GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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Novel classification system for walled-off necrosis:a step toward standardized nomenclature and risk-stratification framework 1).
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2024 Volume 66 Issue 6 Pages 1433

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【背景】Walled-off necrosis(WON)に対する最適な治療アプローチは,効果的なリスク層別化分類が存在しないため,十分に解明されていない.この問題に対処するため,放射線学的および臨床的要因に基づいた新しい分類システムを提案し,将来,比較有効性試験を行うための枠組みを設定し,WONの治療戦略に対する見識を提供することを目的とした.

【方法】本研究は,超音波内視鏡を用いてlumen-apposing metal stent(LAMS)を留置されたWON患者を対象とした後ろ向きの解析である.患者は新たに提案されたQNI分類システムに従って分類された.『Q:quadrant』は病変の広がりを,『N:necrosis』はWON内の壊死の割合を,『I:infection』は感染の有無を示し,2人のブラインドレビュアーによって評価された.患者は,QNIが低いグループ(グループ1:Q≦2領域,N≦30%)とQNIが高いグループ(グループ2:Q≧3領域,またはQ=2領域でN≧30%,またはQ=1領域でN≧60%かつIが陽性)に分けられた.主要評価項目は,WONが治癒するまでの平均期間,副次評価項目は手技的および臨床的アウトカムであり,各群間で比較した.

【結果】71人の患者がQNIで層別化された.グループ1には17人が,グループ2には54人が含まれた.グループ2の患者は,ネクロセクトミーの回数が多く,入院期間が長く,再入院する回数も多かった.治癒までの平均期間は,グループ2で長かった(79.6±7.76日 vs. 48.4±9.22日,p=0.02).死亡率もグループ2で高かった(15% vs. 0%,p=0.18).

【結論】重症急性膵炎におけるWONの病態は多様であるが,提案されたQNIシステムはWONの分類を標準化し,今後の臨床試験に有用な情報を提供することが可能である.これは疾患のリスク層別化と最適な治療戦略の策定に寄与するかもしれない.

《解説》

急性膵炎に関するリスク分類には多くの指標 2)~5が存在するものの,WONのリスク分類に関しては,まだ広く認められたフレームワークが確立されていないのが現状である.本研究では,放射線学的および臨床的要因に基づいた新しいWON分類システムを提案し,WONの進展部位,壊死の程度,感染状態を考慮して患者を軽症と重症に分類した 6.その結果,重症グループでは内視鏡処置や壊死除去術の回数が多く,入院期間が長く,再入院率と死亡率が高いことが示された.さらに,経皮的や外科的手術が必要な場合があり,高度な医療リソースを必要とするため,早期に特定し,専門的な治療施設への搬送と綿密なフォローアップが必要であることが示唆された.

提案されたQNI分類システムによる重症度の評価は,WONの治療における比較効果研究の強化や,複雑な病態の臨床的トリアージに役立つことが期待される.この分類により,治療リソースの適切な配分と,専門的治療が必要な患者の早期識別が可能となり,早期に識別された重症患者に対してより積極的な治療アプローチを提供することで,臨床転帰の最適化が図られる可能性がある.しかし,本研究には選択バイアスの可能性や限られた患者数による制限があり,これらの結果を一般化するにはさらなる検証が必要である. 最後に,WONの治療に関する専門的な判断が多く求められる臨床現場において,この新しい分類システムは治療チームに対して具体的な指針を提供し,WON患者の管理におけるより良い臨床結果の達成に寄与するだろう.この分類システムの実用化は,WONに対するアプローチを再考し,最終的には患者の生存率と生活の質の向上に繋がる可能性がある.

文 献
 
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