GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
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ISSN-L : 0387-1207
USE OF ADVANCED ENDOSCOPIC TECHNOLOGY FOR OPTICAL CHARACTERIZATION OF NEOPLASIA IN PATIENTS WITH ULCERATIVE COLITIS: SYSTEMATIC REVIEW
Yasuharu MAEDA Shin-ei KUDONoriyuki OGATATakanori KUROKIYuki TAKASHINAKazumi TAKISHIMAYushi OGAWAKatsuro ICHIMASAYuichi MORIToyoki KUDOTakemasa HAYASHIHideyuki MIYACHIFumio ISHIDATetsuo NEMOTOKazuo OHTSUKAMasashi MISAWA
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2023 Volume 65 Issue 9 Pages 1464-1478

Details
要旨

【背景・目的】拡大や画像強調内視鏡などの内視鏡診断技術による大腸病変の質的評価は,費用対効果の高いリアルタイムな手法として臨床導入されている.更に,内視鏡治療技術の進歩に伴い,内視鏡的切除術が潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:UC)罹患者の大腸腫瘍性病変の治療選択肢となりつつある.そのため,術前の正確な質的評価の重要性が増している.本システマティック・レビューでは,UC患者に対する大腸病変の内視鏡的質的評価の現状と限界を検証した.

【方法】2000年1月1日から2021年11月30日までの期間で,オンラインデータベース(PubMed経由のMEDLINE,Cochrane Library経由のCENTRAL)の文献検索を実施した.

【結果】文献検索で748報の論文が同定され,最終的に,25報の研究が対象となった.23報は腫瘍・非腫瘍の鑑別,1報はUC関連腫瘍と散発性腫瘍の鑑別,1報はlow-grade dysplasiaとhigh-grade dysplasia/癌の鑑別が検討されていた.

【結論】UC罹患者の大腸病変の質的評価は,最新鋭の内視鏡診断技術を用いてもなお困難であり,課題が残されている.

Abstract

Objectives: Advances in endoscopic technology, including magnifying and image-enhanced techniques, have been attracting increasing attention for the optical characterization of colorectal lesions. These techniques are being implemented into clinical practice as cost-effective and real-time approaches. Additionally, with the recent progress in endoscopic interventions, endoscopic resection is gaining acceptance as a treatment option in patients with ulcerative colitis (UC). Therefore, accurate preoperative characterization of lesions is now required. However, lesion characterization in patients with UC may be difficult because UC is often affected by inflammation, and it may be characterized by a distinct “bottom-up” growth pattern, and even expert endoscopists have relatively little experience with such cases. In this systematic review, we assessed the current status and limitations of the use of optical characterization of lesions in patients with UC.

Methods: A literature search of online databases (MEDLINE via PubMed and CENTRAL via the Cochrane Library) was performed from 1 January 2000 to 30 November 2021.

Results: The database search initially identified 748 unique articles. Finally, 25 studies were included in the systematic review: 23 focused on differentiation of neoplasia from nonneoplasia, one focused on differentiation of UC-associated neoplasia from sporadic neoplasia, and one focused on differentiation of low-grade dysplasia from high-grade dysplasia and cancer.

Conclusions: Optical characterization of neoplasia in patients with UC, even using advanced endoscopic technology, is still challenging and several issues remain to be addressed. We believe that the information revealed in this review will encourage researchers to commit to the improvement of optical diagnostics for UC-associated lesions.

Ⅰ 緒  言

罹患歴の長い潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)患者は,一般集団に比べて高率で大腸癌(Colorectal cancer:CRC)が発生する 1),2.CRCのリスクとそれに伴う死亡率を低減するために,現在のガイドラインでは,UCの診断が確定してから8年から10年後にサーベイランス大腸内視鏡を開始することが推奨されている 3)~5.色素または画像強調法を用いた狙撃生検法と従来のランダム生検法(通常10cmごとに4カ所の非狙撃生検を必要とし,1回の大腸内視鏡検査で最低32カ所の生検を要する)を比較したいくつかの研究では,狙撃生検法はランダム生検法と比較して腫瘍性病変検出率では劣らず,検査時間を短縮することが示唆されている 6)~8.病変検出時にリアルタイムに高精度な質的評価を行うことは,効果的(腫瘍性病変検出率の向上)かつ効率的(陰性生検数の低下)な狙撃生検サーベイランスを実現するために重要である.SCENIC(Surveillance for Colorectal Endoscopic Neoplasia Detection and Management in Inflammatory Bowel Disease Patients:International Consensus Recommendations)コンセンサス 3),4が確立されて以降,内視鏡的切除術は,UC患者においても治療法の選択肢として考慮されつつある.効果的(断端陰性一括切除)かつ効率的(適用病変の適切な選択)な内視鏡的治療を臨床に導入するには,病変の高精度な術前内視鏡的質的評価が必要である.

近年の拡大・画像強調をはじめとした内視鏡診断技術の進歩により(Figure 12),大腸病変の内視鏡的質的評価が,費用対効果の高いリアルタイムなアプローチとして注目され,臨床導入されている 9)~13.しかしながら,UC患者における病変の内視鏡的質的診断は一般集団と比較して難しいとされている.その理由としてUCの炎症による影響や,散発性腫瘍とは異なる「ボトムアップ」発育パターンを呈するため,表層の構造変化が乏しい 14),15,熟練した内視鏡医でさえUC関連大腸腫瘍の経験が比較的少ないことなどが挙げられる.最近のメタアナリシスやガイドラインでは,色素内視鏡は腫瘍性病変検出の有用性が繰り返し示され,サーベイランス大腸内視鏡検査法の第一選択として推奨されている 3)~5),16),17.しかし,非腫瘍性病変を効率的に識別できるかの有効性については,課題がある.

Figure 1 

内視鏡診断技術の市場導入の歴史.

AFI, autofluorescence imaging;BLI, blue light imaging/blue laser imaging;FICE, flexible spectral imaging color enhancement;IRI, infrared imaging;LCI, linked color imaging;NBI, narrow-band imaging;OE, optical enhancement;RDI, red dichromatic imaging;TXI, texture and color enhancement imaging.オリンパス.

Figure 2 

潰瘍性大腸炎患者の腫瘍性病変の内視鏡画像.

A:白色光.

B:インジゴカルミン散布像.

C:NBI.

D:NBI拡大.

E:RDI.

F:インジゴカルミン散布後のRDI拡大.

G:インジゴカルミン散布後のTXI.

H:インジゴカルミン散布後のTXI拡大.

NBI:narrow band imaging,RDI:red dichromatic imaging,TXI:texture and color enhancement imaging.

本研究では,内視鏡診断技術を用いたUC罹患者におけるサーベイランス大腸内視鏡検査時に検出される病変の質的評価の現状と限界を検証するために,系統的文献検索を実施した.

Ⅱ 対象と方法

このシステマティック・レビューは,PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)声明(Appendix S1)(電子付録)に従って実施された.このシステマティック・レビューを実施する前にプロトコルを作成したが,登録はされていない.また,メタ解析は未実施である.

研究の種類

対象選択基準は以下の通りである.(1)ランダム化比較試験(Randomized controlled trial:RCT),コホート研究,観察研究,および(2)UC患者の大腸病変の内視鏡診断技術を用いた質的評価に関するオリジナルデータを含む研究.内視鏡診断技術とは,白色光内視鏡検査以外と定義した.除外基準は以下の通りである.(1)古い重複論文(その場合は最新論文を対象とした),(2)小児研究,(3)症例報告,症例集積研究,レビュー,メタアナリシス,会議要旨,(4)抽出できないデータを含む論文.

研究を特定するための検索方法

2021年12月1日にオンラインデータベース(PubMed経由のMEDLINE,Cochrane Library経由のCENTRAL)を2000年1月1日から2021年11月30日に限定して検索した(Appendix S2,3)(電子付録)

研究選択

検索によって特定されたすべての研究の適格性は,少なくとも2名のレビュアーによって独立に評価された.タイトルと抄録から関連性があると思われる論文については,全文を検索し,スクリーニングを行った.研究の適格性に2名のレビュアー間に不一致がある場合は,他の1名のレビュアーと協議の上,決定した.関連する論文がすべて確認されるよう,収録された研究の参考文献リストを用いて相互参照した.

Ⅲ 結  果

文献検索および選択

最初のデータベース検索で748報の論文が同定された.タイトルと抄録による最初のスクリーニングの後,133報の研究が適格の可能性があると判断され,その全文がレビューされた.全文レビューの結果,108報が不適格とされ,残りの25報が本研究の対象となった(Figure 3).内視鏡診断技術による質的評価能を主要評価項目とするRCTは存在しなかった.4報のRCTは,副次的評価項目またはサブ解析として質的評価能を検討していた.また,2報のRCTで,事後分析として質的評価能を検討していた.他に7報の前向き観察研究またはコホート研究が含まれ,残りの12報は後ろ向き観察研究であった(Table 12).

Figure 3 

PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)による文献検索結果のフローチャート.

Table 1 

対象研究で用いられた内視鏡診断技術.

Table 2 

潰瘍性大腸炎患者の大腸病変に対する内視鏡的質的診断に関する研究.

データ統合解析

対象となった研究間で研究対象者,比較対象,結果に大きな異質性を認めたため,定量的なデータ統合解析は実施しなかった.

各研究の内容

腫瘍・非腫瘍の鑑別

本来,非UC患者の大腸病変の質的評価を目的に開発された,Kudoらのpit pattern分類 9を用いた研究が13報含まれた.

色素散布/染色下pit pattern診断

拡大内視鏡観察下にpit patternの腫瘍・非腫瘍の鑑別能を検討した研究が3報あった 18)~20.これらの研究では,Ⅲ型からⅤ型のpit patternの腫瘍性病変に対する感度は93%から98%と高値を示したが,特異度は研究によって大きく異なった.2報の研究では,93%と88%という高い特異度が示された 18),19.一方で,pit patternの提唱者であるKudoらによる最近の研究では,58%と比較的低値であった 20.この特異度が低い理由に関して,Hataらが,Kiesslichらの先行研究 18に対するレターで,UC患者の再生粘膜にⅢ型とⅣ型のpit patternが出現するためと指摘している 43.Kudoらの研究は,Hataらの指摘を支持する結果であった.

本来pit patternは拡大色素内視鏡下観察での評価法として開発された.しかし,欧米を中心に本邦以外の国では拡大内視鏡の使用は技術的障壁もあり広まっていない.そのため3報の研究では,腫瘍性・非腫瘍の鑑別を非拡大観察下でpit pattern評価の実現可能性が検証された 24),26),39.これらの研究によると,感度:68~77%,特異度:63~90%と非拡大環境では,拡大使用時より感度が低い傾向にあった.

デジタル色素内視鏡

色素散布や染色の手間を省き,病変部を詳細に可視化するデジタル色素内視鏡技術の開発・改良が進んでいる.UC患者病変の質的評価として研究報告されている技術として,Narrow band imaging(NBI)(オリンパス株式会社,東京),自家蛍光イメージング(AFI)(オリンパス株式会社),Flexible spectral imaging color enhancement(FICE)(富士フイルム株式会社),i-scan optical enhancement(i-scan OE;PENTAX Medical)などがある.Blue laser imaging(BLI)(富士フイルム株式会社)に関する報告はなかった.NBIを用いて腫瘍・非腫瘍を鑑別する独自の診断法を提案した研究は5報あった 21),23),33),34),44.Matsumotoら 33は,拡大NBI下観察される病変の表面模様をhoneycomb-likeパターン,villousパターン,tortuousパターンの3種類に後方視的に分類した(Figure 4).そのうち,tortuousパターンが,UC罹患者の腫瘍性病変を示唆する可能性を報告した.Nishiyamaら 34は,irregular/amorphous surfaceパターンとirregular/avascular vesselパターンが腫瘍性病変の所見であると提案した(Figure 5).surfaceパターンとvesselパターンを組み合わせることにより,91%の症例で腫瘍性病変を正確に鑑別可能であった.

Figure 4 

Matsumotoらが提唱したUC罹患者の病変のNBI拡大内視鏡観察による分類 33

A:honeycomb-likeパターン.

B:villousパターン.

C:tortuousパターン.

Figure 5 

Nishiyamaらが提唱したUC罹患者の病変のNBI拡大内視鏡所見 34

SurfaceパターンをA:unclear,B:regular,C:irregular,D:amorphous.VesseleパターンをE:like that of the background mucosa,F:regular,G:irregular,H:avascularに分類.

AFIは,一般的に非腫瘍部は緑色に,腫瘍性病変は紫色に描出される.AFIの腫瘍性病変の検出能を評価するために,2報の研究が行われた 35),36.Matsumotoら 35による後方視的研究の結果,隆起性病変のうち腫瘍性病変の割合は,緑色病変(13%)よりも紫色病変(45%)で有意に高かった.Yoshiokaら 36はAFIで紫色を呈した病変の38%(3/8)が腫瘍性病変であったと報告した.

ボタン操作で3モード(白色光内視鏡,AFI,NBI)を簡単に切り替えられるという利点を活かし,2報の研究で3モード画像(AFIで緑色を呈する病変と,AFIでは曖昧な色を呈する病変のうちNBIでⅠ型またはⅡ型pit patternを示す病変を非腫瘍と診断)を用いた検討が行われた 22),27.van den Broekら 22は腫瘍・非腫瘍の鑑別に対する感度,特異度,正診率がそれぞれ100%,72%,77%であったと示した.Vleugelsら 27は,腫瘍性病変のリアルタイム予測に対する感度と陰性的中率は,3モード画像で77%と97%,色素内視鏡単独で82%と97%であったと報告した.

FICEに関しては同一研究グループからの2報の研究で,腫瘍・非腫瘍の鑑別への有用性が示された 25),40.彼らはFICE下でUC患者の病変を評価するためにKudoらのpit pattern分類を修正し,FICE-KUDO/IBDと名付けた新しい分類を開発した.前向き研究で,感度93%,特異度97%と白色光内視鏡(それぞれ86%,64%)と比較して精度の上昇が確認された 40

Iacucciら 38は,汎用性のある内視鏡診断技術を用いたIBD関連腫瘍の内視鏡的診断法としてmulti-modal分類(色素内視鏡,NBI,i-scan OEに対応)を開発した.この分類は,形態,表面構造,血管構造,病変内の炎症の4つの基準から構成されている(Figure 6).注目すべきは,非拡大環境下での評価不確実性と再生性変化の解釈の難しさから,あえてpit pattern分類を評価指標から除外したことである.これら4つの基準を統合した専門医の評価では,腫瘍・非腫瘍の鑑別は感度65%,特異度81%,正診率71%であった.

Figure 6 

Iacucciらが提唱した炎症性腸疾患関連腫瘍の内視鏡診断のためのmulti-modal分類 38.形態,表面構造,血管構造,病変内の炎症の4つの所見で構成される.

SSA/P,sessile serrated adenomas/polyps;LGD/HGD,low-grade dysplasia/high-grade dysplasia.

組織自家蛍光の減衰時間がプロトポルフィリンⅨ蛍光の減衰時間より短いという知見に基づき,Ortnerら 37は,蛍光の時間依存性観察により,腫瘍・非腫瘍を感度73%,特異度81%で鑑別した.しかし,このシステムは市販されていない.

顕微内視鏡

現在,市販されている顕微内視鏡装置では,Mauna Kea Technologies(フランス・パリ)社製の共焦点レーザー内視鏡(confocal Laser Endomi­croscopy:CLE)とオリンパス社製のエンドサイト(CF-H290ECI)が臨床使用可能である.

CLEの診断能を検討した研究は5報あり 28)~32,そのうち4報はCLEの有効性を示した(感度86~100%,特異度90~98%) 28)~30),32.しかし,van den Broekら 31が実施した45病変と85のランダムな領域を含む133のCLE動画を用いた後方視的な検証では,感度65%,特異度82%という比較的低い結果を示している.

ECの有用性を評価した研究は1報のみであった 20.内視鏡的質的評価に広く用いられてきた従来のKudoらのpit pattenは,構造異型のみを反映し,細胞異型は反映しないという課題を克服するため,Kudoら 20はECとpit patternの併用診断法(EC-irregularly formed nuclei with pit pattern(EC-IN-PIT))を開発した.彼らの後方視的なプール解析では,EC-IN-PIT診断はpit pattern単独よりも有意に高い特異度(84% vs 58%)と正診率(88% vs 67%)を示した(Figure 7).

Figure 7 

Kudoらの研究で評価された患者の画像 20

A:白色光画像.

B:色素拡大内視鏡画像.2人の評価者の診断は,Ⅱ型pit patternとⅣ型pit pattenに分かれた.

C:超拡大内視鏡画像(520倍).両評価者とも核異型ありと診断した.

D:病理像(HE染色,400倍).組織学的にhigh-grade dysplasiaと診断された.

UC関連腫瘍と散発性腫瘍の鑑別

このトピックに関しての研究は1報のみである.Hurlstoneら 41は,白色光内視鏡で検出できた36病変の周囲の粘膜をCLEで観察した.取得された画像を用いた後方視的評価でのUC関連腫瘍と散発性腫瘍を鑑別正診率は97%であった.

Low-grade dysplasiaと癌/High-grade dysplasiaの鑑別

このトピックも,1報のみであった.内視鏡的粘膜下層剝離術を施行された腫瘍性病変を対象とした後方視的研究において,Kinoshitaら 42はNBIまたは色素拡大内視鏡診断によるLow-grade dysplasiaと癌/High-grade dysplasiaの鑑別は感度(55%),正診率(76%)と比較的低値であることを示した.大変興味深いことに,彼らは生検に基づく鑑別能も同様であることを示した(感度50%,正診率78%).

Ⅳ 考  察

日常診療に携わる臨床医のための内視鏡ガイダンス

日常診療において,UC患者に対するサーベイランス大腸内視鏡は,疑わしい病変の検出・病変の質的評価・治療の3ステップで行われる(Figure 8).第2ステップの病変の質的評価の目的は,第1ステップで検出された疑わしい病変の治療適応と治療方法を決定することにある.したがって,腫瘍・非腫瘍の鑑別に加えて,UC関連腫瘍と散発性腫瘍の鑑別,病変境界の確認,dysplasiaのgrade・癌浸潤深度の予測,分化度の予測など,いくつかのポイントを考慮する必要がある.

Figure 8 

潰瘍性大腸炎患者の病変に対する診断・治療フローチャート.

Ca,cancer;UCAN,ulcerative colitis associated neoplasia.

今後の方向性

UC患者に発生する病変の内視鏡的質的評価は,いくつもの内視鏡診断技術が登場した現在でも困難である.このシステマティック・レビューを通じて,いくつかの課題が提起された.

まず,腫瘍・非腫瘍の鑑別は,精度および観察者間一致率の向上が課題である.Hataら 43がUC患者の再生粘膜に腫瘍性pit patternの出現を示唆して以降,pit pattern診断を確立した本邦を中心に,UC患者への適応を求め修正されたpit pattern所見が提唱されている.

Kudoら 45は,UC関連腫瘍のpit patternの特徴として,pitの極性の消失,密度の低下,開口部の開大を提案した.Nishiyamaら 46は,密度が高く,辺縁不整なpitが腫瘍性病変でより高頻度に認められることを示唆した.Shinagawaら 47は,切除検体の実体顕微鏡観察から,Ⅳ型ピットパターンの特殊な形態であるpine-coneとvilliパターンがUC関連腫瘍に多く認めることを報告した.しかし,残念なことにこれらの修正されたpit pattern分類の有用性は,いずれも他施設など外部環境では検証されていない.

実際,UC患者の病変の特徴を組織学的に確認する際には,病理医は構造異型・細胞異型と免疫染色(主にp53染色)の所見を総合的に評価する 48),49.最近提唱されたKudoらによるEC-IN-PIT診断 20では,表面の構造異型と細胞異型の両方が評価対象に含まれているが,第3の内視鏡所見として免疫染色に対応する内視鏡所見を見出すことが求められる.

次に,精度の高い診断法やモダリティの開発と併せて,その診断法が適応可能な病変と適応が難しい病変を区別することも必要である.Efthymiouら 23は,前向きに低倍率(1.5倍)拡大のNBI下でpit patternの精度を検証した結果,背景粘膜に炎症が残存している病変の精度(44%)は,寛解粘膜に発生した病変の精度(75%)より低いことを指摘している.Kudoら 20は,背景粘膜に炎症活動性(Mayo 内視鏡スコア2-3)が残存しているとEC-IN-PIT法の特異度は68%に過ぎないことを示した.これは,炎症性変化による構造異型や細胞異型が,腫瘍性変化と鑑別困難であるためと考察された.汎用性のある診断法が理想であるのは疑いないが,高精度な診断法を開発するためには,まず適応病変や環境を限定することが必要かもしれない.また,診断法の普及には,検査者間一致率の向上も不可欠である.疑わしい病変に生検を採取するかの実施意図に関する検査者間一致率(Fleissʼ kappa 0.17) 39や,大腸腫瘍の質的評価に最も広く用いられている分類であるpit patternの検査者間一致率(Fleissʼ kappa 0.28) 26でさえ残念ながら不十分な結果である.

近年,検査者間一致率の課題を克服するために,人工知能(AI)を搭載したコンピュータ支援診断の活用が注目されている 50),51.本研究の対象期間において,UC患者に適応したAIシステムの報告はないが,非UC患者向けに開発されたCADをUC患者で用いた症例報告がいくつかある.Fukunagaら 52は,EC(CF-H290ECI;Olympus Corp.)で得られた画像から抽出した特徴量を基に,2分類(腫瘍・非腫瘍)予測を出力するAI搭載コンピュータ支援診断システム(EndoBRAIN;サイバネットシステム,東京,日本)を用いて,UC関連腫瘍を診断した経験を報告した.Maedaら 53は,別のAI搭載コンピュータ支援検出システム(EndoBRAIN-EYE;サイバネットシステム)で,表面隆起型のUC関連腫瘍を検出した経験を報告している.これらの知見からは,非内視鏡専門医がUC患者の腫瘍性病変を検出するためのAIの可能性が期待される.

第二に,散発性腫瘍とUC関連腫瘍の鑑別も困難である.このトピックに関しては明確な定義は組織学的にも確立されていない.しかし,治療方針の決定には重要な要素である.近年,積極的な内視鏡治療が,散発性腫瘍のオプションとしては受け入れられつつあるが,UC関連腫瘍に対してはまだ議論が必要である 42),54)~58

また,UC患者における内視鏡的切除術の今後の発展に影響を与える課題として,病変のdemarcation line,深達度,分化度の術前内視鏡診断が挙げられる.これまでUC関連病変のdemarcation lineの内視鏡的評価を検証した報告はない.Matsuiら 57は内視鏡的粘膜下層剝離術の成績を評価し,29%(5/17)の症例で水平断端が陽性であった.これは主に表面隆起性病変周囲のdysplasiaの境界が認識できなかったためと考察している.UC関連腫瘍と同様に炎症性発癌とされる胃癌の研究では,拡大NBI診断の登場により,demarcation lineの診断能が飛躍的に向上したことが示されている 59),60.今後,UC関連腫瘍のdemarcation lineを高精度に決定するための,先進内視鏡技術を用いた診断ストラテジーの開発が求められる.

現在まで,UC患者に発生した病変の深達度に関して内視鏡的治療の適応について,確定された基準はない.そもそもUC関連腫瘍と散発性腫瘍の鑑別が困難なため,一部の施設では,一般集団のCRCガイドラインに従い,粘膜下層高度浸潤癌は適応外病変と考えられている 61),62.Kawasakiらによるレビュー 63では,VI型高度不整またはVN型pit patternと The Japan NBI Expert Team(JNET)分類Type3はともに粘膜下層高度浸潤癌への100%の特異度を示す所見であることが示唆された 11.しかし,感度はそれぞれ50%と25%に過ぎない.非UC患者に対する診断法(pit patternやJNET)をUC患者に適用しても,有用な症例は限定的であり,内視鏡的治療適応病変と非適応病変を十分に区別できない.

最後に,未分化・低分化型癌を同定するための診断戦略が必要である.大腸未分化・低分化型腺癌は希少であるが,UC患者における発生率は比較的高い 64.非UC患者ではリンパ節転移のリスクが高いという点で,未分化・低分化型腺癌は内視鏡的治療の適応外病変とされている 61),62.しかしながら,病変内の不均一性により,組織学診断に基づく術前診断でも生検採取部位によっては確認が困難である 64.したがって,まずは未分化/低分化型腺癌の内視鏡的所見を明らかにし,最適な生検部位を特定することが必要である.Ohmiyaら 65は,症例集積研究で,CLEで観察されるdark trabecular architectureが低分化腺癌の特異的所見である可能性を報告している.今後は外部環境での検証や,より時間的・費用的負担の少ない診断法の開発が求められる.

近年の内視鏡治療の進歩に伴い 42),51)~55),63),66,UC患者においても内視鏡的切除術が臨床導入されつつある.しかし,このシステマティック・レビューにより,術前の内視鏡的診断法がまだ不十分であることが明らかになった.術前診断が不十分なまま内視鏡治療の導入が進むと,有害事象や不十分治療・再発のリスクが高まることが危惧される.そのため,現在,内視鏡診断技術を駆使し,生検診断の限界を補う適切な術前診断ストラテジーの確立が求められている.今後の研究成果が期待される.

本研究の主なリミテーションは,研究デザイン,患者や病変の選択基準,手技の設定に違いがあり,研究間に著しい異質性が存在したため,メタ解析を行っていないことである.

Ⅴ 結  語

UC患者の大腸病変の質的診断は,最新鋭の内視鏡診断技術を用いてもなお困難であり,解決すべき課題が多く残されている.これまでも,消化器領域における内視鏡診断学は,内視鏡治療法の進歩と共に補完的に発展してきた.SCENICコンセンサスが発表されて以降,UC患者における内視鏡的切除術の臨床への導入が進みつつある.今こそ,UC関連大腸病変の内視鏡的診断法の改善に取り組むべき時である.

 

資金調達:本研究は,日本学術振興会科研費(補助金番号JP20K17002)の支援を受けています.

利益相反:前田康晴は,日本学術振興会から助成を受けた.工藤進英,森 悠一,三澤将史はオリンパス株式会社から講演料を受け取った.根本哲生はオリンパス株式会社から研究助成を受けた.三澤将史はDigestive Endoscopy誌のAssociate Editorである.他の著者は本研究に関連する利益相反なし.

補足資料

Appendix S1 PRISMA 2020 チェックリスト.

Appendix S2 PubMed による MEDLINE の検索式.

Appendix S3 Cochrane LibraryによるCENTRALの検索式.

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2022)34, 1297-310に掲載された「Use of advanced endoscopic technology for optical characterization of neoplasia in patients with ulcerative colitis: Systematic review」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
© 2023 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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