2024 Volume 66 Issue 4 Pages 454-457
本学は大正5年に創設され,当センターは東京医科大学霞ヶ浦病院として茨城県稲敷郡阿見町に昭和23年に開設され診療を開始した.霞ヶ浦病院における内視鏡部は平成4年に独立した.
平成21年に東京医科大学茨城医療センターへ名称変更が行われ現在内視鏡センターとして消化器内科・消化器外科・呼吸器内科・呼吸器外科で構成されている.
組織独立した部門で消化器部門は消化器内科・消化器外科,呼吸器部門は呼吸器内科・呼吸器外科で構成されている.
①消化器内科および消化器外科にて,それぞれ独立して内視鏡検査・治療を行っており内科的,外科的にそれぞれ専門性の高い内視鏡診療を提供している.
②地域に密着した大学附属の教育機関として,高齢者の多い地域性を重視した地域医療における内視鏡診療および内視鏡教育を行っている.消化管出血の内視鏡的止血術等の緊急内視鏡も積極的に行っている.
③大学附属の教育機関として,高度先端医療技術を提供できるように努めている.
④当センターは地域がん診療連携拠点病院および肝疾患診療連携拠点病院に指定されており,その医療機関に設置された内視鏡センターとして食道静脈瘤など肝疾患関連消化管病変や,消化器癌病変の内視鏡診療・内視鏡治療を積極的に行っている.
⑤敷地内に検診センターが隣接しており,検診センターから検診異常での症例を多く紹介され2次検診としての内視鏡精査を行っている.
⑥カプセル内視鏡や,ダブルバルーン内視鏡等の小腸内視鏡診療も積極的に行っている.
⑦上部内視鏡検査においては,早期から経鼻内視鏡を導入しており毎年の上部消化管内視鏡の約半数の症例を経鼻内視鏡で行っている.
⑧ファイリングシステムを導入しており,画像情報は内視鏡情報管理システムNEXUS(富士フイルム)で管理されており,上部,下部およびX線検査室で行っている胆膵な内視鏡からの接続を行っている.
⑨内視鏡室技師等のコメディカルスタッフは内視鏡室専属で専門性が高く,内視鏡治療や時間外の緊急内視鏡への対応も充実している.
内視鏡室レイアウト
(2024年1月現在)
医師:指導医3名,専門医10名,その他スタッフ9名
内視鏡技師:Ⅰ種2名,Ⅱ種1名
看護師:常勤4名,非常勤1名
(2024年1月現在)
(2022年4月~2023年3月)
(1)初期研修への指導
当センターでは初期研修医が約1~2カ月間ローテションで消化器内科および消化器外科を研修する.まずは内視鏡機器の基本構造の習得や,内視鏡検査および内視鏡治療の適応や合併症等について指導を行う.スタッフが施行する内視鏡検査および内視鏡治療に実際に立会い見学や患者の介護について習得できるよう指導を行う.
(2)後期研修への指導
後期研修医は,消化器内科または消化器外科を専門診療科として選択しているので内視鏡センターでの指導を消化器内科および消化器外科のそれぞれの指導医によって行われている.上部消化管用・下部消化管用の内視鏡モデルを用いてのトレーニングを行ったのち,指導医の指導のもと,実際の症例で開始する.上部消化管内視鏡検査から開始し,組織生検も充分に施行できるように研修を行う.上部消化管内視鏡を約500例程度施行した段階で,大腸内視鏡の研修も開始する.胆道系として内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)も後方斜視スコープの操作にも慣れるように実際に検査に携わる.
(3)研修後医師への指導
後期研修終了後は,治療内視鏡のトレーニングを開始する.まずは,局注やスネア操作等の基本手技を指導し繰り返し行う.更に内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD),ERCP,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST),内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL),超音波内視鏡検査(EUS)等の検査治療手技についても助手操作を充分に経験したのち実際に術者として治療を行えるように指導を行う.
また消化器内科・消化器外科症例検討会や院内キャンサーボードに積極的に参加し,放射線科医師の画像的意見,病理医の組織学的な意見もいただきながら充分な症例検討を実施する.
①当センターは茨城県南地域に密着した地域基幹医療機関であると同時に大学附属の教育機関であり,高度先端医療技術を提供する使命を有するが,現段階では設備的に最新機器導入が不十分な側面もあり今後はそれらの新規機器の導入・増設が望まれる.
②当センターは大学附属医療機関であり,初期研修医および後期研修医を中心として内視鏡教育を行う必要性が高いが,教育用の内視鏡モデルやトレーニング器材等の設備が充分とは言えず,今後充実させていく必要がある.
③ESDや超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)といった内視鏡診断および治療手技の高度化に伴いトレーニングシステム構築が必要である.また症例数が豊富な施設への院外研修も積極的に行い高度内視鏡手技の習得を行える環境作りも望まれる.
④昨今の内視鏡診療の流れで,当院も鎮静による内視鏡検査の件数が増加していて,特に外来での大腸内視鏡検査でその傾向が顕著である.鎮静を行う症例に必要であるリカバリーに関する設備が充分とは言えないため,今後更に充実を図る必要がある.