GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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PRECAUTIONS FOR UPPER GASTROINTESTINAL ENDOSCOPY SCREENING USING HIGH-RESOLUTION TRANSNASAL ENDOSCOPY
Eri IWATA Mistushige SUGIMOTOTakashi KAWAI
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2024 Volume 66 Issue 3 Pages 293-301

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要旨

対策型胃がん検診の現場では,胃X線検診から胃内視鏡検診で行う自治体が急速に増加している.胃内視鏡検診を行う際には,被検者への苦痛が少なく,かつ精度の高い検査を行う必要があるため,多くの施設で細径内視鏡が選択されている.細径内視鏡は経口内視鏡と比較して画質に劣ることで精度の高さが懸念されていたが,2020年に発売となったOLYMPUS GIF-1200Nや2022年に発売となった富士フイルムメディカル EG-840Nは,経口内視鏡と同等の画質が得られる第3世代の高画質細径内視鏡であり,今後の胃がん検診を行う上で期待されるスコープと考えられている.本稿ではこれらの高解像度経鼻細径内視鏡を用いた胃がん内視鏡検診の現状や注意点,観察のコツを解説する.

Abstract

Gastric X-ray screening is rapidly replacing EGD screening in population-based gastric cancer screening. An EGD is necessary to ensure minimal patient discomfort and achieve high accuracy. There were concerns about the accuracy of ultrathin transnasal endoscopes because of their inferior image quality compared to oral endoscopes. However, OLYMPUS GIF-1200N and Fujifilm Medical EG-840N, which were released in 2020 and 2022, respectively, are third-generation high-definition ultrathin endoscopes with image qualities equivalent to that of oral endoscopes and considered promising scopes for future gastric cancer screening. Here, we will explain the precautions and tips for evaluation in endoscopy using high-resolution transnasal ultrathin endoscopes.

Ⅰ はじめに

日本における胃がん検診は長年胃X線検診が中心で行われてきたが,日本や韓国からの報告で胃がん内視鏡検診による胃がん死亡率減少効果が証明された 1)~3.これを受けて2016年2月に胃内視鏡検査が胃X線検診と共に対策型検診の検査法として承認され 4,以後胃内視鏡検診は全国に徐々に普及していくこととなった.日本対がん協会が行ったアンケート調査結果によると,胃がん検診で内視鏡検査を採用する自治体数は2015年度には18.9%だったのに対して,2019年度には42.2%と約半数近くに上り 5,胃X線検診から胃内視鏡検診への置き換わりが急速に進み,今後も内視鏡検診を選択する自治体が増加することが予想される.ただし,対策型検診による胃内視鏡検査が一層普及するためには,内視鏡検査医の確保や内視鏡検診自体の質の担保,内視鏡検診マニュアルに準拠した検査実施体制の徹底,ダブルチェック体制の確立と精度管理,金銭面での問題など,多くの課題が残され,その課題の解決が急務となっている.

胃内視鏡検診の最大の問題点は内視鏡検査に伴う苦痛による受診者の敬遠であり,内視鏡検診の普及に向けて,大きな障害となっている.日本消化器がん検診学会が発刊した対策型検診のための胃内視鏡マニュアル2014年度版では「無症状者を対象とするがん検診に用いられる内視鏡機器は受診者の負担が少ないことが条件となる.そのためには内視鏡外径が細く,咽頭や舌根に対する刺激が少ないものから選択することが望ましい」と記載されており,内視鏡検査に対する認容性を考慮した胃内視鏡検診の現場では,経口内視鏡を使用するよりも,細径内視鏡を使用した経鼻内視鏡検査を選択することが適切と考えられる.そのため,今後も細径内視鏡を使用した経鼻内視鏡検診が広く普及していくことが想定される.

しかしながら,細径内視鏡は経口内視鏡と比較して,画質や解像度で劣り,病変の検出率や評価能力が低い可能性が指摘されてきた.実際に2005年にOLYMPUS社より発売された第一世代の細径内視鏡であるGIF-N260からGIF-XP260NSまでは,胃内の微細病変の凹凸は観察や評価はできるものの,画像強調内視鏡検査法の1つであるNarrow Band Imaging(NBI)では画面全体が暗くなってしまい,詳細な粘膜模様の観察は困難であった.2012年に発売された第二世代細径内視鏡スコープであるGIF-XP290Nでは,内視鏡を胃粘膜や病変に近接することによりハイビジョン並みの画質が得られ,粘膜模様の観察も可能となった.しかし,画面の解像度は依然として経口内視鏡と比較して不十分であり,より精度が高く,認容性が高く,侵襲度が低い新たな細径内視鏡の開発が求められてきた.2020年に発売されたGIF-1200Nは高画質化が著しく,経口内視鏡と同様の画質が得られるようになり,今後の胃がん検診を行う上で期待されるスコープと考えられる.

富士フイルムメディカル社の経鼻内視鏡スコープは,第一世代の極細径経鼻内視鏡スコープとして2003年にEG-470Nが発売されたが,このスコープは患者の忍容性が高かったものの,通常径経口内視鏡と比べて画質が劣ることが問題となっていた.第二世代のEG-530N,EG-530N2,EG-530NWでは画質が向上し,視野角も120°から140°に拡大したが,内視鏡施行医間で胃癌の検出率に差があり,極細径経鼻内視鏡を使用した検査は熟練の内視鏡医によって慎重に行われるべきと報告された 6.その後,第三世代の極細径経鼻内視鏡であるEG-580NW,EG-580NW2,EG-L580NWおよびEG-L580NW7が発売され,EG-L580NWシリーズではLASEREO systemが使用可能となり,Blue laser imaging(BLI)やLinkled color imaging(LCI)の画像強調内視鏡(Image enhancement endoscopy:IEE)を併用しての観察ができるようになったことで,通常径経口内視鏡と遜色ない観察ができるようになった.更に,2022年にはより高画質で操作性が改良されたEG-840Nが発売され,このスコープも今後胃がん検診を行っていく上での活躍が期待できる.

本稿では上記のような高解像度の経鼻内視鏡を使用した上部消化管内視鏡検診の現状と注意点について概説する.

Ⅱ 各社の高解像度経鼻内視鏡について

Ⅱ-1 OLYMPUS社 GIF-1200Nの特徴

GIF-1200Nは内視鏡自体の細径化と高画質を両立した極細径の上部消化管汎用スコープであり(Table 1),面順次式の新型CMOSイメージセンサーを極細径内視鏡として世界で初めて採用した,ノイズの少ないバイビジョン画質を実現したスコープである.また,新たな照明光学系の採用により,管腔などの奥行のあるシーンにおいて中遠景の明るさが増し,総合的な視認性が向上した.更に,新しいプロセッサであるEVIS-X1と組み合わせることにより,構造色彩強調画像(texture and color enhancement imaging:TXI)やBrightness Adjustment Imaging with Maintenance of Contrast(BAI-MAC)など高精度の観察技術を使用することができるようになり,通常径の経口内視鏡に匹敵する精度での観察が可能となった.また,GIF-XP290Nに比較して柔らかい挿入部を採用しているため,経鼻挿入時の苦痛の軽減と,経口挿入時でもストレスを感じにくくなっている.全長にわたり柔らかくしながら,最適なコシが保たれる素材を使用しているために,十二指腸への挿入性も向上している.

Table 1 

OLYMPUS社 GIF-1200NとGIF-XP290Nの製品仕様(オリンパスホームページ https://www.olympus-medical.jp/gastroenterology/scope/gif-1200n).

Ⅱ-2 富士フイルムメディカル社 EG-840Nについて

EG-840Nは,従来の経鼻スコープの先端径を維持しながら,更なる高画質化に応える上部消化管用経鼻スコープである(Table 2).高解像度CMOSセンサーを搭載しクリアなハイビジョン画質を実現しており,近接2mmでの観察から遠景まで高精細な観察が可能である.高出力4LED光源を搭載したELUXEO 7000 systemと対応し,BLIやLCIの併用観察により微小な病変の検出も期待できる.また,高画質を最大限に発揮するため,レンズ面の洗浄性も向上している.加えて,挿入部先端から手元にかけての硬さと弾発性を変化させ,先端側は柔らかく,手元側はたわみにくくコシのある軟性部「高弾発グラデーション軟性部」を開発したことで,術者の操作が先端に伝わりやすく,鼻腔通過時の苦痛軽減と十二指腸挿入性向上が図られている.2022年9月にAI技術を活用して開発された上部消化管用内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」と組み合わせて使用することができ,内視鏡診断支援機能「CAD EYE」により,胃癌や食道癌が疑われる領域をリアルタイムで検出することが可能である.

Table 2 

富士フイルムメディカル社 EG-840NとEG-L580NW7の製品仕様(富士フイルムメディカルホームページ https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/endoscopy/endoscopy-scopes/nasal-scopes).

Ⅲ 当院における高解像度経鼻細径内視鏡を使用した内視鏡検診のフローチャート

1.問診・患者説明

細径内視鏡を使用した胃がん検診では,通常の経口内視鏡と同様の問診や説明が必要であるが,細径内視鏡を使用した経鼻内視鏡では,鼻腔麻酔に4%リドカインを使用するため,リドカインアレルギーの有無を確認することが必須である.また,検査後の鼻出血の可能性や鼻腔から細径内視鏡を挿入できない場合もあり,その場合には適宜経口内視鏡検査に変更する旨を説明しておく必要がある.

2.前処置

胃内に貯留した粘液や泡を消失させる目的で,ジメチコン(ガスコン)100mg+プロナーゼ(プロナーゼMS,ガスチーム)20,000単位+重曹1gを水80mlに溶解し,内視鏡検査前に内服させる.また,内視鏡が通過する鼻腔内の血管収縮および粘膜浮腫改善目的で,0.05%硝酸ナファゾリン(プリビナ)を左右の鼻腔に噴霧する.プリビナを噴霧することにより,5分後には粘膜浮腫が改善し始め,各鼻道が広がり内視鏡が通過しやすくなる.また,鼻腔麻酔のため噴霧した麻酔薬が鼻腔の奥に届きやすくなる.

3.鼻腔麻酔法

内視鏡が鼻腔を通過する際の鼻の疼痛や違和感を緩和するために鼻腔麻酔を行う必要がある.鼻腔麻酔にはスプレー法とスティック法があるが,スティック法の方が一般的に麻酔効果は高い.当院では看護師が施行しやすく両側の鼻腔を同時に麻酔できるスプレー法を基本としており,あらかじめ鼻腔が狭いことが判明している場合や,前回の経鼻内視鏡検査時に鼻の疼痛を訴えていた場合には適宜スティック法を併用している.このように両方法の長所や短所を考え,患者にあわせた対応が重要である.

4.内視鏡設定と内視鏡周辺機器

当院ではスコープはOLYMPUS GIF-1200N,システムプロセッサ・光源装置としてEVIS-X1を使用し,モニターはOEV321UHを使用している.内視鏡設定は白色光では構造強調A2,NBIでは構造強調B8に設定しているが,設定は各施設で調整することが必要と思われる.従来は細径内視鏡を使用した経鼻内視鏡ではウォータージェット装置を使用できず,シリンジを使用した洗浄法で行う必要があり,洗浄に時間を要し,粘液の貯留により観察が障害されることが問題となっていた.当院の場合にはGIF-XP290Nを使用していた頃から,経鼻内視鏡でのスクリーニング検査においてもウォータージェット装置が使用できるように,以下の工夫をしている.細径内視鏡の鉗子孔にOLYMPUSディスポーザブル鉗子チャンネルアダプター(MAJ-1606)を装着し,内視鏡用送水ポンプOFP-2に鉗子チャンネルウォーターチューブ(MAJ-1607)とリユースの注水チューブを,注水チューブを鉗子チャンネルアダプターの送水口金に接続し,鉗子チャンネルから送水を行うことを可能としている(Figure 1).また,鉗子チャンネルアダプターの鉗子口にはディスポーザブル鉗子栓(MAJ-1555)を装着し,そこから生検鉗子などの処置具を使用することが可能である.

Figure 1 

当院でのGIF-1200Nでウォータージェット装置を使用するための工夫.

5.挿入

鼻腔への挿入に関して,左右どちらの鼻から挿入するかは,患者の鼻が通りやすい側や検査施行医が挿入しやすい側,前回の内視鏡で挿入した側を参考にして決めることが重要である.鼻腔ルートとしては下鼻甲介ルート,中鼻甲介ルートがあるが(Figure 2),下鼻甲介ルートは鼻腔内から上咽頭に抜ける部分で屈曲の角度が強く,疼痛の訴えがあることがあるので注意が必要である.中鼻甲介は,鼻腔に入ると正面に見える下鼻甲介の下方奥にわずかに見えることが多い(Figure 2-a).中鼻甲介ルートは,中鼻甲介を見つけ,鼻中隔と下鼻甲介の間を抜け,中鼻甲介の真上にスコープが来るようにし,そのまま中鼻甲介の上方にアップアングルをかけながら進めていくと上咽頭に抜ける(Figure 2-b,c).下鼻甲介ルートは,下鼻甲介と鼻腔下端のスペースに挿入するためアップアングルをかけ,下鼻甲介上方の最も広い部分をゆっくり進み(Figure 2-d),上咽頭に達する部分では更にアップアングルをかける.どちらのルートを選択しても,鼻腔は直線ではなく蛇行しているため,スコープを左右に回旋しながら少しずつ広い部分を探しつつ進めることが重要である.

Figure 2 

経鼻内視鏡挿入経路.

6.観察方法・観察の注意点

経口内視鏡と同様の手順で観察を行っていくが,細径内視鏡を使用した経鼻内視鏡での観察で盲点となりやすい①噴門部,②体部後壁,③体部大彎,④前庭部小彎(胃角裏)の観察には注意が必要である.一般的に経口内視鏡でも噴門部と体部後壁の観察は見下ろし操作では接線方向となってしまうため観察困難となるが,反転操作を行うことで観察が可能となる.細径内視鏡は経口内視鏡と比較して反転操作の際に噴門部小彎や体部後壁との距離が取りづらく観察しにくくなるため注意が必要である.ただし,経鼻内視鏡の曲率半径が小さいという特性を生かし,送気・吸引での空気量を調節し,左右アングルを積極的に使用することで対処は可能である.体部大彎の観察も,経口内視鏡でも胃液の吸引不良や大彎襞の進展不良により盲点となりやすい部位だが,経鼻内視鏡においては吸引や送気のスピードが遅いため,十分な胃液吸引や送気により大彎襞を進展させるようにより一層注意が必要である.前庭部小彎(胃角裏)に関しては,経鼻内視鏡はスコープが柔らかく体部大彎を押す力が小さいため,壁との距離が取りにくく観察しづらい場合がある.送気を追加しスコープの軸回転やアングルを使用して,慎重に観察を行うことが肝要である.

また,見逃しをなくす工夫として,IEEを活用することが挙げられる.経鼻内視鏡では嘔吐反射が少なく,咽喉頭を入念に観察できることがメリットとしてあるが,この咽喉頭観察や食道観察はNBI併用で行うことが必須である.OLYMPUS GIF-1200NはXP290Nと比較してNBIでの明るさが向上しており,咽頭や食道の上皮乳頭内毛細血管(Intra-epithelial papillary capillary loop:IPCL)の異常に伴うドット状変化の観察がしやすくなっているため,より多くの病変の拾い上げが期待できる.また,胃内の観察においては新たなIEEであるTXIの有用性も示されていることから,TXIも併用して胃内を観察することも重要と考えられる.白色光観察で全体を観察したのちに,TXIを使用し胃体部・前庭部を中遠景で観察し,一度観察した部位に確認できていない病変がないかをチェックすることで見逃しを減らすことが期待できる.富士フイルムメディカルEG-840Nにおいても咽喉頭や食道の観察にはBLI,胃内の観察にはLCIを使用することができる.

Ⅳ 当院での経鼻内視鏡に関する研究結果

既報では細径内視鏡を使用した経鼻内視鏡は経口内視鏡と比較して画質で劣ることが大きな問題となっていたが,OLYMPUS GIF-1200Nが開発されたことで,通常径経口内視鏡とほぼ同等の内視鏡画質での評価が可能となった.咽頭・表在食道癌の診断能に対して細径内視鏡であるGIF-1200Nと経口内視鏡であるGIF-H290Zを比較したところ,GIF-1200Nで感度95.5%,特異度70.0%,GIF-H290Zで感度95.5%,特異度70.0%と同等であり,視認性の高さはGIF-1200NにおけるNBI観察法がGIF-H290ZにおけるNBI観察時を上回ることが報告されている7).われわれの検討でも,早期胃癌の検出においてGIF-1200NとGIF-H290Z(非拡大)画像を比較したところ,両者の内視鏡画質は同等であった(Figure 3 8

Figure 3 

早期胃癌におけるGIF-1200N(a,b)とGIF-H290Z(c,d)の内視鏡画像の比較(文献からの引用).

a:白色光近接観察(GIF-1200N+EVIS-ELITE).

b:NBI近接観察(GIF-1200N+EVIS-ELITE).

c:白色光非拡大観察(GIF-H290Z+EVIS-ELITE).

d:NBI非拡大観察(GIF-H290Z+EVIS-ELITE).

また,第二世代の細径内視鏡であるGIF-XP290NとH. pylori除菌後患者の胃粘膜萎縮と腸上皮化生の色差を比較した際には,GIF-1200NのNBI観察で胃粘膜萎縮は有意に色差の開大があることを報告した 9Figure 4に実際の写真を示すが,GIF-1200NのNBI観察では胃粘膜萎縮の境界がより明瞭となっていることがわかる.更に,GIF-1200NのNBI観察では白色光観察と比較して,胃粘膜萎縮や腸上皮化生に関して有意な色差を生むことを示した.加えて,GIF-1200Nにおける画像強調観察(NBI・TXI)による胃粘膜萎縮,腸上皮化生,地図状発赤の検出の有効性を比較したランダム化試験では,対象を2群(WLI-NBI群,WLI-TXI群)に無作為に振り分け,色差をWLIとTXIまたはNBIの間で比較検討した 10.胃粘膜萎縮,腸上皮化生,地図状発赤に関してNBIとTXIで色差に有意差は認められず,胃炎の京都分類に基づく萎縮,腸上皮化生,地図状発赤の内視鏡スコアに関してもWLIとTXIの比較では同等であった.その一方でWLIとNBIの比較では,NBIはWLIに比べて腸上皮化生の検出率を大幅に向上させ,腸上皮化生の平均スコアもWLIと比較して有意に高い結果となった.更に,TXIとNBIの胃粘膜萎縮,腸上皮化生における色差は,WLIより有意に大きかった.以上により,GIF-1200NとIEEを組み合わせることにより,画質や解像度の向上だけではなく,色差の増加によりスクリーニング検査における胃癌リスクの高い患者の拾い上げに寄与すると考えられた.

Figure 4 

GIF-1200N(a,b)とGIF-XP290N(c,d)の内視鏡画像の比較(文献からの引用).

a:白色光観察(GIF-1200N+EVIS-X1).

b:NBI観察(GIF-1200N+EVIS-X1).

c:白色光観察(GIF-XP290N+EVIS-ELITE).

d:NBI観察(GIF-XP290N+EVIS-ELITE).

またわれわれが施行した陥凹性早期胃癌36例に対する,GIF-1200NとXP290Nの内視鏡所見を比較した検討では,白色光観察においてGIF-1200NはXP290Nと比較して有意な診断感度の上昇を認めた 11.NBIでは有意な診断感度の差を認めなかったが,GIF-1200Nは白色光診断能が極めて向上していることが示唆され,胃がん検診の現場でも積極的に使用することが推奨される.

Ⅴ 今後の内視鏡検診における高解像度経鼻細径内視鏡の役割

前述のような対策型胃がん検診における胃内視鏡検査への置き換わりが進んでいる中で,挿入時の苦痛が少なく,かつ経口内視鏡と遜色ない検査精度を担保できる第三世代の細径内視鏡であるOLYMPUS GIF-1200Nや富士フイルムメディカルEG-840Nは大きなニーズに応えることが期待される.また,H. pylori感染率の低下と共に胃癌の死亡率や罹患率が低下している一方で,食道癌による死亡者数は横ばいであること,上部消化管内視鏡検査が咽喉頭癌の発見にも有用であること 12を考えると,検診内視鏡における咽喉頭・食道癌の占める割合は増加していくことが予想される.韓国の後ろ向きコホート研究では,上部消化管内視鏡検診未受診群に比べて受診群では食道癌の死亡率が35.3%減少したと報告しており 13,対策型胃がん検診が胃がんの死亡率減少のみならず,食道癌に対しても死亡減少効果が期待できる.そのため,これからの検診内視鏡を行う際には胃がんを含めた胃内疾患の検診のみならず,咽喉頭癌や食道癌の検出も適切に行うことができるような内視鏡検診を行うことが必要と考えられる.前述のようにGIF-1200NはNBIの明るさが向上し,IPCLの観察も可能となっており,またEG-840NのBLIもより高画質となっていることから,咽喉頭癌や食道癌の検出も必要とされる今後の内視鏡検診では大いに活躍が期待される.

また,対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアルには,胃内視鏡検診の精度を保つためには,ダブルチェックが必須であると記載されており,現行の胃内視鏡検診においても検査医とは別の読影医による内視鏡画像のチェックが行われている.今日ディープラーニングを用いた内視鏡AIは目覚ましい進歩を遂げ,食道癌に関しては感度98%で 14,胃癌に関しては6mm以上の病変に関して98.8%の診断が可能と高い診断能が報告されている 15.今後,内視鏡検診のダブルチェックへの内視鏡AIの利用は,病変の見逃し減少や内視鏡読影の負担軽減において多大な貢献をすると期待できる.このダブルチェックへのAI利用にGIF-1200NやEG-840Nの画質や視認性が向上した内視鏡画像が有用であると考える.

Ⅵ おわりに

OLYMPUS GIF-1200Nや富士フイルムメディカル EG-840Nはノイズの少ないハイビジョン画像を実現し,NBI・BLI・TXI・LCIなどの画像強調観察も可能とし,通常径の経口内視鏡と同等の観察ができるところまで進化した汎用性の高いスコープである.対策型胃がん検診における内視鏡検診が普及していく中で,精巧な観察ができ,かつ,被験者への負担が少ないこれらの高解像度経鼻細径内視鏡は重要な役割を担っていくことが期待される.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:河合 隆(武田薬品,大塚製薬,第一三共,オリンパス)

文 献
 
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