GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2023 Volume 65 Issue 9 Pages 1441-1442

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症例

62歳男性.脳梗塞後,糖尿病で加療中.検診便潜血陽性のため,大腸内視鏡を行った.S状結腸に境界明瞭な10mm大の一部発赤調粘膜を伴う黄白色調平坦隆起型病変を認めた(Figure 1).平坦隆起の白色光拡大観察では1型ピットを取り込む黄色病変がみられたが,発赤調粘膜部には黄色病変が乏しかった(Figure 2).Narrow band imaging拡大観察では病変の大部分はJNET(the Japan NBI Expert Team)type1であったが,一部に拡張・蛇行する微小血管を認めた.大腸黄色腫を疑ったが,鋸歯状病変などの合併の可能性を考慮し内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理組織学的には,病変は12×9mm,粘膜固有層にCD68陽性の泡沫組織球の浸潤を認めたが,腫瘍性変化はみられず大腸黄色腫と診断した(Figure 3-a,b).

Figure 1 

白色光観察.S状結腸に境界明瞭,黄白色調,10mm大の一部に発赤調粘膜を伴う平坦隆起型病変を認めた.

Figure 2 

白色光拡大観察.1型ピットを取り込む黄色病変がみられたが,発赤調粘膜部には黄色病変がみられなかった.

Figure 3 

a:病理組織所見(黄色調隆起部).黄色調隆起部ではCD68陽性の組織球浸潤が粘膜中層まで密在していた.

b:病理組織所見(発赤調粘膜部).発赤調粘膜部ではCD68陽性の組織球浸潤が粘膜表層に散在性に限局していた.

考察

消化管黄色腫は胃ではしばしば認め,Helicobacter pylori感染に伴う慢性萎縮性胃炎に関連することが報告されている 1.一方,大腸黄色腫は比較的稀であり,その報告は少ない.

安武ら 2は大腸内視鏡を施行した1,560例中,生検で大腸黄色腫と診断された40例について検討し,頻度は2.5%,特徴的な臨床症状はなく,男性に多く,単発,白色病変,無茎性の隆起性病変が多いと報告している.発生部位は,本症例同様に直腸・S状結腸に多いと報告されている 2)~4.Nakasonoら 3はその理由として,便が停滞する直腸・S状結腸では,軽度の粘膜障害によって炎症細胞が誘導され,泡沫細胞浸潤,集簇が形成されることをあげているが,本症例では病変周囲の背景粘膜に炎症を伴う所見は認めなかった.また,血清コレステロール値との関連はなく 2),4,免疫組織化学染色では泡沫組織球がCD68陽性を示すことが鑑別に有用である 3

本症例は,通常観察では黄白色調平坦隆起であり大腸黄色腫が疑われたが,一部に発赤調粘膜を認め,腫瘍性病変合併の可能性も考慮してEMRを施行した.吉田ら 5は,黄色腫にsessile serrated lesion with dysplasia(SSL with dysplasia)を伴った症例を報告している.同報告では病変全体的にはSSLに特徴的な所見は認めないものの,黄色腫による白色変化の少ない領域に鋸歯状変化を疑う所見を認めたためEMRを施行している.SSLに特異的な腺管開口部拡張や変形が目立たなかった理由として,黄色腫を伴ったことで粘膜上皮直下のxanthomatous changeやリンパ球・形質細胞の浸潤をきたし,腺管開口部を狭めた可能性をあげている.本症例は腫瘍性病変がみられないものの,発赤調粘膜を伴う特徴がみられた.黄色調隆起部のCD68染色では組織球浸潤が粘膜中層まで密在している一方(Figure 3-a),発赤調粘膜部では組織球浸潤が粘膜表層に散在性に限局しているため(Figure 3-b),相対的に発赤調と認識されたと推定された.

内視鏡所見上黄色腫が疑われても,詳細な観察の上,非典型所見を伴う大型病変では診断的内視鏡治療も選択肢となると考えられた.

病理所見を評価いただきました杏林大学病院病理学教室吉池信也先生に深謝します.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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