GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ESSENTIALS AND TIPS FOR EUS-FNA FOR GASTRIC SUBEPITHELIAL LESION
Minami HASHIMOTO Takuto HIKICHIJun NAKAMURA
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2024 Volume 66 Issue 2 Pages 181-190

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要旨

胃粘膜下病変(subepithelial lesion:SEL)から病理検体を得る手段としてEUS-FNAが普及している.胃SELのEUS-FNAは,gastrointestinal stromal tumor(GIST)などの間葉系腫瘍が主たる穿刺対象であるため,免疫染色を行うための充分量の検体が必要である.しかし,胃SELのEUS-FNAは,穿刺時に胃壁と共に病変が逃げてしまうことや病変自体が硬く穿刺が困難であるなどの要因で,検体採取が難しい場合がある.したがって,手技の工夫が重要であり,door-knocking methodやfanning techniqueといった基本的穿刺法のほか,スロープル法やwet suction法という新たな吸引法が注目されている.しかし,これらの方法でも胃SELから充分量の検体を採取することは難しいことが課題であった.そこに登場した革命は,FNB(fine-needle biopsy)針と直視コンベックス型EUSスコープである.FNB針は,FNA針の先端の形状を工夫することで量と質のよい検体の採取に貢献できるようになり,近年では20mm未満のSELにおいても,良質な検体採取が報告されている.また,直視コンベックス型EUSスコープは,病変に近接することが容易であるため,これまで検体採取に難渋していた胃体部大彎の病変においても有用性が報告されている.なお,rapid on-site cytological evaluation(ROSE)の併用は,評価可能な検体が採取されているかの判断に有用であるが,FNB針を用いた場合にはROSEを行わなくても充分量の検体が採取できるとの報告もある.今後も機器や手技を工夫することで,胃SELにおけるEUS-FNAの診断能が向上することが期待される.

Abstract

EUS-FNA is now widely performed to obtain pathological specimens of gastric subepithelial lesion (SEL). EUS-FNA of gastric SEL is mainly performed on mesenchymal tumors such as gastrointestinal stromal tumors (GIST), and requires a sufficient size of specimen for immunohistochemistry. However, specimens from the gastric SEL may be difficult to obtain using EUS-FNA for the following reasons: the lesion often escapes with the gastric wall during the puncture, or the lesion itself is hard and difficult to puncture. Therefore, it is important to devise new aspiration methods such as the slow pull technique and wet suction technique, which have been gaining attention in addition to basic puncture methods such as the door-knocking method and fanning technique. Despite these methods, obtaining a sufficient amount of specimen of gastric SELs has been difficult. Recently, the fine-needle biopsy (FNB) needle and the forward-viewing linear echoendoscope have appeared as revolutionary developments. The FNB needle is a needle with a tip shape designed to enable collection of specimens of adequate quantity and quality. This has recently led to reports that sufficient quantity and quality specimens could be obtained even in SELs of less than 20 mm. In addition, the forward-viewing linear echoendoscope allows for the lesion to be easily approached. Therefore, its usefulness has been reported even for lesions in the greater curvature of the gastric body, where specimen collection has been difficult until now. Furthermore, rapid on-site cytological evaluation (ROSE) is useful in determining whether evaluable specimens have been collected, but it has been reported that a sufficient amount of specimen can be collected without ROSE when an FNB needle is used. It is expected that the diagnostic ability of EUS-FNA in gastric SEL will be improved by further development of equipment and techniques.

Ⅰ はじめに

胃粘膜下病変(subepithelial lesion:SEL)には,超音波内視鏡検査(EUS)のみで診断可能な脂肪腫や囊胞のほか,異所性膵やグロームス腫瘍,消化管間質性腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST),平滑筋腫,神経鞘腫など,様々な疾患が含まれる.これら胃SELの中でも,固有筋層内のカハール介在細胞に由来するGISTは最も頻度が高く,悪性ポテンシャルを有していることから,その病理学的診断が重要である.GISTは,増大速度は緩徐であるが,内視鏡所見のみで悪性化ポテンシャルを評価することは難しい.GIST診療ガイドライン第4版 1では,20mm以上のSELに対して超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を施行すべきと述べているが,病変径が20mmより小さくても肝転移をきたしたGISTの症例も報告されている 2.したがって,穿刺が可能であれば,20mmというサイズにはこだわらずにEUS-FNAで確定診断を得て,早期に腫瘍切除をすることが望ましい.

胃SELに対するEUS-FNAの正診率は59.9-98%と,報告によりバラツキがある 3)~6.一般的に,膵腫瘍やリンパ節などの固定された病変と異なり,胃SELは穿刺時に消化管壁との可動性を有することが多く,神経鞘腫など細胞密度の高い腫瘍は硬い病変も多いため,穿刺が難しいとされている 7.一方,近年は直視コンベックス型EUSスコープの登場や,fine-needle biopsy(FNB)針と呼ばれる新しい穿刺針の登場で,20mm未満のSELであっても診断率が向上している 8.本稿では,EUS-FNA手技の基本とコツ,新たなEUSスコープや穿刺針での経験について解説する.

Ⅱ EUS-FNA体制

1.人員配置

実際の風景をFigure 1に示す.当施設でのEUS-FNAは,検査施行者(医師),介助者(医師)2名,バイタルを測定する看護師,rapid on-site cytological evaluation(ROSE) 9),10の検体処理をする臨床検査技師,細胞診標本の確認を行う細胞検査士で行っている.介助者医師は,鎮静の管理を行う者1名のほか,もう1名がスタイレットの抜去や陰圧をかける操作,病変の描出が安定しない時にはスコープを保持する役割を担う.なお,検体処理担当の臨床検査技師は内視鏡診療部(内視鏡室)所属で,細胞検査士の資格を持っていない.したがって,ROSEの標本を作成した時点で,病理部から細胞検査士の資格を持つ臨床検査技師に内視鏡診療部へ来ることを依頼し,細胞診の鏡検を行ってもらっている.

Figure 1 

EUS-FNAの風景.

a:術者のほか,介助者(医師),バイタル測定や薬物投与をする看護師を配置している.

b:スコープのひねりを加えている場合には,介助者は術者と同じ視野で押さえられる方向から,スコープをしっかりと保持する.

2.鎮静

EUSスコープは径が太く,EUS-FNAの手技は長時間かかる.穿刺回数が多くなった場合には,1時間かかる症例もある.そのため,患者の苦痛を軽減させるため,鎮痛薬と鎮静薬を使用した鎮静下で手技を行っている.鎮痛薬はペンタゾシン15mgを使用し,鎮静薬は主にプロポフォールを使用している.鎮静の深さは,Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)で4から5の深い鎮静状態とすることが多い.

3.使用機器

EUSスコープは,斜視コンベックス型EUSスコープであるTGF-UC260P,TGF-UCP240(ともにオリンパス社製),あるいは直視コンベックス型EUSスコープであるTGF-UC260J(オリンパス社製)を使用し,観測装置にはEU ME2あるいはEU-EM3(ともにオリンパス社製)を用いている.

穿刺針はFNA針であるEchoTip Ultra(COOK社製),Expect(Boston社製),EZshot(オリンパス社製)に加え,先端形状を工夫することで質と量に優れた検体を採取できるFNB針が開発された 11)~14.FNB針は,側孔付き針(EchoTip ProCore;COOK社製),Franseen針(Acquire; Boston社製,SonoTip TopGain;メディコスヒラタ社製),ForkTip針(SharkCore;コヴィディエンジャパン社製)が挙げられる(Figure 2-a~g).GISTを含む間葉系腫瘍の診断には免疫染色が必須のため,充分な検体量が必要である.したがって,当施設では2018年からFNB針を第一選択としている.

Figure 2 

FNB針.

a,b:Echo Tip ProCore.COOK MEDICAL ホームページより.

c,d:Acquire.Boston Scientific ホームページより.

e:SonoTip TopGain.メディコスヒラタ社 ホームページより.

f,g:SharkCore.Medtronicホームページより.

Ⅲ EUS-FNAの実際とコツ

1.描出,観察から固定の方法の基本

EUS下に病変を描出し,穿刺できる位置でスコープを固定する.斜視コンベックス型EUSスコープでも直視コンベックス型EUSスコープでも,画面の6時方向に病変を描出された位置で固定する.病変を確実に描出するために,スコープに回転操作を加えてひねりの操作も必要になることが多く,必要に応じて介助者がスコープを患者の口元で保持する(Figure 1-b).斜視コンベックス型EUSスコープの場合は,先端バルーンを少し膨らませることが病変とスコープの固定に有用である.また,先端バルーンがない直視コンベックス型EUSスコープでは,先端にアタッチメントを装着することで,病変部の粘膜を吸引し固定する 15

スコープを保持後,ストロークを長くとれる部位を探り,最大径と実際の予定穿刺ラインの長さを測定する(Figure 3-c).同時に,穿刺ラインに介在する血管を確認し,太い血管を確実に避けるラインを選択する.血流が豊富な病変では,Dualモードで穿刺ラインの血管を確認しながら穿刺を行う.また,GISTの場合,病変中央に出血による高エコーや壊死による無エコーが出現する場合があるため,それらの部位を避けて穿刺することが望ましい.ただし,どうしても無エコー部分が広いSELでは,無エコー内の液体成分をすべて吸引してから実質部分の穿刺を行う場合もある.

Figure 3 

EUS-FNAの実際.

a:通常内視鏡画像.体上部大彎の30mmのSELであった.

b:GF-UE260によるEUS画像.病変は固有筋層から連続し,内部は出血を反映する高エコーが混在する不均一な低エコーで,血流もみられた.

c:GF-UC260JにてEUS-FNAを施行した.病変を6時方向に描出し,外筒を病変辺縁まで進めて,穿刺長を測定する.

d:上皮組織の混入を防ぐため,穿刺前にスタイレットを5-10mm程度引き抜いておく.

e:穿刺.高エコー域や無エコー域を避けて穿刺する.Dualモードで穿刺した.

f:三方活栓をしめた状態でシリンジを20mL引いて陰圧をかけ,スタイレットを抜去した後にセットする.穿刺針を少し抜いてから三方活栓を開放しストロークを開始する.

2.穿刺

穿刺針を鉗子チャンネルにセット後,上皮組織の穿刺針内への混入を防ぐため,スタイレットを5-10mm程度抜く(Figure 3-d).病変穿刺後に,このスタイレットを再度押し込んでから抜去することで,外筒内に混入した上皮組織を押し出すイメージである.ForkTip針では,内筒が外筒を突き破ってしまうことがあるため,内筒と外筒をロックしてストッパーをかけた状態で鉗子チャンネルに挿入する.次に,外筒を病変部まで進め,ねじをしっかり固定する.内筒も同様に進め固定する.この時,穿刺時に病変が逃げないように,内筒は病変に少し刺さるくらいまで進めておく.針の進む方向をイメージして実際の穿刺長分の目盛りをセットした後,呼吸に合わせて思い切り穿刺する(Figure 3-e).胃SELにおいては,穿刺速度が遅いと,病変と針がともに動いて逃げてしまうことがある.したがって,素早く力強く穿刺することが肝心である.

穿刺針の先端を確認し,位置を微調整後,少し抜いていたスタイレットを病変側に押し出した後,ゆっくり抜去する.その後,シリンジを装着して陰圧をかける.三方活栓を使用して,20mLの陰圧をかけたシリンジを装着し,穿刺針を病変内のぎりぎりに戻して,三方活栓を開放し陰圧をかける(Figure 2-f).

3.ストロークのコツ

陰圧がかかり始めたら,速やかにストローク(病変内で針を前後させること)を開始する.ストロークは約20回行う.なお,このストロークは,door-knocking methodと称される,ストッパーに強くたたきつける方法で行う.病変を穿刺する速度を上げることで,より多くの検体を針内に取り込むことを狙いとしており,膵腫瘍において検体採取に貢献したことが報告されている 16.病変が硬いことが多い胃SELでも,効果的な方法と思われる.また,スコープのアングル操作や鉗子起上で穿刺部位を微調整し,扇のように刺し分ける手法は,Fanning techniqueと称される 17.病変内の腫瘍細胞が密である部分と変性壊死を生じている部分をEUS画像で区別することは難しい.したがって,Fanning techniqueで適宜穿刺部位を変えることを考慮する.

4.陰圧の工夫

10-20mLの陰圧をかける吸引法がスタンダードとされている.しかし,病変が硬く,細胞同士の結合性が高いようなSEL(平滑筋腫や神経鞘腫などが該当する)では,これらの圧では検体が採れない場合がある.そのような際には,40-60mLの高い陰圧をかけることが検体採取に有効な場合がある 18.また,穿刺針のスタイレットを抜いて管腔を生理食塩液で満たしておく方法がWet suction technique(wet法)と称され 19,膵腫瘍や自己免疫性膵炎で報告されている 20)~22.そこで,われわれは,胃SELのEUS-FNAにおいて,標準的吸引法とwet法の無作為クロスオーバー試験を行った.しかし,wet法による検体採取量に関する有用性はみられなかった 23.一方,胃SELに対してwet法が有効であった報告もある 22),24

陰圧をかけて,病変内で針を前後させているうちに,シリンジ内に血液が引けてくることがある.この場合には,ストロークを中止し速やかに抜針する.出血しやすい病変の場合には,吸引をしないで穿刺をしたり,スロープル法 25で行ったりするとよい.スロープル法は,スタイレットをゆっくり引き抜きながら病変内の針を前後させる方法であり,血液の混入が少ない吸引法である.

5.穿刺終了からROSE

20回程度のストロークの後,穿刺針を抜去する.ひきつづいて,穿刺針内にスタイレットやシリンジ内の空気を挿入して,検体をスライドガラス(あるいはシャーレ)に押し出す.その後,スライドガラス上で,白色検体を確認し,細胞診用の検体と組織診用の検体を作成する.組織診用の検体はホルマリン瓶に入れる.一方,細胞診用の検体は,押しつぶし法で2つのプレパラートを作成し,一方をアルコールでの湿固定,もう一方を乾燥固定とする.乾燥固定の標本はDiff-Quik染色あるいはCyto-quick染色の後でROSEを行う.ROSEを行うことで,病理評価可能な適正な検体が採取されているかの判断が可能になる(Figure 4-a~f).なお,われわれは,胃SELの場合,2回の穿刺後を目安に細胞検査士が鏡検を行っている.2回の穿刺で充分な検体が採取された後,追加の穿刺を行い,その検体は組織診への提出を優先する.しかし,2回の穿刺で,検体量として不十分あるいは診断を推定できる細胞が採取されていない場合には,評価可能な細胞が採取されていると判断できるまで,穿刺を継続する.胃SELでは,4回程度の穿刺が必要な場合が多い.ROSEで,血液や,穿刺時に混入したと思われる上皮細胞しか認めない場合には,穿刺する部位や陰圧の方法,穿刺針,EUSスコープを変更し,適正な検体を採取できるまで穿刺を繰り返す.ただし,8-10回を穿刺の上限としている.

Figure 4 

ROSE.

a:Cyto-quick染色で行っている.試薬,ホルマリン,タイマーなどを準備する.

b:スタイレットを通して穿刺針内に採取された検体を押し出す.

c:臨床検査技師が検体処理を行う.

d:細胞診標本を作製する.

e:陰圧をかけたシリンジに血液が引けた場合には,BDサイトリッチTM保存液に入れて提出する.

f:細胞検査士によるROSE.

なお,当施設は,以前細胞検査士の鏡検が困難であったころ,内視鏡医が検体処理からROSEまで行っていた 9.しかし,現在は,病理部の理解を得ることができ,内視鏡診療部所属の臨床検査技師と病理部の細胞検査士のコンビネーションでROSEを行っている.しかし,すべての施設でROSEを行えるわけではない.その際の代替え手段として,とくに膵腫瘍におけるEUS-FNAでは,白色の検体をスライドガラス上で確認できることで検体の評価とするmacroscopic on-site evaluation(MOSE)の有用性が報告されている 26),27.しかし,SEL診断におけるMOSEの評価には,今後の検討が待たれる.

6.針の細かい管理

血液が多く引けた場合には,スタイレットの滑りが悪くなるため,内筒内を生理食塩液で充分にフラッシュしておく.また,感染や播種の予防のため,内筒はセッション毎にアルコール綿などで拭き取ることが望ましい.

また,病変の部位によっては,強いアングルをかけた状態での穿刺となり,穿刺針が曲がってしまうことがある.用手的に針をある程度直線化できればよいが,曲がった状態で穿刺を続けるのは血管や他臓器の誤穿刺につながるため,穿刺針を交換すべきである.

Ⅳ デバイスの工夫

1.FNB針

近年,前述のFNB針によるEUS-FNAが主流となった 28.実際,胃SELに対するEUS-FNAにおけるメタアナライシスにて,FNA針とFNB針の比較では検体採取率,正診率ともにFNB針の方が高かった 29.当施設でも,現在FNB針を第一選択としており,胃SELにおいて良好な白色の検体を得られる症例を経験する(Figure 5-a,b).一方,穿刺性能は,FNB針よりもFNA針の方が優れている.とくに,20mm未満の小病変に対するEUS-FNAでは,FNB針での穿刺が難しい場合がある.FNB針が刺されば良好な検体を得られる可能性が高いが,穿刺が困難な場合にはFNA針に切り替えることも考慮すべきである.

Figure 5 

FNB針で得られた検体.

a,b:白色の糸状の良好な検体が採取された.

2.直視コンベックス型EUSスコープ

胃体部大彎側の病変において,斜視コンベックス型EUSスコープでの穿刺では,穿刺の方向が胃壁を伸ばす方向に向かうため,検体採取が困難であった(Figure 6-a,b).一方,直視コンベックス型EUSスコープは,エコーの方向と穿刺の方向が同じため,胃体部大彎側の病変に対しても穿刺をしやすい(Figure 6-c,d).直視コンベックス型EUSスコープと斜視コンベックス型EUSスコープとのクロスオーバー試験では,診断率に差はなかったものの,直視コンベックス型EUSスコープで得られた検体量が有意に多かったと報告されている 30.一方,斜視コンベックス型EUSスコープでは上下左右のアングルで病変を抱え込み固定することができたのに対し,直視コンベックス型EUSスコープではそれができない.Yamabeらは,直視コンベックス型EUSスコープの先端に,拡大内視鏡観察で使用される軟らかい黒色のフードを装着し,病変の粘膜部分を吸引することで固定性が増し,小病変への穿刺が有用であったことを報告した 15.Minodaらは,病変近傍の粘膜に糸付きクリップをかけて牽引しつつ穿刺を行う方法を報告している 31.われわれは,モールキャップ(Top社製)をスコープ先端に装着して持続吸引し,病変を固定している(Figure 6-e,f).

Figure 6 

EUSスコープの工夫.

a,b:斜視コンベックス型EUSスコープでは,とくに体部大彎の病変では穿刺の方向に胃壁が伸びてしまい,針が刺さらないことがある.

c,d:直視コンベックス型EUSスコープでは,穿刺の方向が胃壁の伸びる方向と垂直になるため,病変が逃げずに穿刺することが可能である.

e,f:直視コンベックス型EUSスコープにモールキャップを装着し粘膜を吸引することで,さらに固定性が増す.

Ⅴ 有害事象とその対応

日本消化器内視鏡学会の「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」 32),33において,EUS-FNAは出血低リスク手技に該当する.しかし,血流が豊富な病変では,穿刺により病変内で出血をきたすことがある.病変内での出血にとどまれば臨床的に問題となることは少ないが,胃粘膜からの出血が持続する場合にはクリップや凝固止血などで対応する.

GISTにおいて,穿刺針の貫通により,穿刺ラインに腫瘍細胞のseedingが起きる可能性はあるが,現在まで報告はない.しかし,穿刺針が腫瘍を貫通し,病理診断が悪性であった場合には,外科側に申し送りの上,手術時に播種結節の有無の確認や生理食塩液での洗浄を充分に行ってもらうことも考慮する.

Ⅵ おわりに

新たな穿刺針やEUSスコープの登場により,胃SELにおけるEUS-FNAの検体採取率や正診率が向上した.しかし,20mm未満の小病変に対するEUS-FNAがどの程度推奨されるのか,FNA針とFNB針の使い分けなど,定まっていない部分も残されている.現在,日本消化器内視鏡学会のEUS-FNAガイドライン委員会にて,待望のガイドライン作成が進行中であり,刊行が待たれる.

謝 辞

本稿を終えるにあたり,診療を支えてくださっている福島県立医科大学附属病院内視鏡診療部のメディカルスタッフ,橋本優子教授をはじめとする病理診断科の先生方や細胞検査士の皆様に感謝の意を述べたい.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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