GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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EFFICACY OF ENDOSCOPIC FILLING WITH POLYGLYCOLIC ACID SHEETS AND FIBRIN GLUE FOR ANASTOMOTIC LEAK AFTER ESOPHAGEAL SURGERY
Hiroyuki HATAMORI Toshiyuki YOSHIOJunko FUJISAKI
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2024 Volume 66 Issue 2 Pages 172-180

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要旨

食道癌術後縫合不全は食道癌手術の大きな合併症の1つである.まずは抗菌薬投与,創部のドレナージによる保存的加療が行われるが,瘻孔形成を来し治療に難渋する症例もしばしば経験する.われわれは食道癌術後縫合不全の瘻孔形成に対してポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA)シートとフィブリン糊による内視鏡的瘻孔充填術を施行しており,良好な成績を得ている.PGAシートを瘻孔に充填する際に,PGAシートを事前にフィブリノゲン溶液に浸してから充填し,最後にトロンビン溶液を散布することで高い瘻孔閉鎖率が得られており,手技の重要なポイントと考える.

Abstract

Postoperative anastomotic leakage is a major complication of esophageal cancer surgery. To resolve the leakage, conservative management is initially attempted. This entails the administration of antibiotics and wound site drainage. However, closure of the fistula is often difficult to achieve, necessitating further treatment. Endoscopic fistula occlusion using polyglycolic acid (PGA) sheets and fibrin glue has yielded us favorable outcomes in the management of postoperative anastomotic leakage. A crucial aspect of the technique involves pre-soaking the PGA sheets in fibrinogen solution before using them to fill the fistula, subsequently thrombin solution is applied, resulting in a high fistula closure rate.

Ⅰ はじめに

縫合不全は食道癌術後の重大な合併症の1つである.食道癌術後の縫合不全の発生率は約2~24%とされ 1)~5,一度縫合不全を来すと縦隔炎や膿胸,敗血症を合併し,入院期間の延長や死亡率の増加につながる 6.縫合不全の治療としては,まず初めに抗菌薬投与やドレーン留置による保存的加療が行われる.保存的加療で改善を認めない場合には再手術が必要となることがあるが,手術リスクも高く再手術を回避するために種々の試みが行われており,自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)を用いた内視鏡的ステント留置術やOTSC(Over the scope clipping)を使用した瘻孔閉鎖術といった内視鏡的治療の有効性が報告されている.しかし,SEMSは逸脱や穿孔,狭窄といった処置に伴う有害事象の発生率が28~46%と比較的高いとされており 7),8,またデバイスが高額であるにもかかわらずそもそも本邦では保険許可されておらず自由に使用出来る状況にない.一方,OTSCは安全かつ有効な方法であるが,瘻孔形成や重度の繊維化を伴う症例に対しては有効性が低いとされている 9),10

近年,その他の内視鏡治療として,消化管瘻孔に対するポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA)シートとフィブリン糊を用いた内視鏡的閉鎖術の有効性が報告されており 11)~13,当院でも食道癌術後縫合不全による瘻孔形成に対してPGAシートとフィブリン糊を用いた内視鏡的瘻孔充填術を第一選択として行っている.本稿では内視鏡的瘻孔充填術の実際の手技について解説する.

Ⅱ PGAシートとフィブリン糊について

PGAシートとは,PGAを材料とした吸収性組織補強剤で,ネオベール(グンゼメディカル株式会社)の商品名で販売されている.創傷部位にPGAシートを貼付すると,炎症細胞や線維芽細胞がPGAシートの繊維周囲に浸潤し肉芽組織を形成する.そして,シートが分解される過程で肉芽組織の繊維化が進み,生体組織が再生されることで組織修復の足場となる.シートは加水分解により水と二酸化炭素に分解され,生体内で約15週をかけて徐々に吸収される.シートの大きさは50×50mm,100×50mm,100×100mm,150×150mm,厚さは0.15mm,0.3mm,0.4mm,0.5mmと様々なサイズ展開があり用途に合わせて選択するが,シートが厚くなるにつれて周辺組織との接着力が低下する傾向があるとされ,われわれは大きさ100×50mm,厚さ0.15mmの最も薄いシートを使用している.近年では,ネオベール ナノという従来のネオベールと比較して繊維が細く繊維間の空隙が小さい,かつ厚みが薄いPGAシートが発売されており,より吸収が早く組織反応を低減させることが可能とされている.われわれはネオベール ナノの使用経験はないが,PGAシートをフィブリン糊と併用する場合はフィブリン糊をシートに浸透させる必要があるため,シート繊維間の空隙が大きい従来のネオベールの方が望ましいのではないかと考えている.

フィブリン糊は,生体内で起こる凝固反応を利用した血液製剤であり,ベリプラストPコンビセット組織接着用(CSLベーリング株式会社)やボルヒール組織接着用(KMバイオロジクス株式会社)の商品名で販売されている.A液(フィブリノゲン溶解液)とB液(トロンビン溶解液)を混合することで使用するが,混合した溶液の中で以下の反応が起こる.A液とB液が混合されると,トロンビンの存在下でフィブリノゲンはフィブリンに変換される.また,トロンビンはフィブリノゲン溶解液中に存在する第XⅢ因子を活性化し,カルシウムイオンの存在下でフィブリン鎖の重合と架橋を促進し,長いフィブリン鎖を形成してゲル状に変化して接着作用を有する.また,血栓を安定化させ線維芽細胞の増殖と肉芽組織の形成を引き起こし,最終的に生体内で分解吸収される.

このように,PGAシートとフィブリン糊はいずれも組織の接着・閉鎖や止血に利用される吸収性材料である.フィブリン糊は1分ほどで硬化し36~48時間で強固に固まる性質があり,PGAシートの上からフィブリン糊を散布することでシートの組織への固定が可能となる.主に口腔外科や呼吸器外科,消化器外科手術での縫合部や欠損部の補強,空気漏れ防止のために使用されているが,内視鏡治療の分野においてもESD後出血や狭窄の予防,穿孔等の合併症に対する使用の有用性が報告されている.

Ⅲ 手技の解説

<適応>

当院での食道癌術後の縫合不全に対する治療ストラテジーとしては,縫合不全を認めた場合にはまずは抗菌薬投与,術中に留置したドレナージチューブによる経皮的ドレナージを行う.これらの加療を継続しても縫合不全が改善しない場合に,縫合不全による瘻孔形成に対してPGAシートとフィブリン糊による内視鏡的瘻孔充填術を行っている.

<術前準備>

実際の使用方法について解説する.準備する物品は,上記のPGAシートとフィブリン糊に加えて生検鉗子と散布用チューブのみである.PGAシートを貼付した後に,散布チューブを用いて,A液(フィブリノゲン溶液),B液(トロンビン溶液)の順に散布を行うのが一般的であるが,A液とB液をどの様にPGAシートに散布するかについては様々な報告がある.われわれは,PGAシートとフィブリン糊を使用する際に,PGAシートの上からA液,B液を順に散布するのではなく,初めにPGAシートをA液に浸しておき,A液に浸されたPGAシートの留置が完了した後で,最後にB液を散布するという方法を採っている.

B液の散布には,局注針の先端をはさみでカットしたものを使用している.瘻孔にB液の散布を行う場合,瘻孔周囲に溶液を散布する必要はなく瘻孔垂直方向深くまでいかにB液を浸透させられるかが重要である.そのため垂直方向にB液を素早く散布出来る口径の広いチューブが望ましく,霧状に噴射する散布チューブは手技に適していないと考えている.また,散布チューブからA液とB液を注入する場合,A液を散布した後にB液を散布する際にチューブ内で凝固反応が起こりチューブ閉塞を来してしまうため,基本的に散布チューブは2本用意する必要がある.しかし,われわれは事前にPGAシートをA液に浸しておくためB液のみの散布でよく,チューブ1本で手技を行っている.また,CSLベーリング株式会社からシースが三又でA液とB液が混入しないように工夫されているフィブリン糊注入用の散布チューブが販売されておりこちらを使用する方法もあるが,下部消化管内視鏡では長さが足りず上部消化管内視鏡を用いた処置にしか使用出来ない点に注意が必要である.

PGAシートの準備だが,まず内視鏡で瘻孔の大きさを確認した後にPGAシートを瘻孔の大きさに合わせて短冊状に小さく切る(20×10mmや25×10mmなど)(Figure 1-a).次に,A液を小さく切ったPGAシートの上に少量ずつ滴下する.PGAシートには防水機構があり単に滴下しただけではシートがA液を弾いてしまうため,シートの上にA液を滴下した後は上から注射針のキャップなどで複数回叩くことで,シートがA液に十分浸された状態にしておく(Figure 1-b,c).これでPGAシートの準備は完了である.

Figure 1 

a:短冊状にカットしたPGAシート.

b:PGAシートの上にフィブリノゲン溶液を滴下し,上から注射針のキャップなどで複数回叩くことでシートが十分フィブリノゲン溶液に浸された状態にする.

c:フィブリノゲン溶液を滴下しただけのPGAシート(図上4枚)と,フィブリノゲン溶液に十分浸された状態のPGAシート(図下3枚).

d:短冊状にカットしたPGAシートの端を生検鉗子で把持する.

e:PGAシートの余った部分を内視鏡の側面に貼り付けておく.

<充填手技>

次に充填方法だが,まず体外で内視鏡から生検鉗子を出して,A液に浸された短冊上のシートの断端を把持する(Figure 1-d).シートはA液に浸された状態で粘着性があるため,生検鉗子で把持されていない余った部分は内視鏡の側面に貼り付けておく(Figure 1-e).そうすることで,内視鏡画面にシートが映り込んで視野が妨げられることなく,瘻孔部まで内視鏡を挿入することが出来る.多くは食道亜全摘後であり,食道入口部から吻合部まで距離が短くオーバーチューブの効果的使用は難しい.そのため内視鏡の挿入は慎重に行う.瘻孔部まで到達した後は,シートを瘻孔部に充填していく.充填の際のポイントは,瘻孔部を内視鏡鉗子口の位置と同じ7時方向に持ってくるように内視鏡を回転させて視野を作ることである(Figure 2-a).シートを充填する際には,出来るだけ瘻孔の深部に至るまで1枚ずつシートを留置している.その際に生検鉗子でシートを瘻孔深部へと押し込む操作が必要なため,生検鉗子が出る方向と瘻孔部の方向が合わないと,シートを深く押し込めず浅い部分への留置となってしまい,シートがすぐに脱落してしまう.また鉗子を瘻孔に挿入すること自体も7時方向に瘻孔を持ってこないと難しいことが多い.シートの繊維が鉗子に絡みやすいため,シートを把持したまま鉗子を瘻孔深くまで挿入し鉗子を開いてシートを留置しようとしても,シートが鉗子に引っかかり鉗子を引いた時にシートまで一緒に引けて瘻孔部から出てきてしまい,上手く留置出来ないこともある.その場合には瘻孔の手前で一旦鉗子からシートを離し,鉗子を閉じた状態でシートを瘻孔深部まで押し込むと瘻孔内にシートを上手く留置出来ることが多い.十分深くまでシートを留置出来たら内視鏡を一旦抜去し,同様の作業を行い,1枚ずつ瘻孔にシートを充填していく.瘻孔が完全に充填されれば,最後に散布チューブを用いて充填したシートにチューブをしっかりと押し付けながらB液を散布する(Figure 2-b).これが内視鏡的瘻孔充填術の一連の流れである.シートをどの大きさに切るか,どれくらい折りたたんでから留置するかは,食道入口部からの距離,方向などの瘻孔の位置や安定して作業を行える空間の大きさによって決めている.

Figure 2 

a:充填操作は瘻孔部を内視鏡鉗子口の位置と同じ7時方向に持ってくるように内視鏡を回転させて視野を作る.

b:散布チューブを充填したシートに垂直方向にしっかりと押し当てて,速やかにトロンビン溶液を散布する.

<術後評価>

内視鏡的瘻孔充填術が奏効すれば,ドレーンからの廃液が減少,消失する.その段階で,経口造影剤を用いた透視造影検査で瘻孔閉鎖の判定を行っている.経口摂取の開始時期を判断するための内視鏡検査は原則行っておらず,透視造影検査でリークが消失していれば,外科が全身状態を考慮の上,経口摂取の開始時期を決定している.1度の内視鏡的瘻孔充填術で瘻孔閉鎖が得られなければ,充填術を繰り返し施行する.

Ⅳ 充填方法の比較

今でこそ,PGAシートを瘻孔の大きさに合わせて切った後にまずはシートをA液に浸し,浸したシートを瘻孔に充填した後に最後にB液を散布しているが(前浸漬法),当院でも以前は,まず瘻孔にPGAシートを充填した後に,最後に散布チューブを充填したシートに押し付けてA液,B液の順に散布を行っていた(従来法).そこで従来法と前浸漬法の有効性の比較を行うため,2015年9月から2020年1月までにがん研有明病院で食道術後縫合不全に対してPGAシートとフィブリン糊による内視鏡的瘻孔充填術を行った連続14症例(前浸漬法10例,従来法4例)について後方視的検討を行い報告した 14.14例の平均年齢は64±9歳,瘻孔径の中央値は3.5mm(2~10mm),手術から内視鏡的瘻孔充填術までの期間の中央値は18日(14~30日)であった.全例において,手術時に経皮的ドレナージチューブを吻合部周囲に留置し,初回の内視鏡的瘻孔充填術時にもチューブは留置したままであった.従来法の1例,前浸漬法の1例は内視鏡的瘻孔充填術の前に瘻孔粘膜のアルゴンプラズマ凝固(argon plasma coagulation:APC)焼灼術を併用したが,その他の12例では内視鏡瘻孔充填術以外の内視鏡的処置は行わなかった.

結果は,内視鏡的瘻孔充填術により瘻孔閉鎖は10例(71%)で得られた.成功した10例では処置の回数の中央値は1回(1~3回),最初の処置から臨床的瘻孔閉鎖(リークなく経口摂取が可能となる状態)までの期間の中央値は7.5日(4~36日)であった.失敗例4例のうち,2例は外科的瘻孔閉鎖術を施行し瘻孔閉鎖が得られたが,残りの2例は全身状態が不良で手術が行えず,瘻孔閉鎖は得られなかった.瘻孔閉鎖率は従来法では25%であったのに対して,前浸漬法が90%と有意に成功率が高かった(P<0.041).処置に伴う有害事象は1例も認めなかった.

前浸漬法と従来法の違いは,PGAシートとフィブリン糊の使用方法の違いである.肺の空気漏れの修復に関する研究において,PGAシートとフィブリン糊の効果的な使用方法について検討されている 15)~17.これらの検討では,先にフィブリノゲン溶液を肺組織に散布した後にPGAシートを置き,上からトロンビン溶液を散布する方が,単に肺組織の上にPGAシートを置き,上からフィブリノゲン溶液とトロンビン溶液を散布するよりも,肺組織とPGAシートの間により強い接着強度が得られていた.組織学的評価では,前者の方法では,フィブリン糊が肺組織に浸透し,PGAシートと肺組織の橋渡しの役割を果たしている一方,後者ではフィブリン糊が肺組織に浸透していなかった.この結果は両者の接着強度の違いを示しており,PGAシートが周辺組織と良好な接着強度を得るためには,フィブリノゲン糊をPGAシートにのみ散布するのではなく,PGAシートと周辺組織の両方にフィブリン糊をしっかりと浸透させ,フィブリン糊にPGAシートと周辺組織の橋渡しをさせることが重要なポイントになると考えられる.

縫合不全に対する内視鏡的瘻孔充填術の場合,瘻孔はある程度の深さを持った底なしの筒状であることを考慮する必要がある.フィブリノゲン溶液をPGAシートの留置前に予め散布し,PGAシート留置後にトロンビン溶液を散布する方法では,瘻孔に溶液が留まらずフィブリノゲン溶液を瘻孔周囲の組織とその後に充填するPGAシート全体に接着させるのは困難と考える.また,従来法のようにPGAシートを充填してから,上からフィブリノゲン溶液,トロンビン溶液の順に散布する場合,PGAシートを1枚留置する場合と異なり,シートは瘻孔の中で積み重なり厚みを持った状態であり,シートの上部から最深部,そして周辺組織にまでフィブリノゲン溶液を浸透させ,その後にトロンビン溶液を同様に浸透させるのは困難と考えられる.そこで,PGAシートを予めフィブリノゲン溶液に浸漬させてから充填することで,シート全体と瘻孔周囲の組織にフィブリノゲン溶液を密着させることが可能となり,これにより従来法より高い瘻孔閉鎖効果が得られたと考えられる.また,トロンビン溶液を散布する場合も,シート全体にトロンビン溶液が浸透するように散布チューブをしっかりとPGAシートに押し当てて,瘻孔内の深部までトロンビン溶液を素早く浸透させることも成功率を高める上で重要なポイントと考えられる.

Ⅴ 症  例

実際の症例を2例提示する.

<症例1>

症例は62歳男性.食道胃接合部癌に対して術前補助化学療法後に食道切除術,胸腔内胃管再建術を施行した.術後よりドレーンからの排液が減少せずPOD 10に透視造影検査で吻合部周囲へのリークを認め縫合不全と診断した.POD 14に内視鏡的瘻孔充填術を施行し,吻合部肛門側左壁側に4mm大の瘻孔を認めた(Figure 3-a,b).20×10mmにカットしたPGAシートをA液に浸した後に合計2枚留置し,B液を散布し終了とした(Figure 3-c).充填術後3日目に透視造影検査を施行し瘻孔の閉鎖を確認,充填術後10日目より経口摂取開始とした.1年後の内視鏡フォローでは,瘻孔は消失しており吻合部の狭窄も認めなかった(Figure 3-d).

Figure 3 

a:吻合部左壁側に瘻孔形成を認める.

b:瘻孔正面視.

c:内視鏡的瘻孔充填術直後.

d:1年後の内視鏡フォローでは瘻孔は消失していた.矢印は瘻孔があった部位を示す.

<症例2>

症例は65歳男性.胸部食道癌に対して術前補助化学療法後に食道亜全摘術,胸骨後胃管再建術を施行した.術後よりドレーンからの排液が減少せず皮膚瘻形成を認め,保存的加療を行うも瘻孔閉鎖が得られず,POD 18に内視鏡的瘻孔充填術を施行した.内視鏡所見では,吻合部左壁側に2mm大の瘻孔を認めた(Figure 4-a,b).10×10mmにカットしたPGAシートをA液に浸した後に1枚留置し,B液を散布し終了とした(Figure 4-c).充填術後3日目に透視造影検査を施行し瘻孔の閉鎖を確認,充填術後4日目より経口摂取開始とした.1年後の内視鏡フォローでは,瘻孔は消失しており吻合部の狭窄も認めなかった(Figure 4-d).

Figure 4 

a:吻合部左壁側に瘻孔形成を認める.

b:瘻孔正面視.

c:内視鏡的瘻孔充填術直後.

d:1年後の内視鏡フォローでは瘻孔は消失していた.矢印は瘻孔があった部位を示す.

Ⅵ おわりに

PGAシートとフィブリン糊を用いた内視鏡的充填術の実際と充填のコツについて具体的に記述した.本手技はクリップやステントなどの鋭利なデバイスが不要で,瘻孔閉鎖の内視鏡治療の中では偶発症のリスクも低く安全で有効性の高い治療であると考える.われわれの検討では,PGAシートを事前にフィブリノゲン液に浸しPGAシートの充填後にトロンビン溶液を散布することで高い瘻孔閉鎖率が得られたが,瘻孔を来した食道術後症例においてPGAシート充填を試みる最適なタイミングや,ステントやOTSCなど他の内視鏡治療との有効性の比較については,今後さらなる検討が必要と考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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