歳以上になる2025年を間近に見据えて,当地域では急性期病床の再構築が行われると予想され,慢性的に不足する医師,看護師から事務職に至るまでの人材をいかに確保するかが重要になると考える.医療職においては,タスクシフト,タスクシェアによる働き方改革をすすめ,非常勤者の活用など限られたリソースを効率的に運用し,患者にも職員にも選ばれる内視鏡センターである必要がある.

院内においては,内視鏡センター開設によって最低限のスペースは確保できたものの,年々増加する内視鏡検査件数に対する人材の圧倒的な少なさ,機材の少なさを病院管理者に説明していく必要がある.また看護師は定期的に他部署への配置転換があるため,内視鏡看護の質の向上・維持が課題である.内視鏡技師の増員も必要不可欠である.

内視鏡診療に目を向けると,上部消化管内視鏡においては細径内視鏡の進歩が目覚ましく,健診目的の検査を中心に経口挿入から経鼻挿入への比率を現在の50%程度から75%程度まで行えるよう機器の更新が必要である.下部消化管内視鏡検査においては,その増加ペースは著しく,現在,一日あたり10人程度の来院時間がすべて同時となっている運用を見直しながら,1.5倍程度まで増加させることを目標としている.胆膵内視鏡においては,バルーン内視鏡による再建腸管の経乳頭的処置やInterventional EUSなどの新しい手技の導入が課題である.また膵癌の早期発見を目的に,超音波内視鏡検査の敷居を下げより多くの患者に対応できる体制を確保しなければならない.

 
© 2023 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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