2023 Volume 65 Issue 8 Pages 1380
【目的】多施設共同前向きコホート研究で,早期胃癌(EGC)に対する内視鏡的切除術(ER)の長期的アウトカムを明らかにする.
【方法】2010年7月~2012年6月にERを受けたEGC10,021病変を持つ9,054人の長期転帰を分析した.主要評価項目は,5年全生存率(OS).全死亡のハザード比はCox比例ハザードモデルで算出.5年OSを,外科切除EGC患者で計算された予想OSと比較.5年OSの95%信頼区間(CI)下限値が,予想OSから5%を引いた値(閾値5年OS)を超えた場合,ERは有効と判断.一括切除・断端陰性・脈管侵襲陰性の病変はカテゴリーA1(分化型・pT1a・潰瘍陰性・≤2cm),A2(分化型・pT1a・潰瘍陰性・>2cmまたは分化型・潰瘍陽性・≤3cm),A3(未分化型・pT1a・潰瘍陰性・≤2cm),B(分化型・pT1b(SM1)・≤3cm)に4分類し(Table 1),上記以外は非治癒切除(カテゴリーC)とした.
【結果】全体の5年OSは89.0%(95%CI,88.3%-89.6%).多変量解析で,カテゴリーA2,A3,Bのハザード比はA1のハザード比と有意差はなかった.カテゴリーCを除くすべてのカテゴリーの5年OSは閾値5年OSを超えた.
【結論】ERは,カテゴリーA1,A2,A3,Bを満たすEGC患者の標準治療として推奨できる.
胃癌に対するERの治癒判定は時代と共に変遷してきた.2014年発刊胃癌治療ガイドライン第4版では上記カテゴリーA1のみを絶対適応病変とし,カテゴリーA2,A3,Bは適応拡大病変とし,臨床研究としてERを行うことを推奨した.その後得られたエビデンス 2),3)を踏まえ,2018年1月発刊のガイドライン第5版では,カテゴリーA1に加えてA2も内視鏡的根治度A(eCuraA)とした.一方,カテゴリーA3とBは内視鏡的根治度B(eCuraB)と規定し(Table 1),ER後にUSやCTによる転移の有無の評価が推奨されている.カテゴリーBは長期予後のエビデンスが乏しくeCuraBとされたが,本研究ははじめてカテゴリーBがA1と同等の長期予後を示し,外科切除と同等の5年OSが達成された.但し,カテゴリーBで胃癌死はなかったものの,Bで387例中2例0.52%の遠隔転移,カテゴリーA2で2,084例中5例0.24%の遠隔転移があったことは銘記すべきである.本研究は9,054人と大規模な全国前向き研究であり,カテゴリーA2,A3の長期予後についても従来のエビデンス 2),3)を更に補完する結果を示した.このエビデンスを踏まえて,胃癌治療ガイドライン次版ではカテゴリーBがeCuraAとされると予想する.
本研究カテゴリー分類と内視鏡治療根治度との関係.