2024 Volume 66 Issue 2 Pages 216
【背景】内視鏡的寛解と組織学的寛解は,炎症性腸疾患(Inflammatory bowel diseases:IBD)の治療目標であり,良好な長期転帰と関連している.そこで,臨床的寛解期にあるIBD患者において,腸管のバリア治癒は,内視鏡的寛解および組織学的寛解と比較し,長期的な疾患経過の予測が可能であるか前向きに比較した.
【方法】ベースライン時に,臨床的寛解IBD患者にileocolonoscopyを行い,共焦点内視鏡による腸管バリア機能の評価を行った.内視鏡的,組織学的活動性,バリア治癒は確立されたスコアで前向きに評価された.フォローアップ期間中,患者は臨床的疾患活動性と主要有害転帰(major adverse outcomes:MAO)の発生,すなわち,疾患の再燃,IBDに関連した入院または手術,ステロイド(全身投与),免疫抑制剤,低分子化合物,生物学的製剤の開始または増量,につきモニターされた.
【結果】クローン病(Crohnʼs disease:CD)100例と潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)81例の計181例を解析対象とした.平均追跡期間CD 35カ月,UC 25カ月において,CDの73%,UCの69%が少なくとも1回のMAOを経験した.内視鏡的寛解のIBD患者では,内視鏡的活動性の患者と比較して,「MAO無し」の率が有意に高かった.さらに,組織学的寛解はUCの「MAO無し」を予測したが,CDでは予測しなかった.バリア治癒は,UCとCDの両方で「MAO無し」を予測する上で,内視鏡的および組織学的寛解よりも優れていた.
【結論】臨床的寛解のIBD患者において,バリア治癒は疾患の悪化リスクの低下と関連しており,内視鏡的および組織学的寛解と比較して優れた予測能を示した.バリア機能の解析は,臨床試験において将来の治療ターゲットとして考慮されるかもしれない.
バリア機能の障害と腸管透過性の亢進は,IBDの重要な発症因子として認識されつつある2).本研究でのバリア機能解析は,フルオレセインを静脈内投与後,共焦点レーザー内視鏡を用いて色素の漏出の有無を評価したものである.この手法で判定したバリア治癒を機能的寛解の1つとしてとらえ,「MAO無し」の予測能について,内視鏡的や組織学的寛解と比較検討した.UC,CDともにバリア治癒は,内視鏡的や組織学的寛解よりも「MAO無し」予測能が高かったが,バリア治癒と内視鏡的や組織学的寛解による予測能の差は,UCよりもCDで顕著であった.特にCDにおける回腸末端のバリア治癒による「MAO無し」予測能は,特異度,陽性的中率ともに100%であった.機能評価のごく一部ではあるが,UCとCD(特に小腸病変を持つCD)との違いも読み取れ,興味深い.