2024 Volume 66 Issue 2 Pages 207-210
津山中央病院は昭和29年(1954年)7月に津山市内の開業医有志の協力により「総合病院 津山中央病院」として開設された.平成9年(1997年)12月には国立療養所津山病院の経営移譲を受け,平成11年(1999年)12月に現在の地に新築移転した.救命救急センターを併設し,岡山県北地域の基幹病院として「地域がん診療連携拠点病院」「地域医療支援病院」など様々な役割を果たしている.「地域のみなさんにやさしく寄り添う」という理念のもと,「お断りしない救急医療に努める」「最先端の医療を提供する」「地域医療機関との連携を強化する」「地域に貢献する活動を推進する」「教育,人材育成に傾注する」「健全な経営に努める」という6カ条からなる基本方針を掲げている.最新の医療機器を導入し,救急対応含めて地域住民のニーズに応え,地域の医療水準向上に貢献している.
組織内視鏡センターは病院長管轄下の独立した部門であり,消化器内科と呼吸器内科の医師が業務にあたっている.看護師は外来部門に所属しており,常勤者の多くが救命救急センターでの日当直業務を兼務しており,夜間休日の緊急内視鏡でも迅速な対応が可能となっている.そのほか臨床工学技士や放射線技師,看護助手が内視鏡業務の運営と安全管理に携わっている.
検査室レイアウト
内視鏡センターは本館1階の内科外来と救急外来との中間に位置しており,総面積は近接する透視撮影室を含めて355.5m2である.午前は検査台1-4および処置室で上部消化管内視鏡検査,午後は検査台1で内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD),主に検査台3,4で大腸内視鏡検査を実施している.透視撮影室では胆膵関連検査処置,食道胃静脈瘤硬化療法,小腸内視鏡検査,イレウス管留置,気管支鏡検査等を行っている.処置室は救急外来から直接ストレッチャーで搬入できる構造となっており,緊急内視鏡検査の際に使用される.リカバリー室は7床あり,モニターを設置し看護師を含めたスタッフが管理している.内視鏡機器の洗浄や管理に臨床工学技士が積極的に関わっており,看護師の負担軽減や機器損傷による修繕費用の削減に貢献している.夜間・休日の緊急内視鏡に関しては,医師はオンコール体制を敷き,看護師は当直看護師が業務にあたっており迅速に対応できる体制を確保している.
(2023年4月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ8名,研修医など3名
内視鏡技師:Ⅰ種3名
看護師:常勤8名,非常勤(パート)7名
事務職:5名
その他:看護助手2名,臨床工学技士8名
(2023年4月現在)
(2022年1月~2022年12月)
初期臨床研修医は,1年目に6カ月間の内科研修を行うが,この間に消化管領域と胆膵領域をそれぞれ1カ月ずつ研修するカリキュラムとなっている.上級医の行う検査・治療の見学を通して内視鏡診断・治療における知識を学ぶ.また,上部消化管シミュレーターにより実際にスコープを操作し,トレーニングを行う.担当患者に対して指導医の監督下に鎮静での上部消化管内視鏡検査を行う.上部消化管内視鏡検査習得を目指す研修医は2年目に消化器内科研修を1カ月単位で選択する.この時期には鎮静下での上部消化管内視鏡検査だけでなく習熟度に応じて無鎮静での上部消化管内視鏡検査も行う.大腸ポリペクトミーやESDの介助にも積極的に関わってもらい,内視鏡治療に興味を持つように指導している.
当院の内科専攻医は研修期間3年のうち1年目と3年目を当院で研修を受ける.連携施設として当院を選択した内科専攻医は2年目の研修を当院で行うことになる.1年次には無鎮静での上部消化管内視鏡検査を直視下生検も含めて実施する.さらに大腸内視鏡検査を,まず内視鏡モデルを用いてトレーニングする.つづいて指導医とともに引き抜き観察から開始し,15分を目安にして挿入を行う.1年間で上部消化管内視鏡検査500件,大腸内視鏡検査200件を経験することを目標に設定している.上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査は直視下生検が安定して実施できる段階で,指導医とともに行う.2年次以降は大腸ポリペクトミー,ESD,内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)を指導医とともに行う.ESDについては術前カンファレンスで症例提示を行い,治療ストラテジーを確認する.胃前庭部病変から開始し,習熟度にあわせて徐々に難易度の高い症例を経験するようにしている.ERCPについては介助者として必要な物品や検査・治療の手順を習得したのちに,術者として手技を指導医の監督下に行う.内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST),総胆管結石除去術,胆管ステント留置術,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)ができることを目標としている.
後期研修を修了した消化器内科医は消化器病専門医,消化器内視鏡専門医を取得すべく専門研修を継続する.すなわち白色光観察,画像強調観察,拡大観察を用いた内視鏡診断を学び,ESDやERCP関連手技など内視鏡処置を習得できるように研鑽を行う.また学会発表や論文発表を積極的に自身で行う,あるいは研修医・専攻医の発表をサポートできるように指導している.
夜間・休日の緊急内視鏡は専攻医と指導医の2名体制で行い,基本的に専攻医が術者として対応している.当院が1次救急から3次救急まで対応する基幹病院であることから緊急内視鏡の機会は多く,十分な症例数を経験できると考えている.
岡山県北地域では公共交通機関が少ないこともあり,自家用車で来院する患者が多い.また高齢者も多く,大腸内視鏡検査の前処置は基本的に病院で行っている.前処置を行うスペースを確保するため,2010年に内視鏡待機室を増築したが,コロナ禍での感染対策を行う上では十分なスペースとはいえず,一日あたりの大腸内視鏡件数に制限がかかっているのが現状である.
鎮静内視鏡検査を希望する患者の増加に伴いリカバリールームの整備も課題である.固定式ベッドをストレッチャーに変更することで患者移動に伴うスタッフの負担軽減を図っている.鎮静剤投与後は観察プログラムを導入し,一定時間経過観察を行う.医療事務員を配置し,看護師とタスクシェアを図っているが,午後の検査・処置に影響のない範囲とするため一日あたりの外来鎮静上部消化管内視鏡件数は4件までに制限されている.
当院は救命救急センターを備えた,岡山県北で唯一の基幹病院であり,「最後の砦」として当地域で完結できる医療を目指して日々診療にあたっている.そのためには最新の医療機器のみならず優秀な人材を安定して確保することが重要である.特に看護師不足は診療体制の維持や発展に影響する重大な問題である.内視鏡センターでは時短勤務の看護師の割合が他の部署よりも高いことが特徴で,終業時間の前にいくつかの検査台を片付けざるを得ない状況がしばしば発生している.医師は効率的に検査・処置ができるように協力し,医療事務員や看護助手,臨床工学技士等によるタスクシェアを積極的に行い,看護師の負担軽減に努めている.また風通しがよく,働きやすい職場環境整備のため,各種ハラスメントがないよう病院をあげて取り組み,相談窓口を設置するなどして離職を最小限にする活動を行っている.