GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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Prolonged patency of fully covered self-expandable metal stents with an externally anchored plastic stent in distal malignant biliary obstruction 1).
[in Japanese]
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2023 Volume 65 Issue 9 Pages 1498

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【背景】悪性遠位胆管閉塞に対するフルカバー付き金属ステント(fully covered self-expandable metal stents:FCSEMSs)は汎用されている.本研究目的は悪性遠位胆管閉塞に対するFCSEMS留置時のアンカリング用プラスチックステントの有用性を検討することである.

【方法】多施設コホート研究により,悪性遠位胆管閉塞に対するFCSEMS留置時にアンカリングプラスチックステント追加留置の有無の有用性を後方視的に比較した.アンカリングの方法は,選択的胆管挿管後に2本のガイドワイヤを留置した後,7-Frのダブルピッグテールプラスチックステント(double-pigtail plastic stent:DPPS)を先行留置させた.次いでFCSEMSをside-by-sideに留置した.DPPSの近位端はFCSEMSを跨ぐように,10cm以上のステントを選択した.FCSEMS長は内視鏡医が選択した.

【結果】185例中120例がDPPS留置の併施(アンカリング群),65例がFCSEMS単独留置(単独群)であった.基礎疾患は両群ともに膵癌がもっとも多かった(72.5 vs 80%,NS).FCSEMS長は5 or 6cmが多く,ステント開存期間中央値はアンカリング併施群で単独群と比較して有意に延長した(342日 vs 240日,P=0.04).ステント迷入はアンカリング併施群で単独群と比較して有意に少なかった(10.8% vs 27.7%,P=0.01).ステント閉塞や偶発症(膵炎,胆嚢炎など)は両群間で有意差は認められなかった.

【結語】DPPSによるアンカリングはシンプルな方法でありながらFCSEMSの開存期間を延長させるだけでなく,偶発症も増加しなかった.FCSEMSの迷入リスクを減少させる可能性も示唆された.

《解説》

本研究ではDPPSによるFCSEMSのアンカリング効果の有用性が明らかとなった.両群ともにEST施行や化学療法の施行の有無に有意差はなかった.多変量解析によるステント閉塞の危険因子は,男性とDPPSを併施していないことが抽出された.Recurrent biliary obstruction(RBO)の原因は閉塞,迷入,逸脱が挙げられるが,DPPSにより少なくとも迷入の抑制効果があることが検証された.アンカリング群ではFCSEMSが迷入した例でもDPPSは留置した状態を大部分の例で維持されていたことがtime to RBO(TRBO)に寄与していた.なお,ステント径については具体的に記載されていなかったが.BONA stent(Standard Sci Tech, Seoul, Korea)が使用されており,ラインナップからは8 or 10mmが使用されたことがうかがえる.

本研究は既報よりも迷入率が高かった.著者らはステント特性に起因していると考察しているが,使用したステント長が5 or 6cmということも考慮する必要がある.短いステント長のkinkingをDPPSにより修正させることは可能かもしれないが,肝門部領域胆管のやや乳頭側から乳頭部を十分に跨ぐような長めのFCSEMSを選択すれば,遠位胆管内でのkinkingやshorteningによる迷入を防ぐことができる可能性はある.なお,著者らのグループは本研究の他,FCSEMS内部にDPPSを留置する無作為化比較試験 2によりDPPSの有用性を報告している.今回と基本的なコンセプトは類似している.

本邦の膵癌診療ガイドラインでは切除不能膵癌に対してはCSEMSが推奨されている.膵癌以外の疾患においてもCSEMSはuncovered SEMS(USEMS)と同等以上の成績である.しかし,CSEMSは胆管壁に固定されていないため,迷入や逸脱が生じやすくなるが,DPPSは迷入・逸脱対策の1つとして有望な選択肢と考えられる.

遠位胆管閉塞をきたす疾患の約10%は良性疾患とされており,診断困難例が一定数存在する.SEMSはFCSEMS,Partially CSEMS(PCSEMS),USEMSの3種類が選択可能であるが,このような例に対して,USEMSは抜去困難,PCSEMSは抜去困難な可能性があるため,安易な使用は憚られる.CSEMSは留置時や留置後の位置調整が容易であり,長期間留置の状態でなければ閉塞時の抜去は可能なことが多い.DPPSがTRBO向上に寄与するといった結果は,今後の日常診療の一助となる.ただし,査定対象となる可能性が高く,注意を要する.

文 献
 
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